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January 31, 2011

下北沢は燃えているか 第二回下北沢映画祭グランプリ・準グランプリ作品上映会 片岡翔 『ゲルニカ』 今泉力哉 『最低』 ほか

110131_193859先日下北沢において、個人的に勝手に応援している自主映画作家・片岡翔監督の最新作が上映される機会がありまして、足を伸ばしていってきました。イベントの名は「第二回下北沢映画祭グランプリ・準グランプリ作品上映会」。秋に行われた同映画祭のグランプリ・準グランプリを取った作品の再上映と、各々の監督が撮った新作をあわせて上映しようという内容です。HPはコチラ。では順々にささっと紹介していきます。最初にあげてあるのが受賞作、二番目に書いてあるのが新作です。

今泉力哉 『最低』『TUESDAYGIRL』

『最低』はとあるストーカーと、三股をかけている男と、彼らを取り巻く女性たちの人間模様を描いた作品。『TUESDAYGIRL』は結婚を決意したカップルと、お互いが「当たり前」になっているカップルの心の流れを追った作品。軽妙な会話でゲラゲラ笑わせてくれましたが、ラスト直前でぴたっと音がやんで、見るものの心にグサッと棘をさしていきます。

明確な悪意があるわけでもないのに、その優柔不断さがいつの間にか誰かを傷つけてしまったり。一方が幸せになるとき、対照的に不幸になっていく者もいる・・・ 
そんなわたしには縁遠い男女関係の機微が非常にリアルに描写されていて、恐らく(本人は否定してましたが)今泉氏も相当経験を積んでおられるのでしょう。実際美人の奥さんがおられるようですし。
不可解なのは、その今泉さんも作中の男たちもヒゲをもじゃもじゃ生やかしたむさ苦しい風貌(すいません・・・)なのに、どうしてそんなにもてるのかということ。でも思い起こしてみれば、同級生の中にも時々いましたね。顔もぱっとしないし、とりわけ性格がいいわけでもないのに、なんかやたらとモテてたヤツ。世の中よくわからないことばっかりです。
あと先も述べましたが男の方が大体無精ひげを生やしていたり、女性の方も突然ばっさり髪を切ったり、ドライヤーでなびかせて嫌がらせしたり、そんな「毛」の使われ方がいちいち印象に残る二作品でした。
今泉監督はすでに商業デビューを飾っておられ、その第一作『たまの映画』が現在公開中であります。


奥田昌輝 『くちゃお』『オーケストラ』

こちらの二本はアニメ作品。『くちゃお』は年中口をくちゃくちゃさせている少年の日常と冒険を描いた作品。濁った色と奔放な輪郭、長唄のようなナレーション・音楽が愉快であるとともに、どこか不安をかきたてます。
個人的には伝説のトラウマアニメ『チコタン』に似たノリを感じました(『チコタン』はニコニコ動画で観られますが、これ本当にトラウマになるのでくれぐれもお気をつけください)
もう一本『オーケストラ』は個人ではなく、三人で共同で作った作品とのこと。こちらは『くちゃお』とは対照的に、簡潔な線がクラシック音楽をバックに上品なダンスを見せるアニメ。こちらはYOUTUBEで観ることができます。
現在修士課程を卒業を間近に控えた奥田監督は、近々ドイツで行われる児童映画専門の映画祭「キンダーフィルムフェスティバル」に招かれているとのこと。ただ卒業後の進路に関しては「なにも決まってない」そうで。この感覚、下北沢ですね。


片岡翔 『くらげくん』『ゲルニカ』

さて本命。『くらげくん』に関しては昨年夏にレビューしましたのでコチラをご覧ください。いや~、いい作品だとは思いましたが、その後国内の様々な映画祭で13個も賞を取るとは思いませんでした。

で、『ゲルニカ』の方。寒そうな歩道を歩いている少年と少女。少女はもうじき遠くに引っ越すと言う。寂しさを埋めるかのように、会話を交わす二人。その会話の節々に、人が住んでいない一軒の家に入っていく少年の姿が挿入されます。
片岡監督は「まったく違うタイプの映画を三本続けて撮ろうと思った」とのこと。うち一本が『くらげくん』。もう一本がさらにその前に発表された『Mr.バブルガム』
確かにムードはだいぶ違いましたが、『くらげくん』と共通しているところも色々あり。母の都合で遠くに行かなければならない幼馴染み。子供であるがゆえにどうしてやることもできない少年。ヒロインの衣装もどことなくくらげくんに似ています。二つの作品は、出発点を同じとして正反対に歩いていった、そんな関係にあるのではないかと(ついでに言うなら『Mr.バブルガム』も「○を決意したお父さん」というところでつながってるかも)。

現在と過去が交錯するにつれ、次第に明らかになっていく真実。孤独が狂気を産み、そしてその狂気がまた別の孤独を生んでいく。そんな哀しい連鎖が物静かに語られていきます。去る者も置いていかれる者も両方辛いのでしょうけど、きっと置いていかれる者の方が、ずっと辛いはず。これまた今泉監督とは別の形でこちらの心を深く突き刺していきます。そして21分という短さが、かえってその刃を鋭くしております。

少年は恐らくどうにもできなかったことを悔やみながら、この後の長い人生を歩んでいくのでしょう。それが少女との約束を果たすことになると信じて。少年が空き家で最後に見つけたもの。それは「本当は君とずっといたかったんだよ」という少女からのメッセージのように、わたしには感じられました。

110131_193934片岡監督は既に何本かの新作を準備中ですが、その前に下北沢の「トリウッド」において二月末より今泉監督と連動の特集上映が催されるとのこと。『Mr.バブルガム』『くらげくん』、そしてこの『ゲルニカ』が一気に見られるという大変オトクな機会ですが、HP見るとまだ予定に入ってないな・・・ ご興味おありの方はまめにのぞかれてみてください。
代わりといってはなんですが、それぞれの予告編を貼っておきます。
Mr.バブルガム
くらげくん
ゲルニカ


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January 29, 2011

ドーバー海峡冬景色 フィリップ・リオレ 『君を想って海をゆく』

110129_183353本日はフランスのアカデミー賞と言われるセザール賞に10部門ノミネートされた社会派映画の力作『君を想って海をゆく』をご紹介します。

フランスの港町、カレ。そこにはイギリスを目指して密航しようとする多くの難民が集まる。混乱したイラクから、恋人に会うためにはるばるやってきたクルド人の少年、ビラルもその一人だった。だがビラルはトラウマから二酸化炭素を出さないようにする袋をかぶることができず、税関で捕まってしまう。なおもあきらめないビラルが思いついたことは、自力でドーバー海峡を泳ぎきってイギリスへ渡ることだった。元メダリストのコーチ、シモンのレッスンを受けに、わずかな所持金を費やして水泳教室に通うビラル。初めは少年をいぶかしんでいたシモンだったが、彼のひたむきな姿を見ているうちに、いつか献身的に応援するようになる・・・

