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February 21, 2011

恐るべきお年より ロベルト・シュヴェンケ 『RED』

090506_140049老いてなおますますダイハードなブルース・ウィリス。そのブルースが、高齢者問題に真っ向から立ち向かう! ・・・・という話ではないか。現在全国で公開中のシルバー世代アクションムービー『RED』をご紹介します。

アメリカに住むとある年金生活者フランクは、自分の年金を担当している女性サラに恋をしていた。なんとかして彼女にお近づきになりたいな~と願っていた矢先、フランクは特殊部隊からの攻撃を受ける。実は彼は、CIAで伝説となっている、超腕利きの元エージェントだったのだ。敵に自分に関わりがあるとばれたら、サラの身が危ない。フランクはそこでかつての仲間たちの助けを借りることにする・・・

近年、日本でもハリウッドでもヨーロッパでも、なんか老人を主題にした映画が多くなったような気がします。高齢化社会は世界共通の問題ということなのでしょうか。そしてついにはこんな映画まで出来てしまいました。老人スター豪華共演のアクションムービー。そんなにがんばって腰にグキッとこないのか? とヒヤヒヤすること請け合いです。

しかしまあ、さすがはブルース・ウィリスです。若々しいカール・アーバンを相手にしても、一向に負けそうな気がしません。このあたりは今まで数々の死地を乗り越えてきた記憶が、わたしたちの脳内に刷り込まれているからでしょう。ただ完全に頭がつるつるで年金で生活しているブルースが、若い女性相手に恋に落ちてしまうあたりは正直解せないものがありました。アクションで強いのは自然に見えるけど、女にもててるのは不自然に見える。そういう俳優ですね。今のブルースさんは。
ここで気になってふと彼の年齢を調べてみました。1955年3月生まれ・・・ ということは、まだ55歳か? あら、そんなにトシでもないのですね。どうもあの頭のせいか、年齢以上の歳に見えてしまいます。で、ヒロインのメアリー・ルイーズは46歳。そんな歳だったのか! あのプロポーションで! こうやって比較してみますと、それほど不自然な組み合わせでもないですね。

ついでに主だった俳優さんの年齢も調べてみました。
モーガン・フリーマン・・・73歳
ジョン・マルコビッチ・・・57歳
ヘレン・ミレン・・・65歳
ブライアン・コックス・・・64歳
で、平均は62.8歳。まだ「老人」というには若い方かもしれませんが、還暦は見事にはみ出しています。特にぶっちぎってるのがモーガン・フリーマン。彼のアクションが少なかったのはそのせいか・・・ どうぞいつまでもお元気で。

個人的に特に印象に残ったのがジョン・マルコビッチとヘレン・ミレン。
ジョン演じる元エージェントは、かつて敵組織の手により一日中LSD漬けにされたという過去を持っています。劇中の言葉を借りれば「それにしてはまとも」。ただ、これ、あくまでも「それにしては」であって、のっけから尋ねてきたフランクに「オレを殺しに来たな!」と叫んだり、飛行機が飛んでいると「俺たちを見た!」とパニックになったり、とおりすがったおばさんに急につかみかかったり。傍目で見てる分には楽しいですが、絶対に近くにはいてほしくないタイプです。ところが意外とそういう奇行が的を得ている時もあり、一見ボケてそうに見える人でも、油断してはならない・・・ということを教えてくれるキャラクターです。

もうひとりはやはり名女優として知られているヘレン・ミレン。彼女も御年65歳であります。ただ『てっぱん』の冨司純子さんもそうですけど、老いても、綺麗な人は綺麗なんだな・・・ということを改めて思いました。調べてみたら父親は元ロシア貴族であったとか。そりゃゴージャスにもなるわけだ。

監督は『フライト・プラン』『きみがぼくを見つけた日』のロベルト・シュヴェンケ。これまでいまひとつパッとしなかった彼ですが、この一本で大きく弾みがついたんじゃないでしょうか。このキャスティングがお年寄りの心をとらえたからか、なんせ『RED』はすでにもう制作費の三倍近いお金を儲けています。やっぱり国を問わず、映画文化を主に支えているのは高齢者の方たちなのかな・・・ そう思わずにいられません。 

