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January 15, 2011

コンピューターおとうさん ジョセフ・コジンスキー 『トロン:レガシー』

110115_183329今をさること約30年前、「コンピューターで作られた映像」を初めて売りにした『トロン』という映画がありました。不幸にも『E.T.』とぶつかってしまったために、売り上げ的にはあまりふるわなかったようですが、その斬新な映像はティム・バ-トンやジョン・ラセターなど、多くのクリエイターたちに影響を与えたのでした。
そして2010年も終わりを迎えた頃、なぜかこの『トロン』がスクリーンに復活いたしました。「3D」という新技術の洗礼を受けて。『トロン:レガシー』、紹介いたします。

1980年代、様々なアイデアによりコンピューター界に革新を巻き起こしたケビン・フリンという男がいた。だが彼はその絶頂期に、謎の失踪を遂げてしまう。時は移って現代。一人残されたケビンの息子のサムのもとに、父からのメッセージが届く。指定されたゲームセンターでサムがコンピューターの電源を入れたとき、驚くべきことが起こった。世界は一変し、謎の巨大マシンが上空から現れたのだ。そしてサムはマシンに連行された先で、父と瓜二つの男に出会う・・・

人は神に似せて造られたと言い、子は親に似るものと言います。その言葉の通り、人は神を真似て様々な物を造り出そうとします。そして神が造ったもので最も壮大なものが、この「世界」です。
本当に神になりたい・・・という願望があるのかどうかは別として、この「望み通りの世界を作ってみたい」という欲求に駆られる人も多くいます。ある人は小説や映画などのフィクションという形を通して。またある者は、会社や団体といった組織を作ることによって。そしてこれは、コンピューターの中にまるごと一つの世界をこさえてしまった男のお話でもあります。

コンピューターの中で造られた世界ならば、さぞかし理性的で平穏なものかと思えばさにあらず。その世界のいたるところに、現実社会と重なって見える部分があります。
人の形をした者が「プログラム」と呼ばれ、組織の歯車として圧政的な管理のもとにあること。弱肉強食的な争いがあり、不要とみなされた「プログラム」は容赦なく排除されること。そしてごく一握りの存在が、世界全体を支配し、弱者を虐げていること。
完璧だったはずの世界は、創造者が作り出したあるプログラムの反逆により、見るも痛々しい惨状を呈すことになりました。まるでアダムとエバが神に逆らったことにより、楽園が失われ、地上に多くの不幸がもたされたように。
その世界に、男の「息子」が呼び寄せられるところから物語は動き出します。キリストが天から地上に使わされ、世界に変革をもたらそうとしたように。果たして男の息子はこの世界を再び楽園に戻すのか。それとも罪深い世界をメモリから消去してしまうのか。

神が創ったものと違って、人間が造ったものは完璧にほど遠く、欠陥も多いもの。それでも人はいつか天然自然を越えた完全なものを作り出すことができるのか。『トロン:レガシー』はそんな疑問が投げかけられた作品ではないでしょうか。


・・・・ととうとうと最もらしいことを述べて参りましたが、正直に告白します。実は自分この映画ずっとうとうとしながら観てました。よって上の駄文も果たしてどこまで本当にあてはまるのか、よくわかりません。疲れていて満腹の状態で3D映画を観てはいけないと『アリス』の時に学んだはずなのに・・・・ どうして人は同じ過ちを繰り返すのでしょう。真剣に読んでくださった皆さん、どうも申し訳ありませんでした。

110115_183358さてこの『トロン:レガシー』、おそらく昨年の『アバター』の「夢よもう一度」ということでこのタイミングで公開したのかもしれませんが、思ったほどに国内での興行成績が伸びていない模様。『アバター』がヒットしたのは立体効果の目新しさもあったでしょうけど、話の面白さ、わかりやすさもあってのことではないかと。
ただ本国ではそれなりに受けているのか、さらなる続編の企画も進行中、なんて噂も飛んでいます。それが実現するまでに、今度はしっかりと起きて、もう一度この作品を見ておきたいと思います・・・・


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Comments

『アバター』とじゃそもそも全ての面で比較の対象にならんですよ。大体冒頭で3Dは一部ですみたいなテロップが出たときには「そりゃ話ちがうっしょ~」って思っちゃいましたモン。(苦笑)
疲れはともかく満腹ってだめだよねぇ。私もいつもそれで寝てます。でもさ、解っちゃいてもおなか減ってたらまず腹ごしらえしちゃうよね。^^;

Posted by: KLY | January 15, 2011 10:19 PM

トロちゃんが!なにげにトロンスーツ着てる・・・(笑)