原題は『WELCOME』。全然違うやん!とツッコミたくなります。まあ映画を見るとわかるんですけど、イギリス政府もフランスの人々も全然難民たちに対して「ウェルカム」ではないんですね。そんな大いなる皮肉のこめられたタイトルなのでした。
ドーバー海峡を泳いで渡ろうとする・・・というあらすじからスポ根のようなノリを想像しがちですが、どちらかといえばメインはビラルとシモンの世代・国境を越えた交流にあります。最初は難民たちと関わりたくない、という気持ちを露にしていたシモンですが、奥さんからのイメージを向上させるために、ビラルを家に泊めるようになります。

この辺からわたしが思い出したのは昨年サンドラ・ブロックがオスカーを取ったことで話題になった『しあわせの隠れ場所』。二作品とも、ろくに素性のわからぬ少年を、ふとした思いつきから自分の家で世話するようになるという話なので。実話が元で、スポーツが関わってくるあたりも一緒です。
ただ『しあわせの~』のマイクがリー・アンの愛情によって多少の逆風も乗り越えていくのに対し、こちらではビラルを取り巻くあまりの厳しい現実に、やるせない思いを抱かずにはいられません。

人によってはシモンが、なぜビラルに対し心を開いていったのかわかりづらい、という感想を抱く方もおられるようです。ただ、シモンとてかつてはトップアスリートだった男。自分が全てを注いだ水泳で、大きな目標に挑む少年の姿を見ているうちに、いつしか「力になってやりたい」という気持ちが強くなっていったのでしょう。。そして子宝に恵まれなかった彼は、きっともし自分に子供がいたなら、こんな子供がよかった・・・と思うようになったのではないでしょうか。当局や周囲の容赦ない仕打ちに暗い気分にさせられる中で、二人の心が通い合っていく様子には心温まるものを感じました。

そしてやはりビラル少年のどこまでもまっすぐな姿に心打たれます。シモンがいかにそれが無理なことを解こうとも、彼は決してあきらめません。恋人に会うために極寒の果てしない海を迷うことなく乗り出していきます。「目の前の君でさえ、オレは諦めてしまうのに」 ・・・・そうつぶやくシモンの言葉が、胸を突きます。わたしたちはビラルような情熱を持って、誰かを想うことができるでしょうか。
以下は結末を割っておりますので、ご注意ください。

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わたくしてっきりこの話、少年が努力と根性でもってイギリスまでたどりついた、そういう話だと思っていたのですね。しかし実際はご覧になった方ならおわかりのように、とても悲しい結果に終わりました。シモンが見つめるテレビの中でビラルが活躍していた・・・そんなラストを一瞬期待したのですがね・・・ やはり現実は甘くないです。
ただわたしはこの話を、「かわいそうな話」というだけで終わりにしたくありません。確かに死んでしまっては何にもならない・・・という気持ちもあります。でも、こんな一途で純粋な少年がいたこと、そしてそれを知れたことを素晴らしいと思いたいです。

「クルド」とはトルコ語で「狼」を意味しているそうです。狼は雄々しく、情愛豊かで、美しい生き物であります。これはそんな狼のような少年と、それをつかの間のあいだ見守った男の話。「狼少年」というとなんか違うものを連想してしまいますが。

110129_183424『君を想って海をゆく』はメインの東京の劇場ではあともう一週間、というとこですが、その他の都市ではこれから初夏にかけてゆっくりゆっくり回っていく模様。本当にフィルムの本数が少ないのね・・・ 

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January 28, 2011

台湾極道青春記 ニウ・チェンザー 『モンガに散る』

110128_182946本日は昨年台湾で映画最高動員記録を樹立し、先の東京国際映画祭においても好評を博した『モンガに散る』をご紹介します。

1986年、台北一の歓楽街モンガ。母の事情で学校を転々としてきた少年モスキートは、新しいクラスでさっそくイジメにあう。だがイジメに屈せずに懸命に抵抗する彼の姿が、学校を仕切るボス、ドラゴンとモンクの目に止まった。モスキートは彼らの義兄弟として受け入れられ、ケンカにあけくれるようになる。そうしている内にモスキートたちは、ドラゴンの父である極道「ゲタ親方」の組織で働くようになるのだが・・・・

台湾といえば日本において最も身近な国のひとつですが、そこの映画はほとんど見たことがありません。でもまあ最近のラインナップ・・・・『ホウ・シャオシェンのレッド・バルーン』『九月に降る風』『台北に舞う雪』『海角七号 君想う国境の南』(これだけ観た)・・・・の情報を読むと、あちらの方って甘酸っぱくて切なくて心ときめくような、そういうラブストーリーが大好きなんだろうな、と。この『モンガに散る』は暴力と血しぶきに彩られた映画ではありましたが、やはりそうしたスウィーティーでリリシズムなムードが全編に漂っております。

今まで親しい存在といえば母親ただ一人だったモスキート。ですがある日を境に彼は多くの絆を手に入れます。楽しい仲間であり兄弟であるモンクたち。怖い時もあるけれど、近づきやすくて頼りがいのある父親のようなゲタ親分。わたしも学生時代はそんなに周囲と打ち解けやすい方ではなかったので、ずっと欲しかった仲間を得て、毎日が愉快でたまらなくなってくるモスキートの気持ちはよくわかります。ただ、彼にとっての不幸はその仲間たちが暴力の世界に身を置く者たちだったということ。気がつけば華やいでいた周囲の景色には暗闇が立ちこめ、いつ殺されるともわからぬ恐怖に彼らは怯えることになります。

モスキートはどこで間違ったのか。最初にモンクから差し伸べられた手を振り払えばよかったのか。私がもし彼であったなら、そんなことは到底できません。彼にとって希望と言えるものはその「手」だけだったのだから、どうしようもなかったというほかないでしょう。
ある意味、主人公よりも強烈な光を放っているのが、メンバーの中でサブリーダー的な存在であるモンク。多くの才能に恵まれながら、ドラゴンへの愛情のため、全てを捨てて彼に尽くします。しかし別の義理やゲタ親分へのわだかまりから、彼の心はやがて大きく引き裂かれていくことになります。

