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December 18, 2010

モヒカン族の裁判 スティーグ・ラーソン ダニエル・アルフレッドソン 『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』

101218_201815スウェ-デンが生んだ傑作ミステリーシリーズもいよいよ最終章。『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』ご紹介します。当然のことですが、先に1と2を見ていないと何がなんだかよくわからない作品です。当ブログにおけるレビューは下記の通り。
『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』
『ミレニアム2 炎と戯れる女』

宿敵ラザチェンコとの戦いで重傷を負ったリスベット。病院に収容され一命をとりとめた彼女だったが、ラザチェンコとつながっていた闇の組織は、さまざまな策を弄してリスベットを葬ろうとする。ようやく彼女と再会した事件記者ミカエルは、自らの雑誌『ミレニアム』を用いて全面的にリスベットをサポートしようとするが、果たして二人は敵の陰謀を打ち砕くことができるのか。

一作目はサイコ・スリラーの、二作目は政治サスペンスの趣があった本シリーズ。この三作目では法廷劇の体裁を取っております。そんな公の場がメインなせいか、ムードは三作中一番おとなしめ。序盤にちょっとショッキングなシーンがあるくらいで、あとはほとんど血が流れません。いいんじゃないですか~ 平和で。やっぱ人間、愛と平和が一番ですよ、なんてことを言いたくなるのは、ここんとこ殺伐とした映画の鑑賞が続いたせいか。

ただいささか盛り上がりに水をさすのは、敵役のオッサン・じいちゃんたちがしょぼすぎること。例えば組織の親玉なんか定期的に透析を受けなくちゃいけなくて、今にもポックリいってしまいそうだったりします。もう一人のメインの悪役である精神科医も、すさまじいまでの小物っぷり。しかしまあそこは腐っても国家権力。あの手この手を使って主人公二人を苦しめます。なにしろヒロインのリスベットは収監されてほとんど身動き取れないので、不利なこと甚だしい。おまけに血まみれでナタを持ってるところを見つかってしまったので、これを無罪にもっていくのは至難の業です。果たしてリスベットは晴れて再び日の下を歩けるのか・・・

三作目でも印象に残ったのはミカエルとリスベットの独特な絆でしょうか。ミカエルがリスベットを助けようとするのは、いわゆる恋愛感情とはまた微妙に違うような気がします。ミカエルにはまた別に恋人がいますし、リスベットが釈放されても一緒になりたいというわけでもなさそう。ちなみに彼の恋人のエリカさんにはまた別の旦那さんがいたりして・・・ 本当にスウェ-デンってどんだけフリーなんだか。
幼いころから虐げられながら、それでも健気に戦い続けるリスベット。彼女のことを知れば知るほど、ミカエルは「力になってやりたい」という思いを強くしたに違いありません。女性を食い物にする男もいれば、そんな今なお騎士道精神を持ち続けている男もまた、います。

リスベットもミカエルに対し特別な思いを持っています。彼女はさんざん世話になったかかりつけの医師にも、懸命に彼女を弁護したミカエルの妹にも「ありがとう」と言いません。きっと彼女にとってそれはミカエルだけに捧げられる、特別な言葉だったのでしょう。でもお礼の言葉はもっと積極的に言わないといけないと思うぞ。
まあそれはともかく、父や兄から殺されかけた彼女が、こうして本当の家族のような友人たちを得られたということに、心温まる思いがしたのでした。

以降、ラストに関しネタバレしてます。

ひとまず事件が解決し、「またね」と言い合うミカエルとリスベット。そしてEND。三作もかけたわりにものすごい「あっさり感」です。まあこれは原作者が五部構想だったのに、途中で死んでしまったので致し方なきことでしょうか。恐らくこの後も二人の冒険は続いていくのでしょう。その辺に関しては想像するしかありません。もしかしたらスウェ-デンを飛び出して、今度は世界が舞台となるのでは・・・とか。

101218_201834そんわけで見事完結した『ミレニアム』シリーズ。今度はハリウッドでリメイクが作られるそうです。主演はダニエル・クレイグ、監督はデビッド・フィンチャーという豪華な布陣。
ヒロインを熱演したノオミ・ラパスさんは、今度はロバート・ダウニーJr主演の『シャーロック・ホームズ』続編に出演なさるそうで。今後の活躍に期待いたします。


