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January 25, 2011

新・ばったり倒れ野郎 中村誠 『チェブラーシカ』

110125_181255ウラウラウララ~ ウララ~ウララ~ ウラウラウララ~ウラウララ~ 
ロシアアニメ史上最も愛された未確認生物が、27年ぶりに日本で復活。人形アニメ映画『チェブラーシカ』をご紹介します。オリジナルはコチラを。

それはいつ、どこで生まれたのか誰も知らない(またかよ)・・・・ 物語はとある果物屋のミカン箱から猿とコアラの合成生物が発見される所から始まる。虚弱体質なのか、すぐにぶっ倒れてしまうため、その生物はチェブラーシカ(ばったり倒れ屋さん)と名づけられた。ある日彼は「ともだち募集中」と書かれた貼り紙を見つける。チェブラーシカが向った先は、孤独で優しいゲーナというワニが住む家だった。

思い起こせば二年ほど前の夏。テレビの宣伝で「お家は電話ボックス」というのを聞いてなぜか無性に興味が湧き、渋谷はシネマアンジェリカ(現在休館中・・・)までリバイバルされていたオリジナル版を観にいったのでした。
わたしはその時初めてこの生物のことを知ったのですが、ファンは日本にも前からたくさんいたようで、それ以来いろんなところでチェブちゃんを見るようになりました。ドトールとのタイアップや、TV東京での絵アニメ版の放映、はたまた冬季五輪でのロシア代表のマスコット(青くて不気味だった)として。そしてとうとう満を持しての人形アニメ版の公開です。これがロシア人ではなく、日本人の監督の手を通して作られることになったというのがなんとも驚きです。
なぜ時空を越えて、この現代日本にチェブラーシカが復活したのか。わたくし脳髄をフル回転させてその答えを導き出したところ、「よくわからない」という結論に達しました。 ・・・あーでもそうですね。今話題になってる『ソーシャル・ネットワーク』。思えばあの映画も孤独感を埋めるためにプロジェクトに没頭していく青年の話だったような気がします。「一人ではさみしすぎる。喜びをわかちあえる友が欲しい」 そう願う気持ちは時代も国も関係なく、人間がいつも抱えてる望みなのかもしれません。

では今回新たに作られた『チェブラーシカ』は、果たしてオリジナルのスピリットをちゃんと受け継いでいたか? わたしはこの点、見事に合格に達していると感じました。
以下チョイバレしながら語らせてもらうと、序盤でチェブとゲーナはサーカス団に憧れ、ろくな芸もないのに入れてもらおうとします。ここでチェブはジャグリングに挑戦。しかし二個の玉さえ上手に扱えず、結局一個の玉をポンポン空中に放り投げるだけ。しかしチェブは意気揚々と叫びます。「ゲーナー! 僕ジャグリングできたよー!」 こいつ頭悪いな・・・・ まあ「バカな子ほどかわいい」とはよく言ったものです。その必殺技でもってチェブは面接に望みますが、予想通り団長はあっさり一言「おひきとりを」。これです! この疎外感! つまはじきにされ感! でも最後には二匹のがんばりで、暖かく迎えいれられる。これこそまさに『チェブラーシカ』の真髄そのものだと思います。

そしてワニのゲーナは相変わらず底なし沼のように優しい。「ゲーナ、ご飯なんにする?」「君が食べたいものにしよう」 なんて優しいんだ・・・ 僕は上トロとウナ重が食べたいです。
この映画の前に作られたTOHOのオマケムービーも、ゲーナの優しさをよく表しています。「ゲーナは絵がじょうずだね」「君もとてもじょうずだよ。でも一体何を描いたんだい?」 何が描いてあるかもわからないのにとりあえず「じょうず」と言う。男子たるもの、こんな雄大な海のような心を持ちたいものです。

あとオリジナル版は時代を置いて製作された四つの短編からなっているのですが、こちらはほぼ一本の長編といっていい構成。そのためチェブたちの住む町の様子・人々が丁寧に描かれ、エキストラのようなキャラクターも何度も登場するうちにだんだん親しみがわいてくるようになっています。

この新作『チェブラーシカ』、ロシア版と日本版が製作されました。どう違うかというと日本版では旧作とほぼ同じ導入部のエピソードが大幅にカットされ、頻繁にナレーションが入れられています。まあこのナレーションが大人にはちょっと野暮ったく感じられたりして。
大橋のぞみちゃんの声も悪くないと思うのですが、ロシア版の評判を聞くにつれ、わたしもできればそっちで見たかったなあと。恐らく子供たちについてきやすいように・・・・という配慮でこんだけナレーションを追加したのでしょうが、わたしが見た回では後半二人ばかりお子様が劇場を走り回っていたので、あまり効果はなかったものと思われます。