そうした人間模様のほかに、目を引くのは80年代なかごろの台湾の描写。当時の日本の影響がちらほら見えます。それは『ビー・バップ・ハイスクール』そのまんまの荒れ果てた高校や、スーパーマリオブラザーズの効果音。モスキートも想像の中で「かめはめ波」を放っていたりします。そのころの台湾にとって日本は憧れの存在だったようで、伝え聞くところでは松田聖子や近藤真彦が大層人気だったとか。

一方で中国から流れてきた人々に対しては、蔑んだ眼差しを向けます。当時は中国の経済の改革解放が進み、台湾にその脅威が最初に押し迫っていた時代。その不安が、そうした気持ちをことさら強くしたのかもしれません。実際、それまでの台湾は(どこまで本当かわかりませんが)ヤクザ社会においても銃はご法度だった模様。男なら飛び道具は使わず、拳と刃物で戦えと。どっちにしろ暴力なのは変わりありませんが、確かに銃が入ってきたことによって、多少は仁義を重んじていた台湾の極道は滅んでいくことになります。この映画はそんな古いタイプのヤクザへの鎮魂歌とも言えるかも。

以下、ラストについて触れます。

cherryblossom

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この『モンガに散る』というタイトル、いささかネタバレの感もあり、確かに人も死にます。ただ散ったのは命というよりも、彼らの友情のことを言ってるのではないかと思いました。モンクに両手を広げたあとで、彼を刺すモスキート。一見理解に苦しむ行動ですが、モスキートにしてみれば彼なりの「心中」だったのかもしれません。
主人公の生死に関してはぼやかしたまま幕となりましたが、二十年以上経った今、もし彼が生きていていたらどうしているだろうとふと思いました。恐らく異国の地で、かつて愛した女性と帰らぬ友を思いながら、日々を淡々と生きているのかな・・・なんて。

090408_150635さてこの『モンガに散る』、レビューがボヤボヤしているうちに東京方面では大体公開が終ってしまいましたshock が、その他の地方都市においてはこれから順次回っていくようです。わたしのよく行く静岡東部の劇場でも来月から二週間限定でかかることになりました。新宿まで見に行ったんだけど・・・ 最近そんなことばっかりです。

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January 25, 2011

新・ばったり倒れ野郎 中村誠 『チェブラーシカ』

110125_181255ウラウラウララ~ ウララ~ウララ~ ウラウラウララ~ウラウララ~ 
ロシアアニメ史上最も愛された未確認生物が、27年ぶりに日本で復活。人形アニメ映画『チェブラーシカ』をご紹介します。オリジナルはコチラを。

それはいつ、どこで生まれたのか誰も知らない(またかよ)・・・・ 物語はとある果物屋のミカン箱から猿とコアラの合成生物が発見される所から始まる。虚弱体質なのか、すぐにぶっ倒れてしまうため、その生物はチェブラーシカ(ばったり倒れ屋さん)と名づけられた。ある日彼は「ともだち募集中」と書かれた貼り紙を見つける。チェブラーシカが向った先は、孤独で優しいゲーナというワニが住む家だった。

思い起こせば二年ほど前の夏。テレビの宣伝で「お家は電話ボックス」というのを聞いてなぜか無性に興味が湧き、渋谷はシネマアンジェリカ(現在休館中・・・)までリバイバルされていたオリジナル版を観にいったのでした。
わたしはその時初めてこの生物のことを知ったのですが、ファンは日本にも前からたくさんいたようで、それ以来いろんなところでチェブちゃんを見るようになりました。ドトールとのタイアップや、TV東京での絵アニメ版の放映、はたまた冬季五輪でのロシア代表のマスコット(青くて不気味だった)として。そしてとうとう満を持しての人形アニメ版の公開です。これがロシア人ではなく、日本人の監督の手を通して作られることになったというのがなんとも驚きです。
なぜ時空を越えて、この現代日本にチェブラーシカが復活したのか。わたくし脳髄をフル回転させてその答えを導き出したところ、「よくわからない」という結論に達しました。 ・・・あーでもそうですね。今話題になってる『ソーシャル・ネットワーク』。思えばあの映画も孤独感を埋めるためにプロジェクトに没頭していく青年の話だったような気がします。「一人ではさみしすぎる。喜びをわかちあえる友が欲しい」 そう願う気持ちは時代も国も関係なく、人間がいつも抱えてる望みなのかもしれません。

では今回新たに作られた『チェブラーシカ』は、果たしてオリジナルのスピリットをちゃんと受け継いでいたか? わたしはこの点、見事に合格に達していると感じました。
以下チョイバレしながら語らせてもらうと、序盤でチェブとゲーナはサーカス団に憧れ、ろくな芸もないのに入れてもらおうとします。ここでチェブはジャグリングに挑戦。しかし二個の玉さえ上手に扱えず、結局一個の玉をポンポン空中に放り投げるだけ。しかしチェブは意気揚々と叫びます。「ゲーナー! 僕ジャグリングできたよー!」 こいつ頭悪いな・・・・ まあ「バカな子ほどかわいい」とはよく言ったものです。その必殺技でもってチェブは面接に望みますが、予想通り団長はあっさり一言「おひきとりを」。これです! この疎外感! つまはじきにされ感! でも最後には二匹のがんばりで、暖かく迎えいれられる。これこそまさに『チェブラーシカ』の真髄そのものだと思います。

そしてワニのゲーナは相変わらず底なし沼のように優しい。「ゲーナ、ご飯なんにする?」「君が食べたいものにしよう」 なんて優しいんだ・・・ 僕は上トロとウナ重が食べたいです。
この映画の前に作られたTOHOのオマケムービーも、ゲーナの優しさをよく表しています。「ゲーナは絵がじょうずだね」「君もとてもじょうずだよ。でも一体何を描いたんだい?」 何が描いてあるかもわからないのにとりあえず「じょうず」と言う。男子たるもの、こんな雄大な海のような心を持ちたいものです。

あとオリジナル版は時代を置いて製作された四つの短編からなっているのですが、こちらはほぼ一本の長編といっていい構成。そのためチェブたちの住む町の様子・人々が丁寧に描かれ、エキストラのようなキャラクターも何度も登場するうちにだんだん親しみがわいてくるようになっています。

この新作『チェブラーシカ』、ロシア版と日本版が製作されました。どう違うかというと日本版では旧作とほぼ同じ導入部のエピソードが大幅にカットされ、頻繁にナレーションが入れられています。まあこのナレーションが大人にはちょっと野暮ったく感じられたりして。
大橋のぞみちゃんの声も悪くないと思うのですが、ロシア版の評判を聞くにつれ、わたしもできればそっちで見たかったなあと。恐らく子供たちについてきやすいように・・・・という配慮でこんだけナレーションを追加したのでしょうが、わたしが見た回では後半二人ばかりお子様が劇場を走り回っていたので、あまり効果はなかったものと思われます。

