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October 19, 2010

フクロウは砂嚢で感じる ザック・スナイダー 『ガフールの伝説』

090825_164816えー。これも公開されてちょっと経ってますけど。
あの『300』や『ウォッチメン』の血みどろ残酷映画監督ザック・スナイダー氏が、子供を対象にしたフルCGアニメに挑戦。できんのか!?と思いましたが、はてさて結果はどうだったか。『ガフールの伝説』ご紹介します。

そこはまだ人間の手が触れていない深い森の中(てゆうか、人間いないっぽい)。メンフクロウの子供ソーレンは、兄弟や両親とともに平穏な毎日を過ごしていた。ある日兄のクラッドと枝渡りの競争をしていたソーレンは、謎のフクロウ集団に誘拐されてしまう。彼ら「純血団」の目的は首領メタルビークのもとフクロウ世界を征服することにあった。ソーレンは苦心の末、純血団から脱走し、この世に悪がはびこる時必ず現れるという「ガフールの勇者たち」を探す旅に出る。

まずツッコミどころから(笑)。いや、なんでこんなにこの世界ではフクロウばっかりなのか。まあ大空が舞台の話なので鳥が中心なのはよしとしましょう。でもハトとかスズメとかワシとか、もっと他の鳥類もいていいんじゃないでしょうか? その代わりにフクロウは「こんなのいるんだ」ってくらいありとあらゆる種類が登場します。なぜ?

あとこの世界のフクロウはものすごいです。高度な社会生活を営んでいたり、道具を使ったり、器用に製鉄までしてしまったりする(笑) ほんでかっこいい鎧を作って、それを装着して戦ったりします。
ううむ・・・ この感覚はなんか『少年ジャンプ』に近いものがありますね・・・ 戦士がかっこいい鎧を着込んでいるところは『聖闘士星矢』みたいだし、動物が言葉を話したり、正義と悪の陣営に分かれて派手なバトルを繰り広げるところは熱血男気犬漫画『銀牙』を思い出させます。

実は原作には「はるか昔に地球上を支配していた異生物たちは既に滅び去り、フクロウたちが高度な文化を育む」なんてそれなりに最もらし~理由が書かれているそうです。でも本当のところは、原作者が滅茶苦茶フクロウが好きだからでは?と思わずにはいられません。それくらいこの映画はフクロウづくしでございます。まさにお好きな方にはたまらない状態。フクロウが「ペリット」と呼ばれる毛玉の塊を吐くことや、「砂嚢」と呼ばれる特殊な器官を持つことなど、まず他の映画では出てこないような特殊な知識まで教えてくれます。

ですからこの独特な世界観に抵抗なく入っていける人・・・ 動物好きだったり、少年漫画に慣れている人だったら一応楽しめると思うのですが、現実離れした映画が苦手な人には、ちょっとむかないお話だと思いました。

CG職人ザック・スナイダーが監督を務めるだけあって、飛行シーンは大変見事であります。特に無数の水しぶきが舞う中、波間をすり抜けてソーレンが飛んでいくシーンは本当に美しい。このシーンだけでご飯が三杯はいけるってくらい素晴らしいです。3D映画も最近少なくないですが、個人的にこんなに3Dに感動したのはそれこそ『アバター』以来です。

あと興味深かったのは「兄弟の相克」をテーマにしている点でしょうか。見ている時は「なんで兄貴のクラッドはここまで性格がまがってしまったんだ?」と思ってました。しかし兄弟というのは(特に年の近い男兄弟)、何かとお互いを意識して張り合ったりするもの。時にはそれがこじれて深刻な状態になってしまうこともあります。なんせ旧約聖書によれば人類最初の兄弟ですら一方が他方を殺しちゃったりしてるので。人間というのは本当に業の深い生き物ですね・・・ あ、映画はフクロウの話だったっけ。
あと、環境も遺伝子も大体一緒なのに性格が大きく違ってくるというのもよくあることですね。これまた兄弟の不思議なところであります。

091124_181222そんな見所もそれなりにある『ガフールの伝説』ですが、フクロウのキャラが独特だったのと、キモイ生き物も登場するのとで、子供受けは微妙なところだったようです。売り上げ次第では続編も考えられてたようですが、この調子だとそれはたぶんないかな・・・ ま、わたしはこれで終わりでも十分いいんんじゃないかと思いますが。
結論:ザックさんにはやっぱりキッズものはむかないということで。ちなみにザックさんは現在『サッカーパンチ』という、女子刑務所をロボがガンガン暴れ回る映画を作っているそうです。うわー、なんかすごい面白そう!


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Comments

そういやそうだ。確かに他の鳥ぐらいいてもいいよねぇ。第一蛇がでてくるんだから。(笑)
しかしすんごい精密さでしたね。風になびく羽毛とかありえないぐらいホンモノだし。
もっとも、先日『アバター特別編』観てきましたが、CGならやっぱりあっちですが。つかアバターって「すげーCG!」っていうより、「え?今の全部CG?」って感じでしたから。
もっともリアルのフクロウとファンタジー比べちゃいかんな…。

Posted by: KLY | October 19, 2010 11:44 PM

>KLYさん

こんばんは。毎度ありがとうございます そういえばヘビいましたね。しかも善玉で
ほかの鳥類はそれこそカラスくらいしか出てこなかったでしょうか、もしかしたらフクロウが繁栄しすぎて他の種族を駆逐してしまったのかもしれません
 
ああ、『アバター特別編』、いいですねー わたしも見にいきたいけど、今月はもう余裕がなさそうです
今後の3D作品ではなんといっても『トロン・レガシー』が楽しみですね!

Posted by: SGA屋伍一 | October 20, 2010 08:00 PM

伍一っちゃん

フクロウ王国だからじゃない?国王とかいたもの。(笑)
それにしても、兄弟の絆の描き方や兄があんなになぜ悪どいのかとか何にも描いてないのにいきなりあんなに冷たい兄に共感できずー
フクロウちゃんたちは可愛いけど内容は戦うだけで単純、そのわりには子供あんまり楽しめないっという中途半端な映画だったよねぇ。
で、結局TIFFはひとつも見ないのかな?
チケまだぴあで直接とれるのもあるうようだけど、、、、

Posted by: mig | October 21, 2010 01:50 PM

>migっちゃん

おはよっす。おかえしありがとう
そっか! あの世界のどこかにはきっと「タカ王国」とか「ニワトリ王国」とか「ダチョウ王国」なんてのもそれぞれ存在してるのかもしれないね(笑)

片岡家はみんな仲がいいからわかりづらいと思うけど、兄弟って中にはささいなことがきっかけで徹底的にこじれちゃうこともあるみたいだよ(特に男兄弟は)。うちの場合は・・・つかず離れずってとこかな(笑)

TIFFは見たい作品は完売しちゃったか一般公開決まってるかなので、今年は見送ります。ああ・・・ オレのビッケ・・・ migさんは楽しんできてね~

Posted by: SGA屋伍一 | October 22, 2010 08:05 AM

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