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May 29, 2011

すっとこ七番勝負 エドガー・ライト 『スコット・ピルグリムVS邪悪な元カレ軍団』

110529_163816カナダはトロントに住む冴えないバンドマン・スコットは、ある時不思議な美少女に会う夢を見る。目覚めた翌日、スコットは驚愕する。なんと夢に出てきた女の子と再会?したのだ。運命の恋とばかりに、彼女・・・ラモーナに告白するスコット。だがそのことにより、彼はラモーナの凶悪な七人の元カレ(女子一名含む)と対決することに・・・・

『ホット・ファズ』のヒットで日本でも知られることになった鬼才エドガー・ライト。その彼のハリウッド・デビューとなったのがこの作品。人気アメコミが原作ということでヒットは間違い無しと思われたのですが、これがどういうわけか大コケ。日本での公開も危うくなってしまいました。しかしまたしても(笑)バカ映画ファンの皆さんの署名により、当初より遅れながらも公開が決定。『スコット・ピルグリムVS邪悪な元カレ軍団』、ご紹介します。

先ほど述べたように、この映画、アメコミが原作であります。ただアメコミの主流はリアルな絵柄のヒーローもの。コミカルタッチの『スコット・ピルグリム~』は、アメコミの中ではどちらかといえば異色な部類に属します。
このヘンテコな漫画の源流は、実は『うる星やつら』や『らんま1/2』といった日本のラブコメ作品にあるようで。それらの高橋留美子作品はアメリカでも熱心なファンを獲得し、『ニンジャ・ハイスクール』なんていうヒット作も生み出すことになりましたが、まあそれはまた別な話。主人公が優柔不断で、唐突に恋に落ちて、唐突にバトルが始まってしまうあたりはたしかに高橋作品を彷彿とさせます。

この映画にもうひとつ深い影響を与えているのがテレビゲーム。それも最近の実写とみまがうようなものではなく、ピコピコといった電子音がなり響く80年代調のもの。バトルが始まると上にHPのゲージが表示されたり、敵が倒されるとコインになってしまうあたりは、スーパーマリオやスパルタンXに熱中した者としては懐かしくてたまらない気分になりました。・・・まあ、ぼくんちではゲーム機は買ってもらえなくて、友達の家でやらせてもらうしかなかったんですけどね・・・・ ふううう・・・・ あ、また脱線したcoldsweats01

では単なる中身空っぽのアホバカ映画かというと、原作に込められたテーマか、エドガー・ライトの資質ゆえか、なんだかラブコメ漫画にしては意外なほどの叙情性も(時々)漂っていたりします。
ヒロインのラモーナがなぜスコットの夢に出てきたのか。これに対して何の説明もありません。さらにはどこでもドアのような扉が出てきたり、キャラたちが「ありえねー」必殺技を繰り出したり、おおよそ現実世界の話とは思えません。それこそ誰かの夢の中をずっと覗き込んでいるような気分にさせられます。加えてトロントの夜に広がる雪景色が、ムダにファンタジックなムードをかもし出してもいます(笑)

あと前作『ホット・ファズ』でもありましたが、誰かと思いを分かち合いたい、だけどそれがなかなかうまくいかない・・・ そんな孤独感についても描かれていました。シュールなギャグでごまかしてはいますが、エドガー・ライト氏、けっこう寂しがり屋さんなのかもしれません(笑)。

110529_163749『スコット・ピルグリムVS邪悪な元カレ軍団』は現在首都圏を中心に公開中ですが、徐々にその他の地方でも巡回していく予定のようです。ちなみに渋谷のシネマラ○ズにはエドガー・ライト監督へ贈るでかい寄せ書きが置いてあるのですが、そこへ空気も読まずパンダの落書きを書いてきてしまいました。これから行かれる方はぜひ注目し・・・ いや、やっぱりいいです・・・


