中学生戦記 イ・ジェハン 『戦火の中へ』
日本が復興に向けて動き始めていた1950年、朝鮮半島では新たなる火種が燃え盛っておりました。東西の大国をバックに、半島が南北に別れて戦ったいわゆる「朝鮮戦争」です。開戦当時戦況は南側が劣勢で、人員に乏しい政府は十代の若者たちを「学徒兵」として徴用します。釜山を重要とみなした軍本部は、学徒兵を浦項と呼ばれる拠点に残してその地へ兵を進めます。恐らく見過ごされるだろうという上層部の甘い判断をよそに、北軍766部隊は浦項攻略を決定。学校を砦に立てこもる少年たち71名の運命やいかに・・・
本日は昨年韓国で公開された映画『戦火の中へ』を紹介いたします。これまた感想の難しい映画であります・・・
まず幾ら戦況が厳しいとは言え、年少者を前線で戦わせるという政府が腹立たしい(日本でもあったようですけどね・・・)。さらにあろうことか大人を一人も残さず、彼らだけを拠点におっぽり出してきたという事実にも怒りを覚えます。そんなことをやらかす国はもう国として「終ってる」と思いたいのですが、結果としてその後も存続し、現在に至っているという・・・ ま、当時の政府と現在の政府は同じではないかもしれませんが、その辺になんとも納得のいかないものを感じたのでした。
そういった史実はともかくとして、映画はこの戦争をどのようにとらえているのか。まあいたずらに戦争賛美な内容でなかったのは良かったです。少年兵のリーダーが、時折戦うことに疑問を感じたり、敵の兵士も同じ人間であることに動揺したりしている場面にそれが表れてました。
ただ韓国側からお話を見ているため、どうしても彼らの犠牲・死で感動を呼ぼうという作りになってしまってるんですよね・・・ これまで観てきた「南北分断もの」の傑作・・・・『シュリ』『JSA』『シルミド』『トンマッコルへようこそ』などは、韓国で作られているにも関わらず、わりと中立的な視点で作られていたので、ついそれらと比べてしまったりして。
・・・・とまあ、いろいろくさしてしまいましたが、主人公たちの純真さには素直に心打たれます。『キック・アス』で言うと、ビッグダディは明らかに間違ってるけど、彼に教育されてああなってしまったヒットガールは悪くない、みたいな。
士官たちから一人前の「兵士」として認められた彼らは、その期待にこたえようとしてあえて抗戦する道を選びます。その姿が純粋であればあるほど、やるせない思いが募ってしまったのでした。
冒頭から激しい銃撃戦で始まるこの映画ですが、時折ほっとするような場面が幾つかあり、そういうところには監督の「うまさ」を感じました。半世紀前の異国の少年兵にも、すっと感情移入させるような力がありました。
映画の見所のひとつは、少年兵たちのリーダー・ジャンボムと、少年院に行く加わったガプチョとの対立です。優等生タイプと番長タイプ。二人はことあるごとに対立します。命の危機が迫っている中、果たして彼らは和解することができるのか。
さらにガリ勉タイプのメガネくんや、仲良くそろって入隊した兄弟、食ってばかりいるガプチョの取り巻きなども、出番は少ないながらも印象的な少年でありました。
『戦火の中へ』は現在すでに公開終了している劇場もありますが、地方ではこれから回っていく劇場も幾つかあるようです。朝鮮戦争について関心のある方は、一応ご覧になってみては。
Comments
日本でもあったというより、日本がやったからじゃないですかね?
太平洋戦争当時に学徒出陣をして、そこに朝鮮人も入っていた
わけですから、考え方としては至極普通に存在していたんじゃな
いかと思ったりもします。
それにしても、別にそれを経験しなきゃ上手く演じられないなんて
ことはないと思うんです。それ言ったら死人を演じるのには死なな
きゃならないから。
でも、やっぱ兵役があって実際にガンガン銃撃ってる経験がある
のとないのとでは映像の作り方に違いがでても仕方ないんですか
ね。そんなこともふと考えちゃいました。
Posted by: KLY | May 14, 2011 11:30 PM
>KLYさん
毎度ありがとうございます お返事ちょい遅れてすいません
そう考えると旧日本軍にも責任あるなあ・・・ そういう状況を作った米ソ両大国にも
エンドロールで元学徒兵の方が語る言葉には、なんともいえないものがありました
夏目房ノ介先生がたしか『シルミド』について「みんな銃の扱い方が徹底している」という風に語っておられました。そう、あちらにはいまなお兵役があり、臨戦態勢なわけですよね。昨年末かなりきなくさくなってたけど、少しは落ち着いたのかなあ
Posted by: SGA屋伍一 | May 16, 2011 10:03 PM