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October 26, 2010

荒野の子連れモグタン アレハンドロ・ホドロフスキー 『エル・トポ』

101026_184110最近「伝説の名作」という言葉に弱いワタクシ。そんなわけで昨年から『地下鉄のザジ』『ミツバチのささやき』『動くな、死ね、甦れ!』『不思議惑星キン・ザ・ザ』など観てきましたが、これもそうした一本。ジョン・レノンやアンディ・ウォホールを熱狂させたカルト映画の傑作が、製作40周年ということでデジタル・リマスター版となって帰ってました。『エル・トポ』紹介いたします。

「エル・トポ」とはモグラの意味。モグラは光を求めて地上まで穴を掘り進むが、太陽の下に出た途端そのまぶしさのあまり視力を失う。
荒野を素っ裸の息子を連れて旅する漆黒のガンマン、エル・トポ。訪れた街でひどい虐殺の有様を見たエル・トポは、その犯人たちを血祭りにあげることを決意します。
そんなプロローグとともにこの映画は始まり、以下「創世記」「預言者たち」「詩篇」「黙示録」と題された章ごとに話は進んでいきます。以下バンバンとネタバレしていきますので、「既に見た」「たぶん見ない」という方のみご覧ください。

sun

newmoon

sprinkle

horse

お話は四部というより大きく前半と後半に分けられると思います。エル・トポが悪者の情婦にそそのかされて、最強のガンマン四人を次々に葬っていく前半と、改心したエル・トポが穴倉に閉じ込められた人たちのために、懸命にトンネルを掘り続ける後半。
あてずっぽうの解釈を述べさせていただけるなら、この映画は大きく見ると信仰(主にキリスト教)の葛藤もしくはジレンマを描いた作品のように思えました。

当初純粋な正義感に溢れていたエル・トポ。しかし自身の良心である息子を捨て、一人の情婦(権力?)と結びついたことから彼の堕落が始まります。彼が倒していくガンマンがそれぞれ中東、東欧、中南米、アフリカの装束を身につけているのは、教会がそれらの地域を次々に勢力下に置いてきた歴史を思い起こさせます。しかしやがてエル・トポが女に裏切られたように、教会もまた時代を経てその権力を弱めていきます。ここまでが「過去」の部分。続いて「現在」と「将来」についてホドロフスキー監督は語ります。

後半に入って再び良心を取り戻したエル・トポは、なりふり構わず貧しい人々を解放するため尽力します。彼がトンネルを導こうとする「街」は、現代の文明社会(主にアメリカ)の比喩のように思えます。貧しい者たちは虐げられ、道徳は崩壊し、怪しげな宗教がまかり通っているような環境。
下層階級のためにトンネルを掘るエル・トポの姿は、そうした人々の権利と自由のために身をなげうった活動家、キング牧師やガンジーなどを連想させます。しかし権利を勝ち取ったその先に何があるのか? 監督は恐ろしく皮肉の利いた結末をエル・トポにお見舞いします。

ちなみに表題に当てられている聖書の各書は、創世記・・・最初の人間の堕落に関する「失楽園」を含む書 預言者たち・・・堕落したイスラエル国民に対する警告 詩篇・・・神の栄光を讃える詩 黙示録・・・終末に関する予言 といった内容。それなりに映画の各部分にあてはまっているような。

そしてこれは、一人の人間の求道と彷徨を描いた作品としても見ることができます。道に迷っても、目標を見失っても、人はどうしても理想や「救い」を探し続けるもの。それを得たと思った直後に、手痛い目に遭うとも知らずに。本当にこのアレハンドロさんという監督の底意地の悪さは、計り知れないものがあります。

わたくし勝手にこの監督、これを撮ったきりどこかへ消えてしまったのでは、考えていたのですがcoldsweats01、調べてみたらその後も『ホーリー・マウンテン』『サンタ・サングレ』という映画を撮ったり、無茶な企画を立ち上げてはポシャったりしていたようです。日本の映画・アニメにも関心があるようで、特に『AKIRA』に関しては大ファンだそうで。面白いジイ様ですね(笑)

