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March 05, 2011

ようこそ類人猿 今泉力哉 『たまの映画』

110305_183902先日下北沢映画祭グランプリ・準グランプリ作品上映会にお邪魔した際、特に印象に残ったのが今泉力哉監督の『最低』という映画でした。その今泉監督の商業デビュー第一作『たまの映画』が、どういうわけか近場の小田原で上映されていると知り、二週間ほど前に小雪の降る中行ってまいりました。今日はその感想をば。

みなさんは「たま」というバンドを覚えてらっしゃるでしょうか? かれこれ二十年ほど前、名物番組「いかすバンド天国」でデビューした中で、最も人気を博したグループです。あまり興味がなかった当時十代のわたしにも、その名声は鳴り響いていました。しかし時経つうちに、いつしか名前を聞くことはなくなっていったのでした。

で、今回この映画を見て、ようやっとすでに「たま」が解散していた事実を知ったのでした。冒頭のテロップがふるっています。ちょっとうろおぼえですが、確かこんな風でした。

「再結成するわけでもなく 誰かが死んだわけでもなく 結成何周年でもない そんな『たま』の今を描いた映画」

それで企画が成立してしまうところがすごいです(笑) しかも、メンバー四人のうち柳原幼一郎(現・陽一郎)氏からオファーがもらえなかったとのこと。普通ならそこでぽしゃりそうなものなのに、ちゃんと作品が完成しているところがまたすごい。
きっと今泉監督はすごく「たま」のことが好きだったんだろうな・・・と思ったら、パンフを読むとそうでもなかったようで(笑) ただ、この「たま」の熱狂的なファンでもなかった今泉氏が撮ったことにより、本当に彼らの「現在」をとらえた作品に仕上がっておりました。恐らく「たま」に深い思い入れのある人が作ったなら、どうしても過去の映像を入れてしまいたくなるでしょう。しかしこの映画では気持ちいいくらい、彼らがバンドを組んでいた時代の映像は出てきません。

「たま」といえばみんなまず思い出すのは、坊主頭でランニングシャツの石川浩司さんでしょう。この映画を見てやはり最もインパクトが強かったのは彼でした。ライブハウスで型破りな演奏をしたかと思えば、「ホルモン鉄道」なるユニットで、温泉旅館で庶民的な芸を披露したり。はたまたどこかのイベント会場でチュチュを着て玉袋がはみ出た話などしておられる。これほどまでに型破りな「ミュージシャン」は初めて見ました。
しかし舞台を離れてインタビュアーに語る言葉は、非常に真剣で道徳的であったりするところが、また印象的でした。

「たま」でもうひとりみんなの記憶に強く残っている人は、あの甲高い声で「さる~」と歌っていた知久寿焼(ちくとしあき)さんでしょう。彼もまたソロでライブをしたり、時にはユニットを組んだりして音楽活動を続けておられます。石川氏と比べればその演奏スタイルはごくごく普通に見えますが、一つすごいのがお酒を飲み飲み演奏しているところ。「アンケートでそういうのってプロとは言えないんじゃないですか?って書かれたことありますけど、プロじゃなくていいです。飲む方を取ります」 そうあっけらかんと語る知久さん。さながら現代の李白とでも申しましょうか。あと虫好きとしては彼がけっこうな昆虫採集マニアであるところがツボにぴきーんと来ました(笑)

そしてこの映画に出てくる三人目の「たま」がベーシストでありギタリストの滝本晃司さん。滝本さんはこれまた石川・知久両氏と異なる、とてもかっこいというか、ミュージシャンらしい方(石川さん、知久さん、どうもすいません)。
その音楽スタイルも三人の中では一番アーティスティックなように感じられました。公園でかつての「たま」のことを淡々とクールに語る滝本さん。その姿がまたかっこいい。個人的にちょっと驚いたのが、彼が劇団ヨーロッパ企画に楽曲を提供されていたこと。ヨーロッパ企画に関しては名前くらいしか知らないのですが(爆)、ブログで仲良くさせていただいているkenkoさんがたしかファンだったので、そんなところでつながるとはなあと。

特に好きなシーンは、石川さんと知久さんがかつて住んでいたアパートのあった場所を尋ねるあたり。「(空中を指差して)この辺にぼくたちの青春があったんですね~」と言う石川さんが、おかしくも少し物悲しくもあり。
あと知久さんのインタビューもいろいろ胸に残るものがありました。健康マニアだったのにあっけなく亡くなってしまったお父さんの話とか、インタビュアー(恐らく今泉監督?)に対し突然「その座り方腰を悪くするよ」と心配したり(笑)。あとシミか何かを食べていた「地中性の」生き物に「また会う日まで~」と語りかけておられたのも、かわいらしかったです。あの生き物、いったいなんだったんだろう・・・ カエルの一種でしょうか? 非常に気になります。

