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June 05, 2011

明るい家族拳闘 デヴィッド・O・ラッセル 『ザ・ファイター』

081203_173823アカデミー賞作品賞にノミネートされた作品も『127時間』『ウィンターズ・ボーン』を残して大体公開されましたが、これもまたそのうちの一本。俳優のマーク・ウォルバーグが製作に携わった実録ボクシング・ドラマ『ザ・ファイター』、ご紹介します。

20世紀も終わりを迎えようとしているころ。ミッキー・ウォードはタフネスとパンチ力を売り物にボクシングを続けていたが、戦績はいまひとつだった。原因のひとつはトレーナーでもある兄のディッキーにあった。かつてシュガー・レイ・レナードと接戦を繰り広げた兄だったが、引退後ドラッグ中毒になってしまい、ミッキーのトレーニングもそっちのけに。兄を思うがゆえに我慢し続けていたミッキーも、ある事件をきっかけにひとつの決意をする・・・

アクション映画の出演も多いウォルバーグに、4代目バットマンのクリスチャン・ベール。この二人が実在のボクサーを演じ、タイトルが『ザ・ファイター』と来たらそれはもう、男の男の煮えたぎるようなドラマが展開されるのだろう・・・と予想していました。ところがどすこい。いやあ、こんなにかっこ悪いボクシング映画は初めて観ました(笑)
まずミッキーとディッキーにはステージママ的なお母さんがいるのですが、二人ともこのお母さんにまるで頭が上がらなかったりします。さらにミッキーはうじゃうじゃいる姉妹たちや前妻、エイミー・アダムズ演じる恋人にも言われたい放題で、とても格闘家にむいているタイプには思えません。

それに輪をかけて情けないのがクリスチャン・ベール。ここに『リベリオン』や『ダークナイト』での精悍なベールはいません。ヤクのやりすぎでげっそりとやせたジャンキーがいるだけです。まあそこまでヤク中の体を忠実に再現してしまう演技への入れ込みは、本当にすごいですけどね・・・ 13キロ減量して毛を抜いて歯並びまで変えたそうです。その辺が評価されてか、見事アカデミー助演男優賞を受賞。余談ですが彼は家族との折り合いが悪いらしくて、お母さんを突き飛ばして警察に捕まったりしてるんですよね。だもんで、お母さんがらみのシーンにはなにやら複雑な気持ちがしました。

そのお母さんを演じているメリッサ・レオは、この作品でアカデミー助演女優賞を受賞。なるほど胸元をボイーンとあけたスタイルで夫や息子たちを威圧する姿は大した存在感。彼らは決して仲がわるいわけではなく、むしろ深く愛し合っています。ただその愛情がやや幼いというか、自分中心なところがあるため、あんまりお互いのためになってなかったりします。

『ザ・ファイター』で印象に残るのはこの家族というものの面倒くささですね。少し前の『ザ・タウン』でも描かれていた、人のしがらみを断つことのむずかしさ。すぱっと縁が切れればなーとも思っても、なかなか切れないのが家族というものです。切ったら切ったでまた苦しんだりしてね。まあ映画ではこの辺をそれなりにコミカルに描写しているので、重苦しくいムードはあまりありません。『ロッキー』を『あしたのジョー』に例えるとするなら、こちらはむしろ『はじめの一歩』に近いです(笑)

そういえば『ロッキー』も試合シーンが全体の多くを占めてるわけではなかったですね。ロッキーの境遇とか人間関係をえんえんと描きつつ、徐々にクライマックスのリングのシーンに向けて盛り上げていく。『ザ・ファイター』もその点では同じです。情けなかったミッキーが下馬評を覆して強豪たちと互角の試合を繰り広げていく。そのあたりはやっぱり拳を握って見入らずにはいられません。また先ほども名前を出しましたが十五年以上『はじめの一歩』を愛読している者としては、幾つかのエピソードを思い出させるところもあって何度かニヤリとさせられました。

110604_223513_2『ザ・ファイター』はすでに公開終了してる劇場も多いですが、まだ細々と公開してるところもあるようで。DVDも10月には出るみたいです。
あと今年の年末には『リアル・スティール』というロボットがボクシングをする映画が待機してるそうです。予告編を観た時点でかなりの微妙臭が漂っているのですが、ロボ好きとしてはやはり観にいくべきか・・・

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Comments

今まで喰いまくられていたクリスチャン・ベイルがようやく
今回は主役を食った作品でしたね。(笑)
クリスチャンはオスカーも納得の演技でしたがメリッサ・レオ
はどうかなぁ。確かに良かったけど、今オスカー作品色々観て
考えるとちょっと疑問…

Posted by: KLY | June 06, 2011 at 12:09 AM

>KLYさん

毎度ありがとうございますhappy01
前作でのジョーカーのいかれっぷりを見て、「こうなったらオレもイロモノに走るしかない!」と想ったのでしょうか? ともあれオスカー受賞はめでたいですね