ともあれ、好きになってまもないうちにチェブラーシカの新作が観られたのは嬉しかったです。ぜひここで終わりにせず、ひきつづきロマン・カチャーノフの遺産を活かし続けてほしいものです。
同時上映の『くまのがっこう』もまた心温まる一編。生きた熊のぬいぐるみたちを主人公にした話で、ぬいぐるみ特有のボフボフ感が上手に出せていました。だいぶ前のロシアの方が作った童話かと思ったら、これ、最近の日本の作家さんが作られた話なんですね。ここまで作った人の国籍を感じさせないのは、ある意味見事であります。

101225_172323a劇場版『チェブラーシカ/くまのがっこう』はまだ全国で上映中ですが、既に終了したところもあり、残りも大体今月いっぱいにようです。観そびれている方はお早めに。
また今年は三月に『ファンタスティック・ミスター・フォックス』、五月に『メアリー&マックス』と人形アニメの話題作が公開予定。こちらも楽しみなことであります。


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January 23, 2011

地中の花嫁 『仮面ライダー×仮面ライダー オーズ&ダブル feat. スカル MOVIE 大戦 CORE』

110123_185140一月ももうあと一週間。そんなころになって、ようやく今年最初に見た映画を紹介できます。 ・・・・って一番最初がこれかい!(これです!)
『仮面ライダー×仮面ライダー オーズ&ダブル feat. スカル MOVIE 大戦 CORE』参りましょう!(しかし長いタイトル・・・)

フィリップが帰ってきてから数ヵ月後。照井竜との結婚式を控えた亜希子は、そんな中でも「仮面ライダー」であることをやめない照井にヒステリーを起こし、式場の外へ飛び出す。そこで謎の怪人と接触した亜希子の脳裏に、なぜか死んだはずの父、鳴海壮吉の姿が甦る・・・
一方相変わらず欲望の研究に情熱を注ぐ鴻上ファウンデーション会長は、「この世で最も欲望の強かった人間」織田信長のミイラを発見する。ホムンクルスとして現代に最誕した信長だったが、そのありあまる欲望は鴻上ファウンデーションの思惑を越えて暴走する。

このまま年末の恒例となってしまうのでしょうか。『仮面ライダーMOVIE大戦』。昨年の『2010』がまあまあ楽しめただけに、今年も期待してたんですが果たして結果は・・・ とりあえず『W』の方から参りましょうか。
今回『W』は『仮面ライダーW』というより『仮面ライダースカル』な内容でした。翔太郎とフィリップのコンビが好きな方はちょっと納得いかないかもしれません。
しかし帽子を目深にかぶったダンディ吉川晃司もなかなかのもの。かつて布袋寅泰と組んで「チャチャ」とか「チェチェ」とか歌ってた人が、劇場オンリーとはいえ仮面ライダーをやってるんですからねえ。しかも主題歌まで歌っちゃってノリノリでした。人間どうなるか本当にわかりません。
横浜っぽい情緒にモダン風の衣装、妙にレトロチックな言い回しは石原裕次郎か赤木圭一郎を連想させます。そして途中から忍び寄ってくる怪しげな空気は江戸川乱歩。ちょっと恥ずかしいところもありましたが、在りし日の「探偵物語」をそれなりに再現できていたと思います。

で、もっと恥ずかしかったのが『オーズ』の方coldsweats01 大体やっぱり仮面ライダーに織田信長をからめるって、今の大河ドラマに出ているからとはいえ強引にもほどがあるのでは・・・・ その上登場人物の言動・行動がどうにもちぐはぐだったり、今時誰もやんないようなベタベタな演出があったり(笑) わたくし一作目から平成ライダーを見ているので井上敏樹氏のことは少なからず評価しておりますが、今回はちょっと彼の悪い面が出ちゃったかなと。
ただこの『MOVIE大戦 オーズ編』、意識してかはどうかわかりませんが、井上ライダー集大成のようなところがあります。映児くんのキャラがまんま「アギト」津上翔一になってたり、クラシックが流れる中ライダーと怪人がとっくみあってるところは『555』の第八話のよう。あと甦ったばかりに信長が妙に純真なあたりは『キバ』の大ちゃん編を彷彿とさせます。ライダーに付き合いの長い方はそのあたりで楽しめるかも。

そしてクライマックスはご想像通り、偶然ばったり出くわしたライダーたちが共闘。地球の底へとラスボスを退治に向います。この辺がまた強引なんだよな~

110123_185448ちなみにわたしが見た回のお子様たちは大変お行儀がよく、上映中ずっと騒いだり暴れたりということはありませんでした。そんだけ夢中になるほどライダーが好きだ・・・ということならうれしいんですけど。わたしのお隣の坊ちゃんも概ね静かに見てましたが、途中二度だけ「アンク出てこないなー」「アンク出た!」とつぶやいてました。アンク子供に人気あるのね・・・ あんな凶悪面なのに。

それにしても最近年中やってる感のある仮面ライダーMOVIE。当然のように次の企画が出来ています。いまだ正式タイトルは決まっていないものの、「仮面ライダー40周年記念」と銘打たれたこの作品は4月上旬に公開。オラなんだかワクワクしてきたぞ! あとこの『MOVIE大戦 CORE』もまだ一部で上映中。もう終っちゃってるところも出てきたので、見損ねている方はお早めに!

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January 19, 2011

スコープ越しの戦場 サミュエル・マオス 『レバノン』

110119_174801♪れっばっの~ん れっばっの~ん(『戦場でワルツを』より)
暮れに見た映画の紹介記事も、これでようやく最後です・・・・ 2009年ヴェネツィア映画祭で見事金獅子賞に輝いた戦争映画『レバノン』、参ります。

1982年、レバノン侵攻。新たに作られた4人の戦車小隊は、歩兵隊と共に占領地へと向う。それは簡単な任務のはずだった。だがいかなる情報ミスか、彼らは敵兵のただ中にとり残されてしまう・・・・

皆さんは戦車に乗ったことってありますか? まあ、普通ないですよね。この映画ではほとんどのシーンが戦車内のため、まるで自分もそこに乗り組んでいるような気分を味わえます。
乗務員は神経質そうな隊長、不平の多い弾込め係、腕の怪しい運転手、そして気の弱そうな砲撃手。心強いことこの上ありません。