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May 24, 2011

マティよ銃をとれ ジョエル・コーエン&イーサン・コーエン 『トゥルー・グリット』

110522_195746まだアメリカを馬が走り、無限の荒野が広がっていた時代。父をならず者に殺された少女マティは復讐を誓い、助けになってくれる保安官を探す。彼女が白羽の矢を立てたのは「真の勇者」と呼ばれるコグバーンという男だった。実際に探しあてたコグバーンは粗野な飲んだくれであったが、他にあてもないマティは父の敵討ちを手伝ってくれるよう懇願する。

これまた本年度アカデミー賞作品にノミネートされ、高い評価を得ている作品。『ノー・カントリー』のコーエン兄弟最新作『トゥルー・グリット』ご紹介します。
犯罪や追跡劇、無法者を題材にすることが多いコーエン兄弟。考えてみればそんな彼らにとって西部劇はかっこうのジャンルなのでは? 今まで手がけてこなかったことが不思議なくらいです。しかしいざフタをあけてみると、コーエン兄弟らしからぬところがけっこうありまして。

まず主人公が純真な少女であるというところ。コーエン兄弟の作品では、ひねくれた中年親父が主人公を努めることが多かった気がします。そんでそのしょぼくれたオッサンを遥か高みから見下ろして、小突き回して楽しむようなそんな作風だったかと。ちょうどこの直前に撮られた『シリアスマン』もそんな作品だと聞きました。
マティの前にも数々の困難が立ちふさがりますが、いたいけな少女ゆえか、今回の兄弟の目線はなんだかそばに寄り添って「がんばれ」と励ましているかのようです。実際インタビューでどちらかが「僕らは主演女優に惚れていたんだ」(ロリ?)なんて語っていましたし。
そんな風に広大な自然を舞台に少女ががんばっている姿は、なんだかジョン・ウェインの王道的な西部劇より、『大草原の小さな家』を彷彿とさせます。

ただこのマティという女の子、ローラなどと比べるとえらい鼻っ柱の強い女の子です。ずるい大人を前にしても商談で一歩もゆずりませんし、泊まる場所がないからとはいえ霊安室で一夜を過ごしたり。コグバーンのほかに成り行きで同行するラボーフという頭の軽い男がいるのですが、「何もそこまで」というくらい面と向って罵倒したりして。
「なんでそんなに強いんだ!?」と思わないでもないですが、ま~そんくらい気の強い女の子でもなければ「親父の仇をぶっ殺しちゃる!」なんて思わないかもしれませんね。

そんなマティに辟易する老保安官コグバーンですが、彼は彼でまた問題児だったりして(笑) 保安官なんだからしょうがないのかもしれませんが、むやみやたらに銃をぶっぱなしたがるし、つまんないことですぐヘソを曲げたりします。当然マティともウマがあうわけがありません。ですが旅を続けているうちにほんと~~~に少しずつですが少女にも思いやりを見せ始めます。そうしたひねくれ親父の不器用な優しさが、この映画の一つの見所かもしれません。

あと「コーエン兄弟らしからぬ」と書きましたが、彼らお得意の暴力描写・残酷描写も随所にあります。特に目の前の人間が突然何をやりだすかわからない恐怖。こういう空気をかもし出す点にかけては、二人はやはり当代随一だと思いました。男たちがいきあたりばったりに行動するところとかも相変わらずですね。


さて、かつては大量に作られた西部劇ですが、現在は本国でもだいぶ数が少なくなってきています。日本ではまだコンスタントに時代劇が作られていますが、いったいこの衰退ぶりはなんなんでしょう。単にアメリカ国民が「そんな昔の地味な話なんていまさら観る気にならない」ということなのかもしれませんが。いずれにせよ、昔ながらのかっこい正義のガンマンがアウトローどもをバンバンなぎ倒していく、そういう話は久しく作られていないようです。
代わりにわずかではありますが、こういう人生のシビアな面を物語るような、文芸作品といってもいいウェスタンが時折作られるようになりました。最近の例だと『3時10分、決断の時』など(これ観られなかったのよね・・・)

