父ちゃん熱いキツネ ウェス・アンダーソン 『ファンタスティック Mr.FOX』
『コララインとボタンの魔女』が公開されてからもう一年以上。いい加減気合の入ったコマ撮りアニメが見たいな~と思っていたら、ここにきてかねてより待ちかねていた作品がとうとう公開されました。『チャーリーとチョコレート工場の秘密』のロアルド・ダール原作を、『ダージリン急行』のウェス・アンダーソンが映画化。『ファンタスティック Mr.FOX』、参ります。
かつて名うての泥棒として名を馳せていたキツネのフォックスさんは、妻の妊娠を機に、泥棒稼業から足を洗う事に決めた。それからはや数年。中年の危機を迎えたフォックスさんは疑問を感じていた。この地道な生活を続けたまま、自分はいつか死んでしまうのだろうか・・・・ フォックスさんはかつての野生を取り戻すべく、丘の上にある警戒厳重な工場群に盗みに入る。それは野生動物と人間たちの、壮絶な戦いの幕開けとなるのだった。
この作品の存在を知ったのは2009年のスティーブン・キングの映画ベスト。なにやら『ファンタスティック・フォー』を思わせるタイトルに(全然関係ありませんでしたけど)、早く見たいと期待に胸を膨らませていましたが、その後まてど暮らせど情報が入ってこない。いい加減諦めた去年の夏ごろになって、ようやく日本公開が決まりました。
楽しみにしていた理由のひとつは、これが『チャリチョコ』『ジャイアント・ピーチ』のロアルド・ダール原作であったから。彼の映像化作品に望むのは、何よりもまず馬鹿馬鹿しいこと。その点に関してはもう期待ど~りの出来でした。キツネさんは穴掘りが得意ということで、ピンチになるとものすごい勢いで穴を掘り始めるのですが、そのスピードが幾らなんでも速すぎる。地上を全力疾走してるのとほぼ変らぬ速さで掘り進んでいきます。その辺の無茶さ加減にまず感動しました。
脇のキャラクターたちもいちいち突き抜けてます。フォックスさんの相棒となるネズミさんはすぐにグルグルと目を回すし、丘の上の工場主らはこれ以上ないくらいわかりやすい悪人面で欲深。そして彼らに雇われたガードマンのネズミさんがまた強烈です。酒に溺れて人間側に寝返ったという設定で(笑)、声をあてているのがウィレム・デフォー。はっきり言って似合いすぎです。
彼らがスクリーンせましと走ったり飛んだり躍ったりしている姿をを見ているのは本当に楽しい。一方で、これがなぜシネコンで拡大公開されなかったのかもわかるような気がしました。
このアニメ、子供向けの体裁を取ってますけど、まず大人に向けて作られた映画なんですよね。そもそも主人公がまずおじさんですし。そして作品の中で、そんな落ち着いてしまった大人たちに「野性を取り戻せ!」と訴えております。
あととても騒がしいようで、ギャグがいちいち静かというか、シュールというか。この辺はジョージ・クルーニーやメリル・ストリープといった中の人のせいもありますかね。メインキャストに落ち着いた渋い演技をする人が多いんです。加えてウェス・アンダーソンのギャグセンス自体がもともとシュールですし。
そんなマニアックな作品だからでしょうか。登場するお人形さんひとつひとつに、監督の惜しげもない愛情が感じられました。たかが人形と侮るなかれ。その目に宿る光とキビキビした動きは、「これ生きてる!」と錯覚させるほどのパワーが宿っています。まさにファンタスティック。これもまた映像の魔術ということができるでしょう。
『ファンタスティック Mr.FOX』は、現在シネスイッチ銀座ほか、全国の劇場で上映中・上映予定。いつのまにかまた近場の劇場で公開決まってるし。そういう情報はオレが東京まで見にいく前に出してくれよなああ!!
あとコマ撮りアニメでは、一昨年の東京国際映画祭で好評を博した『メアリー&マックス』が今週末から公開されます。これまたすんばらしー作品のようなので、とても楽しみにしております!