110221_191958そんだけ儲けたからか、当然のように続編の製作が決まっております。現在脚本担当のホーバー兄弟が熱烈執筆中とのこと。そしてブルース・ウィリスは来年から『ダイ・ハード5』の撮影が開始。まだやるんだ・・・・こうなったら60になろうと70になろうと80になろうと、生涯現役の精神で、ひたむきにアクションに挑み続けていってほしいです。

キャストのことばかり語ってしまいましたが、絶対絶命の状況の中から、どうやって脱出するか?という点でもスリル満点の作品です。そういうのがお好きな方はどうぞお見逃しなきよう~

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February 16, 2011

謎のブラックボール 奥浩哉・佐藤信介 『GANTZ』(劇場版)

110216_174435就職活動中の大学生、玄野とその旧友・加藤は、駅のホームに落ちた男を助けようとして、列車にはねられる。だが次の瞬間、二人はとあるマンションの一室にいた。すでにそこにいた人々から、二人は自分たちがその部屋にある謎の球体「ガンツ」により「転送」されてきたことを知る。そしてガンツは玄野たちに、「ねぎ星人」と呼ばれる宇宙人を倒すよう命令する。まるでたちの悪い夢のような状況に当惑する玄野たち。それは玄野がこれから経験する地獄のほんの入り口にすぎなかった・・・

週刊ヤングジャンプに長期連載されている人気漫画『GANTZ』が、この度二宮和也・松山ケンイチという二大スターを主役にすえて映画化されました。わたくし前々から原作を愛読していて、その迫力あるビジュアルに「これが映画化されたらなあ」と思う反面、色々と容赦ない描写に「無理だろな・・・」とも思ってました。果たしてその結果は? ちなみにわたしのどうでもいい原作レビューはここです

そもそも現段階で30巻発行されており、まだまだ終わりそうもない作品をたった二部作で締めるということに無理があるわけです。でもその割には今回の劇場版、かなりがんばっていたと思います。そりゃもちろん「ああ、ここを抜いちゃったか・・・」というのはありましたが、原作のだいたい十巻分くらいをコンパクトにまとめておりました。

わたしがうまいな、と思ったのは主人公・玄野のキャスティング。玄野って原作ではどう見てもイケメンに描かれてるのに、普段はすごく目立たなくて「昼行灯」なんて呼ばれていたりします。しかしここぞという時には無敵の戦士へと変貌を遂げます。こう言っちゃなんだけど、二宮くんってわりとどこにでもいそうな風貌ですが(ファンの人すいません・・・)、さすがスターだけあって決めるところはびしっと決めます。そんなところがある意味原作以上に玄野らしかったです。

特に印象に残ったのが冒頭で流れる「「わたしの持論は、人にはかならず役目がある」「人それぞれに、力や才能があり、それを最大限に発揮出来る場所がある」というモノローグ。これ実は原作にはないセリフです。最大の就職難と言われる今、多くの大卒の若者が「自分の存在に意味があるのかな?」と感じていると思います。原作では高校生だった玄野を就活中の大学生にしたのは、そういう若者たちへのメッセージなのかもしれません。

もちろん悪い部分もいろいろあります。駆け足にしたせいか、原作では丁寧だった登場人物の感情の流れがやや不自然なものになってしまったり。日本映画の悪いくせでセリフが微妙にかみ合ってなかったり(笑)

でもわたしはこの映画を全力をあげて支持したいと思います。わたしが映画を飽きもせず見ている理由のひとつは、ただ一瞬でもいいから、全身があわ立つようなそういう感動を与えてほしいからです。この映画でいうと原作でいうところの「おこりんぼう星人」編。恐らく世の中というのは、我々には止めようのない大きな力によって動かされていると思います。わたしたちはおしゃかさまの手の中で暴れまわってる孫悟空と似たようなものです。そんなおしゃかさまの巨大な「手」を絶叫しながら粉砕していく玄野。まるで「どんな厳しい運命にさえ、オレは立ち向かってみせる」と言っているかのようで。多少のアラはこのシーンの興奮の前に全て忘れさりました。就活中の学生諸君もぜひがんばってほしいものです(つか自分、人の心配をしている場合じゃないんですが・・・)