『3時10分~』は日本ではあまり話題になりませんでしたが、こちらはアカデミーノミネートに加えて実力派コーエン兄弟の監督ということもあり、なかなかのヒットのようです。あんまり小規模公開の映画がにぎわわない静岡東部の劇場でもけっこう人入ってましたし、GWの時新宿の劇場に行ったら公開から一ヶ月経ってたのに満員御礼の札が出ておりました。これをきっかけに、また深みのある西部劇が続々と作られていくといいんですけどね・・・ 今年のラインナップを見ますと『カウボーイVSエイリアン』とか、カメレオンが主役のCGアニメ・ウェスタンなんかが並んでて「なぜそんな方向に!?」と思わずにはいられません。まあ、こちらはこちらで楽しみですし、西部劇がここにきて徐々に復権を果たしていることは確かなようです。

110522_195957先ほど「大入り」と書きましたが、『トゥルー・グリット』、さすがに今週金曜に終ってしまう劇場が多いようです。「久しぶりに西部劇もいいかも」と思われた方は、急いでご覧ください。さもなくばDVDで。

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May 18, 2011

ブラックボールによろしく 奥浩哉・佐藤信介 『GANTZ:PERFECT ANSWER』

110518_175724♪ヘイヘイへヘイヘイ 屁にいれーろ ヘイヘイヘヘイヘィ屁にいれーろ
予想を越えたヒットとなった『GANTZ』第一部から三ヶ月。劇場版完結編が満を持しての公開となりました。てか、何をいまさらって感じですよね。『GANTZ:PERFCT ANSWER』参ります。ちなみに第一部のレビューはコチラ。言うまでもありませんが、一応第一部を観てからご覧ください。あとこの記事もそこそこネタバレしてるのでご注意のほど。

おこりんぼう星人との激闘で親友・加藤を失ってから半年。玄野は彼を取り戻すためになおも過酷な戦いを続けていた。加藤を復活させるまであと少しとなった時、突然玄野の前にその加藤が姿を現す。困惑する玄野をよそに、「星人」たちはひそかに勢力を結集。最終決戦が迫る中、ガンツに異変が生じ始めた・・・

単行本にして現在30巻が刊行され、しかもまだまだ終わりそうもない『GANTZ』原作。しかし映画は「二部作で完結」ということが決められています。そんなわけで第一部では原作どおりだった劇場版『GANTZ』も、第二部ではしょっぱなからオリジナルな展開を突き進みます。果たしてその選択が凶と出たか吉と出たか・・・・

前半はなかなか良かったと思います。GANTZがなぜ特定の人間を殺すよう命令を出し始めたのか? その中に何の関係もなさそうなタエちゃんがなぜ入っているのか? まだ死んでるはずの加藤がなぜ生き返ったのか? そういった謎で観客をひっぱると共に、走行中の地下鉄でのアクションがハンパなくすごい。
猛スピードで走る車両から弾きだされたと思いきや、ガンツスーツのパワーを極限まで引き出して、またその中へと飛び乗っていく描写なんかは鳥肌が立ちました。・・・で、問題は後半ですね(笑)

先ほども述べましたように、「終らなければならない」という命題を与えられた劇場版『GANTZ』。しかしその「終る」ということに力を入れすぎたためか、あんだけがんばってたアクションが普通のチャンバラになってしまったのはなんだかさびしいものがありました。あと第一部に出てきたヘンテコな星人連中が、人間スタイルになってしまったのも物足りなかったりして。

加えて第一部はクライマックスに向けてどんどんボルテージが上がっていくような作りになっていたのに対し、こちらはヤマ場が近づくにつれ人間側が壮大な仲間割れを始めたりして、なんだかゲンナリしてきてしまいました。
まあその分内容は深くなったかもしれません。こういう流れにしたことで、「自分が生き残るためなら敵・誰かを殺してもいいのか?」「いったいどうしたら戦いを止められるのか?」ということを考えさせる作りになっていますし。
しかしこちらはエンターテイメントを存分に楽しむつもりで観に来てるので、そう簡単にはシフトできないのですwobbly