ともあれ、好きになってまもないうちにチェブラーシカの新作が観られたのは嬉しかったです。ぜひここで終わりにせず、ひきつづきロマン・カチャーノフの遺産を活かし続けてほしいものです。
同時上映の『くまのがっこう』もまた心温まる一編。生きた熊のぬいぐるみたちを主人公にした話で、ぬいぐるみ特有のボフボフ感が上手に出せていました。だいぶ前のロシアの方が作った童話かと思ったら、これ、最近の日本の作家さんが作られた話なんですね。ここまで作った人の国籍を感じさせないのは、ある意味見事であります。

101225_172323a劇場版『チェブラーシカ/くまのがっこう』はまだ全国で上映中ですが、既に終了したところもあり、残りも大体今月いっぱいにようです。観そびれている方はお早めに。
また今年は三月に『ファンタスティック・ミスター・フォックス』、五月に『メアリー&マックス』と人形アニメの話題作が公開予定。こちらも楽しみなことであります。


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Comments

>こいつ頭悪いな・・・・

ここで爆笑してしまった…(笑)
まー確かにそーだw
きっとチェブラーシカは「褒めると伸びる子」なんだね。
本当はロシア語版を見たかったけど、吹替え版も大橋のぞみちゃんが声優をやってるのでまーよしとします。^^

Posted by: KLY | January 25, 2011 09:18 PM

>KLYさん

ようこそおいでませ・・・ って早! いつもすかさずコメントありがとうございます。感謝してます

いやあ、この一言全国ウン千万のチェブファンの怒りを買うのではとヒヤヒヤもんです・・・
誉めて伸びる子なら、このあとはもう伸びっぱなしなんではないかと。なんせゲーナさんは誉めることしかしませんからね(笑)
吹替えでは奇術師のじいちゃんが藤村俊二さんだったのが「よし!」と思いました

Posted by: SGA屋伍一 | January 25, 2011 11:17 PM

どうも、伍一さん、

この映画、もう丸っきり分からずじまいですが、、、、、

全く関係ないけど、

家の近所の男の子で、ハリー・ポッターの以前やつに出ていたという事をコメントを何処かに入れたという記憶が残っていますが、伍一さん、何処に私がコメント入れてたか分かりますか?
フェースブックで、「義妹の知っている某日本のブロガーが、凄いって云ってくれてたよ」と入れたら、その子が「どのブログ」って聞いて返して来ちゃって困ってます。
答えようが無くって、、、、。だって彼、日本語分からないもん。妹は今、日本語をオックスフォード大で勉強してるけど。

伍一さん、本当にどうもです!

Posted by: まみっし | January 27, 2011 07:39 AM

>まみっしさん

おはようございます 今日は明日まで家に帰れなさそうなので今のうちにお返事を

>この映画、もう丸っきり分からずじまいですが、、、、、

はは。まみっしさんは人形アニメにはご興味ないですかね

お尋ねのコメントですが、三つ前の『キック・アス』でのやりとりでした。たぶんその子、こちら見てガッカリするか首をひねるかのどっちかだと思うんですけど(笑)

子役さんといえば、先日『愛のむきだし』という作品の冒頭に出てたお子さん(といってももう15か)と、こないだちょっとだけお話する機会がありました

Posted by: SGA屋伍一 | January 27, 2011 08:02 AM

伍一さん、

迅速にお返事ありがとうございます。

とりあえず、「君には日本語分からないから、後日イギリスに帰ってきた時までブログ(伍一さんの)については教えないです」みたいに打っておきました。彼はイギリス人だけど、今、アメリカにいて実際はミュージシャンの卵です。相当の腕前です。

ホッとしてます。何せ、私、彼が出ているそのハリポタ観てないし。

人形アニメって云うジャンル、未熟すぎて分かりませんが、セサミストリート的な感じかな?