あとひとつあらためて映画を見て気づいたのが、この珍妙なゲームというのは、実は徴兵制の比喩ではないかということ。徴兵制のある国の人々は、自分の意思とは関わりなく召集され、国に命を預けることになります。そして時には「民間人を殺せ」とか、「到底かなわない敵と戦え」などという、理不尽な命令を受けることもあります。しかし兵たちたちに拒否権はありません。ついでに書いちゃうとゲームの最初に流れるラジオ体操の歌は、「君が代」の代わりなのかもしれません。果たしてそんな画一的な環境の中で、人は自分のアイデンティティを保つことができるのか? この映画にはそんなテーマも込められています。

110216_174458『GANTZ』劇場版はただいま全国にて大ヒット上映中。これは頭のやわらかい人じゃんないと楽しめないだろうな・・・と思っていたら、意外と日本の皆さんは脳みそがやわらかいみたいで。完結編となる『GANTZ PERFECT ANSWER』は4月23日より公開。「全ての謎を明らかにする」という触れ込みですが、たぶん無理なんじゃないかなcoldsweats01

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February 14, 2011

俺たちアメコミヒーロー ミシェル・ゴンドリー 『グリーン・ホーネット』

110214_180725今年はアメリカン・ヒーロー映画が目白押しですが、その先陣を切ったのがこの作品。ブルース・リーの出世作ともなった『グリーン・ホーネット』、紹介いたします。

ブリット・リードは大手新聞社の社長の一人息子。だが父への反感も手伝って、放蕩の毎日を送っていた。そんなある日、父親が不慮の事故で亡くなってしまう。譲り受けた屋敷で、彼は父の運転手をしていた青年カトーと出会う。天才的なメカニックであり、中国拳法の達人でもあるカトーと意気投合した彼は、街の不正と戦っていた父の鼻を明かすため、正義のヒーロー「グリーン・ホーネット」を名乗ってギャングたちに戦いを挑む。

ちまたでは「アメコミヒーロー」と紹介されているこのグリーン・ホーネット。ですが、もともとはラジオドラマのキャラクターであり、後にそれがテレビドラマ化され、近年になってコミック化されました。だから本当は「アメコミヒーロー」ではなく「アメドラヒーロー」というのが正しい(オタクは細かいことにうるさい)。
ちなみにラジオ版が放送されたのは1936年ということなので相当昔であります。実はこれ、スーパーマンやバットマンより古かったりして。そんでブルース・リーがカトーを演じたドラマ版は1966年制作ということです。

それほどに古い歴史を誇りながら、劇場版は正統派からはかけはなれたハチャメチャヒーローにしあがってましたcoldsweats01 なんせ主人公であるGH=リードが何の役にも立たない(笑) 頭が回るわけでもなければ腕が立つわけでもありません。加えて性格にもかなり問題ありで、相棒であるカトーにほとんどおんぶにだっこ状態という・・・ タイトルにもなっているのにまるっきり活躍しないあたり、『天才バカボン』か『宇宙猿人ゴリ』をほうふつとさせます。なんだって主役が脇役に食われちゃいかんのです。

そんなヤツでありますから、当然悪との戦いも極めていい加減。適当にノリの赴くまま街の顔役にケンカを売っていきます。これが現実なら素人であるリードなど、海千山千のギャングたちに瞬殺されてしまうでしょうけど、なぜか不思議とことはすいすいとうまく運んでいきます。まるで植木等の無責任男シリーズみたい。
この作風に面食らった方々も多くおられるようですが、わたしは似たようなものを作るよりは多少微妙でも個性があった方がいいと思ってるので、これもアリだと思いました。大体監督がヘンテコな作風で知られているミシェル。ゴンドリーですし。彼の前作は『僕らのミライへ逆回転』という、パロディ映画を題材にした作品でしたが、あれに出てくるジャック・ブラックに大金を与えたら、きっとこんな映画を作るんじゃないかと思いましたcoldsweats01

ただこの『グリーン・ホーネット』で唯一アメリカン・ヒーローものの定型を踏んでいるのが、誕生に父親が大きく関わっているということ。リードが父親のことをあれほどまでに意識していなければ、たぶんこのグリーン・ホーネットというヒーローは生まれなかったことでしょう。そもそもこの名前も父の表向きの死因が、「ハチに刺されたから」ということに由来していますし。
そのお父さんは、これまたリードとは正反対の四角四面の男。リードの父親への思いは、そのまんま正統派ヒーローに対するゴンドリー監督の思いなのかもしれません。自分は到底あんな風にはなれない。むしろおちょくりたくなる。でも本当は愛しているし、尊敬もしている・・・ そんな思いです。