そしてある意味一番ショックかもしれないのが、題名にもうたわれてる「完全な答え」。これ、設定上の謎の解明を期待すると思いっきり肩透かしを食います(笑)。要は決着のつけ方というか、最良の解決方法、みたいな意味ですね。しかしこの完全な答えというのがなんともかわいそうなものでして・・・ 劇場を出たあとなんだかしばし呆然としてしまいました。

ただ、時間が経ってこの映画のテーマ曲を繰り返し聴いているうちに、不思議なことにあのオチはあれでいいんじゃないかと思えてきたのですね。この映画の最も優れたもののひとつは、川井憲次氏の作り出したこのサウンドかもしれません。作品にこめられた恐怖、哀しさ、生きようとする意志、誰かへの思い、そしてわずかな希望・・・ そういったもの全てがよく表れた名曲だと思います。

110518_175758『GANTZ:PERFECT ANSWER』は現在全国の劇場で大ヒット公開中。黒玉、黒鳥、黒ひげ・・・ 今年の上半期の映画、やけに「黒」が目立つのはなぜ?

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May 16, 2011

わたしとおじさん シルヴァン・ショメ 『イリュージョニスト』

110515_190703あああああ・・・・ これ、もう一ヶ月も前に見たヤツだよcoldsweats01 どんどんどんどん遅れていく・・・・ ええと(笑)、メガヒットを飛ばすその影で、こっそり世界の絶品アニメを紹介してくれているスタジオ・ジブリ。今回はアカデミー長編アニメ部門にもノミネートされたフランス作品、『イリュージョニスト』を公開してくれました。パチパチパチ

それでは例によってあらすじから。町から町へ旅の生活を続ける老いた奇術師、ユロ。しかしすでに人々は奇術にあまり心動かされず、ロックやテレビに関心を向けるようになっていた。ある時めずらしく芸がうけたスコットランドの村で、ユロ氏は下働きのアリスという少女に出会う。奇術を見てユロ氏を魔法使いだと信じ込んでしまったアリスは、強引に彼のあとについていってしまう・・・

脚本は名匠ジャック・タチ。「まだ生きてたのか!?」と驚愕しましたがもちろんそんなわけはなく、遺稿をもとに制作したということですね。
タチといえば『ぼくの伯父さん』などの軽妙なコメディ作品で知られています。『イリュージョニスト』もクスクスと笑える場面はあるのですが、なぜだか全体的にものさびしいムードに包まれています。
まず主人公のユロ氏がいいかげんくたびれた年であり、しかも芸がなかなかうけないという時点でフィルムに哀愁が立ち込めまくっております。そして期待を裏切るまい、悲しませまいとするために、少女が見ていないところで懸命に奮闘する姿が涙を誘います。なんだか『ライフ・イズ・ビューティフル』で、息子に「これはゲームなんだ!」と必死で信じ込ませようとするお父さんの姿を思い出してしまいましたcrying
これを老人の「最後の恋」の物語と考えるなら、悲しみはいよいよ増すのですが、わたし自身はあまりそうは思えませんでした。ユロ氏の愛情は、どちらかといえば親が子に注ぐようなものに近いのではないかと。てゆうか、公式とか予告とかにはっきり「別れた娘の面影を見た」って書いてありましたよ・・・・ でもこれ、本編観ただけじゃわからないですよね? たしかセリフでは言ってなかったような(セリフ自体がものすごく少ない映画なんです)。

