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December 22, 2010

愛の波動砲 山崎貴 『SPACE BATTLESHIP ヤマト』

101222_181322さらばー ちきうよー (ばばばばんー) たびだーつふねはー(ばばばばんー)

アニメブームの魁となったあの『宇宙戦艦ヤマト』が、実写映画となって帰ってまいりました(去年アニメでも新作があったのですが・・・)。『SPACE BATTLESHIP ヤマト』ご紹介いたしましょう。

西暦二千・・・二百年くらい?地球は宇宙より現れた謎の敵により、放射能漬けにされてしまっていた。そこへまたも宇宙から謎のカプセルが送られてくる。中には「助けてやっからイスカンダル星まで来いや」みたいなメッセージが入っていた。偶然そのカプセルを拾った元パイロットの古代進は、新造の宇宙戦艦ヤマトに乗り組み、地球に青さを取り戻すべく仲間たちとイスカンダルを目指す。

どちらかというと『ガンダム』や『999』の方が好きだったわたしにとって、オリジナルの『ヤマト』はもう記憶もだいぶおぼろげな作品です。断片的に覚えているのは「地球滅亡まであと○○日」とか、ここぞという時の波動砲とか、死んでたはずなのに普通に再登場してたりとか、アナライザーが森雪のスカートをめくっていたりとか・・・ 
しかしやっぱり何より強烈に覚えているのは、ヤマトが宇宙空間をババーンと進んでいるそのビジュアル。普通船ってヤツは海に浮かんでいるものなので、おおむね下半分は見えないものです。そいつがおなかを丸出しにして宙を漂っているイメージは、かなり強烈なものがありました。そして先端にいかにもって感じの、ドでかい穴が開いていたのもインパクト大でした。

で、今回のリニューアル版もそのヤマトの無茶さ加減がかなりいい感じで出ていたと思います。巨大な戦艦が地中から土くれをふるい落として出てきたりとか、宇宙空間をグリングリン回転したりする映像は、少なくとも実写ではこれまで誰も見たことがなかった映像でしょう。そういう点は大いに評価できます。
ほかにもお辞儀をする戦闘機やアナライザーの意外な大活躍なども楽しませてもらいました。

ではストーリーの方はどうか。先に申したようにオリジナルをろくに覚えてないわたしが思い出したのは、むしろ『アルマゲドン』とかドラマ『ギャラクティカ』などでした。SFには「冷たい方程式」テーマというものがあります。極限の状況を強いられる宇宙空間では、皆が助かるために誰かを犠牲にしなければならないこともある・・・ そういう話です。
最初はそれに反発し、誰一人犠牲を出さない道を選んでいた古代。しかし状況が厳しくなるにつれ、彼もまた苦渋の選択を強いられることになります。
そうしたテーマが非常にシリアスにテンポよく語られるのですが、ところどころにふっと我にかえってしまう要素がありました。さすがに今ではちょっと古めかしい碇のマークの制服とか、もろにセットのようなブリッジとか、「なんで地球の危機なのに日本人しか出てこないんだろう」という疑問とか・・・ そういうものです。
その辺を上手に頭の隅に追いやって、登場人物になりきるのがこの映画を楽しむコツです。幸いわたしはなんとか自分をごまかしきりました。涙ぐみさえしました。自分のバカさ加減に父ちゃん呆れて涙も出やしません。

監督は『ジュブナイル』『ALWAYS』の山崎貴監督。いま最も日本で活躍しているVFXアーティストと言っても過言ではないでしょう。フィルモグラフィーを見ると、彼は最先端の技術を用いて「懐かしいもの」「かつてあったもの」を再現することにこだわっているように思えます。人によっては出来たものに違和感を感じる方もおられましょうが、わたしはこういう方向性のわかりやすい監督好きです。次はぜひ怪獣ものを作っていただきたいものです。

20071102190729昨年の『復活編』があまり盛り上がらなかったのに比べ、今回はかなりヒットしているようですね。やはりキムタクの人気がものをいったというとこでしょうか。まあ彼以外の俳優さん・・・特に西田敏行・橋爪功・山崎努といったおじさんたちも、慣れない土俵でがんばっておられました。
この作品が真にヤマトのスピリットを受け継いでいるならば、○○や○○が○○でしまったにも関わらず、何事もなかったように続編が作られると思うのですが、いかがでしょう。

さて、2010年もあと十日を切りました。まだレビューできてない映画も数本あるのですが、恒例の漫画ベスト・映画ベストをもって本年の締めといたします。


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Comments

伍一さん、

この映画、興味あります、とても。
歌はまだ覚えています!
さびの部分の<ウチューセンカン、ヤッ、マッ、トォー  >という所の直後の音楽フィレーズが、何か良いですよね。