なんせ砲撃手の青年が、「撃て」と命令されてるのに、「人を殺したくないから」となかなか引き金が引けなかったりします。え・・・ だってここは戦場であなたは兵隊さんでしょ・・・ と少なからず面食らいます。
しかしこの描写の効果で、砲撃手の青年がぐっと我々に近い存在に感じられるようになります。そして彼がスコープをのぞき込むと、我々も彼と一体となり、あたかも戦車から外を覗いているかのような錯覚に陥ります。

ただこの経験、心地よいものではありません。戦争においては、軍隊は弱者を容赦なく踏みにじります。その蛮行の共犯者となっていく過程を、ずっと追体験させられることになるわけですから。
「戦車の中」という環境がまた息苦しい。潜水艦の映画でさえ十分に圧迫感を感じるのに、5人前後しか乗れない戦車となったらその窮屈さはたまったものではありません。おまけに時々死体置き場にされるわ、床には汚水やゴミが散らかってるわ(掃除しろよ)、捕虜はしょっちゅう缶カラにおしっこをしてるわ・・・・ 今にもスクリーンからぷ~んと異臭が漂ってきそうです。

実は紹介記事などを読んで、少しエンターテイメント的な要素があるのでは、と期待していたのですが、そんな脳天気なものはほとんどありませんでした。さすがは芸術性が重視されるヴェネツィア映画祭でトップをとった作品。
(ちなみにヴェネツィアが金獅子賞で、ベルリンが金熊賞です。わたしもよくどっちがどっちだかわからなくなるんですけど。
考えてみれば監督のサミュエル・マオス氏もまた、実際にレバノン侵攻に参加してその地獄を目の当たりにした人。そんな経験を普通は娯楽仕立てになどしないものですよね。

さてこの『レバノン』、上映形式においてもちょっと変ったところがあります。(日本では)新作映画のはずなのに、現時点で渋谷のシアターN一軒でしか公開されてません。そして公開中にもうDVDが発売されてしまいました。
恐らく本当ならDVDスルーとなるところを、「ファンはスクリーンで観たいだろう」ということで、Nさんが独自に権利を買われたのかもしれません。そんなわけでか、本作はDLP形式で上映されております。
DLP形式とは何か。わたしも昨年ようやくこの言葉を知ったのですが、はやい話がDVDを専用の映写機にかけて上映する方式です。この方法だとフィルムを複製するよりも安上がりに興行ができるようです。
ただこのDLP方式の画像にも一長一短ありで、詳しくはコチラをご覧ください。
映画ファンの中にはフィルムに強いこだわりを持つゆえに、この方式を敬遠される方も多いようです。正直自分には「ああ、これはデジタルね」と見分けられるだけの眼力はありませんが、カッコつけて「やっぱ映画はフィルムだよね~」と言っておくことにします。

110119_174708そんな『レバノン』は二月初めまで引き続きシアターNで上映される予定。「なんとしてもスクリーンで」という方は渋谷までがんばって行ってください。「観たいけどそこまでは・・・」という方はアマ○ンをポチと


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January 17, 2011

アスに向って蹴れ マシュー・ヴォーン 『キック・アス』

110117_090600♪ヒーロー ヒーローになる時 あ・あー それはいまー

教育的な事情なせいかなかなか日本で公開されませんでしたが、封切られるや否や上映館が大盛況となっている『キック・アス』。この新感覚アメコミヒーロー映画を、本日は紹介いたします。

平凡なアメコミオタク少年デイヴはいつも疑問に思っていた。ヒーローに憧れる者は数多くいるはずなのに、どうしてこの世には「スーパーヒーロー」が存在しないのか。そこでデイヴは自らスーパーヒーロー「キック・アス」になることを決意する。だが何の特殊技能も持ち合わせていないもやしっ子のデイヴが、屈強な犯罪者と取っ組み合ったらどうなるか。答えは火を見るよりも明らかだった。しかしそれでも「ヒーロー」を諦めないデイヴ=キック・アス。ある時彼が強盗に苦戦している姿が、ネット上に公開されてしまう。キック・アスは一躍時の人となる。するとそれに呼応するように、何人かの「ヒーロー」が活動を開始しはじめる。一方で街を牛耳るマフィアは、キック・アスを仕留めることに血道をあげるようになっていく・・・


わたしはアメコミヒーローというのは、基本的に狂気をはらんだ存在だと考えています。まあアメリカはああいう成り立ちの国なので、警察だけには任せておけない、自分たちも犯罪と戦わなければ・・・・という気持ちになるのはわかります。ですが、ならばどうしてあんな派手派手なコスチュームを着なくてはいけないのでしょう。正体を隠したいならもっと目立たないようにするべきでは? 実際にあんな格好をしてみたいと思うのは、それこそ子供かコミックオタクくらいのものでしょう。

主人公のデイヴくんはまさしくそんなコミックオタクの一人。「なぜ誰もヒーローになろうとしない」と主張しますが、それは友人からもつっこまれているように、ほとんどの人には超能力もなければ莫大な財産もないからです。
しかし狂気にかられているデイヴくんには、その言葉は耳に入りません。すごーくゆるい特訓をしただけで「もう大丈夫だ」と思い込んでしまう。そして「ヒーロー」を実践するわけですが、このあたりは観ていて二重の意味で、すごく痛々しい。普通ならそこで懲りるはずなのに、さらにファイトを燃やしているのがキック・アスのすごいところ。やはり頭のネジが一本抜けているとしか思えません。

しかしまあ、ここまででないにせよ、十代男子というのは程度の差こそあれ、こんな狂気に駆られるものかもしれません。まったく根拠もないのに異常に自信に満ち溢れ、ついつい自分に酔ってしまう。あのころの姿をドキュメンタリーで見させられたなら、多くの人は恥ずかしさのあまり即死することでしょう(他人事のように)。そしてそうした情熱とか自己陶酔といったものは、彼女が出来て大人になってしまうと自然に冷めてしまうもの。キック君もその例外ではなく、この辺ちょっとさびしかったりします。

しかし映画はなんちゃってヒーローのお気楽話だけでは終わりません。ここで本当にいかれているヒーローが登場します。その名はビッグ・ダディ。犯罪者となれば容赦なく撃ち殺し、年端もいかない我が娘を殺人マシンに作り上げてしまう。そもそも戦う動機が人々の平和を守るためではなく、己の復讐欲を満たすためです。
多くのアメコミヒーローがそれほどいかれて見えないのは、彼らのほとんどが殺人を自らに禁じているからです。しかしビッグ・ダディにそんな常識は通用しません。本当に力を持つ者が暴走するととんでもないことになってしまう、いい見本。その前にキック・アスはなんとも無力に見えます。