そしてユロ氏や貧しい隣人たちを取り囲むエジンバラの淡い色調が、作品にはかなげな印象を与えております。この作品にいまひとり主人公がいるとするなら、このエジンバラなのではないかという気がします。なんとなく懐かしく感じるのは、宮崎系のヨーロッパを舞台にした名作『カリオストロの城』『紅の豚』『魔女の宅急便』などの背景と似たところがあるからでしょうか。エジンバラといえばイアン・ランキンの小説などでぼんやりと想像したことがありましたが、こんなにも坂が多く、せせこましく、情緒溢れる町だとは。

わたしがこの作品で特に気に入ったのがこの風景と、ユロ氏がいつも連れてるウサギ(もちろん奇術用)。このウサギ、最初はとっても可愛げないんですけど、終盤ではわたしの涙腺をいたく刺激してくれました。なんかもうヒロインなんかどうでもいいよ、というくらいに。そういやヒロインの名がアリスなのとウサギが出てくるのは、あの名作を意識してるのかもしれませんね。

110515_190723『イリュージョニスト』はメイン館での公開こそ終了しましたが、まだ首都や他の地方でも公開続いているようです。夢幻のようなはかない世界に浸りたいという方は、ぜひご覧ください(と、ガラにもなくメロウに〆る)。

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May 14, 2011

中学生戦記 イ・ジェハン 『戦火の中へ』

2011051214220000日本が復興に向けて動き始めていた1950年、朝鮮半島では新たなる火種が燃え盛っておりました。東西の大国をバックに、半島が南北に別れて戦ったいわゆる「朝鮮戦争」です。開戦当時戦況は南側が劣勢で、人員に乏しい政府は十代の若者たちを「学徒兵」として徴用します。釜山を重要とみなした軍本部は、学徒兵を浦項と呼ばれる拠点に残してその地へ兵を進めます。恐らく見過ごされるだろうという上層部の甘い判断をよそに、北軍766部隊は浦項攻略を決定。学校を砦に立てこもる少年たち71名の運命やいかに・・・

本日は昨年韓国で公開された映画『戦火の中へ』を紹介いたします。これまた感想の難しい映画であります・・・ 
まず幾ら戦況が厳しいとは言え、年少者を前線で戦わせるという政府が腹立たしい(日本でもあったようですけどね・・・)。さらにあろうことか大人を一人も残さず、彼らだけを拠点におっぽり出してきたという事実にも怒りを覚えます。そんなことをやらかす国はもう国として「終ってる」と思いたいのですが、結果としてその後も存続し、現在に至っているという・・・ ま、当時の政府と現在の政府は同じではないかもしれませんが、その辺になんとも納得のいかないものを感じたのでした。

そういった史実はともかくとして、映画はこの戦争をどのようにとらえているのか。まあいたずらに戦争賛美な内容でなかったのは良かったです。少年兵のリーダーが、時折戦うことに疑問を感じたり、敵の兵士も同じ人間であることに動揺したりしている場面にそれが表れてました。
ただ韓国側からお話を見ているため、どうしても彼らの犠牲・死で感動を呼ぼうという作りになってしまってるんですよね・・・ これまで観てきた「南北分断もの」の傑作・・・・『シュリ』『JSA』『シルミド』『トンマッコルへようこそ』などは、韓国で作られているにも関わらず、わりと中立的な視点で作られていたので、ついそれらと比べてしまったりして。

・・・・とまあ、いろいろくさしてしまいましたが、主人公たちの純真さには素直に心打たれます。『キック・アス』で言うと、ビッグダディは明らかに間違ってるけど、彼に教育されてああなってしまったヒットガールは悪くない、みたいな。
士官たちから一人前の「兵士」として認められた彼らは、その期待にこたえようとしてあえて抗戦する道を選びます。その姿が純粋であればあるほど、やるせない思いが募ってしまったのでした。