090703_130139『グリーン・ホーネット』は日本では微妙ながら、ただいま全世界で大ヒット上映中。ただ製作費がどえらい額なため($120,000,000)黒字になるかどうかは怪しい模様。
ちなみに今年は『グリーン・ランタン』というヒーロー映画もスタンバッてます。マスクのデザインとかけっこう似てるので、どうぞお間違いのないよう。

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February 09, 2011

ゴールデン妖怪劇場 雨宮慶太 『牙狼〈GARO〉 ~RED REQUIEM~』

110209_185246人の心の闇に巣食う、異形の怪物ホラー。だがそのホラーを狩り、弱きものを救う戦士たちがいた。彼らの名は魔戒騎士。「黄金騎士」の称号を持つ冴島鋼牙は、今まで多くの魔戒騎士を葬りさってきたホラー「カルマ」を追っていた。そしてたどりついた街で、やはりカルマを父の仇と狙う少女・烈花と出会う・・・・

みなさんは『牙狼』って特撮番組をご存知でしょうか。2005年から2006年にかけて深夜に放映された特撮ヒーロー番組であります。特撮ヒーローなのに深夜ってなんか矛盾をはらんだ企画ですが、まあそういう時間帯だけあって、お子さんに遠慮しないマニアックな演出が光った作品だでありました。わたしもそれなりにはまってしまい、こんな記事を書いたり、画像にあるフィギュアを買ったりしておりました。

その後一本の特別編が作られてしばらく音沙汰がなかったのですが、どういう流れかパチンコのキャラに起用されて大ヒット。んで、この度の劇場化とあいなったようです。

久しぶりにこの金ぴかの狼さんと再会できたわけですが、いや~、やっぱよかったですわ。現代の都会にもろ西洋風のマントを羽織って歩く主人公、という珍妙な箇所もありますが、ガシガシと装着される黄金の鎧、ライターであぶられて燃え上がる剣、牙狼を乗せてパカランパカランと爆走するデカ馬、こうしたビジュアルが出てくると理屈ぬきで中二オヤジとしては心が浮き立ってしまいます。

加えて今回は大画面で3Dという効果が増し加わっています。なんちゃってな3Dも多い中、『牙狼』はなかなか目を見張る映像を見せてくれます。魔法とともに宙を舞う文字や、画面からビュン!と突き出す剣。ほんでもって一層立体感を増した牙狼と怪物たち。まさに『牙狼』は3Dにうってつけの題材だったと言えます。

そして『牙狼』のもうひとつの特色と言えるのが、ムダに豪華なゲスト出演陣。テレビ版でも森本レオ、峰岸徹、麿赤児といったそうそうたる名優が出てきましたが、今回も斉藤洋介氏や中尾彬氏といった方々が、どういうわけか脇を固めておられます。雨宮慶太監督には誰も逆らえないような後ろ盾でもおられるのでしょうか? ともあれ、お二方とも強力なオーラで作品を彩っておられました。

ストーリーの方はそんなにひねったものではありません。ただひとつポイントになっているのが、鋼牙の恩人だった男の言葉。その言葉を、鋼牙はさらに次の世代へと伝えていきます。で、カンのいい方・・・でなくとも気づかれるでしょうけど、その男というのが・・・の父親であります。演じるは特撮のみならず多数の作品で顔を出している津田寛治氏。わたしはやっぱり『仮面ライダー龍騎』の編集長が思い出深いところですが、それはさておき。既に死んだはずの彼が、笛の音に呼び寄せられて娘を助けに来るシーンでは不覚にも目頭が熱くなってしまいました。こんな特撮映画の、そんなコテコテのシーンで涙ぐんでお前はアホか、という気もするのですが、自分、そういうのに弱いもんですから。あ、両親は普通に健在ですけどね。


110209_185416『牙狼〈GARO〉 ~RED REQUIEM~』はまだ細々と全国の劇場を巡回中。テレビシリーズが「暗黒騎士編」でスペシャルが「白夜の魔獣」、んで今回の劇場版が「RED REQUIEM」ということは、次は「青」でしょうか・・・? それはこの映画とパチンコのヒット次第でしょう。
しかしパチンコの影響力というのも侮れませんなー わたしが見た回のお客さんはヤンキー風のカップルとかいい年したおじさんとか、いかにもって方たちばかりでしたから・・・・