Comments
これ良かったよねぇ。
声がまたホントあってる。ジョージ・クルーニーとか
もうそのままだしw
『メアリー&マックス』は傑作よ!ホントもう素晴らしいです。
Posted by: KLY | April 20, 2011 10:33 PM
>KLYさん
毎度どもー よかったですね。たまたまKLYさんと会えたのもいい思いでです(笑)
クルーニーは、『フィクサー』『マイレージ、マイライフ』でも人生の岐路に立たされる中年の役を演じてましたしね
『マックス』はすでに前売りおさえてます。特典のタンブラーがほしくて・・・
Posted by: SGA屋伍一 | April 21, 2011 01:26 PM
伍一っちゃん、
これは伍一君得意分野でしょう☆
翔はこの監督ベストワンだしストップモーションだし絶賛も当然だけどフォローしてくれてるyueのぺぺが好きで持ってたDVDで観たんで字幕なしだったから細かいところ
もっと笑えたのかも、、
あまり観てる余裕ないしDVD翔が買うというのでそれで改めて観る予定よ☆
大作CGよりもこういう手作り感の映画はなくならないで欲しいものだよねー。
Posted by: mig | April 21, 2011 07:36 PM
伍一くん、ファンタスティックMrフォックスこ~(長っ)
この映画イギリスですっごく評判良かったから、なぜ?って思っていたら、ギャグがシュールだったりするわけですね。
納得~
このところ映画ネタが少ない私だけど、突如一日のカウントが3800越えたのでビックリしたら、赤西くんが47Ronin出演決まってその関連記事(ハリウッド体験のやつ)でしたー
ジャ〇ニーズおそるべし
Posted by: ノルウェーまだ~む | April 21, 2011 07:48 PM
>migちゃん
得意分野です(笑) そうだね~ この独特でシニカルなセンスは、やっぱりセリフがわからないとあんまし伝わらないかも。観てるだけでもけっこう楽しいけどね
こないだ一緒に飲んだ人がコマ撮りアニメやシュバンクマイエルが好きだというので、翔監督の『食卓』をすすめてあげたら、三浦悦子先生を知っててビックリした
Posted by: SGA屋伍一 | April 21, 2011 10:54 PM
>ノルウェーまだ~むさん
イギリスでも評判だったんですね~ たしかにあっちの人はこういう淡々とした、皮肉っぽいユーモアが好きそう(笑) そこいくと『ガリバー旅行記』なんかは完全にアメリカナイズされてそうですね
ジャニ○ーズ恐るべしですね。でも今日本では赤西仁くんよりドラマの『仁(JIN)』の方が話題かもしれない・・・
岡田君(『SP』)、二宮君(『GANTZ』)、山P(『あしたのジョー』)と、最近わたしも割りと映画でジャニー○観てます
Posted by: SGA屋伍一 | April 21, 2011 11:02 PM
こんばんは!(。◕‿◕。)
こちらでも、やっと見ることができましたぁ〜。
面白かったですねぇー。
キャラは、どれもすごく良く出来てたし
私も相棒のフクロウネズミと、ガードマンのドブネズミは
好きでした!!!
それにしても、『メアリー&マックス』はいつになったら
見れるのかなぁ〜悲しいです・・・。
Posted by: ルナ | June 13, 2011 11:58 PM
>ルナさん
こんちはー おお、高評価のようでうれしいです。この映画、意外と女性陣からはあんまり評判よくなかったりするんですよ(笑)
他のストップモーションアニメと比べると若干動きが荒いんですけど、それでもすごく手間をかけて作ってることには間違いないし
『メアリー~』はやく日付が決まるといいですね。静岡東部ではやるかなあ・・・
Posted by: SGA屋伍一 | June 14, 2011 09:30 AM
こんばんは!
これ、大好きです!
昨年のコララインに続き、今年もステキなお人形アニメに出会えた
私は最初この映画のタイトルと、あらすじをふわっとだけ聞いたとき
ゲームのスターフォックスを連想してました。SF?って。
お人形の造型も、キャストもギャグもなにもかも素晴らしく。
ウィレム・デフォーのネズミも最高でしたね〜
ぶっちゃけウェス・アンダーソンの映画って、これまであんまピンときてなかったですけど
これはとってもツボでした。
Posted by: kenko | July 08, 2011 09:33 PM
>kenkoさん
すいませんー お返事遅くなりました
おお、ここにも支持派がお一人。わたしはタイトルはじめて聞いたとき、てっきり『ファンタスティック・フォー』のパロディなんだとばかり思ってましたよ(マジで)
普段普通の人間の映画を撮ってるせいか、他の人形アニメよりも若干動きが荒いんですが、そんなところもウェス・アンダーソンらしいというか、この作品の「味」だと思ってます
Posted by: SGA屋伍一 | July 11, 2011 09:00 AM