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December 20, 2010

クール・グライディング キム・ヨンファ 『国家代表!?』

101220_1746041998年長野冬季五輪。日本が日の丸飛行隊の快挙に熱狂していたその影に、知られざるドラマがあった・・・ 本日は韓国にて4週ぶっちぎりのトップを飾ったというスポコメ映画『国家代表!?』をご紹介いたします。

幼い頃アメリカに里子に出されたボブは、母親を探しに成長して再び祖国に帰ってきた。そんなボブに、一人の怪しげな男が近づく。彼の名はパン。ボブがスキージャンプのジュニア代表だったことに目を付け、韓国初のジャンプ代表にならないかと誘ってきたのだ。しぶしぶ引き受けたボブは、薬物で他のスキー競技を出場停止になった三人のメンバーに引き合わされる。間に合わせのメンバーで、練習用のジャンプ台もないまま、彼らはオリンピック目指して練習を始める。

そういえばスキージャンプってあまり物語の題材になったことないですよね。わたしが知る限りでは東野圭吾氏の小説『鳥人計画』くらいでしょうか。今年の冬季五輪でもチラチラ見ていましたが、遠くからひいたカメラで見ている分にはなんとなく優雅な印象があります。
しかしこの映画を見て、そのイメージを一変させられてしまいました。いやあ、すごいですよスキージャンプは・・・・ あーんな高いところから、あーんな急角度を、あーんなものすごいスピードで滑り降りていくわけですから・・・ そして最後に飛んでいく。一歩間違えれば地面に大激突です。
もともとは刑罰だった、というのはガセだそうですが、人間のやる競技じゃないですよ、これは。

この映画では選手の視点になりきることで、そんなスキージャンプの恐怖を体感させてくれます。こういう映像をこそ、劇場の大スクリーンで見ていただきたい。できればこの部分だけでも3Dで作って欲しかった・・・というのは無理な話か。まあ多少は誇張されてるかもわかりませんが、それは今までジャンプの選手しか見られなかった光景であります。

そんな競技の特性を反映してか、お話も非常にふり幅が激しいです。あらすじからもわかるように、基本はバカ話です。冒頭に「これは実話をもとにしたフィクションである」というテロップが入るのですが、かなーり虚構部分が多い模様。
普通スポ根もので障壁となるのは、強力なライバルとか、思わぬ負傷とかそういうものです。ところがこの映画ではお金のことだったり、ケンカのことだったり、上の都合のことだったり、なんか情けない理由が多いです。
集められたメンバーもイケメンよりお笑い系の顔立ちが中心。並んでいると自分のことは棚にあげて、「そろいもそろって頭が悪そうな連中だなあ」なんて思ってしまいます。

しかしそんな情け無げな連中が一丸となるあたりから、拳に力が入ってきます。
最初は自分のためにみなを利用していたコーチが、チームのために土下座をするシーン。
あんなにひどい仕打ちを受けたのに、ジェボクが「尊敬する人は?」と問われて記者に伝えた答え。
怖さから一度は逃げ出したボングが、兄のために再び戻ったジャンプ台で、胸を叩く仕草。
この辺でもうわたしの涙腺は原田選手なみにゆるゆるだったのですが、最後にボブが母親への思いを吐露するところで大決壊。顔面が涙と鼻水とヨダレでぬらぬらになりました。こういう時に限ってハンカチもティッシュも忘れてくるし・・・

本当にね~ もうね~ 年のせいかこういう親子の情に訴えた話に弱いんです そういえば韓国映画の名作・話題作には、「親子」をテーマにしたものが少なくありませんね。

101220_174625ぶっちゃけあんまし韓国映画っぽくないんですが、それでも今年のマイベスト・コリアンムービーとなった『国家代表!?』。もう大体公開終っちゃってますが、まだ見られるところも辛うじてある! お近くの方はどうぞご覧になってみてください。

今年も残すとこあとわずか・・・ 映画のレビューもできそうなのはあと一回というとこでしょうか。風邪に気をつけて、せわしい年末を乗り切ってまいりましょう。自分はおりこうさんなので、風邪はひきませんけどね。

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Comments

冬季オリンピックの種目って、結構人間の限界超えてないか?ってなスポーツ多いですよね。リュージュとかもありえないし、ダウンヒルとかもとんでもないスピードで滑降するし。
でもジャンプはやっぱ筆頭だよなぁ。
基本スポコンものなんで王道で感動してましたが、流石は韓国、あの日の丸飛行隊を完全シカトってのがさすがですよね。(爆)まー金メダルとってたから、けなされなかっただけましか^^;

Posted by: KLY | December 20, 2010 10:08 PM

>KLYさん

こんばんは 毎度ありがとうございます~
本当に怖いですよね、トップクラスのウィンタースポーツは・・・ 実際リュージュじゃ死人が出てたし。スノボーのハーフパイプも例の国母くんが血を撒き散らしてたし・・・ それでも果敢に挑戦する選手には脱帽です
ちなみに『酔いがさめたらウチに帰ろう』の鴨志田さんの母校にはスキーの簡易ジャンプ台があって、偏差値はめっちゃ低いけどほぼ全員がスキージャンプできるそうです。すごいですね

日本関連では「打倒日本!」「開催国が落ちるわけないだろ」みたいなやり取りがありまえんでしたっけ。ああ、やっぱり嫌いなのね、みたいな

Posted by: SGA屋伍一 | December 21, 2010 08:43 PM

伍一くん、スキーンスコ☆
ガセじゃないんですよ!
オスロで毎年3月に国際競技大会が開かれる、ホルメンコーレンスキージャンプ場には、ジャンプ博物館がありますが、ここに、ちゃんと「かつては刑罰だった」と書かれてあります。
刑罰が趣味になって、更には競技になるってのが、ある意味凄いけど・・・
刑罰では手を後ろ手に縛って飛んだとか。
ほら、怖いでしょ?

Posted by: ノルウェーまだ~む | December 22, 2010 01:32 AM

>ノルウェーまだ~むさん

キンスノーランドっす
うむむ、そうなんですか
このネタ、わたしは上記の『鳥人計画』で知ったのですけど、その後ウィキペディアを見ていたら「スキージャンプ」の「起源についての俗説」という項にこんな記述が
「かつて、日本の体育関係の書物でさえ、『この競技の起源は、ノルウェーの処刑法にある』などとされ、広く信じられてきたが、これは俗説である。これは、ジャンプが、他のどのスポーツ競技と比較してもあまりにも恐怖感を伴うものであったため、重刑囚がこのジャンプをクリアできれば、その刑を軽減されるというものであり、いまだこの説を真実だと思っている者も多く存在している。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%97

うーん。でも本場の博物館にはそ「刑罰だった」と書かれてるんですよね。真実はどっちだ(笑)。わたしとしては「刑罰説」のほうが夢があるんで(どこがだっ)そっちを信じたいんですけど

Posted by: SGA屋伍一 | December 22, 2010 08:58 PM

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長野オリンピックのスキージャンプに出場した韓国代表チームの実話をベースに描いた青春スポ根コメディ。主演は『チェイサー』のハ・ジョンウ。共演に『カンナさん大成功です!』のソン・ドンイル、『カフェ・ソウル』のキム・ドンウク、『目には目、歯には歯』のキム・ジソクといった人気俳優が出演している。監督は『カンナさん大成功です!』のキム・ヨンファ。... [Read More]

Tracked on December 20, 2010 10:04 PM

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