ちなみにこの方、先に話題になったチリの出身(人種的にはロシア系ユダヤ人)。『エル・トポ』の中にもえっちらおっちらトンネルを掘る描写があったことに、なにか不思議な符号を感じました。

わたし個人の感想としては、見ている間は「あれ? これ間違っちゃったか?」という時間もないではなかったですcoldsweats01 ただ見終わってから折にふれ様々なシーンが思い出され、ああも考えられる、こうも考えられると思索をめぐらすのがなかなか楽しかったです。とはいえショッキングで教育的によろしくない描写も多く、いわゆる「良識派」にはとても薦められない作品だと思いました。

101026_184139そんな『エル・トポ』はこれから全国の主要都市を細々と回っていくようです。しかしまあ、世の中には変な映画を作る人がいるもんですね(笑) 

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Comments

み~ん。。。すがりんこ。。。

やっぱこれだね、、、明治のトッポ。。。

そうだったのか、、、チリの落盤事故はすでに映画化されてたんですね。。。

あいつらも自力で這い上がってくるべきでしあね。。。33人もいhたくせに。。。

いまキーボードに水こぼしえ、いくうかバカになhてるキーがあるあめこんな ですまmm。。。ひhさいさおコhメhm

うあああふぁkd

Posted by: み~んちゃん。。。 | October 29, 2010 at 12:47 AM

↑怪文書すんません。。。キーボードにお茶こぼして、しかとして打ってたら、どんどんキーが死んでいくという、、、SFにあるよね、言葉がひとつずつ消えていくとか。。。お気に入りのキーボードだったのに。。。

で、なんだっけ? チリの落盤事故も地上に出たとたんに蜂の巣になればよかったですね。。。

ところで、モザイクどうでした?

Posted by: み~んちゃん。。。 | October 29, 2010 at 12:58 AM

>み~んちゃんさん

はじめまして~ ってゆうか、あなた裏山さんですね?
わたくしいつ識者の方から「ちょwww おまwww 全然違うだろwww」ってコメントが来るかビクビクしてたんですよ
そしたら裏山さんがキタ━(゚∀゚)━!!!!!  とゆうわけでガム(腕?)ブログの方でも、その造詣深い批評眼でもって解説してくださると大変ありがたいんですが

>チリの落盤事故も地上に出たとたんに蜂の巣になればよかったですね。。。

またそんなゴム体なことを。でもそうですね。確かに快挙より悲劇の方が人の心に強く残るもの。その証拠にもうあの事件もそれほど話題にのぼらなくなったような。ま、わたしゃそれでよかったと思いますが

で、キーボーはその後無事に回復したのでしょうか。モザイクはそういえば息子のムスコあたりにかかってましたよ・・・ に~ん

Posted by: SGA屋伍一 | October 29, 2010 at 11:35 PM

すまん。トッポってロッテだったっち。。。

ロッテのトッポ → ロテトポ → エルトポ(爆笑)

それを伝えたかったのじゃ。。。

ホドロフスキーってたしかマリリン・マンソンの仲人やってたんじゃなかったかな? あとモザイクじゃなくてボカシだった。。。ビデオのボカシがひどいんだ。。。じゃ、よいお年を。。。

 

Posted by: み~んさん。。。 | October 30, 2010 at 12:26 AM

>み~んさんさん

はじめまして。。。 ってゆーか、あなたみ~んちゃんさんでしょー!!

ああ、明治とかロッテとか、その辺読み飛ばしてた。。。 めんご。。。
まあロッテはすごいよね。今年見事にパの優勝をかっさらっていったし。。。 さすがあのアストロ球団を苦しめただけのことはあるよ。。。 にょ~ん。。。

そう、凄腕の虐殺ガンマンのくせに「トポ」っていうのが笑えるよね。。。 自分は「トッポジージョ」とか思い出してましたよ。。。 にゃ~ん。。。

Posted by: SGA屋伍一 | October 30, 2010 at 08:25 PM

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