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February 07, 2011

何とかカントナ ケン・ローチ 『エリックを探して』

110207_184155いやー、盛り上がりましたね。サッカーアジア杯。そんなわけで、こんなサッカー映画はいかがでしょう? 『麦の穂を揺らす手』で知られるケン・ローチ監督作品『エリックを探して』です。

エリック・ビショップはしがない郵便配達夫。既に二度の結婚に失敗し、二人の血のつながらない子供と住んでいる。ある日はなれて住む孫の面倒をみることになったエリックは、久しく見ていなかった最初の妻の姿を見て動揺する。昔とほぼ変らぬ美しさを保っていたからだ。ショックのあまりエリックは交通事故を起こしてしまう。以来何をやってもうまくいかないエリックは、ついつい息子が隠していたマリファナを一発決めてしまう。するとあろうことか、彼がもっとも尊敬するサッカー選手、エリック・カントナが目の前に現れた・・・

エリック・カントナとはなんぞや。90年代英国はマンチェスター・ユナイテッドで活躍した名選手です。鮮やかなプレーでチ-ムに多くの勝利をもたらしたものの、ボールだけでなく相手チームの選手やたちの悪い観客にまでキックを食らわしたというトラブルメイカー。しかしその熱い人間性に惹かれるファンも数多くいるようです。
もちろん国を代表するスター選手ではありますが、クラブチームと地域の結びつきが強い奥州の事情を考えると、「街の英雄」みたいな側面の方が強いかもしれません。ですからマンチェスターの人々の彼への思いいれは並々ならぬものがあるようです。

わたくし最初にこの映画の概要を聞いたとき、てっきりしょぼくれのエリックさんが、偶然町のどこかでカントナと出くわして仲良くなる・・・ そんなお話を想像してたのですが、この「マリファナでラリッたら出てきた」というストーリーにはおったまげました(笑) まあ英国人にとっちゃマリファナは惑溺性も薄いということで、ちょっとした火遊び程度のものなんでしょうね。シャーロック・ホームズも事件がない時は暇つぶしにやってたそうですし。

妻を呼び戻すこともできず、子供にはなめられ、さらにはギャングにまで目をつけられてしまうエリック(実在)。そんなエリックにカントナ(非実在)はサッカーを例えに用い、様々なアドバイスを与えます。すると面白いように、それまで難航していた事柄がうまく運びはじめます。

カントナの言葉の中で特に印象に残ったのが、「自分のベストプレーはどこそこの試合で出したパスだ」というもの。てっきり自らが放ったシュートだとばかり思っていたエリックは意表をつかれます。
まあ本物のカントナさんがどこまでそう思ってるかはアレですが(笑)、本当に充実感を味わえるのは、自分がヒーローになることではなく、ほかの誰かに会心のアシストができた時・・・ そんな意味がこの言葉にはこめられているような気がしました。サッカーでも個人プレーよりチームプレーが重んじられる、欧州らしい言葉であります。

あとこの映画を観ていて思いだしたのが、西原理恵子先生の名作『ぼくんち』で、チンピラ・こういうくんが述べていた「生きるためのヒント」

「さつじんはぜったいしない ごうかんはなるべくしない それからだいすきなひとをひとりつくっておく」

・・・・ま、ごうかんも絶対やってはいけませんが、肝心なのは一番最後の部分ですね。エリックが人生の荒波を老境にさしかかったところで乗り越えられたのは、やっぱりエリック・カントナという大好きな人がいたからだと思うのですよ。怪しげな新興宗教の教祖とかだったらまずいですけど、自分もそういう尊敬にたる「大好きな」人を誰か作っておこう・・・ そんな風に思いました。

エリックの仲間であるマンチェスターのサポーターオヤジたちも、フーリガンのくせに実に暖かいヤツラです。エリックがどんな失敗をして、どんな苦境に陥ろうと決して見捨てません。この友情パワーはもしかすると大空翼とその仲間たちをもしのぐものがあるかも。こんなチームメイトに恵まれたエリックさんが、本当に羨ましいです。

110207_184235『エリックを探して』はもう終ってしまった劇場もありますが、まだまだ首都圏をはじめとして全国で順次公開予定。この映画ひとつよくわからないのが、製作国がイギリス・フランス・イタリア・ベルギー・スペインと五カ国にもまたがっていること。そんなに国際色豊かな作品でもなかったのですが・・・ でもまあ、国を越えて共に作品を作るってのはいいことですよね。うんうん。


