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December 31, 2010

決定! 2010バカデミー賞! 幕内編

はい、ちゃんら~ん。銀河系で6名くらいの方が注目してるとおぼしき「SGA屋バカデミー賞」。本日はいよいよ上位「幕内編」の発表です。その前に・・・前の記事「幕下編」が豪快に記事タイトルを間違えていたことにお気づきになった方、いらっしゃいますか? ・・・いませんね、はい!
あと最後の方、リストの見落としで五本ばかり入れる作品が抜けてました。バカ! 追加しておいたのでお暇な方はもういっぺんご覧になってやってください。

さて、ではまず名画座、再上映などで見た「リバイバル部門」の発表を
100530_211952今年見たリバイバル作品は
・美と芸術の上海アニメーション アクション・ドラマ編 ユーモア・ほのぼの編
ひなぎく
エル・トポ
などですが、わたしが一番ひかれたのは
『ひなぎく』と一緒に早稲田松竹で見た『不思議惑星 キン・ザ・ザ』でした。
ソ連崩壊直前に作られた、低予算でくだらなくて、でも感動するSF風刺映画の大傑作。
こどもだってうまいんだもん! 飲んだらこう言っちゃうよ! 「く~」


では続きましてランキングに入ります。22位から11位まで、一気に突っ走るぜ!

100901_204842
第22位 シャッター・アイランド 脳みその嘘つき!
 同  プリンス・オブ・ペルシャ ふりだしに戻せ!
 同  月に囚われた男 ウサギは出てきません!
 同  仮面ライダーW FOREVER A to Z 運命のガイアメモリ  嫌いじゃないわ! 嫌いじゃないわ!
 同  悪人 そちも相当のワルよのう!

100911_185308第16位 アバター 3D値上げ反対! 
 同 誰がため デンマークはアンデルセンだけじゃない!
 同  インビクタス 負けざる者たち いよっ 大統領!
 同  アイスバーグ!/ルンバ! ふたつ(り)でひとつ!
 同  プチ・ニコラ 赤ちゃんはこうしてできる!?
 同  SPACE BATTLE SHIP ヤマト こうじょうら~ ひ~とみをとじれ~ば~ 「死んだらいけん!」

100326_182452第11位 コララインとボタンの魔女 わたしの人形はよい人形!
 同  カラヴァッジョ 天才画家の光と影 天才とカバは紙一重!
 同  アイアンマン2 鉄人鉄人どこへいく!
 同  インセプション 早寝遅起き!
 同  キック・アス(来年レビュー予定) 超能力もなく金持ちでもない男がヒーローになるには、誰よりも血を流すしかないんだ!(BY 町山智浩)

あ、今年はライダーが「えこひいき賞」から脱出しましたね。こんなところに入ってるという時点で、十分えこひいきなのかもしれませんが。

さて、それではトップ10の発表です・・・

100412_103449第10位 スパイアニマル Gフォース 紫SHIKIBUの歌う主題歌が、やばすぎる・・・ ほじほじほじほじほー!

第9位 第9地区 市川エビ蔵君と並んで、今年エビブームを巻き起こしたエビ映画の決定版。たぶん来年はカニがくる!と思う!

第8位 フィリップ、君を愛してる! 本年度マイ単館系大賞。米国で実際に起こった「愛の奇跡」。男が男を愛する気持ちがほんのちょっとわかっ・・・ いや、わからなくていいです・・・・

100619_174342第7位 告白 じ・・・じつは前から君のことが・・・・ だから違うっちゅーねん! 映画ファンからも評価され、年間の興行収入でもかな~り上位に食い込んだ珍しい例。な~んつって。

第6位 国家代表!? 「今年はそれほどガツンと来る韓国映画がないな・・・」と思っていたら、年の瀬に来てやってくれました。早く韓国から徴兵制度がなくなればよいですね・・・

第5位 しあわせの隠れ場所 幸せは 歩いてこない だからひっぱり出すんだよ! 前日にラジー賞を受賞したサンドラ・ブロックが、直後にオスカーをももぎとったことで話題になった作品。サンドラの男気には、ほれます。

101012_180013第4位 怪盗グルーの月泥棒 とにかくミニオンが素晴らしすぎる・・・・ 今年は付き合い等で二回見た映画が四本ありましたが、一番二回目も楽しかったのがこの作品。

第3位 トイ・ストーリー3 決して「3」だから3位というわけではなく。十年の時を経て、お別れを言いにやってきてくれたウッディたち。でもさよならは別れの言葉じゃなくて(略)。たぶん今年ブロガーさんの間で最も評価が高かったのはこの映画ではなかろうかと。

第2位 劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer- ああ! またこんなん来ちゃったか!! テレビシリーズ第一話からずっと観てきたものにとっては、この劇場版、実に一年半の重みがあったのでした。わかってやってください。奇しくも実写版『ヤマト』とかぶってしまったところが色々ありましたが、こちらの方が洗練されていて、納得がいきます。

そして栄えある第1位は
100903_120955『カラフル』
であります。世界は残酷で優しく、美しく醜いもの。原恵一監督はじめ、スタッフの熱い思いが最も強く感じられた作品でありました。

しかし・・・ なにこのアニメまみれのベスト4。ま、今年は何年かに一度のアニメ映画の当たり年だったということでご勘弁ください・・・・

こんなしょうもないブログにちょくちょく足を運んでくださる皆様、そしてコメントをくださる皆様、本年もどうもありがとうございました。来年もまだ続きそうな気がしますので、引き続きどうぞよろしくお願いします。

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December 29, 2010

決定! 2010バカデミー賞! 幕下編

さて・・・・ 今年もこの時がやってまいりました。太陽系で五名もの方が注目していると思われる「SGA屋バカデミー賞」。本日は上位に食い込めなかった「幕下編」をお送りします。では順序良くどんじりから


100314_190103まず順不同でワースト5~2位を
ラブリー・ボーン
普通によくわからなかった
ルド and クルシ 
サッカーものなのに主人公がボールを蹴らない
劇場版 東のエデンⅠ
劇場版 東のエデンⅡ
せっかくの大スクリーンなんだからもちっと派手なもん作ろうや

100405_191659そして栄えあるワースト1は
マッハ!弐!!!!
これさあ、明らかに途中で終ってるよね・・・・
しかもあんだけはっきり「○○は○○だ」って言ったくせに、本国では普通に続きが公開されてるってどうゆうことよ!?
この恨みは・・・そいつを見ない限り晴れることはない・・・ 求む、日本公開。これ、矛盾してるかな?


