ロシアから愛をこめちゃったりして ラデュ・ミヘイレアニュ 『オーケストラ!』
毎度おなじみ遅れ単館系映画のご紹介。パリーで『THIS IS IT』を抑えてオープニング1位を記録したという『オーケストラ!』ご紹介します。
物語はロシアより始まります。アンドレイはかつてマエストロとして名を馳せながら、政府に逆らったために今は劇場の清掃夫として働いていました。ある日パリから楽団に送られてきたFAXを見た彼は、かつての仲間を集めてボリショイ楽団になりすまし、憧れの場所で演奏することで自分の夢をかなようとするのですが・・・
原題の『Le Concert』はコンサートというよりコンチェルト(協奏曲)の意味が強いでしょうか。アンドレイが理想とするチャイコフスキーの協奏曲が、この映画を彩る重要なモチーフとなっております。
・・・・とは言うものの、わたくしクラシック音楽のことなぞでんでんわかりません(笑) だのにこの映画を見に行ったのは、音楽映画であると同時にお笑い映画であるという評判を聞いたから。あと「落ちぶれた男たちがもう一度夢のために立ち上がる」みたいなあらすじから、『少林サッカー』やドラマ『王様のレストラン』みたいなお話を想像したので。
見てみて特に興味深かったのは、ロシアという国に関するあれこれでした。共産主義が崩壊して約二十年。もうすっかりその思想とか忘れられちゃったのかな・・・と思っていたら、やっぱりまだ諦めていない人たちもいるんですね~ よく言えば一途、悪く言えば頑固。その姿が微笑ましくもあり、物悲しくもあり。
何もかもが洗練されているフランス側と、ノリで適当にやってるロシア側の違いなんかも面白かったですね。パリについた途端町へ繰り出して大騒ぎを繰り広げる偽ボリショイの皆さん。その姿は海外でもマイペースを貫く農協の方々とまったく一緒です。そんで翌日のリハーサルにはほとんどが顔を出さないという(笑) ・・・こいつら、本当に演奏が目的で来たのか?とアンドレイならずとも頭を抱えたくなるところ。
まあこの映画フランスで作られたうえに監督もルーマニアの人なんで、実際のロシア人が見たら「こんなんじゃないよ!」と言いたくなるかもわかりませんが・・・・
もう一つ特に印象に残ったのは、音楽の持つ力というヤツでしょうか。この映画、全体的に強引なところがあります。クライマックスの演奏シーンなども、普通なら「リハーサルもしてないのに、なんでこんなにバッチリ息が合ってるんだ!?」とか、「どうして一緒に演奏してるだけでそんな秘密までもわかってしまうんだ!?」とツッコミたくなるところなんですが、荘重に響く調べに盛り上がっているうちに「ま、細かいことか」と思えてくるから不思議です。さらにはその演奏と並行して語られる人情話に、涙までしてしまったりして
まあ、クラシック音楽もなかなかいいもんです。・・・と、ちょっと聞いただけで、こういう風にわかったような気になるヤツ、いますよね(←お前だよ)。うん、でもチャイコフスキーの「協奏曲」は、またちゃんと聴いてみたくなりましたよ。
そんな『オーケストラ!』は、もう来月頭ごろにDVDが出ます。ちょうどそのころメドベージェフ大統領が日本に圧力をかけに来るそうですが、これさえ見とけば対策はバッチリ!(ホントかしら)
Comments
ラスト12分の圧巻さ!
通常クラッシックを扱った映画なんかだと、ほぼ確実に睡眠
がたっぷりとれるのですが、これは感動の余りねるどこじゃ
なかったです。
音楽は時をも越えるのですね!