もちろん彼らの演奏場面もふんだんにもりこまれております。なかでも感動したのが、石川・知久両氏が参加されているバンド・・・というかオーケストラ「パスカルズ」の演奏シーン。これは映画館ならではの音響と大スクリーンでこそ、じんわりしびれる演奏だったと思います。

「玉袋はどんどん成長し続けるんです」と語る石川さん。「たま」の四人も解散してなお、それぞれ自分の道を歩み続けておられます。その姿に大いに元気を頂いたのでした。

110305_183819『たまの映画』は記事を描くのがぼやぼやしてるうちに上映が終ってしまったところもありますが、まだまだ吉祥寺や長野・仙台などで上映中・上映予定です。ご興味おありの方は公式サイトをご覧ください。
また俊英・今泉力哉監督の他の作品も、現在下北沢トリウッドやポレポレ東中野で上映中であります。下北沢は短編の特集上映。東中野は長編『終ってる』。『たまの映画』とは少し違ったユーモラスでシュールな世界を、お近くの方は体感されてみてはいかがでしょう。

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Comments

ありがとうございます。嬉しいです。今泉

Posted by: 今泉力哉 | March 07, 2011 at 12:38 AM

>今泉さん

こちらこそご覧いただき恐縮です!

劇場を出たところで焼き鳥を焼いてたあんちゃんがいまして。焼き鳥をかいながらこんな会話を交わしました

「なにをご覧になったんですか?」
「うん、『たまの映画』っていうのをね。バンドのドキュメンタリーなんだけど」
「へえ、そのバンドのファンなんですか?」
「いや・・・ その・・・ 監督と知り合いで・・・」
「映画監督と知り合い? すごいなあ!」

思いっきり大嘘こいてしまいました! どうもすいません・・・・

Posted by: SGA屋伍一 | March 07, 2011 at 08:27 AM

ご無沙汰です。
………って来てみれば君も随分有名になったもんだね。

>たま
どうせアンタの事だからネコは書くだろう、と思ってた通りでした(笑)。
最近はナラナラ団に加入したり「けいおん!」聖地巡礼を遂行したりしてるものの、個性強いアーチストにはどっか取っ付きにくい部分はあります。比較的「たま」は好きなアーティストですよ。

Posted by: まあくん@葛城 | March 08, 2011 at 07:23 PM

>まあくん@葛城さん

こんばんはー
うん、もうセレブですよセレブ ・・・ってんなわけねえーっ

まあやっぱり「たま」といったらこれを書かないわけにはいかんだろと。ちなみに産経新聞連載の「ひなちゃんの日常」に出てくる猫もたまと言います

わたしも「たま」っていたずらに奇をてらった、みたいなイメージがあったんですよ。でもこの映画を見て、彼らがとても自然体であり、かわいい音楽を作るひとたちであることがよくわかりました

Posted by: SGA屋伍一 | March 08, 2011 at 11:40 PM

あ!たまくると思った(笑)

この間お話したけど今泉さんの「終わってる」は「終わっちゃった」って思う前に観ようと思ってたんだけど
DVD来月出るようなのでそちらにしようっと。
しかし今泉氏、お忙しいのにほんとにマメよね〜。
感心しちゃう。
あの本人のキャラが素晴らしいから、翔がいつか出演をと依頼してるのよ(笑)OKも頂き済みで
今お互い多忙だけど、
実現したら面白いよね、楽しみ〜♪

「たま」は実は父が昔ファンだったから気になってるみたい。今泉氏の映画も楽しめたみたいだし。

Posted by: mig | March 11, 2011 at 09:45 AM

>migさん

こんばんは。いや、のんびり「たま」の話をしたいところだけど、昨日はいやはや大変な一日だったね・・・ なにはともあれ無事でなによりでした
今泉監督も今回のことにいろいろ胸を痛めておられるようで、さかんにつぶやいてたね。この映画の吉祥寺での最終上映も結局どうなったのだろう・・・ 本当に世の中何があるからからないなあ

翔さんとのコラボはぜひ見てみたい。逆に翔さんが今泉監督の作品に出るというのも面白いんじゃないかな? どう?(笑)
そしてお父様のセンスも相変わらず面白いなあ~

Posted by: SGA屋伍一 | March 12, 2011 at 08:26 PM

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