ついでほとんど寝てたため評価不能の三本
100504_172746アリス・イン・ワンダーランド
鉄男 THE BULLET MAN
・トロン・レガシー(来年レビュー予定)

『鉄男』は違いますけど、寝不足で満腹で疲労がたまっている状態で、3D映画を見てはいかんということです。

続きまして限りなくプラマイゼロに近い9本。1800円はちょっと高いよな、という作品群です。
100213_194807かいじゅうたちのいるところ
グリーン・ゾーン
渇き
ネコを探して
SP 野望篇
ミレニアム2 火と戯れる女
パンドラム
・ロビン・フッド(来年レビュー予定)
・レバノン(来年レビュー予定)

ううん、どの作品も個性は十分にあるんだけどなあ。まあ、世の中個性があればいいってもんじゃない、ゆうことで。『パンドラム』なんかは比較的小粒なりに上手にまとめられていますけど。


続きまして「どっちかといえばよかった」18本一気に行きます。とりあえずモトは取ったかな、という作品群ですね。
100220_183427海角七号 君想う、国境の南
オーシャンズ
Dr.パルナサスの鏡
息もできない
TRIGUN Badlands Rumble
ウルフマン
ザ・ウォーカー
9 9番目の奇妙な人形
ミックマック
101015_184033バイオハザード4
十三人の刺客
ガフールの伝説
エクスペンダブルズ
川の底からこんにちは
レポゼッション・メン
黒く濁る村
ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士
・デイブレイカー(来年レビュー予定)

一生懸命がんばってるのはわかるんだけど、どうもそのがんばりが空回りしてたり、全体の面白さにつながってないような作品が数本。あえて名はあげませんがcoldsweats01


幕下編の最後は「まあまあよかった」18本。はっきり面白かったと言えるものの、好みやインパクトのわずかな差で幕内に届かなかった作品群です。
100209_185948空気人形
母なる証明
パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々
シャーロック・ホームズ
ハート・ロッカー
ダレン・シャン
ミレニアム ドラゴンタトゥーの女
タイタンの戦い
アデル ファラオと復活の秘薬
101206_183436必死剣 鳥刺し
プレデターズ
ヒックとドラゴン
借りぐらしのアリエッティ
特攻野郎Aチーム
ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い
オーケストラ!
リトル・ランボーズ
・ゾンビランド(来年レビュー予定)

けっこう熱心なファンを持つ作品も紛れ込んじゃってるなあ(笑) 決して悪く評価してるわけじゃないんです。微妙な好みの差ということでひとつ。


では残る26本とリバイバル賞は、あさっての大晦日に発表予定。なかなかのハードスケジュールなんですけど・・・できるんですかねえ?(弱気)

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December 28, 2010

第七回SGA屋漫画文化賞

あらら・・・ もう七回目ですか。わたしが一年の間に読んだマンガで、最も印象に残った作品を発表する「SGA屋漫画文化賞」。今年は漫画のレビューをさっぱりしていないのでなんだか心苦しいのですが、信じてください! オレ、漫画さんのこと愛してます! 年の差とか、ご主人がいるとか関係ありません! 心と心が通い合ってさえすれば・・・ と、あれ? 変な方向に行きましたね?
というわけで参ります。例によって賞金も賞品もありません。むしろくれ!


090123_171708run少年漫画部門:荒川弘 『鋼の錬金術師』(スクエアエニックス 全27巻)
川原正敏 『海皇紀』(講談社 全45巻)

ともに長丁場をだれることなく走り続け、見事完結した二作品。荒川先生も川原先生もお疲れ様でした。
もっとも川原先生のほうは休む間もなく既に『修羅の門 第弐門』を連載中。少しは体をいたわってつかあさい。


091228_124000virgo少女漫画部門:高見まこ 『仲蔵狂乱』(リイド社 たぶん全二巻)

すいません・・・ 今年も少女漫画を全然読んでいませんでしたcoldsweats01 というわけで二年連続でこれ。
いわゆる「田沼時代」のころ、名役者として人気を博した中村仲蔵の波乱に富んだ前半生を描いた作品。
何度も奈落の底に突き落とされながら、それでも演じ続けることをやめない仲蔵の姿に心打たれました。
エビ蔵くんの苦労もこれに比べりゃなんてことない!?


101228_180316beer青年漫画部門:なかいま強 『ライスショルダー』(講談社 現在8巻まで)

スポーツマンガ職人・なかいま強氏が描く痛快女子ボクシングストーリー。
「女子のボクシング漫画なんて・・・面白いのか?」と疑いながら読み始めましたが、いまやモーニングで一番楽しみな漫画になってしまいました。どちらかというとヒロイン・秋野おこめより、彼女を取り巻く人間模様がすこぶる面白い。今年は特に韓国のブスボクサー・ボサンと、その親友スジの友情に涙させられたのでございました。まあ『GANTZ』も相変わらず突っ走ってますけど、ここんとこ毎年あげてたので。


101228_180340happy01ギャグ漫画部門:ヤマザキマリ 『テルマエ・ロマエ』(エンターブレイン 現在2巻まで)

古代ローマ人が現代日本に(お風呂限定で)タイムスリップという、度肝を抜く発想で昨年から話題を呼んでるこの作品。遅ればせながらわたしも今年からはまりました。
今年は他にも『新説! さかもっちゃん!』『しばちゅうさん』『ヘタリア』など、歴史・文化とからめたギャグ作品が多く印象に残りました。
そんなことより「ローマ風呂」で知られるわがA海市の老舗旅館「O野屋」が相当やばいらしいです。頼む! A海にも来てくれ! ルシウス!