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February 04, 2011

ハーバード白熱事業 デヴィッド・フィンチャー 『ソーシャル・ネットワーク』

110204_184507これは、事実に基づいたフィクションである・・・・

成績優秀だが性格の悪いまさゆき(通称まーくん)は、自分をふった彼女の悪口を、ネットの掲示板に書き込んでうっぷんを晴らす。このことがきっかけで彼は総合匿名掲示板「にゅーちゃんねる」の発足を思いつく。にゅーちゃんねるはあっという間に大人気サイトとなり、まーくんは一躍時代の寵児となる。だが匿名ゆえに心無い発言が多くなったことにより、まーくんはとうとう裁判でうったえられることに・・・・

はい、久しぶりにつまんないネタ、キターーー(・∀・)ーーー!!  本日は世界最大数の会員を誇るSNS「フェイスブック」を作った男、マーク・ザッカーバーグを題材とした『ソーシャル・ネットワーク』、ご紹介します。
フェイスブックって正直申すとつい最近その存在を知ったのですが、ようするにmixiをもっとオープンにしたようなものでしょうかね。というか、フェイスブックを日本人がとっつきやすいように作り直したものがmixiなのかな・・・と思ったのですが、調べてみたらmixiの方がフェイスブックがひろまったのより微妙に先のようです。

それはともかく。

このいまや世界が注目する一大システムが作られたきっかけが、「マーク氏がふられたこと」だったというのは面白いですね。そう、天才にとってこのふられた悔しさ、もてない怒りというのは、時として大きな起爆剤になることがあるのです。ベートーベン、アンデルセン、スピルバーグにティム・バートン、夢枕獏・・・ 彼らが青春時代モテモテだったら、果たしてあれほどの名作を量産することができたでしょうか? それは大いに疑問です。

最初は学生同士の楽しい課外活動のようなものだったフェイスブック。しかしシステムが肥大化し、株や大金がからむようになるにつれ、中心メンバーの間に大きな亀裂が生じ始めます。そしてついには創設時からのパートナーであったエドゥアルドから、マークは訴えられることになります。

予告編を見ますと、「五億人の友達とひきかえに彼が失ったものとは」なんてナレーションが流れます。ただわたしには、彼はもともと才能以外の大したものはもちあわせていなかったように見えました。エドゥアルドとの間に、それなりの友情はあったのかもしれません。しかしどちらかといえば利用し利用される、そんな間柄に近いように感じられました。
自分の中の空虚を埋めるために、フェイスブックの充実・拡大に全力を尽くすマーク。その甲斐あって、彼は巨万の富と大きな名声を手に入れます。でも結局彼が一番欲しかったものは手に入らぬまま・・・ そんなお話だと考えてます。


と、ここまで述べてきましたがこの映画、例によってかなり脚色が混じっているようです。本物のザッカーバーグさんは映画のように無表情ではないし、人とのコミュニケーションも普通にでき、ちゃんとした彼女(作中に出てきた中国人の女の子)もいるようです。そりゃないだろフィンチャー

たぶんフィンチャー氏はザッカーバーグ氏に対するおおまかなアウトラインだけを知って、「こういう人なんだろ」と勝手にイメージを作り上げてしまったのでしょう。そしてそこに、自分の影を見出したのではないかと。
恋人がいても、莫大な財産を持っていても、名門大学を出ていても、人は基本的に「さびしい」という気持ちを克服できないもの。そういう感情の薄い人ももちろんいるでしょうけど、フェイスブックを含めSNSがこれほど繁盛している事実は、現代に生きる多くの人が寂しがりやさんであることを証明しています。そしてもちろん、この映画の作り手であるデヴィッド・フィンチャー氏も。だから最後の「あなたは嫌な人を装っているだけ」というセリフには、『人間失格』の「あの子は本当にいい子でした」という言葉に似たものを感じました。

それにしても、デビュー作『エイリアン3』からずっと「人間はみんな死んじゃえばいいし、世界なんか滅んじゃえばいいんだよ」みたいな作風だったフィンチャー氏が、前作『ベンジャミン・バトン』から急に「本当はボクもさびしいだけなの。人のぬくもりがほしかったの」と言い出したのには面食らいました。次回作『ミレニアム』のリメイクにおいては、かつてのスタイルと現在のスタイルが融合した作品が見られるかもしれません。