そんなビッグ・ダディに寄り添うのが、彼の相棒でもあり娘でもあるヒット・ガール。やってることはお父さんと一緒なんですが、なぜだか彼女はいかれているようには見えません。それはたぶん彼女がまだ子供だから。大人が仮装パーティーでもないのにヒーローのコスチュームを着てたら、普通ぎょっとしますが、子供の場合はかえって微笑ましく見えたりします。そして子供は大人からほめてもらえると、どんなことでもひたむきにがんばるものです。本当に親の教育って大事だなあ、ということをしみじみと感じさせるキャラクターです。

かように、多くのアイロニーに彩られた『キック・アス』。それもそのはず、原作者は怪作『ウォンテッド』も手がけたマーク・ミラー(映画よりもっとぶっとんでます)。ただヒーローたちをおちょくり、皮肉り、こきおろしながらも、この映画からは彼らに対する愛情が感じられてなりません。なんて歪んだ愛情でしょう。
自分酔いが高じてヒーローをやり出したキック君。痛々しさのあまり目を覆わんばかりだった彼が、クライマックスではなんと雄々しく見えることでしょう。きっと原作者も監督のマシュー・ヴォーンも製作のブラッド・ピットも、「ヒーローなんて・・・・」と斜にかまえながらも、本当はなりたくてなりたくてたまらないのです。わかる! その気持ちは非常によくわかる! でもブラピ、家庭(特に奥さん)のことも大切にな!

110117_090521そんな『キック・アス』はまだまだ一部で絶賛上映中ですが、もう再来月中旬にはDVDが出ます。早ええ! 恐らく今後米国と公開のタイムラグがある映画は、どんどんそうなっていくことと思います。
監督マシュー・ヴォーンは現在X-MENサーガの新たなる幕開けとなる『X-MEN:ファーストクラス』を担当中。変化球だった本作に比べて、王道とも言えるこの素材を彼がどう料理するのか、興味津々で待ちたいと思います。あと配給会社のみなさん! 本国でこけた格闘ラブコメアメコミ映画『スコット・ピルグリムVSザ・ワールド』の公開を、どうぞよろしく!


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January 15, 2011

コンピューターおとうさん ジョセフ・コジンスキー 『トロン:レガシー』

110115_183329今をさること約30年前、「コンピューターで作られた映像」を初めて売りにした『トロン』という映画がありました。不幸にも『E.T.』とぶつかってしまったために、売り上げ的にはあまりふるわなかったようですが、その斬新な映像はティム・バ-トンやジョン・ラセターなど、多くのクリエイターたちに影響を与えたのでした。
そして2010年も終わりを迎えた頃、なぜかこの『トロン』がスクリーンに復活いたしました。「3D」という新技術の洗礼を受けて。『トロン:レガシー』、紹介いたします。

1980年代、様々なアイデアによりコンピューター界に革新を巻き起こしたケビン・フリンという男がいた。だが彼はその絶頂期に、謎の失踪を遂げてしまう。時は移って現代。一人残されたケビンの息子のサムのもとに、父からのメッセージが届く。指定されたゲームセンターでサムがコンピューターの電源を入れたとき、驚くべきことが起こった。世界は一変し、謎の巨大マシンが上空から現れたのだ。そしてサムはマシンに連行された先で、父と瓜二つの男に出会う・・・

人は神に似せて造られたと言い、子は親に似るものと言います。その言葉の通り、人は神を真似て様々な物を造り出そうとします。そして神が造ったもので最も壮大なものが、この「世界」です。
本当に神になりたい・・・という願望があるのかどうかは別として、この「望み通りの世界を作ってみたい」という欲求に駆られる人も多くいます。ある人は小説や映画などのフィクションという形を通して。またある者は、会社や団体といった組織を作ることによって。そしてこれは、コンピューターの中にまるごと一つの世界をこさえてしまった男のお話でもあります。

コンピューターの中で造られた世界ならば、さぞかし理性的で平穏なものかと思えばさにあらず。その世界のいたるところに、現実社会と重なって見える部分があります。
人の形をした者が「プログラム」と呼ばれ、組織の歯車として圧政的な管理のもとにあること。弱肉強食的な争いがあり、不要とみなされた「プログラム」は容赦なく排除されること。そしてごく一握りの存在が、世界全体を支配し、弱者を虐げていること。
完璧だったはずの世界は、創造者が作り出したあるプログラムの反逆により、見るも痛々しい惨状を呈すことになりました。まるでアダムとエバが神に逆らったことにより、楽園が失われ、地上に多くの不幸がもたされたように。
その世界に、男の「息子」が呼び寄せられるところから物語は動き出します。キリストが天から地上に使わされ、世界に変革をもたらそうとしたように。果たして男の息子はこの世界を再び楽園に戻すのか。それとも罪深い世界をメモリから消去してしまうのか。

神が創ったものと違って、人間が造ったものは完璧にほど遠く、欠陥も多いもの。それでも人はいつか天然自然を越えた完全なものを作り出すことができるのか。『トロン:レガシー』はそんな疑問が投げかけられた作品ではないでしょうか。


・・・・ととうとうと最もらしいことを述べて参りましたが、正直に告白します。実は自分この映画ずっとうとうとしながら観てました。よって上の駄文も果たしてどこまで本当にあてはまるのか、よくわかりません。疲れていて満腹の状態で3D映画を観てはいけないと『アリス』の時に学んだはずなのに・・・・ どうして人は同じ過ちを繰り返すのでしょう。真剣に読んでくださった皆さん、どうも申し訳ありませんでした。

110115_183358さてこの『トロン:レガシー』、おそらく昨年の『アバター』の「夢よもう一度」ということでこのタイミングで公開したのかもしれませんが、思ったほどに国内での興行成績が伸びていない模様。『アバター』がヒットしたのは立体効果の目新しさもあったでしょうけど、話の面白さ、わかりやすさもあってのことではないかと。
ただ本国ではそれなりに受けているのか、さらなる続編の企画も進行中、なんて噂も飛んでいます。それが実現するまでに、今度はしっかりと起きて、もう一度この作品を見ておきたいと思います・・・・


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January 11, 2011

生き残るためのヒント ルーベン・フライシャー 『ゾンビランド』

110111_181515ゾンビランド ゾンビゾンビランド ゾンビランド ゾンビゾンビランド
もしもぼくがいつか君と出会い殺しあうなら そんな時はどうか生の意味を知ってください 