101228_180402ship翻訳部門:ジェラルド・ウェイ ガブリエル・バー 『アンブレラ・アカデミー』(小学館集英社プロダクション)

昨年から続いてる海外コミックバブル。最近ではアメコミのみならず、フレンチ・コミックBDまでどんどん日本に紹介されております。いったい何がどうなっているのでしょう。
そんな中でわたしが特に気に入ったのがこの作品。ロックバンドの雄、マイ・ケミカル・ロマンスのメンバー、ジェラルド・ウェイがつむいだ新感覚ヒーローストーリー。
王道を行きつつも独自のセンスもとりいれ、キュートで残酷でワンダーな世界を楽しませてくれました。
ほかにはやはり小集プロさんの『マーブル・キャラクター大辞典』もすごかったけど、あれは正確にはコミックではないからねい・・・


091009_132119pen漫画家漫画部門:永井豪 『激マン!』(日本文芸社 現在2巻まで)

これまた近年隆盛著しい「漫画家漫画」。それにとうとう大御所、永井豪先生までもが手を出した! 連載から35年以上を経て、今明かされる『デビルマン』の創作秘話。
明らかに豪先生の顔が本物よりかっこよく描かれております。そしてその二枚目フェイスで「『あにまるケダマン』をやめる!」「『ハレンチ学園』をやめる!」とびしっとキメる先生。素敵だ!
この漫画読みたさに漫画ゴラクを立ち読みしているうちに、いつのまにか『ごくつま刑事』にもはまってしまったりして。でも現在休止中・・・ さくらさーんcrying


そして2010年の大賞は
101228_180432 fuji原泰久 『キングダム』 (集英社 現在20巻まで)

前々から興味はあったのですが、今年総集編二冊が出たのを機に読み始めたら止まらなくなってしまいました。
戦乱渦巻く紀元前の中国大陸。下僕の少年・信は友との誓いを胸に、「天下の大将軍」となる道をひた走る。
その行く手に待つ号泣・歓喜・憤怒・勝利・敗北・友情・無情・・・・
自信を持って断言しましょう。いま日本で一番面白い漫画はこれだ!!


それではまた来年もすごい漫画とめぐりあえますよ~にpaper


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December 22, 2010

愛の波動砲 山崎貴 『SPACE BATTLESHIP ヤマト』

101222_181322さらばー ちきうよー (ばばばばんー) たびだーつふねはー(ばばばばんー)

アニメブームの魁となったあの『宇宙戦艦ヤマト』が、実写映画となって帰ってまいりました(去年アニメでも新作があったのですが・・・)。『SPACE BATTLESHIP ヤマト』ご紹介いたしましょう。

西暦二千・・・二百年くらい?地球は宇宙より現れた謎の敵により、放射能漬けにされてしまっていた。そこへまたも宇宙から謎のカプセルが送られてくる。中には「助けてやっからイスカンダル星まで来いや」みたいなメッセージが入っていた。偶然そのカプセルを拾った元パイロットの古代進は、新造の宇宙戦艦ヤマトに乗り組み、地球に青さを取り戻すべく仲間たちとイスカンダルを目指す。

どちらかというと『ガンダム』や『999』の方が好きだったわたしにとって、オリジナルの『ヤマト』はもう記憶もだいぶおぼろげな作品です。断片的に覚えているのは「地球滅亡まであと○○日」とか、ここぞという時の波動砲とか、死んでたはずなのに普通に再登場してたりとか、アナライザーが森雪のスカートをめくっていたりとか・・・ 
しかしやっぱり何より強烈に覚えているのは、ヤマトが宇宙空間をババーンと進んでいるそのビジュアル。普通船ってヤツは海に浮かんでいるものなので、おおむね下半分は見えないものです。そいつがおなかを丸出しにして宙を漂っているイメージは、かなり強烈なものがありました。そして先端にいかにもって感じの、ドでかい穴が開いていたのもインパクト大でした。

で、今回のリニューアル版もそのヤマトの無茶さ加減がかなりいい感じで出ていたと思います。巨大な戦艦が地中から土くれをふるい落として出てきたりとか、宇宙空間をグリングリン回転したりする映像は、少なくとも実写ではこれまで誰も見たことがなかった映像でしょう。そういう点は大いに評価できます。
ほかにもお辞儀をする戦闘機やアナライザーの意外な大活躍なども楽しませてもらいました。

ではストーリーの方はどうか。先に申したようにオリジナルをろくに覚えてないわたしが思い出したのは、むしろ『アルマゲドン』とかドラマ『ギャラクティカ』などでした。SFには「冷たい方程式」テーマというものがあります。極限の状況を強いられる宇宙空間では、皆が助かるために誰かを犠牲にしなければならないこともある・・・ そういう話です。
最初はそれに反発し、誰一人犠牲を出さない道を選んでいた古代。しかし状況が厳しくなるにつれ、彼もまた苦渋の選択を強いられることになります。
そうしたテーマが非常にシリアスにテンポよく語られるのですが、ところどころにふっと我にかえってしまう要素がありました。さすがに今ではちょっと古めかしい碇のマークの制服とか、もろにセットのようなブリッジとか、「なんで地球の危機なのに日本人しか出てこないんだろう」という疑問とか・・・ そういうものです。
その辺を上手に頭の隅に追いやって、登場人物になりきるのがこの映画を楽しむコツです。幸いわたしはなんとか自分をごまかしきりました。涙ぐみさえしました。自分のバカさ加減に父ちゃん呆れて涙も出やしません。

監督は『ジュブナイル』『ALWAYS』の山崎貴監督。いま最も日本で活躍しているVFXアーティストと言っても過言ではないでしょう。フィルモグラフィーを見ると、彼は最先端の技術を用いて「懐かしいもの」「かつてあったもの」を再現することにこだわっているように思えます。人によっては出来たものに違和感を感じる方もおられましょうが、わたしはこういう方向性のわかりやすい監督好きです。次はぜひ怪獣ものを作っていただきたいものです。

20071102190729昨年の『復活編』があまり盛り上がらなかったのに比べ、今回はかなりヒットしているようですね。やはりキムタクの人気がものをいったというとこでしょうか。まあ彼以外の俳優さん・・・特に西田敏行・橋爪功・山崎努といったおじさんたちも、慣れない土俵でがんばっておられました。
この作品が真にヤマトのスピリットを受け継いでいるならば、○○や○○が○○でしまったにも関わらず、何事もなかったように続編が作られると思うのですが、いかがでしょう。