110204_184554『ソーシャル・ネットワーク』は現在全国の劇場において大ヒット公開中。「アカデミー賞最有力候補!」というふれこみが利いたのか、大した盛況ぶりのようです。これを機に、地方でもこういう地味ながら個性的な作品がバンバンかかるようになればいいんですけどね。


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February 02, 2011

貨物線大爆破? トニー・スコット 『アンストッパブル』

110202_182856それは2001年、オハイオ州で起きた出来事。一人の機関士の不注意により、39両からなるディーゼル列車が無人のまま線路を走り出してしまう。列車の行く先には石油タンクが真下に位地する大きなカーブがあり、そこで脱線したら爆発は免れない。会社は列車を止めようと手を尽くすが、作戦は失敗に終る。誰もが諦めかけたその時、二人の男が立ち上がった・・・・ 

プロジェクト・・・ エッエッエックス・・・・・

ではありません。本日はベテラン、トニー・スコット監督の最新作『アンストッパブル』をご紹介します。最近本当に多いですけど、これまた「実話をもとにした話」
鉄の怪物と化した特急を、どうやって止めるのか。お話はそのただ一点に集中しています。
暴走する特急を見ていて、映画づくりも似ているな、と思いました。

アクション・サスペンスにおいて傑作を作るのには、ブレーキ・アクセルの微妙な加減が求められます。まあこういうのは出来るだけ派手な方がお客さんはワクワクするものですけど、監督が計算もなしにどんどんアクセルを踏んでると、いつの間にか作品は暴走して誰にも止められなくなってしまい、ついには内容も興行も大惨事・・・ということがよくあります。かといってブレーキばかり踏んでると作品は地味でこぢんまりしたものになってしまう。
だからお客さんにはアクセル全開で行っているように見せて、こっそり要所要所でブレーキを踏んでいる。そんなやり方がベストだと思います。
で、トニー氏のお兄さんのリドリー氏はこういうのがなかなか上手な方であります。対してトニー氏は乗り物が暴走するお話が好きなくせに、どうも安全運転というのがわかってしまう人。マシン(作品)もお兄さんのに比べて地味というか没個性的というか。ですがこの『アンストッパブル』においては「実話が元になっている」という触れ込みのせいか、トニー氏のブレーキ加減が作品にリアリティを増し加えていて、うるさ方のファンからも賞賛されるという奇妙な効果を生み出しました。

それではトニーさんのがどの辺でアクセルを踏んで、どの辺でブレーキをかけたのが、実際の事件と比べて検証してみましょう。・・・と、ここから先はネタバレだな。未見の方はこの辺でお引取りください。

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train

train

train

train

マイミクさんの日記の受け売りなんですけどcoldsweats01
実際の事件では

・列車は大カーブに達する前に止められていた
・列車に乗り込んでブレーキを踏んだのは、グラサンの溶接工のネッドだった

とのこと。ですからこの辺でトニーさんも地味ながらも脚色というか、自分なりにアクセルを踏んでたことがわかります。ただこのあたりで止めておくのがさすがはトニーさんというか。

もっと派手好きな監督だったら、事実は無視して人気のないところで列車を大爆発させちゃうと思うんですよね。そんでデンゼル・ワシントンの方が「娘に伝えてくれ・・・」とかなんとか言いながら、一人壮烈爆死。そんな展開になりそうな気がします。実際予告見るといかにも『海猿』みたいな死亡フラグ立ちまくりのテロップ・ナレーションが流れてるし(笑) しかしそんなノリでやってたら、こんなに高い評価は得られなかったことと思います。

クリス・パイン演じる新人車掌が「奥さんともめていて別居中」というのは、アクション映画によくある設定なのでてっきり脚色かと思いきや、こちらは本当だったみたい。前からどうしてアクション映画の主役はバツ1とかシングルファザーとかそういうのが多いのかな、と思っていましたが、やっぱりアメリカでは単にそういう家庭が多いということなのでしょうか。

100317_182820そんな『アンストッパブル』はまだ全国の劇場で上映進行中のようです。鉄道好きなら見ておいて損はないかと。あとトニーさんの次回作は、またデンゼル・ワシントンが主演だと思います。


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