SGAさん、ずいぶん真面目に受け止めたんだなーと思ったら
ずっとうとうとしてたんですね(笑)
確かに満腹で3Dって、ちょっとした催眠効果あるかも。
とにかく私は、弐瓶っぽい!と思った瞬間この世界にハマってしまいましたが、3Dは別に・・・って感じでした
いちおう前作を予習してから行ったので、比較しつつ前作オマージュなどもちらほら分かっておもしろく観れたし。
『アバター』より好きです

Posted by: kenko | January 16, 2011 04:50 PM

>KLYさん

こんばんは いやー、予告見てた時は「こりゃすごいのが来るなー」と思ってたんですけど、実際に見ていたらあれよあれよという間にドリームゾーンへ・・・
3Dは視神経に負担がかかるせいか、その分眠くなりやすいんですよね。『アバター』の画面が明るかったのに対し、こちらは暗いぼったかったのも敗因の一つです

>解っちゃいてもおなか減ってたらまず腹ごしらえしちゃうよね。^^;

わたしなんか外仕事なもんですから、この時期とんこつラーメンのにおいなんか漂ってきたら、もう一発ですよ!

Posted by: SGA屋伍一 | January 16, 2011 07:38 PM

>kenkoさん

こんばんは~
わたしが屁理屈こねてマジメ腐ってたことを言ってるときは、寝てたのをごまかすためだと思ってください(笑)
デザインはすごく好きなんですけどね~ 特にずっとマスクド状態だったトロンさんなんかしびれるくらいかっこよかったし
本当に夢うつつだったのが惜しまれてなりません・・・
そうそう、前作を予習していかなかったのも敗因のひとつですね。テレビ局もこういう時にタイアップで放映しないとダメだよなー

わたしはやっぱり『アバター』の方が好きですね。ロボが出てくるから(痛)

Posted by: SGA屋伍一 | January 16, 2011 07:44 PM

すごい!伍一くん!!
って、思っちゃったよ。
私もほぼ8割寝ちゃったの。
なので真剣に読んじゃったわ。
3Dはお葬式の後にも行ったらダメね。
留守番していて元気だったはずの息子でさえ、ちょっとうとうとしたらしいし。
それでネコちゃん?(笑)

Posted by: ノルウェーまだ~む | January 16, 2011 09:29 PM

>ノルウェーまだ~むさん

肩透かしんすこ~ 正直に告白しなきゃよかった
しかし親子そろってスヤスヤとは・・・ せっかく親子の絆を描いたお話だったのに! この映画、不眠治療によいかもしれませんね(笑)

このネコは『どこでもいっしょ』の「トロ」を描いたつもりだったんですけど、微妙に似てませんね・・・ こういう人気キャラってちょっと目鼻の間隔がずれただけで似なくなってしまうので、簡単なようで難しい

Posted by: SGA屋伍一 | January 17, 2011 08:10 AM

伍一さん、

私、ハリポタでは寝そうでしたが。。。。。トロンでは寝なかったです。途中でトイレに行ったけど。

Posted by: まみっし | January 17, 2011 04:45 PM

基本的にめんどくさがりなので、mixiと磯川家以外はコメントしないのですが、これは流石に吹き出して笑ったので、コメントします。

トロのイラストには爆笑しました(^_^)v

Posted by: サワ | January 17, 2011 07:27 PM

>まみっしさん

おや、世間的にはハリポ新作のほうが評判は上のようですが・・・ 人それぞれですかね。わたしは「どうしようかな~」と思っている間に終ってしまいそうです
一作目は夜中から起きてる状態で昼間に見にいって、コクリともしなかったのを覚えています。あの頃私は(まだ)若かった・・・

Posted by: SGA屋伍一 | January 17, 2011 09:45 PM

>サワさん

こちらまで出張ありがとうございます。こんな苦し紛れで書いた記事が存外の好評を博すとは(笑)
ト○は版権を所有している会社に無断使用が見つかったら怒られそうですね・・・ その時は中○のごとく「これは自分で思いついたキャラあるよ」とつっぱねてみましょうか

Posted by: SGA屋伍一 | January 17, 2011 09:48 PM

SGAさんこんばんわ♪

・・なんだか今回は随分と哲学的な文になってるな~と思ったらそういうオチですかっ^^;自分クソ真面目に読んでたのに・・。
そいえば前に2010年ベスト記事のコメントに『寝た』って書いてましたもんねw
自分は対称的にトロンの世界をとても面白く観てましたね。サムたちが着てるスーツも555チックですから、変な部分に触手が反応してしまいましたし、バイクレースも昔ゲーセンにあったマス取りゲームのようでこれまた面白かったのです。


けど一昨年の『アバター』と同じように公開してまた3D革命を起こそうなんていう画策は、残念ながらアテが外れちゃってますよねアバターと違ってトロンは結構2Dな部分も多かったのでパンチが弱かったのかも?
でも今年もまた年末にこういった話題作の3Dが懲りずにひょっこり出てきそうですねw