さて、2010年もあと十日を切りました。まだレビューできてない映画も数本あるのですが、恒例の漫画ベスト・映画ベストをもって本年の締めといたします。


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December 20, 2010

クール・グライディング キム・ヨンファ 『国家代表!?』

101220_1746041998年長野冬季五輪。日本が日の丸飛行隊の快挙に熱狂していたその影に、知られざるドラマがあった・・・ 本日は韓国にて4週ぶっちぎりのトップを飾ったというスポコメ映画『国家代表!?』をご紹介いたします。

幼い頃アメリカに里子に出されたボブは、母親を探しに成長して再び祖国に帰ってきた。そんなボブに、一人の怪しげな男が近づく。彼の名はパン。ボブがスキージャンプのジュニア代表だったことに目を付け、韓国初のジャンプ代表にならないかと誘ってきたのだ。しぶしぶ引き受けたボブは、薬物で他のスキー競技を出場停止になった三人のメンバーに引き合わされる。間に合わせのメンバーで、練習用のジャンプ台もないまま、彼らはオリンピック目指して練習を始める。

そういえばスキージャンプってあまり物語の題材になったことないですよね。わたしが知る限りでは東野圭吾氏の小説『鳥人計画』くらいでしょうか。今年の冬季五輪でもチラチラ見ていましたが、遠くからひいたカメラで見ている分にはなんとなく優雅な印象があります。
しかしこの映画を見て、そのイメージを一変させられてしまいました。いやあ、すごいですよスキージャンプは・・・・ あーんな高いところから、あーんな急角度を、あーんなものすごいスピードで滑り降りていくわけですから・・・ そして最後に飛んでいく。一歩間違えれば地面に大激突です。
もともとは刑罰だった、というのはガセだそうですが、人間のやる競技じゃないですよ、これは。

この映画では選手の視点になりきることで、そんなスキージャンプの恐怖を体感させてくれます。こういう映像をこそ、劇場の大スクリーンで見ていただきたい。できればこの部分だけでも3Dで作って欲しかった・・・というのは無理な話か。まあ多少は誇張されてるかもわかりませんが、それは今までジャンプの選手しか見られなかった光景であります。

そんな競技の特性を反映してか、お話も非常にふり幅が激しいです。あらすじからもわかるように、基本はバカ話です。冒頭に「これは実話をもとにしたフィクションである」というテロップが入るのですが、かなーり虚構部分が多い模様。
普通スポ根もので障壁となるのは、強力なライバルとか、思わぬ負傷とかそういうものです。ところがこの映画ではお金のことだったり、ケンカのことだったり、上の都合のことだったり、なんか情けない理由が多いです。
集められたメンバーもイケメンよりお笑い系の顔立ちが中心。並んでいると自分のことは棚にあげて、「そろいもそろって頭が悪そうな連中だなあ」なんて思ってしまいます。

しかしそんな情け無げな連中が一丸となるあたりから、拳に力が入ってきます。
最初は自分のためにみなを利用していたコーチが、チームのために土下座をするシーン。
あんなにひどい仕打ちを受けたのに、ジェボクが「尊敬する人は?」と問われて記者に伝えた答え。
怖さから一度は逃げ出したボングが、兄のために再び戻ったジャンプ台で、胸を叩く仕草。
この辺でもうわたしの涙腺は原田選手なみにゆるゆるだったのですが、最後にボブが母親への思いを吐露するところで大決壊。顔面が涙と鼻水とヨダレでぬらぬらになりました。こういう時に限ってハンカチもティッシュも忘れてくるし・・・

本当にね~ もうね~ 年のせいかこういう親子の情に訴えた話に弱いんですcrying そういえば韓国映画の名作・話題作には、「親子」をテーマにしたものが少なくありませんね。

101220_174625ぶっちゃけあんまし韓国映画っぽくないんですが、それでも今年のマイベスト・コリアンムービーとなった『国家代表!?』。もう大体公開終っちゃってますが、まだ見られるところも辛うじてある! お近くの方はどうぞご覧になってみてください。

今年も残すとこあとわずか・・・ 映画のレビューもできそうなのはあと一回というとこでしょうか。風邪に気をつけて、せわしい年末を乗り切ってまいりましょう。自分はおりこうさんなので、風邪はひきませんけどね。

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December 18, 2010

モヒカン族の裁判 スティーグ・ラーソン ダニエル・アルフレッドソン 『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』

101218_201815スウェ-デンが生んだ傑作ミステリーシリーズもいよいよ最終章。『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』ご紹介します。当然のことですが、先に1と2を見ていないと何がなんだかよくわからない作品です。当ブログにおけるレビューは下記の通り。
『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』
『ミレニアム2 炎と戯れる女』

宿敵ラザチェンコとの戦いで重傷を負ったリスベット。病院に収容され一命をとりとめた彼女だったが、ラザチェンコとつながっていた闇の組織は、さまざまな策を弄してリスベットを葬ろうとする。ようやく彼女と再会した事件記者ミカエルは、自らの雑誌『ミレニアム』を用いて全面的にリスベットをサポートしようとするが、果たして二人は敵の陰謀を打ち砕くことができるのか。

一作目はサイコ・スリラーの、二作目は政治サスペンスの趣があった本シリーズ。この三作目では法廷劇の体裁を取っております。そんな公の場がメインなせいか、ムードは三作中一番おとなしめ。序盤にちょっとショッキングなシーンがあるくらいで、あとはほとんど血が流れません。いいんじゃないですか~ 平和で。やっぱ人間、愛と平和が一番ですよ、なんてことを言いたくなるのは、ここんとこ殺伐とした映画の鑑賞が続いたせいか。

ただいささか盛り上がりに水をさすのは、敵役のオッサン・じいちゃんたちがしょぼすぎること。例えば組織の親玉なんか定期的に透析を受けなくちゃいけなくて、今にもポックリいってしまいそうだったりします。もう一人のメインの悪役である精神科医も、すさまじいまでの小物っぷり。しかしまあそこは腐っても国家権力。あの手この手を使って主人公二人を苦しめます。なにしろヒロインのリスベットは収監されてほとんど身動き取れないので、不利なこと甚だしい。おまけに血まみれでナタを持ってるところを見つかってしまったので、これを無罪にもっていくのは至難の業です。果たしてリスベットは晴れて再び日の下を歩けるのか・・・