伍一さん、多分とても忙しいのに私にコメントのお返し下さって感謝してます。実は暇そうな私も2月からは、かなり忙しくなります。

Posted by: まみっし | January 27, 2011 09:27 AM

こんにちは〜
私が楽しみなのは『イリュージョニスト』ですね。
メアリーアンドマックスもコマ撮りアニメなので、是非どうぞ〜。
SGAさんだったら、ロシア語の完全版を観に六本木まで来ると思ったのに〜、残念。
でも君TOHOの会員券持ってなかったもんね。

Posted by: とらねこ | January 27, 2011 11:36 AM

伍一さん、

再度御邪魔します。
『チェブラーシカ』、ここでのTBを観て、多少どういう感じの映画なのか知識を得ました。ありがとうございます。
日本人の良い面を感じ、嬉しかったです。

念のため伝えますが、ブログ所有者の許可無しには絶対に横流しはしないので安心していてください。(近所の男の子にも)
個人情報保護法にも出来る限り気を配っています。

PS:何だか気になるのは、今度は、山田風太郎(この方の本は読んだことあります)の所に又ジャンク入ってますね。
私に、あたかも息子から来た様に見せかけたメールに怪しいリンクが貼ってあったのを思い出します。ロシアのサイトの様でした。しかも、CCで彼の多数のマジ友にまで、、、、。PC関連のセキュリティーはかなり気配り入れているのですが、ちょっとムカつきました。


Posted by: まみっし | January 28, 2011 06:39 AM

>まみっしさん

度々どうも
人形アニメ、おわかりいただけたでしょうか? ご覧のように人形をちょっとずつ動かしながらコマ撮りで作っていく作品のことですね。「アニメ」といっても実写なので、その辺ピンとこない人も多いかも。英国では『ウォレスとグルミット』が有名ですが、とにかく死ぬほど根気の要る作業なので、あまりやる人のいないジャンルなのです

ブログをやってるとこういうスパムのようなものはどうしても避けられませんね~ ココログさんもその都度対処してくださってますが、どうもイタチゴッコのようで。本当にこの手の業者さんは、あの手この手とよく考えるものです

あといろいろ気を使ってくださてありがとうございますまあここにはそんな大したことは書いていないので、そんなにお気になさらず。来月からは忙しくなるのですね。どうぞお体に気をつけつつ励まれてください

Posted by: SGA屋伍一 | January 28, 2011 08:12 AM

>とらねこさん

お返しありがとん。風邪引き続きお大事に
『イリュージョニスト』ってアカデミーアニメ部門でノミネートされてたヤツだよね。いま初めて公式見てみたけど、なんかスタッフがいろいろすごいな。ジャック・タチってまだ生きてたのか!?と思ったら遺稿をもとに作ったということね

『メアリー&マックス』は新宿武蔵野館を中心に展開するようで。たぶんこっちではかからんだろうな・・・
TOHOさんはメンズデーがないのであまり行かないところなのだよ(笑) 『スペル』や『アポカリプト』をかけてくれたのはありがたかったけど

Posted by: SGA屋伍一 | January 28, 2011 08:22 AM

こんばんは(*^^*)
往年のチェブファンとしては、なんとなくイメージが違う気がしたのですが
まあ多少のスピリットは受け継いでいたかもしれませんねぇー。
もともとかなり古い作品だったので、今の子供が観ても楽しめる作品か
どうかも問題だし・・・。
まあ、とりあえずは可愛いチェブが見れて良しとしておきましょう!
最初に出たDVD(4作入り・オリジナル字幕)がお宝になるかも?(笑)
大事にしておこうっと・・・・!

Posted by: ルナ | January 29, 2011 06:44 AM

>ルナさん

こんばんは~ お返しありがとうございます
以前からのチェブファンとしては、やはり多少の違和感を感じられたでしょうか。チェブがもじゃもじゃしてないところとか(笑)
そこへいくと、わたしはまだファンになって二年やそころだからなあ・・・

いまの子供たちに、旧作の独特の雰囲気は受け入れられづらいでしょうか? でもまあ最近はいたるところでキャラ賞品を見かけますし、チェブを好きなお子さんもだいぶ増えたのでは

わたしもまた旧作が見たくなってきたなあ・・・・ お値段約三千円か・・・

Posted by: SGA屋伍一 | January 29, 2011 08:46 PM

伍一さん、

例の近所の男の子からの再度のリクエストに、彼の妹が伍一さんのブログに興味あるという事なので、伍一さんのリンクを送って欲しいそうですが、伍一さんの「キック・アス」と「チェブラーシカ」のレビューのコメント欄をリマークして教えても構いませんか?

忙しいのに、すみませんが、お答え待ってます。

Posted by: まみっし | January 31, 2011 05:02 PM

>まみっしさん

全然かまいませんよ~ 基本的にブログというのは開かれてるものだと思ってるので。そもそもあまり読まれたくなかったら、非公開制にしてるでしょうし

というわけでどうぞ教えてあげてください。果たしてどれほどわかってくれることだろう(笑)

Posted by: SGA屋伍一 | January 31, 2011 10:29 PM

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