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March 29, 2011

八人のためらい グザヴィエ・ボーヴォワ 『神々と男たち』

2011032918090000まだ地震前に見た映画の感想が書ききれてないんですねー で、今回はこれ。フランスのアカデミー賞と言われるセザール賞最優秀作品賞をはじめ、フランスの内外で数多くの映画賞を受賞した『神々と男たち』、ご紹介します。

1996年アルジェリア。政府軍とイスラム過激派の争いが激しくなる中、山間に立てられた一軒の修道院があった。フランスからそこへ派遣された八人の修道士たちは、キリストの教えを伝えるとともに、ボランティアにも熱心に携わり、村人たちから大いに慕われていた。だが過激派たちは外国人を脅威とみなし、多くの移住者たちがその標的となった。ついには修道士たちにも身の危険が迫る。

これまた実際に起きた事件を元にした話。この事件はフランスを大いに騒がせたようで、わたしもいま思えば「そういえば聞いたような・・・」気がしないでもないのですが、この映画の情報を聞くまではすっかり忘れておりました。そんで別の映画を見にいった際、この映画のチラシを手にとって読んでみたら、なんと事件の顛末がばっちり書いてあるじゃありませんか!!
・・・・そうですね。有名な事件ですから知ってる人は知ってるでしょうね。でも恨むぜ・・・ 配給会社の人・・・

気を取り直して。メインとなるのはもちろん八人の修道士たちですが、特に目立っていた人が四人。まずリーダーであるクリスチャン(名前です)。八人の中では比較的若そうなものの、共同体を取りしきる立場にあり、みなの安全のことを思い深く悩みます。知的なメガネが印象的で勝手に心の中で「メガネさん」と呼んでました。
メガネさんがいかにも聖職者然としているのに対し、きさくなおじいちゃんみたいな雰囲気を持っているのがリュックさん。自身体力が限られているのに医者としても村人のために尽くします。さしずめ「赤ひげさん」とでも申しましょうか。
全体的に高齢者が多い修道院の中でも、ぶっちぎりで最高齢と思われるのがアメデさん。緊迫した状況にあってもいたってマイペースで、周囲の空気を和らげていました。
そしてあと一人名前がおぼつかなくて申し訳ないのですが、少し若くて大柄な修道士さん。とりあえず「熊さん」とでもしておきましょうか。迫り来るテロリストたちの脅威に一番怯えておりました。無理もありません。わたしだったら一も二もなく逃げ出しているでしょう。

修道士たちは身の危険を感じながらも、その場所でいつも通りの生活を送り続けます。残るべきか、去るべきか、何度となく静かに話し合います。
「命を落としてしまっては元も子もないではないか」という人もおられましょう。しかし彼らは自分たちが逃げ出したあとのことを考えます。村人たちに「捨てられた」と感じさせないために、修道士たちはあえてとどまり続けます。

ほかにも信仰や使命感、帰国しても身の置き場がない・・・など理由はいろいろあったようです。ただ、とりわけ大きな理由のひとつは、彼らがその素朴ながらも美しい人々や土地を愛したからではないでしょうか。スクリーンに映しだされる雄大な湖や山の風景を見ながら、そう感じました。

武器を取るでもなく、腕力に訴えるわけでもない。しかし本当に「強い」とはどういうことなのか・・・ そんなことを教えてくれる映画です。

2011032918100000『神々と男たち』は現在東京は銀座のシネスイッチという劇場でもう少しやっているようです。全国の他の都市でもこれから順次公開される予定。

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Comments

あの白鳥の湖に乗せたシーンは、単純にアップの連続なのにとてつもない想いの大きさをもって迫ってくる迫力あるシーンでした。あれだけで泣きそうでしたよ。

Posted by: KLY | March 29, 2011 10:24 PM

>KLYさん

毎度どもー わたしは鳴り出した時は「なぜ賛美歌でなくこの曲?」と思いましたが、聞いてるうちに(見ているうちに)細かいことはどうでもよくなりました
最近いろんなところで使われてる第七交響曲も作品にマッチしてましたね

Posted by: SGA屋伍一 | March 30, 2011 07:16 PM

そのセザールじゃないっしょ 

これ去年観たけどパンフ買いに行きたいなあ。
見たい映画いっぱいあるけどなかなか行けませぬ。。

Posted by: rose_chocolat | April 03, 2011 07:08 PM

>rose_chocolatさん

せざ~る~
わたしは滅多なことではパンフは買いませんよ。貧乏だからね!(いばるな)
私が最近見た中で痛快だったものというと『SP 革命篇』『ファンタスティック Mr.フォックス』あたりですが、roseさんが楽しめるかというと微妙なとこかしら(笑)

Posted by: SGA屋伍一 | April 03, 2011 08:53 PM

おお,これご覧になってたんですね。
わたしゃ,これ事件も知らなかった・・・(無知)
DVDリリースされまして従兄弟の牧師がメールで「観た~?」と。
いや・・・・観とらんけど。借りてみようか,と。

クリスチャンってリーダーが加藤剛さんに見えてしかたなかったのですが
この俳優さん,若いころから仏映画でお顔だけは知ってました。
あと,医師のリュック役の俳優さんもけっこう顔が売れてますよね。
修道士・・・若いイケメンはおらんのか・・?とか不謹慎なことも考えつつ
やはり最後の晩餐の彼らの顔は素晴らしかったです。
死の恐怖をも超越する信仰って,理想なんですが
私も恥ずかしながらちょっと無理です。逃げます・・・

Posted by: なな | November 07, 2011 01:20 AM

>ななさん

こんばんは! 今年も気がつけばあと二ヶ月ですね
わたしも知らないも同然で・・・ というか日本の人はほとんど注目しなかったか忘れてるかだとおもいまふ。悲しいことですがテロ事件といえばどうしても派手な爆破事件などに注意がいってしまいますからね・・・ 邦人が関わってるのでもないかぎり

リーダーの人、出演暦を調べてみましたが、なるほど有名な作品にいろいろ出てますね。わたしが他に観たものというと『マトリックス』の二作目&三作目くらいですが。リュックさんは最近『アレクサンドリア』という映画で観ました

死をも辞さぬ覚悟でアルジェリアに残った彼らには、まるで武士道にも通じるものを感じました。ですが血も涙もない善人ではなく、彼らだってとても恐ろしかったのだ、ということがよく伝わってきたので身近に感じることができました。まあわたしも同じ状況だったら迷うことなく逃げ出しますけどね・・・

Posted by: SGA屋伍一 | November 07, 2011 09:17 PM

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