三作目でも印象に残ったのはミカエルとリスベットの独特な絆でしょうか。ミカエルがリスベットを助けようとするのは、いわゆる恋愛感情とはまた微妙に違うような気がします。ミカエルにはまた別に恋人がいますし、リスベットが釈放されても一緒になりたいというわけでもなさそう。ちなみに彼の恋人のエリカさんにはまた別の旦那さんがいたりして・・・ 本当にスウェ-デンってどんだけフリーなんだか。
幼いころから虐げられながら、それでも健気に戦い続けるリスベット。彼女のことを知れば知るほど、ミカエルは「力になってやりたい」という思いを強くしたに違いありません。女性を食い物にする男もいれば、そんな今なお騎士道精神を持ち続けている男もまた、います。

リスベットもミカエルに対し特別な思いを持っています。彼女はさんざん世話になったかかりつけの医師にも、懸命に彼女を弁護したミカエルの妹にも「ありがとう」と言いません。きっと彼女にとってそれはミカエルだけに捧げられる、特別な言葉だったのでしょう。でもお礼の言葉はもっと積極的に言わないといけないと思うぞ。
まあそれはともかく、父や兄から殺されかけた彼女が、こうして本当の家族のような友人たちを得られたということに、心温まる思いがしたのでした。

以降、ラストに関しネタバレしてます。

sleepy

sleepy

sleepy

sleepy

ひとまず事件が解決し、「またね」と言い合うミカエルとリスベット。そしてEND。三作もかけたわりにものすごい「あっさり感」です。まあこれは原作者が五部構想だったのに、途中で死んでしまったので致し方なきことでしょうか。恐らくこの後も二人の冒険は続いていくのでしょう。その辺に関しては想像するしかありません。もしかしたらスウェ-デンを飛び出して、今度は世界が舞台となるのでは・・・とか。

101218_201834そんわけで見事完結した『ミレニアム』シリーズ。今度はハリウッドでリメイクが作られるそうです。主演はダニエル・クレイグ、監督はデビッド・フィンチャーという豪華な布陣。
ヒロインを熱演したノオミ・ラパスさんは、今度はロバート・ダウニーJr主演の『シャーロック・ホームズ』続編に出演なさるそうで。今後の活躍に期待いたします。


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December 15, 2010

村の黒ニクル カン・ウソク 『黒く濁る村』

101215_182324ベトナム戦争から少し経った時代の韓国。都会から遠く離れたある村に、一人の神父が現れる。あまりに清廉なその人柄に人々は強くひきよせられるが、先に村にいた神父にねたまれた彼は罠にはめられ、監獄へと送られる。
それから二十年後、神父の息子は、疎遠になっていた父の訃報を受け取る。葬儀のため父が住んでいた村を訪れた息子は、村人たちから敵意のこもった視線を投げかけられる。父の死は自然なものだったのか? なぜ自分は疎まれるのか? 父と親しかった村長は、いったい何を考えているのか。それらの謎を解くために村に残ることにした息子だったが、やがて村にうずまく悪意ははっきりとした形となって現れる。

韓国のウェブコミックで人気を博した作品を、『シルミド』で知られるカン・ウソクが映画化。『黒く濁る村』、ご紹介します。第18回利川春史大賞で映画祭で7部門受賞だそうですが・・・ 権威ある賞なんですよね? たぶん

まずこの映画の特長ですが、アバン・タイトルがすごく長い。もしかするとアバンだけで全体の半分はあろうかという・・・ さすがにそれはウソですが、まあこの長いプロローグが作品の「問題編」といったところでしょうか。神父と村長が出会い、それから何があったのか・・・ 本編ではその謎を息子の目を通し、じっくり解き明かしていきます。

見所としては息子と村人たちの化かしあいというか、腹の探りあい。お互い相手のことをハナから「怪しいヤツ」と決めつけているのですが、そんなことはおくびにも出さず、わざとらしい笑顔で「調子はどうだい?」なんて言ってみたりする。まあそのとりつくろいも、過去が明らかにつれどんどんほころんでいくわけですが。そのあたりなかなかにスリリングでした。
『渇き』の記事でも書きましたが、韓国ではキリスト教を奉じている方が多いようで。熱い感情を持つ一方で、内省的な気質も強い国民性なんでしょうか。『渇き』では「罪」に関して扱われていましたが、こちらでは「悪」に関して語られているような気がしました。悪にも種類・度合い共にいろいろあります。わかりやすい悪。善のような悪。もっともたちの悪い悪。それらに主人公は翻弄されます。それらの悪の奔流の中で、彼が最後に見出したものとは、果たして。

そんな風にシリアスなムード満載でお話は進みますが、メイン俳優さんの村長さんがすごくわかりやすい老けメイクで出てくるのが玉にキズ(笑)。ずっとメイクのままだったらよかったんですが、頻繁に若いころの回想シーンで素の状態が出てくるので、どうしてもドリフのコントなど思い出してしまいます。オマケに脇を固める俳優陣もなんか面白い顔の人が多かったりして。これは監督がいわゆる「異相」の俳優さんが好みなせいのようです。
まあでも村長役の人は熱演してたので、その辺の不自然さはがんばって見過ごしてあげることにしました。他にも不自然なところは幾つかあるのですが、気づかないフリをしてスリルとダークに身をゆだねるのがこの映画を楽しむコツと言えるでしょう。

101215_182233「引退したら閑静な山村で老後を・・・」なんて思ってる人がみたら、幻想を粉々に打ち砕かれてしまいそうな一本。『黒く濁る村』は現在限られた劇場で細々と公開中です。


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December 13, 2010

適当掲示板102&大体下半期に見た映画を振り返っておくとしますか

毎度どうもっす。SGA屋伍一っす。早いもので2010年もあとわずか・・・・ 皆様いかがおすごしでしょうか。先日は東京でずにーらんどにも行って来たのですが、もう記事を書く余裕もないのでご報告だけにとどめておきます。