冒頭から激しい銃撃戦で始まるこの映画ですが、時折ほっとするような場面が幾つかあり、そういうところには監督の「うまさ」を感じました。半世紀前の異国の少年兵にも、すっと感情移入させるような力がありました。
映画の見所のひとつは、少年兵たちのリーダー・ジャンボムと、少年院に行く加わったガプチョとの対立です。優等生タイプと番長タイプ。二人はことあるごとに対立します。命の危機が迫っている中、果たして彼らは和解することができるのか。
さらにガリ勉タイプのメガネくんや、仲良くそろって入隊した兄弟、食ってばかりいるガプチョの取り巻きなども、出番は少ないながらも印象的な少年でありました。

2011051214220001『戦火の中へ』は現在すでに公開終了している劇場もありますが、地方ではこれから回っていく劇場も幾つかあるようです。朝鮮戦争について関心のある方は、一応ご覧になってみては。


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May 08, 2011

あなたから届いたエアメール アダム・エリオット 『メアリー&マックス』

2011050720150000今から約一年半前の東京国際映画祭で、好評を博した一本のクレイアニメがありました。そのタイトルは『メアリー&マックス』。かつてアカデミー短編アニメ賞にも輝いたオーストリアの作家、アダム・エリオットの手による作品。知人らからその評判を聞いてyoutubeの予告編などを見たところ、とっても独特かつ温かみのある雰囲気で「これは見てみたい!」と切望したものでした。その後忘れかけてた今年の初めになって日本公開の報せを読み、狂喜した次第であります。それではまずあらすじから。

まだ世界にネットもEメールもなかったころ。オーストラリアに住むいじめられっ子のメアリーは、何でも話せる友達が欲しいと願っていた。そこで彼女はたまたま見かけたアメリカのある住所に、手紙を送ることを思いつく。手紙はニューヨークに住む中年男マックスの元に着いた。マックスは不幸な生い立ちのゆえか人と接することが困難で、ふとしたことでもすぐパニックを起こしてしまう障害を抱えていた。しかし心のどこかで同じように友人が欲しいと願っていた彼は、見ず知らずの誰かからのその手紙に対し返事を書く事にする。

海外版の予告編を見ますと「二つの大陸」「二十年」「一つの不思議な友情」という字幕が出るのですが、この映画の内容をよく表していると思います。年齢も性別も住んでるところも隔たっている二人が、手紙というか細いつながりによっていつの間にか太く強い絆で結ばれていく。実に奇妙な物語であります。しかもこれが監督の実体験だというのだから驚きです。

一方でこれはとても普遍的なお話でもあります。マックスとメアリーの喜び、悲しみ、孤独、恐怖は現代日本に住むわたしたちにもとてもよくわかるものです。友達が欲しいと思いつつ自分から人と関わるのがおっくうだったり、突然過去のトラウマを思い出してやるせない思いにとらわれたり。滅多になくことがうまく運んで有頂天になったり、意図せずに人を傷つけてしまって落ち込んだり。そして思いもかけない形で友達を得て、本当に嬉しかったり・・・ そういうことって誰にでもあることではないでしょうか。

このやりようによっては重苦しくなってしまいそうなお話が、クレイアニメという方式で描かれることによって、暖かく面白おかしいものになっています。時々残酷なシーンがないでもないのですが、演じてるのが粘土の人形のせいかかえって笑えてしまったりして。加えてマックスの人を食った語り口も笑いを誘います(すごい深刻な話をしたあとに「チョコドッグは好きかい?」なんて言ったりする)。

そしてこの粘土の生み出す質感が、(当たり前ですが)とても柔らかく、優しい。クレイアニメといえばこれまで『ウォレスとグルミット』や『ピングー』などがありましたが、『メアリー&マックス』は基本モノクロ・セピア調のゆえか一層ソフトな印象を受けます。恐らくメアリーのモデルである監督のアダム・エリオット氏も、とても傷つきやすい方なのでしょう。そんなナイーブな彼だからこそ、こんなに優しい風景が作れるのかもしれません。

2011050416100000さて、これは個人的な話なんですが、何年か前にネットのみで交流していたブロガーさんがおられました。事情で交流は途絶え、その後時々どうしてるかな~なんて思っていたのですが、この映画を通じてひょんなことから再会し、念願のご対面まで果たすことができました。そんな経験がなんだか映画の内容と微妙にシンクロして、この作品、とりわけ思いいれの深いものとなったのでした。

『メアリー&マックス』はこのあと全国の劇場を巡回していくようですが、メインの上映館である新宿武蔵野館では今月下旬までとのこと。興味ある方はぜひお早めに。まさしく「他に類を見ない」作品です!