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Comments

こんちゃ、吾一くん。

多分リスベットに説教かましたのは世界中で君だけだとおもう。(爆)
それにしても1作目で登場してるDVDがここでまたキーアイテムになるとはね。なんとまあ深遠な作りなんでしょうか。全てミカエルたちの情報がそこに集約されて、最後には溜めて溜めての大逆襲。なんつーカタルシスか!
惜しむらくはリスベットとミカエルの関係がまだ途中なきがするのですよ。既に草稿となっている4作目と、構想があった5作目で何らかの決着がつけられたんじゃないかとおもうと、作者急死は残念すぎます。

Posted by: KLY | December 19, 2010 12:33 AM

>KLYさん

毎度ご来訪ありがとうございます!
僕はねえ、おかしいと思ったらそれが細木数子でもジャガー横田でもズバッと言いますよ! ってか、言えたらいいな、と思います

あー、あのDVDひっぱりましたねえ。まさに「逆転裁判」。わたしはカタルシスというよりか、証拠として上映されてる場面のきまず~い空気がなんとも印象的でした(笑) 

「未完」で終ってしまった作品に多く接してきた身としては、最近ではそれもまた美しい形か、なんてことも思ったりするのですよ。まあ『ボーン・アイデンティティー』シリーズのように別の人が書き継ぐ、というのアリだと思いますが

Posted by: SGA屋伍一 | December 19, 2010 07:58 PM

伍一君おはよう☆

>敵役のオッサン・じいちゃんたちがしょぼすぎること

ほんとよねー、リスベットの格好良さ、そのクールなキャラだけでわたしはひっぱられて観てこられたような、、、、
フィンチャーがこれをわざわざリメイクするなんて。。。。
今レビューupしてるソーシャルネットワークの女の子がリスベットだなんて超不安だけど(似あわない)

ノオミがホームズでジュードやダウニーさんと共演が楽しみ♪

Posted by: mig | December 20, 2010 10:40 AM

>migさん

こんばんばん お返しどうもありがとう

本当にね~ ミカエル役のおじさんもちょっと弱弱しい人だったからまだよかったけど、これが元007のダニエル・クレイグだったらじいちゃんち瞬殺だよね(笑) たぶん映画が始まって30分くらいのところでみんな死んでると思う

『ソーシャル・ネットワーク』に出てた子か・・・ まだ顔もわからない(笑) 土屋アンナなんかけっこう似合いそうな気がするけどね。日本人だけど

Posted by: SGA屋伍一 | December 20, 2010 09:02 PM

こんばんは(^_^)
そうそう!不器用でもちゃんとお礼の言葉はいわないとねぇ〜。
ミカエルに言った「ありがとう」がその最初の一歩だったのかも
しれませんね。
ミカエルとリスベットのこれからの活躍、観たかったですが
残念ですよね〜。
パソコンに残っているらしい4作目の内容が気になりますね。

Posted by: ルナ | December 20, 2010 11:48 PM

>ルナさん

お返しありがとうございます
まったくです。「ありがとう」が言えなくて許されるのは三歳までです!
でも、そうですね。これから彼女も人々の暖かい情に触れて、少しずつ人間らしい感情を取り戻していくのかもしれませんね

聞くところによると、4作目の草稿がアウトプットできないのは遺族が権利問題でもめてるからだとか。それこそ凄腕のハッカーが侵入して公に発表しちゃえばいいのに(おっと

Posted by: SGA屋伍一 | December 21, 2010 08:49 PM

>『ソーシャル・ネットワーク』に出てた子か・・・ まだ顔もわからない(笑)


むむむ、ブログに書いたのに〜ぃ。
あ、観る前は読まない主義か

Posted by: mig | December 23, 2010 01:04 AM

>migさん

ははは。ちょっくら覗いてきた
ううむ。ぱっと見、リスベットにしてはまだ凄みが足りない気がするね
ただ女優さんって役によって突然おお化けすることもあるから、その辺に期待。二作連続で使うということは、フィンチャー氏は「きっと何かある!」と感じたんだろうな

Posted by: SGA屋伍一 | December 23, 2010 07:58 AM

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