そんなわけで、そろそろ映画の年間ベストを決めなくてはなりますまい。別に決めなくっても誰も困りはしませんけれど。 で、今回はその整理のために、7月から11月までに見た映画を振り返ってみることにいたします。ちなみに上半期の記事はコチラ

cancer7月
100804_173211『トイ・ストーリー3』『仮ぐらしのアリエッティ』の東西アニメ対決が話題を呼んだ7月。
わたしのベストはやはり『トイ・ストーリー3』。そしてクリストファー・ノーラン監督の『インセプション』
ほかには遅れてかかった『月に囚われた男』などが印象に残っております。


spa8月
100903_120926記録的な猛暑に、みなさんうだっていた8月。
わたしのベストはなんといっても原恵一監督の最新作『カラフル』。傑作の多かった本年度のアニメの中でも、特に感動させられた作品。ベルギーで作られたペアの喜劇映画『アイスバーグ!』『ルンバ!』も良かったです。
ほかにはやはりアニメの『ヒックとドラゴン』『仮ぐらしのアリエッティ』。あとん~『仮面ライダーW FOREVER』とかcoldsweats01


typhoon9月
090601_191307
検察庁の改竄事件や尖閣諸島の問題が波紋を呼んだ9月
私のベストは劇場版『機動戦士ガンダム00』「お前はサンライズからの回し者か」と言われそうですが、そうです。いや違います。
ほかに印象に残った作品は遅れてかかった『オーケストラ!』など。この月に見た『ハングオーバー!』もそうですが、今年は『!』のつく邦題が多かったような。


fullmoon10月
101113_180609なんかよくわかんないんですけど、突然時代劇映画がどどどっと公開された10月。
あまり期待しないで見た『プチ・ニコラ』『怪盗グルーの月泥棒』が楽しすぎて参りました。
他には40周年記念で公開された『エル・トポ』のぶっとび加減もけっこう印象に残っております。


maple11月
101208_182133千葉ロッテマリンズがあれよあれよという間に日本一になってしまった11月。
この月は他の月と比べてそんなに突出してツボにはまった映画がないのですが、強いていうなら新感覚の『スタンド・バイ・ミー』ともいうべき『リトル・ランボーズ』と、人の業と愛をまざまざと描いた『悪人』(やや遅れて鑑賞)でしょうか。
やはり遅れて見た『レポゼッション・メン』の独特なセンスも、まあよかったかな。


これらの傑作の中で人にすすめるなら
①『カラフル』 ②『トイ・ストーリー3』 ③『インセプション』 ④『悪人』 ⑤『怪盗グルーの月泥棒』
というとこですが、個人的な趣味で選ぶと
①『カラフル』『ガンダム00』 ③『トイ・ストーリー3』 ④『怪盗グルーの月泥棒』 ⑤『インセプション』
というとこになるでしょうか。

これに上半期、12月に見た作品を足して年間ベストを決めたいと思います。いやあ、まるっきりの自己満足ですが、楽しいですね、こういう作業。
それではまたー


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December 10, 2010

開けてびっくりパンドラの箱 クリスチャン・アルバート 『パンドラム』

101210_192255♪パンパンドラドラ パンドラム~
パンパド~ラ パンパド~ラ パンドラム~
(作詞・作曲 SGA屋伍一)

すいません・・・ ついさっき歯を抜いてきたばかりなので、少し疲れ気味です。
『バイオハザード』シリーズで知られるポール・W・S・アンダーソンが、ドイツの気鋭の監督の作品をプロデュース。『パンドラム』、ご紹介いたします。

西暦21XX年・・・ 地球は人口の爆発によって滅亡の危機に瀕していた。人類の希望は一隻の船に託された。巨大宇宙船ヤマ・・・じゃなくてエリュシオンは、六万の人間を乗せ、はるか遠くの星「タニス」を第二の地球とすべく旅立つ。それからどれほどの時が経ったのか・・・ 乗組員バウアーは、突如としてコールドスリープより目覚める。だがしかし人々の多くはまだ眠ったまま。自分は果たしてなんのために目覚めたのか? 船は今どのあたりを航行しているのか? 多くの疑問を抱えたまま、バウアーはエリュシオンの中をさまよう・・・

宇宙を開拓すべく果てしない航海を続ける移民船・・・・ こういう話、SFでは時々見かけますね。日本の漫画では『超人ロック』の1エピソードや、『トライガン』などを思い出します。

表題となっている「パンドラム」とは、長期のコールドスリープによりひきおこされる平衡感覚や精神機能の障害のこと・・・だったかな。すいません、この辺少しうろ覚え。本当にそういう用語があるのかもよくわかりません。
むしろこの語から連想されるのはギリシャ神話にある「パンドラの箱」。この地上のありとあらゆる災いがかっ詰まっていたという、例の箱です。
この映画もまた、ひたすらパンドラの箱開けまくりなストーリー。なんせ主人公が目覚めるのがまず箱というか冷凍睡眠の棺の中。ほんで巨大と言ってもそこは宇宙船なので、艦内は非常に多くのしきりでもって区切られています。主人公が情報を得ようとしたり、問題を解決しようと思ったら、幾つもの扉やフタを開け続けねばならない。しかしそこで待っているのは貰ってうれしいプレゼントなどではなく、見たくもなかったあんなモノや、知りたくもなかったそんなことばかり。次の扉には果たしてどんな災いが待っているのか・・・ そんなすこぶる心臓によくないストーリーが展開されます。

あとタイトルが精神障害を表していることからもわかるように、この映画では「狂気」も重要なテーマとなっています。限られた空間の中で、あまりにも異常な状況に遭遇してしまうと、デリケートな人は心を病んでもの。果たして誰が正常で誰が狂っているのか。どれが現実でどれが妄想なのか。暗く無機質な背景の中で、じりじりと精神を圧迫されていく登場人物たち。見ているこっちまで参ってしまいそうです。

ここでこのテーマをリアルに追求していけば、この映画は『2001年宇宙の旅』や先の『月に囚われた男』のような格調高い作品になったかもしれません。しかし途中からアンダーソン氏がお好きな怪物さんたちとか、妙に場所に不釣合いなムチムチっとしたお姉さんが出てくるあたりから、お話はB級スタイルをまっしぐら。
惜しい・・・ でもどうせ宇宙SFをやるなら、モンスターとか半裸の姉ちゃんとか出したいよな! ウンウン!