Posted by: まみっし(hino氏の義姉) | December 22, 2010 08:20 PM

>まみっしさん

こんばんは! おお、なんか英国からコメントが二連続で届いてなんかすごいな

わたしもこの歌、というかこの曲は非常になじみぶかいです。なぜならこれ、小学校時代、運動会の行進曲の定番だったから(笑)

>直後の音楽フィレーズ

ばっぱらー ばばばばっぱらー(あああ~)という感じだったでしょうか
正確にはこちらをどうぞ
http://www.youtube.com/watch?v=uETP3sNn9n8

Posted by: SGA屋伍一 | December 22, 2010 09:03 PM

伍一くん、上手い!
さすが戦艦の上手いこと!描き慣れている?というか、本領発揮ですな。
私も観ないである程度描けたり~♪

ロンドンから3連続だよ☆と浮かれて書いてみたものの、小学校の運動会の行進曲かよーっ!
ふんっ!(一人で勝手に怒っています)

さあて、日本で何本観られるかな?
これから飛行機ですわ。今朝、母子で寝坊して終業式遅刻しましたしね。ゴミ出しぎりぎり間に合いましたが。

Posted by: ノルウェーまだ~む | December 22, 2010 09:37 PM

デスラー総統が何だかちょっと若いw
結局出てこなかったけど伊武雅刀さんが声やってくれたら
それで充分さ~。後は脳内補完します^^
とりあえず、この作品は賛否両論ありますが、私は山崎監督の
考えるヤマト像をとても楽しませてもらいました♪

さーて年の瀬だね~。
今年はまだあと10本は観る予定です!(笑)

Posted by: KLY | December 22, 2010 10:56 PM

>ノルウェーまだ~むさん

帰国んすこー 今頃は機上の人でしょうか
あはは・・・ まだ~むさん、そんなにヤマト好きだったのね すいません。いいですよね、ささきいさおボイス

まあそれだけの愛情があるならばこの映画も楽しめるかな。あるいは愛情が裏目に出るか・・・ 
わたしのここ最近のおすすめは例の『国家代表!?』なんですが、さすがにもう終っちゃってるかなー 新年会でお会いできるのを楽しみにしてます

Posted by: SGA屋伍一 | December 23, 2010 07:46 AM

>KLYさん

ふっふっふ・・・ おはようございますKLYさん・・・・(デスラー風に)
わたしとしてはあのクリスタルキングな伊武雅刀けっこう高ポイントだったのですが、旧ファンはやっぱり生身で出て欲しかったでしょうかね。しかし青いドーランを塗った伊武さんだとやはり無理があるような・・・

全体的にもっとおもいっきり変えちゃってもよかったんじゃないの?という気もしましたが、まあ山崎監督はよくがんばったと思います

わたしは残りあと四本見る予定。そうすると来年へのレビュー持越しは全部で六本か・・・ 昔から宿題をよくためるタイプでした

Posted by: SGA屋伍一 | December 23, 2010 07:52 AM

こんばんは(*^^*)
私も完璧にハイジ派だったので、リアルタイムでは見ていないのですが
学校帰りの夕方の再放送で結構ハマったクチです。
でもまあ、あの頃のいい思い出って感じで、今さらヤマトぅ〜!
それもキムタクーーーって感じでしたが、観てみるとそれなりに
楽しめたかなぁ・・・・。
古代進の衣装を着たキムタクは若干うざくはありましたけどねぇ・・・(笑)

Posted by: ルナ | December 24, 2010 12:48 AM

>ルナさん

おはようございます
わたしがいわゆる「名作劇場」で最初にリアルで見た記憶があるのは、その二つあとの『母をたずねて三千里』からですね。なにもかもがみな懐かしい・・・
ヤマトのテレビシリーズはほとんど記憶になく。映画のテレビ放映で覚えてるクチです。そういや昔は年末年始によくやってたような・・・

この映画は巨大戦艦や宇宙マシンに対する愛情がないと厳しいかも。でもそれなりに楽しめたようですね
キムタクには当然別に思いいれはありませんが、『武士の一分』での彼はなかなかがんばっていたと思います

Posted by: SGA屋伍一 | December 24, 2010 08:04 AM

突然で申しわけありません。現在2010年の映画ベストテンを選ぶ企画「日本インターネット映画大賞」を開催中です。投票は1/20(木)締切です。ふるってご参加いただくようよろしくお願いいたします。
日本インターネット映画大賞のURLはhttp://www.movieawards.jp/です。
なお、twitterも開設しましたので、フォローいただければ最新情報等配信する予定です(http://twitter.com/movieawards_jp)。

Posted by: 日本インターネット映画大賞 | December 24, 2010 10:59 AM

>日本インターネット大賞さま

毎年お疲れさまです! 今年も参加できるかは微妙なところですが余裕があったら投票させていただきます。よろしく~

Posted by: SGA屋伍一 | December 26, 2010 06:50 PM

「ヤマトの諸君」
と、我が畏敬すべき大ガミラス総統閣下
ちゃんと描けてますよ!