・・・・昨年見た映画の紹介がまだ4本も溜まっています・・・
今回はとりあえず都心部より4ヶ月ほど遅れて上映された『ゾンビランド』、いってみましょう。

時はかなり現代に近い近未来。奇病の発生により、人類の大多数はゾンビと化してしまった。そんな地獄のような世界を、元ひきこもり青年のコロンバスは、自らあみだした「32のルール」を駆使して生き延びていた。ある日コロンバスは久しぶりに腐っていない人間に遭遇する。彼の名はタラハシー。ゾンビ狩りとトゥインキーという菓子に異常な執着を示す男。車を失ったコロンバスは、タラハシーの誘いに乗り、彼の車に同乗することになったのだが・・・

吸血鬼の次はゾンビ・・・ いや、そんなにこの手の怪物が好きってわけでもないんですがね。むしろ怖いです。しかしこの『ゾンビランド』は予告や噂から「相当おバカな映画らしい」ということが察せられて、興味を抱いていたのでした。
しかし観てみて驚きました・・・ 確かにバカ映画です。ですが、それと同時に立派な教育映画でもある。
年も明けましたが、相変わらずいいニュースはなく、景気も政情も不安定なままです。ですが周りがゾンビだらけな世の中に比べれば全然マシじゃないでしょうか? そしてこの映画ではゾンビだらけの世界ですら、気の持ちようでハッピーにやっていけることを教えてくれます。
そのヒントとなるのがコロンバスの作った「32のルール」。これが実社会でどれほど役に立つのか、ちょっと検証してみることにします。

1.有酸素運動:◎ いざという時早く動けるのは何かと得ですし、ダイエットにもなります
2.二度撃ちして止めを刺せ:○ ま、止めに限らず、二度確認しておくことは大事かも
3.トイレに用心:△ これはそんなに気にしなくてもいいかな~ ゾンビだらけの世界でなければ
4.シートベルトをしろ:◎ これは大事です。シートベルトは命のベルト
5.ゾンビを発見したらまず逃げろ:? 一応気をつけましょう
6.フライパンでぶっ叩け:× フライパンは料理に使うもの。殴るなら棍棒で
7.旅行は身軽であれ:◎ 旅行の基本です
8.クソったれな相棒を見つけろ:△ 人によりけりかな
9.家族・友人でも容赦(ようしゃ)しない:△ その人が犯罪者なら
10.素早く振り向け:◎ 志村、うしろうしろ!
11.静かに行動すべし:○ 映画館の中では特に
12.バウンティ・ペーパータオルは必需品:? バウンティって何?
13.異性の誘惑には注意:◎ 大抵は結婚詐欺です
14.ショッピングモールは補給基地:△ ウチ、ショッピングモール遠いしなあ
15.ボウリングの球をぶん投げろ:× 床が痛みます
16.人の集まる場所は避けろ:△ たまには街に出ましょう
17.英雄になるな:・・・ なりたい
18.準備体操を怠るな:◎ 急になれない運動をすると足がつりますからね
19.葬儀・埋葬の必要はない:△ これは人それぞれかな。わたしはいらない派
20.人を見たらゾンビと思え:× 妄想です
21.ストリップクラブは避けろ:? A海でもかつては2軒ほどあったんですが
22.逃げ道を確保しろ:◎ 冬場は火事が多いですから
23.金品よりも食料確保:○ 金品もできたらもって行きましょう
24.生き残るためには犯罪も:× 犯罪は犯罪です
25.火の用心:◎ マッチ一本火事のもと
26.肌の露出は最小限に:△ たまには目の保養をさせてください。野郎は別にいいです
27.就寝前には安全確認:◎ 戸締り用心
28.食事と風呂は短時間で:△ 風呂も飯もゆっくり味わいたい派
29.二人組で行動しろ:△ お化けがいそうなところはその方がいいよね
30.予備の武器を持て:△ 武器を持つより敵を作らないことです
31.後部座席を確認しろ:? 深夜に運転していたら、誰も乗せてないはずなのに・・・ ヒイイ!
32.小さいことを楽しめ:◎ 何でも楽しんだものの勝ちです

というわけで◎が10個、○が4個。あれ? 意外と使えな・・・ はい、これさえ覚えておけば世界不況もなんのそのです! ハイ!

ただルールというものは自分が便利に生きるために使うものです。せっかく決めたものならば、尊重することも大事でしょう。しかし本当に重要な局面においては、そのルールを飛び越えて考えなければならない時もあります。この映画はそんなことまで教えてくれます。

110111_181551そんな『ゾンビランド』はさすがにもうほとんど上映終了のようですが、もう来月頭にはDVDが出ます。このいかれた世界観を未見の方はぜひ体感されてください。
全米での大ヒットをうけて、既に続編も決定しているそうです。わたしの予想ではトゥインキーが切れたタラハシーが生死の境をさまようとか、そんな話になると思うのですがいかがでしょう。

生きてなくても 人でなくても 君を逃がしはしない
決して死なない 強い力を ぼくはひとつだけ持つ
ゾンビランド ゾンビゾンビランド・・・(fade out)

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January 05, 2011

直射日光は肌を痛めます ピーター&マイケル・スピエリッグ 『デイブレイカー』

110105_181301宿題記事が七本もたまっているので、自分にムチ打って連日更新です! 今日はイーサン・ホーク主演の新感覚ヴァンパイア・アクション『デイブレイカー』ご紹介します。誰だ! 今デブって言ったの!(被害妄想)

時は近未来。奇病の流行によりほとんどの人類が「吸血鬼」へと変貌を遂げた世界。わずかに残った旧来の人類を「食い物」にせねばならない現実に、研究員エドワードは心を痛めていていた。しかし彼が悩んでいる間にも、新人類が必要とする血液は残り少なくなっていく。エドワードはその問題を解決するため、人工血液の開発に力を注ぐのだが・・・・

欧米の人って、本当に吸血鬼の映画が好きですよね・・・ 昨年だけでも『ダレン・シャン』『ぼくのエリ 200歳の少女』『トワライト エクリプス』などがありました。そんで近々『ぼくのエリ』のハリウッド版も公開されるのかな? とにかく「もうわかったから!」と叫びたくなるほどの、この愛しっぷり。日本にも妖怪は数あれど、ここまで愛されてるものはあるでしょうか?(強いて言うなら鬼太郎とねずみ男くらい?) 
なぜ彼らはこれほどまでにバンパイアにひきつけられるのか? その理由をワタクシこの超頭脳をフル回転させて考えてみましたが、「よくわからない」という結論に達しました。ただキリスト教圏の人にとって、血は日本人よりも「神聖なもの」というイメージが強いようで、その辺にカギがありそうな気がします。こともあろうに神聖な血を、ゴクゴク飲んでしまう。そうしたところにファンは背徳的でゾクゾクっとするような魅力を感じるのかもしれません。ゾンビもたぶん一緒ですね。こちらはやはりタブーとされてる人肉食がお家芸なので。