101210_192313そんな『パンドラム』はもうほとんどの劇場で上映終了(・・・)。来年二月にはDVDが出ます。
『バイオハザード4』や『トロン・レガシー』といった大作SFの谷間にひっそりと公開されたため、来年のいまごろにはもう存在を忘れられてそうです。カワイソウ!
一応伏線とか宇宙船とかよくできてるので、その手のものがお好きな人はどうぞご覧ください。

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December 08, 2010

灯台もと暮らし 吉田修一・李相日 『悪人』

101208_182133もう公開されてだいぶ経っちゃってますけど、先日ようやっと見ました。三つの賞に輝いた吉田修一氏の小説を、『フラガール』などで知られる李相日氏が映画化。『悪人』、ご紹介いたします。

清水祐一は祖父母と暮らす孤独な青年。ある時祐一は出会い系で知り合った佳乃という女性を、ふとした衝動で殺めてしまう。焦りと不安の日々の中、祐一は光代という別の女性と知り合う。同じ孤独感を抱いていた二人は強く引かれあう。しかし光代のことを愛せば愛すほど、祐一は苦しい気持ちに苛まれるのであった。

非常に多くのテーマが盛り込まれたお話だと思います。というか人によって、それぞれ注目するところが微妙に違うのでは、と思える映画。
人はなぜ罪を犯すのか、本当の「悪人」とはなんなのか。そのことを問うた作品でもあり、混じりけの無い純粋な愛を描いた作品とも言えます。皮肉な運命のすれ違いや、人の孤独をテーマにした物語でもあります。

で、わたしは特にどこに注目したかと言いますと、これは人が突然別の誰かに入れ替わってしまう、そんな怖さが描かれた作品だと思いました。
以下はバリバリネタバレで参ります。読まれる方はそのことをご承知ください。

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祐一はぶっきらぼうではありますが、それなりに優しい気持ちを持っている青年であります。文句も言わずに体の弱い祖父の面倒を見ているところからも、それはうかがえます。
そんな祐一が、突然獣のようになって一人の女性を殺してしまう。祐一だけではありません。この映画に出てくる佳乃、増尾、そして佳乃の父の佳男も、誰もみなわたしたちの回りにいそうな普通の人間です。しかしそんな普通の人たちが、なにかのきっかけで突然豹変し、誰かに対して暴力を振るったり、悪鬼のような表情で呪詛をばらまいたりする。うう・・・ 人間って本当に怖い生き物ですね。
作中では鏡が度々意味ありげに出てきますが、この鏡は別人に切り替わるスイッチとして使われているような気がしました。例えば祐一は「鏡を見ていたら、突然金髪に染めてみたくなって」と語っています。
光代もそうです。働いている店で、彼女が不安に鏡をのぞき込むシーンが二回あります。最初に覗きこんだ直後、平凡に波風立てずに暮らしてきた光代が、それまでにないような思い切った行動に出ます。
そしてもうひとつはラスト近く。そこで光代は自分は今まで何をやっていたのかと、ふっと我に返るわけです。これ、本当に怖いなあshock
他にも灯台や、「濡れた足」などが象徴的に使われておりました。それぞれどういう意味があるのか、考えてみるのも一興かもしれません。

ここのところ捨て鉢な役が多い満島ひかりですが、今回もまたやってくれました。自分はモテモテと勘違いして、結果山中に放り出され、そのうっぷんを妻夫木君にぶつけたゆえに殺されてしまう役crying
その亡きアホ娘に懸命に語りかける父親(柄本明)の姿は、涙なくしては見られません。
わたしこの少し前に『川の底からこんにちは』という映画を見たのですが、それを立て続けにもう一回見たくなってしまいました。こちらも満島嬢が捨て鉢な役で出てくるのですが、基本的にムードは明るく、疎遠だったお父さんとの泣かせるエピソードなどもあります。『悪人』でうちのめされてしまった方は、そちらもセットでご覧ください。癒されます。 来年2月発売予定。

101208_182217終盤なぜ祐一があのような行動に走ったのか、最後の光代の言葉の意味は。唐突に見るものに宿題を残して終ってしまうところも、一筋縄ではいかない作品(原作にはも少しはっきり書いてあるみたいですけど)。さすがにもう上映大体終っちゃってますね・・・ 見逃した方はDVDをお待ちください。

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December 06, 2010

たった二人のロケ隊 ガース・ジェニングス 『リトル・ランボーズ』

101206_183414近年老いてなお、活躍著しいシルベスター・スタローン。そのスタローンがまたも「ランボー」の新作をひっさげて・・・ ってアレ? なんか違う? 失礼しました。スタローンは特殊な出演のみの『リトル・ランボーズ』、ご紹介いたします。

1982年のイギリス。ウィル少年は規律の厳しい教会で育てられ、テレビや映画を見ることを禁じられていた。ビデオを使った授業の際、外に出ていたウィルは、教室から追い出されていた悪童リー・カーターと知り合う。ひょんなことから彼の家に行く事になったウィルは、そこで衝撃を受ける。シルベスター・スタローン主演のアクション巨編『ランボー』(盗撮もの)を見てしまったのだ。それ以来ランボーにとりつかれてしまったウィルは、リー・カーターと一緒に『ランボウの息子』という映画を作り始める。

この映画を見てまず思ったことのひとつは、「映画は魔物だなあ」ということでした。それまで映像と関わらないようにしていた少年が、たった一本の映画を見ただけで、朝も夜もそのことが頭を離れなくなってしまう。度合いもあるでしょうが、映画好きの皆さんは少なからずこういう思い出があるのではないでしょうか。別にそれほど入れ込んでいたわけでもないのに、ある一つの作品と出合ってしまったために、以来すっかり映画の虜になってしまったということが。ウィル少年にとってのそれが『ランボー』だったというわけ。ちなみにわたしの場合は20代のころ見た『インデペンデンス・デイ』でした・・・ あーはずかし

そして映画の惑溺性は鑑賞だけではなく「作ること」にもあるようです。おとなしく親の言うことを聞いていたウィルが、『ランボウの息子』を撮るためにどんどんなりふりかまわなくなっていきます。実際彼らがアリモノとアイデアを駆使して自由に映像を撮っているところは、すごく楽しそう。自主映画を撮っている方の中には稼いだお金を次から次へとフィルムに注ぎ込んでしまう人も少なくないようですが、なんとなく彼らの気持ちがわかるような気がします。ていうか、貧乏しながらもそういうモノを作れる人たちが、正直羨ましいですね。