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May 03, 2011

夢見る少女でいていたい ザック・スナイダー 『エンジェル・ウォーズ』

2011050314570000『300』『ウォッチメン』での緻密な映像センスにより、うるさがたのオタクたちさえもうならせたザック・スナイダー。そのザッ君の新作はいたいけな女の子が暴れまわる、妄想バトル女囚アクション? 『エンジェル・ウォーズ』ご紹介いたします。ちなみに原題は『サッカー・パンチ』というのですが、諸般の事情(笑)でこのタイトルとなった模様。

遺産を狙う狡猾なおじの企みにより、ある施設に囚われの身となってしまう少女ベイビー・ドール。希望を失いかけていた彼女だったが、突然その脳裏に何ものかのメッセージが届く。「戦って、必要なものをそろえ、ここから脱出しろ」
その言葉に勇気を得た彼女は、同じ境遇の少女たちと手を取り合い、脱走の計画を練り上げていく。

非常に説明しづらい映画です(笑)。予告編を観ますと巨大なサムライロボットやドラゴン、未来都市を走る超特急など、中二君たちが大好きなものが次から次へと出てきます。これが上のストーリーとどう絡むのかというと、「本編をみてください」としか言いようがありません。それほどまでによく言えば独特、悪く言えば強引な作品です。公開前の情報などから「頭の悪い『インセプション』みたいな映画かな~」なんて予想してましたが、「想像力」が重要な要素であることは同じであるにせよ、あちらよりももっと観念的な作りになっておりました。

では映像だけがキモで中身はすっからかんなのかというと、それなりにテーマらしいものもあったりして。その一つは『スラムダンク』の安西先生が言うところの名台詞「諦めたらそこで試合終了ですよ?」というもの。
スナイダー作品の主人公たちは大抵劣勢な立場にあります。300人で100万人と戦わねばならないスパルタ軍。政府から活動することを禁止されているヒーローたち。そして『エンジェル・ウォーズ』の少女たちは、ただでさえ非力な上に、厳重に警備された場所に閉じ込められているという状況。しかしそんな境遇にあったとしても、心だけは折れてはいけないのだということをザック監督は説きます。精神力と想像力さえ保っているならば、ほかの事は大抵なんとかなる・・・・んでしょうか? うん! そうだ! そうに決まってる! そういうことにしときましょう。

もうひとつのテーマは結末を割らないと書けないので、これから見ようかという方は避難されてください。

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必要なもの五つのうち、四つまではそろえたベイビードールたち。しかし最後のブツはなんとベイビー・ドール自身でありました。「現状を打破する・勝利を得るためには犠牲が必要不可欠」 ・・・・これまた『300』『ウォッチメン』と共通するテーマであります。バッドエンドとはいいがたいけれど、ハッピーエンドには程遠い、そんな結末。映像重視で脳天気なオタクさんだと思われがちなザッ君ですが、けっこう深刻というか悲壮なお話が好きなんじゃないでしょうか。

2011050314560000ただそれらのテーマも、女子高生がパンツ丸出しでロボと戦ってる映像と一緒では、イマイチ伝わりにくいかもしれません。本国でも日本でも興行が微妙な結果となっているところにそれが表れています。わたしはこういうの好きですけどね。永遠の中学二年生なので。
そんなわけで「我こそは中二スト!」という方は必見です。見逃してはいけません。
『エンジェル・ウォーズ』はまだ全国の劇場で(一部で)絶賛上映中であります。

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