ところでみなさんは、「自分が吸血鬼になったらどうしよう」と考えたことはありますか? ・・・うん、普通ないっすよね・・・ この映画ではもしバンパイアになったら、こんなことに気をつけて、こんな風な生活を送ればいいんだよ!ということを教えてくれます。で、この吸血鬼生活のよい点と悪い点について列挙してみました。

よい点
・年をとらない
・病気をしない

悪い点
・陽にあたると死ぬ
・血が不足すると痴呆が進む

・・・う~ん、こりゃどっちもどっちだなあ。だいたい日中外を出歩けないというのが不便極まりないですしね。でも「ずっと若くいられるのならそれくらい我慢する!」という人もいるだろうし。わたしはこれ以上アホになったら困るので、とりあえず人間でいたいです。

で、お話は進むにつれ、どんどん血液不足が深刻になっていきます。わずかな血を求めて争いあう吸血鬼たち。まるで現代のエネルギー問題を風刺してるかのようです。本当にガソリンはまた値上がりするし、これからどうなっちゃうんでしょうね・・・ マジで太陽エネルギーに期待を託すしかないのでしょうか。
しかし、そうしたテーマというのは本当に隠し味程度のもので、この映画はあくまでも「スプラッタファンのための娯楽作品」です。例えば異常を来たしたある吸血鬼さんが、ボン!と四散するシーンがあります。これ、明らかに破裂する必要ないですよね。普通に苦しんで倒れるだけで十分だし、その方が自然です。でもやっちゃう。その理由は「ファンサービス」以外の何物でもありません。

そんな笑っちゃうような部分もありますが、哀愁を帯びたイーサン・ホークの表情が、作品にそれなりの風格を与えております。彼を助けるホモ・サピエンスを演じるのが、名優ウィリアム・デフォー。基本悪人ヅラの彼が、ヒゲをたくわえただけでけっこういい人に見えてしまうのは意外な発見でした。 

110105_181333果たしてエドワードは人類を家畜の状態から救い出すことができるのか。『デイブレイカー』は辛うじてまだ、やってるところではやっております。
本当に吸血鬼は吸血鬼で大変なんですよね。ラクな仕事はないね~wobbly


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January 04, 2011

カラスが駒鳥になるまで リドリー・スコット 『ロビン・フッド』

110104_183051新年ということで、気持ちも新たに(というか気持ちだけ・・・)再スタート! 2011年最初の記事は、リドリー・スコット監督の最新作『ロビン・フッド』参りましょう。

お話は奇しくもリどす子作品『キングダム・オブ・ヘブン』のちょい後から始まります。張り切ってエルサレムまで行ったはいいが、ヘロヘロになって帰ってきたリチャード王率いる十字軍。その中に歴戦の戦士でサイコロと弓矢の扱いに長けたロビン・ロングストライドの姿もありました。ひょんなことからある騎士の剣をイギリス北部のノッティンガムまで届けることになった彼は、またまたある事情から領主と未亡人を助けて、悪党どもと戦うことになります。

ロビン・フッドといえば一般のイメージでは、森に隠れ住んで悪代官をやっつける正義のヒーロー、庶民の味方というものかと。日本でいえば水戸黄門と鼠小僧を足したようなものでしょうか。が、今回のロビンさんはなんかそういうイメージとずれがあります。戦うのは悪代官ではなくもっぱらフランス軍だし、何より誰も彼のことを「ロビン・フッド」と呼ばない(笑) まあ早い話が今回の映画は、みんながよく知ってる伝説の前日談というところ。
ロビン・フッドのお話はこれまで何度か映画化されております。有名どころではオードリー・ヘップバーンも出演した『ロビンとマリアン』、ロビン(笑)・ウィリアムス主演のパロディ『キング・オブ・タイツ』、そしてケビン・コスナーの人気の絶頂期に作られた直球ものの『ロビン・フッド』。
そういう数々のロビン映画と同じものを作ったところでしゃあない、ということで今回はそういうストーリーにしたものと考えられます。

ロビン・フッドの伝説で欠かせないサブキャラクターが二人おります。一人はロビンの恋人であるマリアン。ケビン版では若さはじけるピチピチのお嬢さんだったのに対し、こちらではケイト・ウィンスレット演じるファイティング熟女。「リドリーさんって暴力は大好きなくせに、ほんとにお色気に興味ねえよな」ということをあらためて思い知りました。
もう一人は史実上の人物リチャード獅子心王。定番では不在の間に悪者と戦ってくれたロビンに感謝する、「いいもの」の役割を果たすことが多いようですが、今回は「なんだかなー」という扱い。たぶんイスラム教徒を虐殺したという経歴が、中東との平和を願うリドリー氏には気に入らなかったのでしょう。
ほかにも今回コメディ・リリーフとして登場するタック和尚なども、向こうでは有名なキャラクターのようです。

正直いってとても「明るい」とは言いがたいリドリー・スコット作品。彼の撮る映画は大体において虚無感に覆われていて、みんな笑ってハッピーエンド、というものはほとんどなかったように思います。決して悲劇的な結末ではないにせよ、なんとなく手放しでは喜べないような余韻が残っていたりして。
それが今回は全体的にほのぼの明るいムードに包まれております。御大もさすがに70を越えて丸くなってきたのか。でもまあお得意の暴力描写は健在であります。最近のインタビューで「わたしだって休日には犬と戯れる穏やかな男なんだよ」と答えておられましたが、「絶対ウソだね」と思いました。

個人的には天涯孤独だったロビンが、不思議な経緯から新たな父を得て、そして実の父への誤解が解けていく・・・ そんなあたりに心温まるものを感じました。そういう血のつながらない親子の情愛とか、絶たれた絆の回復とかにワタクシ弱いもので。そういえばやはり現在公開中の『トロン・レガシー』も、父と子の絆が重要なテーマになっていましたが、ロビンといい、トロンといい、母親の影がやけに薄いのはなぜなんでしょう・・・ 

110104_183224そんなわけで『ロビン・フッド』は現在全国の劇場で上映中。まだもう一、二週間はやっている模様。リドスコ師匠は次は制作か監督かであの『エイリアン』の新作に関わるとのこと。どうぞいつまでもお元気で!


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