あと一つ気になったのは、どうしてこの映画の主なモチーフが『ランボー』なのかということ。『ランボー』ってそんなに子供の憧れるようなヒーローではないと思うんですよね。特に一作目は。なんせ社会のはみ出し者が警官たちを敵に回して、最後は結局刑務所行きという話ですから(きゃっ ネタバレしちゃったcoldsweats01
スーパーマンやジェダイの騎士のほうが、よっぽど「ヒーロー」と呼ぶにふさわしい。百歩ゆずって、同じランボーでも二作目だったらまだ納得がいきます。

ではなぜあえて一作目の『ランボー』を使ったのか。時代設定のせいもあると思いますが、自分はそのランボーがウィルやリー・カーターにとって自分を重ねやすい存在だったからでは、と考えます。
ウィルは好きなことをやりたいだけなのに、「悪魔がついた」というようなことを言われます。リー・カーターも悪戯のレベルがハンパじゃないため、教師たちから悪魔呼ばわりされたりします。しかし彼らはもちろん悪魔などではなく、大切な人に自分の気持ちをわかってほしいとずっと願っている、そんな寂しがりやの少年にすぎません。
ランボーも町の人たちや警察から恐ろしい殺人鬼のようなことを言われますが、彼とて別にすすんで誰かを殺したいわけではありません。国のために戦ってきたのに、その国が自分を拒絶している。そのことが悲しくてたまらないのです。
大きなランボーの物語は昨年ひとまず決着したようですが、果たして小さなランボーたちの思いは、母や兄のもとに届くのでしょうか。

80年代のイギリスの学校を覗くという点でも、なかなか興味深い作品でした。うーん。20年前の英国の少年少女たちも、けっこういろいろやってますね(笑) わたしの小中学校のころよりも前の話なのに、ずいぶん解放的なように感じられました。あとこういう学校を舞台にした話というのは、あまり主人公以外の学年というのはそれほど話に関わってこないものですが(代表例:ハリポ)、この映画では下級生の目から見た上級生の姿というのが色々出てきて、その辺も面白かったです。

101206_183436マメ知識をひとつ。作品のあるところで「ヤン・ピンカヴァ」という名前が出てきます。どっかで聞いたことある名だな・・・と思ったら、『レミーのおいしいレストラン』を途中まで作って監督を降りてしまった人でした。もしかしたら同姓同名の別人かもしれませんが、こんな変った名前の人そうそういないと思います。

『リトル・ランボーズ』は現在全国各地で上映中。東京まで見にいったのに、今日沼津でも上映することが明らかになりました。ま、いいのさ・・・


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December 01, 2010

ジュードのロ-ンと重労働 ミゲル・サポクニック 『レポゼッション・メン』

101201_175717ああ、10日ぶりの映画レビューなのにこんなタイトル・・・ エリック・ガルシアのSF小説を演技派ジュード・ロウ主演で映画化。『レポゼッション・メン』紹介いたします。

時は近未来。高精度な人工臓器が開発されたため、人々はさかんに臓器移植を行うようになっていた。だがそれには当然多額の費用がかかり、顧客によっては支払いが滞ることも珍しくはなかった。そこで登場するのが医療会社に雇われている臓器回収人・通称「レポメン」。支払能力なしと認めた客から、メスを振り回して強制的に臓器を取り戻す恐るべき仕事人。レミーは腕利きの「レポメン」で、長年親友のジェイクと組んで無数の臓器を回収してきたが、ある時妻の願いを聞き入れてデスクワークへの転属を願い出る。しかし彼の運命の変転はそこから始まった・・・

このストーリー聞いたとき、二つばかし「おや?」と思ったんですよね。ひとつはお話の設定が昨年やっていた映画『REPO!』とやけに似ている。もしかして『REPO!』もこちらの原作にインスパイアされて出来たのかな・・・とも思ったのですが、『レポメン』発表は『REPO!』の公開と大体同じくらいだし。たまたまアイデアがかぶっちゃったのでしょうか。不思議なこともあるものです。

もうひとつは『REPO!』の時も思ったんですが、普通人間から強引に臓器を切り取っていったら、その人死んじゃいますよね? それって普通に殺人罪だと思うのですけど、どうやら作品世界ではお金も返せないようなろくでなしは死んでも仕方ない、ということになっているようです。恐ろしい社会だ・・・
その辺ちょっとありえないだろ、って感じですが、今の世でも闇金さんなんかは支払い能力のない人に対して「だったら内臓売れ!」とか言うらしいですからね。このまま拝金主義がエスカレートしていったら、そういうことも十分にありえるかも。

さて、この映画内容が内容だけに流血シーンや切断シーンがふんだんに盛り込まれております。金まみれで欲まみれで体の中まで偽物の世界で、何が本物かといえば、それは「痛み」くらいしかない・・・ そういうことが言いたいのでしょうか。単に作り手の趣味とも考えられますが。
あと何もかもがヴァーチャルな環境でもうひとつ本物と言えるものがあるとしたら、それは人が誰かを思う気持ちなのかもしれません。サイバーパンクには登場人物の感情がやけに無機的なものが少なくありませんが、『レポゼッション・メン』はその辺かなり人間くさいお話であります。ただ、痛みも思いも決して人工的には作り出せないものなのか?と言われれば、それはやや微妙なところではありますが。

キャスト面で特に印象的だったのが、主人公の親友を演じるフォレスト・ウィテカ。このひとなんせ『ラストキング・オブ・スコットランド』(通称キンスコ・笑)のイメージが強いものですから、何を考えてるのかわからないようなムードを常にかもし出しているような。彼とジュード・ロウ演じるレミーとの意味深なやり取りが、この映画の大きな見所のひとつと言えるでしょう。

以下、ラストちょいバレ。

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作中で何度か使われている「猫のいる箱に毒ガスを入れて・・・」という話は、パラレルワールド理論の基礎となった「シュレーディンガーの猫」の話ですね。もしかしたらレミーの抱いた妄想が、現実になっている世界もあるかもしれない。あまりにもニヒルな結末だったので、ついついそんな風に思いたくなってしまったのでした。

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『レポゼッション・メン』は既にDVDが発売中。何度も書いてますが、最近は本当にDVDが出るのが早いですよね・・・ ちなみにこの映画本国では大コケしたようですが、内容的にもエンターテイメント的にもまずまずの出来だと思いますので、ご興味おありのかたはぜひどうぞ。

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