ジュードのロ-ンと重労働 ミゲル・サポクニック 『レポゼッション・メン』
ああ、10日ぶりの映画レビューなのにこんなタイトル・・・ エリック・ガルシアのSF小説を演技派ジュード・ロウ主演で映画化。『レポゼッション・メン』紹介いたします。
時は近未来。高精度な人工臓器が開発されたため、人々はさかんに臓器移植を行うようになっていた。だがそれには当然多額の費用がかかり、顧客によっては支払いが滞ることも珍しくはなかった。そこで登場するのが医療会社に雇われている臓器回収人・通称「レポメン」。支払能力なしと認めた客から、メスを振り回して強制的に臓器を取り戻す恐るべき仕事人。レミーは腕利きの「レポメン」で、長年親友のジェイクと組んで無数の臓器を回収してきたが、ある時妻の願いを聞き入れてデスクワークへの転属を願い出る。しかし彼の運命の変転はそこから始まった・・・
このストーリー聞いたとき、二つばかし「おや?」と思ったんですよね。ひとつはお話の設定が昨年やっていた映画『REPO!』とやけに似ている。もしかして『REPO!』もこちらの原作にインスパイアされて出来たのかな・・・とも思ったのですが、『レポメン』発表は『REPO!』の公開と大体同じくらいだし。たまたまアイデアがかぶっちゃったのでしょうか。不思議なこともあるものです。
もうひとつは『REPO!』の時も思ったんですが、普通人間から強引に臓器を切り取っていったら、その人死んじゃいますよね? それって普通に殺人罪だと思うのですけど、どうやら作品世界ではお金も返せないようなろくでなしは死んでも仕方ない、ということになっているようです。恐ろしい社会だ・・・
その辺ちょっとありえないだろ、って感じですが、今の世でも闇金さんなんかは支払い能力のない人に対して「だったら内臓売れ!」とか言うらしいですからね。このまま拝金主義がエスカレートしていったら、そういうことも十分にありえるかも。
さて、この映画内容が内容だけに流血シーンや切断シーンがふんだんに盛り込まれております。金まみれで欲まみれで体の中まで偽物の世界で、何が本物かといえば、それは「痛み」くらいしかない・・・ そういうことが言いたいのでしょうか。単に作り手の趣味とも考えられますが。
あと何もかもがヴァーチャルな環境でもうひとつ本物と言えるものがあるとしたら、それは人が誰かを思う気持ちなのかもしれません。サイバーパンクには登場人物の感情がやけに無機的なものが少なくありませんが、『レポゼッション・メン』はその辺かなり人間くさいお話であります。ただ、痛みも思いも決して人工的には作り出せないものなのか?と言われれば、それはやや微妙なところではありますが。
キャスト面で特に印象的だったのが、主人公の親友を演じるフォレスト・ウィテカ。このひとなんせ『ラストキング・オブ・スコットランド』(通称キンスコ・笑)のイメージが強いものですから、何を考えてるのかわからないようなムードを常にかもし出しているような。彼とジュード・ロウ演じるレミーとの意味深なやり取りが、この映画の大きな見所のひとつと言えるでしょう。
以下、ラストちょいバレ。
作中で何度か使われている「猫のいる箱に毒ガスを入れて・・・」という話は、パラレルワールド理論の基礎となった「シュレーディンガーの猫」の話ですね。もしかしたらレミーの抱いた妄想が、現実になっている世界もあるかもしれない。あまりにもニヒルな結末だったので、ついついそんな風に思いたくなってしまったのでした。
『レポゼッション・メン』は既にDVDが発売中。何度も書いてますが、最近は本当にDVDが出るのが早いですよね・・・ ちなみにこの映画本国では大コケしたようですが、内容的にもエンターテイメント的にもまずまずの出来だと思いますので、ご興味おありのかたはぜひどうぞ。
Comments
1000歩ぐらい譲って、借金の方に売った人工臓器を返却させる
ってのも理屈としてはわかるのよ。
でも今回の場合押し売りだし。
頼んでもいないのに勝手に借金負わされて払えなきゃ返せって
そりゃひどいよ…。しかも最終的には死ぬことも許されない。
ある意味すごい残虐映画?