Posted by: メビウス | January 18, 2011 04:54 AM

>メビウスさん

真剣に読んでくださってすいません・・・
そして細かいとこまで覚えてくださっててありがとうございます
そう、これずっとPC関連の世界を追ってきた人の方が楽しめるかもしれませんね。マス取りゲームというのは知らないなあ。自分がはまったアーケードゲームは「パックランド」でしたね。ああ、何もかもが懐かしい・・・

そういえば今冬は例年必ずあるといって言いディザスタームービーがなかったんですよね。これからはその代わりにこういう3D大作が暮れに来るようになるんでしょうか? あー、でもこの映画配給会社が思ったほど入ってないようだし、3Dの隆盛も一時的なものかも・・・

Posted by: SGA屋伍一 | January 18, 2011 08:08 PM

こんばんは(*^^*)
そうそう!3Dめがねってちょっと暗くなるし、睡魔を誘うのよねぇー。
でも、この作品は寝なかったけど・・・(笑)
私的には、親子のうんぬんより、バイクに変身したり、
プログラムがボロボロ崩れていくコンピュータ世界の映像が好きでした。
ト○可愛い!!!

Posted by: ルナ | January 18, 2011 11:48 PM

もう1月も終わりですが、本年もよろしくお願いしますf^_^; 。
>トロン
……………イマイチこの映画は判りませんが(汗)…………………………って「トロ」書くのかあんた(笑)。
井上トロ出て来たので…

実は最近、ニコ動で「トロステーション」見てます。ゲームで配信されるコンテンツで、かなりマニアな内容ですョ。

相方「クロ」は書かないの〜。

Posted by: まあくん@葛城 | January 19, 2011 08:05 PM

>ルナさん

こんばんは
ただでさえ暗くなってしまうのに、この映画は背景もずっと暗かったですからねえ ・・・・って、わたし画面の明るい『アリス』でもずっとコックリコックリやってましたが

コンピューター内の描写はわたしも面白かったと思いますよ。使いづらそうなあの円形の武器とか。プログラムが崩れていく姿はすんごい昔なつかしのテレビゲーム「ブロック崩し」を思い出しました・・・

トロ、けっこう好評だなあ(笑) なかなかに根強い人気だ・・・

Posted by: SGA屋伍一 | January 19, 2011 08:25 PM

>まあくん@葛城さん

こちらこそ挨拶が遅れましたm(_ _)m 今年もypろしくお願いします。

コンピューターの世界の話だから、スズキでもよかったかな
トロ、いいですよね。実は「ちょっとスケベ」らしくて、そんなところがまた親近感です

クロは『クロン』という映画が公開されたら描きます(笑) 『クローン』というのだったら普通に出来てしまうかも

Posted by: SGA屋伍一 | January 19, 2011 08:28 PM

うとうとわかるなー。
だって何となく途中で起きてもついていけるんだもん(笑)
線がずーっとみたいな・・・

Posted by: rose_chocolat | January 29, 2011 10:27 PM

>roseさん

こちらにもどうも ・・・・ってまた寝てるし(笑)
まあこの映画はわたしも寝ちゃいましたが
roseさんは人のニ・三倍は働いてますからね~ イマイチ乗り切れない映画で意識が遠くなってしまうのは無理もないかも

Posted by: SGA屋伍一 | January 30, 2011 07:53 PM

伍一くん、起きンスコ~☆
2度目リベンジして万全の体勢で2Dを観ました。
今度はしっかりと起きて・・・(笑)

プログラムだからこそ、不要なものをばっさばっさと切り捨てるのでしょうが、トロンって?アイソって?と、起きていたのに、尚、良く分からないことがあって、ちょっと消化不良になっちゃいました。
でも映像美はすごい!
3Dを楽しめばいい映画なのかも~(2Dで観たけど)

Posted by: ノルウェーまだ~む | March 18, 2011 02:08 AM

>ノルウェーまだ~むさん

こちらにもありがとうございます&リベンジお疲れ様でした

トロンはどうも前の映画でフリンとコンビ組んでたやつらしいのですが、存在感薄かったですねえ(笑) とてもタイトルにふさわしくないと思うのですが、かといって『フリン・レガシー』というのも本妻と2号さんが遺産をめぐってバトルを繰り広げる話になりそうで、ちょっとイヤです

よせばいいのに先日またも満腹・疲れ気味で『ナルニア国 3D』を見にいきましたが、その時はなんとかこらえました! やればできる!

また晩にでもそちらにうかがいます。ロンドンは朝かもしれないけど

Posted by: SGA屋伍一 | March 18, 2011 08:55 AM

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