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May 08, 2011

あなたから届いたエアメール アダム・エリオット 『メアリー&マックス』

2011050720150000今から約一年半前の東京国際映画祭で、好評を博した一本のクレイアニメがありました。そのタイトルは『メアリー&マックス』。かつてアカデミー短編アニメ賞にも輝いたオーストリアの作家、アダム・エリオットの手による作品。知人らからその評判を聞いてyoutubeの予告編などを見たところ、とっても独特かつ温かみのある雰囲気で「これは見てみたい!」と切望したものでした。その後忘れかけてた今年の初めになって日本公開の報せを読み、狂喜した次第であります。それではまずあらすじから。

まだ世界にネットもEメールもなかったころ。オーストラリアに住むいじめられっ子のメアリーは、何でも話せる友達が欲しいと願っていた。そこで彼女はたまたま見かけたアメリカのある住所に、手紙を送ることを思いつく。手紙はニューヨークに住む中年男マックスの元に着いた。マックスは不幸な生い立ちのゆえか人と接することが困難で、ふとしたことでもすぐパニックを起こしてしまう障害を抱えていた。しかし心のどこかで同じように友人が欲しいと願っていた彼は、見ず知らずの誰かからのその手紙に対し返事を書く事にする。

海外版の予告編を見ますと「二つの大陸」「二十年」「一つの不思議な友情」という字幕が出るのですが、この映画の内容をよく表していると思います。年齢も性別も住んでるところも隔たっている二人が、手紙というか細いつながりによっていつの間にか太く強い絆で結ばれていく。実に奇妙な物語であります。しかもこれが監督の実体験だというのだから驚きです。

一方でこれはとても普遍的なお話でもあります。マックスとメアリーの喜び、悲しみ、孤独、恐怖は現代日本に住むわたしたちにもとてもよくわかるものです。友達が欲しいと思いつつ自分から人と関わるのがおっくうだったり、突然過去のトラウマを思い出してやるせない思いにとらわれたり。滅多になくことがうまく運んで有頂天になったり、意図せずに人を傷つけてしまって落ち込んだり。そして思いもかけない形で友達を得て、本当に嬉しかったり・・・ そういうことって誰にでもあることではないでしょうか。

このやりようによっては重苦しくなってしまいそうなお話が、クレイアニメという方式で描かれることによって、暖かく面白おかしいものになっています。時々残酷なシーンがないでもないのですが、演じてるのが粘土の人形のせいかかえって笑えてしまったりして。加えてマックスの人を食った語り口も笑いを誘います(すごい深刻な話をしたあとに「チョコドッグは好きかい?」なんて言ったりする)。

そしてこの粘土の生み出す質感が、(当たり前ですが)とても柔らかく、優しい。クレイアニメといえばこれまで『ウォレスとグルミット』や『ピングー』などがありましたが、『メアリー&マックス』は基本モノクロ・セピア調のゆえか一層ソフトな印象を受けます。恐らくメアリーのモデルである監督のアダム・エリオット氏も、とても傷つきやすい方なのでしょう。そんなナイーブな彼だからこそ、こんなに優しい風景が作れるのかもしれません。

2011050416100000さて、これは個人的な話なんですが、何年か前にネットのみで交流していたブロガーさんがおられました。事情で交流は途絶え、その後時々どうしてるかな~なんて思っていたのですが、この映画を通じてひょんなことから再会し、念願のご対面まで果たすことができました。そんな経験がなんだか映画の内容と微妙にシンクロして、この作品、とりわけ思いいれの深いものとなったのでした。

『メアリー&マックス』はこのあと全国の劇場を巡回していくようですが、メインの上映館である新宿武蔵野館では今月下旬までとのこと。興味ある方はぜひお早めに。まさしく「他に類を見ない」作品です!

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Comments

これを観ないと正に損。傑作だと思います。
一日四秒、恐ろしいほどの手間のかかり方はそのまま丁寧な描写になってました。
手紙。今だからこそ手紙。あのラストは嬉しい驚きと暖かい涙でしたよ。

Posted by: KLY | May 10, 2011 12:07 AM

>KLYさん

お返しども。調べてみたら『ファンタスティック Mr.FOX』は一日三十秒でした。いずれにしてもクレイアニメをやろうという方々の地道な作業には頭が下がります
そう、手紙ってEメールより手間がかかるからその分想いが伝わってくるんですよね。全然手紙を書かないわたしが言うのもなんですが

Posted by: SGA屋伍一 | May 11, 2011 10:22 AM

おはよう〜
そんなに言うならDVDでみてみようかな(笑)

猫目宣伝ありがとう、今後もよろしくですー!

Posted by: mig | May 13, 2011 09:48 AM

>migさん

(一日遅れで)おはよ~
そこをなんとか劇場で・・・ と言いたいところだけど、migさんも忙しいからねい
明日はリュミエール楽しんできて~ わたしも行きたかった・・・

Posted by: SGA屋伍一 | May 14, 2011 09:25 AM

こんばんは!(*^^*)
やっと、見ることができて・・・すご〜〜く満足です。
不細工な登場人物たちが、なんだか愛おしく思えてくるんですよね〜。
クレイアニメとしてのクオリティも素晴らしかったと思います。
ラストは、ホントに感動的でした!!!

Posted by: ルナ | October 25, 2011 12:08 AM

>ルナさん

こんばんは! おかえしありがとうございます!
あ~ なんか福岡はちょっと遅かったですよね(笑) わたしも地方の人間なのでその気持ちよくわかります!

人物もさることながら、画面のはしっこにちょこちょこ出てくる動物たちも好きでした。ラストシーンの優しさも忘れがたいですよね。わたしは『BANANA FISH』とか思い出してしまいました

Posted by: SGA屋伍一 | October 25, 2011 10:40 PM

お邪魔するのが遅れました、あけましておめでとうございます!

最初にSGAさんにこの映画おしえていただいて
公式サイトでちらっとだけ絵を観たときは
こんな深刻な話とは思いもよらず・・・
しかしかわいらしいクレイアニメで、本当に残酷なシーンは
コミカルなミュージカル仕立てだったりして
たのしく観ることができました。
かと言って、シビアな現実から目をそらしてるわけでもないんですよね。
ほんとに稀な素晴らしいアニメーションでした。

>この映画を通じてひょんなことから再会

ああ・・・それは重なりますね、うん。
SGAさんを通じて、お元気にされてることを知って
私も嬉しかったです。

Posted by: kenko | January 07, 2012 04:28 PM

>kenkoさん

本年もよろしくお願いします♪
うん、ビジュアルだけ観てほのぼのしたお話を想像すると痛い目を見ますよね(^^; 実際子供たちの中には観てトラウマができちゃった子もいるみたいです・・・

これをそのまま実写でやったらトリアー監督並みにドス暗い作品になったでしょうね。粘度アニメだからこそ深刻なドラマもあたたかく観られるというのは面白い発見でした。

>>この映画を通じてひょんなことから再会
 
あ、そうでした(笑) いまはまたちょっと交渉が途絶えているのですが、きっと元気でやっておられると思います♪

Posted by: SGA屋伍一 | January 08, 2012 10:44 PM

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