Posted by: KLY | October 04, 2010 10:12 PM
>KLYさん
毎度ありがとうございます
そういえばKLYさん、5月の時点で「いまのところ今年のマイベスト」とおっしゃってましたっけ
クライマックスが丸々演奏という形式はなかなか大胆でした。こういうの、ほかには昔の作品で『愛と哀しみのボレロ』というのがありました。ながら見だったのでストーリーが全くわかりませんでしたけど
Posted by: SGA屋伍一 | October 05, 2010 06:58 AM
最後のイラストはもしや、千秋先輩?
私もー、クラシック音楽なんてぜんぜんだし
実はこちらもうちょっとでスルーするところだったのですが
たまたま時間が空いて観てみたら、すっごくよかった
ここまでお笑いだとは予想しておらず、8割は笑って観てたのに
ラスト10分で号泣してしまいました。
先日観た『男と女』とはまったく違う・・・
分かりやすいエンタメフランス映画。
『ネコを探して』も観たかったんですけど
今週いっぱいでたぶん終わるので、観られないかな。
『ミックマック』は時間が合えば観たいです。
Posted by: kenko | October 06, 2010 09:51 PM
>kenkoさん
おはようございます! おかえしありがとうございます
おさっしの通り千秋先輩です。この絵でよくわかってくださいました(笑)
わたしも最初に評判を聞いたときにはまったく興味ありませんでした。お堅いイメージのお話だとすっかり思い込んでいて。
しかしくわしいお話を聞くうちにだんだん興味が湧いてきまして。こちらにも流れてきてくれて、本当に良かったなー
そういえばフランス映画なのに大人の男女の恋模様とかま~ったくありませんでしたね。おまけに男性陣はお洒落とは程遠いほこりっぽいオッサンばっかりで。でもわたしはそういう映画のほうが親しみがわきます
『ネコを探して』『ミックマック』は必ずしもスクリーンで見なくても、十分かもしれません。ただ『ミックマック』の方はkenkoさんの感想をぜひ聞いてみたいです。お仕事の合間で大変かもしれませんが、よかったら見てみてください
Posted by: SGA屋伍一 | October 07, 2010 07:28 AM
これねー、私は笑いがあわなかったの。
最後の部分はさすがに盛り上がったけど。。。
小学生と高校生の頃ピアノやってたし音楽は好きなんだけどな、
東京国際映画祭で狙ってたのとれなかったって言ってたけど他には何か観るのかな?
Posted by: mig | October 14, 2010 11:19 AM
>migさん
おはよっすー ま、笑いのセンスも本当に人それぞれだからね
わたしはそこそこウケたけど、どっちかといえばお笑い要素より人情話の方が印象に残ったかな
ピアノやってたんだ。今度十八番はなんだったのか聞かせてもらおう
TIFFは他の作品はよくわかんなくてもうチケットも大体売れちゃったみたいだから、すっかり諦めモードです。狙ってた作品(『ビッケ』ね)の上映日に休みまで取っちゃったんだけどね・・・ ははは
Posted by: SGA屋伍一 | October 15, 2010 08:10 AM
伍一くん☆
私も最初、もっと笑える映画と思ったら、案外そういう話ではなくて肩透かしだったけど、その分感動的で良かったなぁ~~
ロシアの人の貪欲な商売っ気は、確かに笑う所かもだけど、本当にロシアの人に怒られそうね。
って言うより、あれはユダヤ人ってことなのよね。
でもユダヤ人は中国製のニセモノ携帯を売ったりはしないんだけど?
Posted by: ノルウェーまだ~む | November 20, 2012 11:04 PM
>ノルウェーまだ~むさん
ども。そうですね~ それまで喜劇的ムードだったのにクライマックスで強引に感動ムードに持って行ったのはなかなかに力技でしたねw
わたしが聞いた話ではロシア人は利害関係のない相手には基本的にフレンドリーなんだけど、利害関係がからむと途端にえげつなくなるとか・・・ この映画での描写も当たらずも遠からずか?
ユダヤ人は昔から「金儲け上手」ってよく言われてますよね。それこそシェイクスピアのころから・・・
Posted by: SGA屋伍一 | November 21, 2012 10:09 PM