Posted by: KLY | December 01, 2010 10:44 PM
>KLYさん
おはよっす。さっそくありがとうございます
言われてみれば相当ひどい話ですね。それこそ『笑ウせえるすまん』(ご存知でしょうか・・・)にでも出てきそうなエピソード。作者・監督のサドっぷりがひしひしと伝わってきます
でもレトロな音楽と軽快なテンポのせいか、なんか楽しんで見られました(笑)
結論としては・・・ 友達はよく選べってことでしょうかね? あと仕事も
Posted by: SGA屋伍一 | December 02, 2010 07:29 AM
おはよ☆なーんだ、もうupしていたのね!
最近TBはいってこないんだから、、、、
え?本国で大コケ??
そうかなー?
フツウだったと思うんだけど、、、、
それに最後の絵は誰!??
まさかジュード!?似てなさ過ぎ!ひどすぎるー
Posted by: mig | December 02, 2010 08:50 AM
>migさん
おはよっすー あはは・・・ 色々怒られた
最後の絵は桂歌丸師匠です(笑) そういうことにしといてください
例によってウィキからの情報だけど、製作費が$32,000,000。で、興行収入が$18,020,245 儲けの半分が映画館に持ってかれることを考えると、ちょっとシャレにならない数字かと
いや、わたしも面白かったけどね~ 一般大衆にうける話ではなかったかも
Posted by: SGA屋伍一 | December 03, 2010 08:28 AM
そうなんだー、
でも日本では評判よいよ☆(食い下がらず)
でもジュードはハゲて書いてもシカタないけど次はもっとちゃんとカッコ良く書いてね!!
Posted by: mig | December 03, 2010 12:55 PM
>migさん
いやいや、これはモト冬樹だって(昨日と言ってることが・・・)
そうだね。公開時そんなにヒットしなくても、そのあと「伝説」と言われるようになった映画も数多くあるから、『レポゼッション・メン』もそうなれますように・・・
Posted by: SGA屋伍一 | December 03, 2010 11:15 PM
おはようございます(=^x^=)
こっちくるの遅くなってすみません。
ジュードのローンと重労働!
またーうまいことを言う
『REPO!』も観たかったけど
こちらにはこなかったか、いつのまにか終わってしまったか…
DVDも決まってないようで?
似た話なんですね。
今日は行けたら『デイブレイカー』観る予定です。
Posted by: kenko | December 04, 2010 11:12 AM
あのさー、最後の絵、ひどすぎw
知り合いに似とる・・・
Posted by: rose_chocolat | December 05, 2010 01:53 AM
>kenkoさん
こんばんばんです。ご多忙の中、来てくださるだけでありがたいっす~
このタイトル、仕事しながらずっと考えてたんですよー(考えてこれか)
そうですね。『REPO』と設定は一緒なんですが、あっちはもっともっとバカバカしい感じですw DVDもならないものはいつまで経ってもなりませんよね。『屋根裏のポムネンカ』もどうなってるんだろう・・・
『デイブレイカー』はわたしも見る予定。でもその前にもう終っちゃいそうな『国家代表!?』『ミレニアム3』をかたづけなけりゃ・・・
Posted by: SGA屋伍一 | December 05, 2010 07:36 PM
>rose_chocolateさん
うはは、世界中のジュードファンを敵に回したって感じだな
そのうち突然肝臓とか抜き取られちゃうかもそれません
命があったら来月お会いしましょう~
Posted by: SGA屋伍一 | December 05, 2010 07:38 PM
こんばんは(*^^*)
回収シーンは、ホント血まみれでかなりキツかったですよね〜。
おまけにラストもひどいし、後味の悪さもかなりのモノでした!
>金も返せないようなろくでなしは死んでも仕方ない、ということになっているようです。恐ろしい社会だ・・・
まったくその通りですが、ちょっと人間狩りを楽しんでる感もあり
それがホントに恐ろしかったです。
イラスト、大不評ですねぇ〜(笑)
Posted by: ルナ | December 06, 2010 11:47 PM
>ルナさん
こちらにもどうも。はは、ルナさんはどうもお気に召さなかったようですね

わたしは痛がりながらもまあまあ楽しんで見られました。クライマックスの「登録消去」のところは、さすがに「もうその辺で勘弁してください・・・」と思いましたが
人間狩りかあ・・・ そう言われると『バトルランナー』(原作)や『デスレース』など思い出します。手塚治虫の『火の鳥 生命編』もあったな。とりあえず建前だけでも「カネより命が大事」と言える世の中が続きますように・・・
イラスト、やっちゃいました
たまに(いつも?)こうやってひんしゅく買うのですよ
Posted by: SGA屋伍一 | December 07, 2010 07:58 PM