まいどです。
ブレイヴ完成させてそのかっこよさは気に入ったものの
残ったマスラオをどうしようかと・・・・・・・。
あのゴキブリみたいなかっこに笑いが・・・・・・・・・・・・・・あれ?

あ、ごめんごめん、ヤマトのレビューな(汗。
実写になると配役上の都合で性別が変わることあるのは
仕方ないけど、もともと「戦う男、燃えるロマン」と、
2番の歌詞のとおり、ヤマトは男の船なので
女性率を上げようとして相原や佐渡先生を
勝手に女にするべきではないと思います(爆

因みに復活編がイマイチなのは
冒頭に「某都知事の名前を出したことに尽きるね」
今回の一件でよーく解った(笑)。

とりあえず、セコムや日立がCMでヨイショしてくれていたお陰で
内容については不備ないだろう。

CR-Zの友達が感激していたよ。
(こやつはイカ娘に惚れたり(?)、
CR-Zのモードボタンをいたずらして「TRANS AM」なんて
書いたりとユカイな奴なんだ(笑)。

ヤマトのプラモが完全新規で出た。
ガンプラのテクノロジーが投入されているので
色塗らなくてもきれいに仕上がるぜ。

でも、俺はダブルオーの積みプラを消化しないと・・・・・。

Posted by: まあくん@葛城 | December 27, 2010 09:40 PM

>まあくん@葛城さん

ふっふっふ・・・ まあ君さん・・・
愛車の方は相変わらず好調でしょうか・・・

そちらはたぶんヤマトの直撃世代ですよね。わたしはブーム当時はまだ話がよくわからなかったりして。というか、ガンダムも全然わかってなかったな(笑)

そういやわたし親にヤマトのプラモかってもらったことあるんですよ。まともに組みあがらなかったけど・・・ 切ない思い出でやんす
サド先生はわたしも少し変わりすぎでは・・・と思いましたが、まあ主役にしてからがキムタクだし。相原にいたっては記憶にございません。ごめん相原
女性陣が増えたせいかは知りませんが、かわりに森雪がだいぶ男っぽくなってましたよ・・・

今回は都知事は関係してないのかな? 最近いろいろひんしゅくかってますよね

ファンも総じて拒否反応かと思えば、喜んでる方もけっこういたりして。まあくんさんもまだ未見でしたら試しにごらんになっては。メカ描写はなかなかよくできてましたよ~

Posted by: SGA屋伍一 | December 28, 2010 07:59 AM

伍一くん、こちらにも~☆
あー、これ丁度1年前だったのね。
私が帰国直前に書いているという・・・しかも何言ってんだかわからん(汗)

さて、実際映画を見て、私は愛情をもって、しっかり古代進らしき人物と森雪らしき人物がいたかもしれないけど、ヤマトかっこいい~~!と楽しむことができました。
特にDVD特典の、東京上空を飛ぶヤマトとか、名古屋上空のヤマトとか、スタッフのヤマトに対する愛情をひしひしと感じて、役者はどうでもいいからヤマト描かせてくれーというオタク魂を感じたよ。

Posted by: ノルウェーまだ~む | December 19, 2011 04:59 PM

>ノルウェーまだ~むさん

ふっっふっふっ ヤマトの諸君スコー
本当に一年経つのは早いものですね・・・
一時帰国の際、みんなで行った静岡おでんのお店おいしかったですよね。ああ、なにもかもがなつかしい・・・

まあこの映画のメインはやっぱりヤマトだと思いますよ。次にアナライザー。次にギバちゃん。あれ? ムキタク出てたっけ?

>特にDVD特典の、東京上空を飛ぶヤマトとか、名古屋上空のヤマト

これはあれですよ。お台場とか静岡に立ってた等身大ガンダムを見て「ヤマトでもあんなことしてみてえ!」と思ったんじゃないかしら。早く作って! もちろん宙に浮くやつ!

Posted by: SGA屋伍一 | December 19, 2011 10:00 PM

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