メリッサ・レオもがんばってましたけど、ステージママなら『ブラック・スワン』のお母さんの方がインパクトありましたねshock

Posted by: SGA屋伍一 | June 06, 2011 at 09:39 PM

伍一くんおはよう☆

これは単なるボクシング界の男の栄光の物語じゃなく、
家族が深く関わってくる話しになってるのが面白かったな☆
あとアカデミー賞作品賞みてないのは1作ウィンターズボーンなんだけど
それみたら順番でもつけようかな。
127時間も見てね!(伍一君はどれが一番になるかにゃ)

そうそうショートショートももうすぐ。
予定を一応記事にします。
ゆきえちゃんは今回パスみたいだけど、またの機会に会えるでしょう。
私は2日間いくので会えたらまた☆

Posted by: mig | June 07, 2011 at 09:24 AM

>migさん

こんばんばんhappy01 お返しありがとう。
migさんちは家族仲いいから、こういう家族の絆を描いたものにジーンとくるのかな? うちはまあ悪くもないけど、そんなによくもない(笑)

『127時間』はこっちの方でも一館だけ上映予定。余裕があったら見てみようかな。なんか痛そうな話だけどね~shock わたしはたぶん『トイストーリー3』が一番だと思うよ

『SiRoKuMa』も楽しみにしてます。24日migさんがお休みになることを願いつつ(厳しいかなー)

Posted by: SGA屋伍一 | June 07, 2011 at 10:39 PM

伍一さん、こんばんは〜☆

>『ザ・ファイター』で印象に残るのはこの家族というものの面倒くささ
>『ザ・タウン』でも描かれていた、人のしがらみを断つことのむずかしさ

わたしも前半はどうしてもザ・タウンと比べたりしちゃいました☆
この家族愛とやらがあまりにも濃厚でめんどくさくてうんざりしかけたところで、ミッキーとディッキーの後半追い込み巻き返しが(笑
ベタなお話だけどドツボでした〜(*^-^)
リアルミッキーのキャラがまた最高☆

えーと、最後のイラストは誰なのかしらw(汗

Posted by: tomoco | June 08, 2011 at 12:28 AM

>tomocoさん

こんばんは。おかえしありがとうございます。
tomocoさんも『ザ・タウン』思い出されましたか。タイトル的にもなんとなく似たところありますしね。ザッカーバーグだったら「ザを取れ!」というかもしれませんが。

わたしとしては『ザ・タウン』の方が好みかな~
この映画もよかったですけどね。なんだかんだ言ってボクシング映画は最後には手に汗握って見ちゃいます。
最後の人は・・・ ウィリアム・デフォーではありません

Posted by: SGA屋伍一 | June 09, 2011 at 10:39 PM

友達とDVDで見ましたcd

今回は厳しいコメントに なります。

問題児な母親と兄貴でしたね。母親を演じたメリッサ・レオがアカデミー賞の助演女優賞と兄貴を演じたクリスチャン・ベイルが助演男優賞を受賞した演技力は さすが!

・・・が、ウォルバーグ演じるミッキーに関わりすぎたために重荷にさせてだいぶチャンスを潰したのは まぎれもない事実。急遽代役の相手選手は体重差がありすぎな無茶な対戦を組ませてたり 特に兄貴は 薬や暴力沙汰で 足をひっぱりまくって・・・・

ミッキーは家族に甘過ぎですよ!それが元で前の奥さんと別れて娘との親権も無いんでしょうし、トレーナーや恋人のシャーリーンにも散々迷惑かけて・・・・

 キチっとしたプロモーターがミッキーに声をかけてきたとき それを快く思わない母親は親父さんと恋人のシャーリーンを罵倒して気分が悪かったです。

 "家族は家族、ボクシング・ビジネスはボクシング・ビジネス"の区分けをしないと・・・・

 ボクの小さいときの知り合いのレストランのご主人とその息子さんも そうでしたが、息子さんが後を継ぎたいと言った時 父親であるご主人は・・・

 "よそでメシ食ってこい"と言ったそうです。身内がそばにいては しがらみや甘えが出て 腕を磨くのに妨げになるから よそで修業して一人前になってこいって事です。

 母親と兄貴は そう言うべき立場なんです!

Posted by: zebra | September 12, 2012 at 11:07 PM

>zebraさん

こんばんは。たしかアロノフスキーがお好きでしたよね。これも確かアロノフスキーが企画で関わってたんでしたっけ
アメリカの親子関係ってこっちよりももっとサバサバしたものかと思ってたんですけどね。大人になればもうあとは親は干渉しない、というような
でもやっぱりどこの国にも、いつまでたっても子供を縛り付ける親ってのもいるようで。国の問題じゃないのかな? これは
まあ後半はミッキーもきちんと母親に物申すことができるようになったようだし、それなりに成長したんじゃないでしょうか

お知り合いのレストランのご主人はご立派ですね。実はわたしも十年くらいよそで働いて、いま親の会社を手伝っています。ただ前の仕事が全然違う仕事だったので、役に立ってるかどうかは微妙coldsweats01

Posted by: SGA屋伍一 | September 14, 2012 at 08:57 PM

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