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October 30, 2010

ニコニコ漫画 ローラン・ティラール 『プチ・ニコラ』

101030_163212♪ぷちぷちにこら~ ぷちにこら~
なんでもおかしな ぷちぷちにこら~(『クレクレタコラ』の節で)


フランスで50年以上愛されている絵本が、先ごろ『モリエール 恋こそ喜劇』も公開されたローラン・ティラールの手により映画化。『プチ・ニコラ』ご紹介いたします。

ニコラは愉快なパパと優しいママに囲まれて育った、元気な男の子。学校の成績はそれほどよくはないけれど、友達たちと一緒に楽しい毎日を送っていた。ところがある日その生活に不穏な影が忍び寄る。どうやらママのおなかの中に新しい赤ちゃんが宿ったらしいのだ。「このままでは不要になったボクは捨てられる」そう思い込んだニコラは、仲間たちの手を借りて、なんとかして家にいられるようあれこれ策を練るのだったが・・・

前から度々言ってますけど、わたしは「大人の鑑賞に堪えうる子供映画」というのが好きでして。その理由のひとつは、子供たちの、私たちが思いも寄らない発想というのが非常に愉快だからです。例えばこの映画で言いますと、なんでか「弟が生まれたら自分は捨てられてしまう」と思い込んだり、そのせいでパパの顔がだんだんと悪鬼に見えてきたり。はたまたトラブルを片付けるために「ギャングの力を借りよう」とか言い出したり。
でも考えてみれば、わたしたちだって子供のころはそういう突飛で、ちょっとブラック風味の入ったことをよく思いついたものです。『プチ・ニコラ』はそんな幼少のころの懐かしい感覚を思い出させてくれます。

ニコラの友達たちというのが、また個性豊かで本当に楽しい。年がら年中なにかをもしゃもしゃ食べているアルセスト。子供のクセに眉がなく、言うことがいちいち極道がかっているウード。金持ちの息子でいつもコスプレをしているジョフロア。三歩歩くと全て忘れてしまう万年立たされ坊主のクロテール。そして成績優秀だけどクラスメイトの悪事をすかさず先生に言いつけるメガネ君アニャン。特にわたしは劣等生のクロ輝くんに親近感を覚えました。この天然ぶりは主人公のキャラを余裕で食っちゃってます。その対極にいるアニャン君もなかなかの逸材(笑)。どちらかと言えばいじめられっ子になりそうな設定なのに、知力と性格の悪さでもって、逆にみんなから恐れられています。こういう性格のひんまがった子、いいですよね~

これも度々言ってますけど、フランスというと我々からは縁が遠くて、何もかもが洗練されていて、世界で一番お洒落なトレビア~ンな国、というイメージがあります。しかし『プチ・ニコラ』はそんなフランスの人たちも日常生活においては我々と本当に大差ないことを教えてくれます。特に会社の社長にペコペコ頭を下げたりするパパや、社長夫人に負けまいといろいろ見栄を張るママの姿は、アサッテ君やフジ三太郎の世界と全く変わることがありません。難解で大人の揺れ動く感情を描いたフランス映画もいいものですが(←無理スンナ)、こういうかの地の人々を身近な存在にしてくれる作品もまたいいものです。

この手のエスプリが肌に合わない方もいるとは思いますが、わたしが見たときは劇場全体がずっと自然な笑い声で満ちていて非常にいい感じでした。本当にこれほど予告編から実際の楽しさが伝わってない映画も、ちょっと珍しいです。

101030_163247フランスのいま一人の国民的キャラクター「アステリックス
」も意外な形で登場する『プチ・ニコラ』は、現在都市部を中心に細々と公開中。昔『トム・ソーヤーの冒険』や『少年探偵団』にワクワクした人たちに、強くおすすめいたします。

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Comments

あーわかるわかる。予告編からじゃ全く解らないよね。これは観ないと解らない。でも観たら凄く幸せになれる。子供の奇想天外な行動で笑い、大人の事情でもってまた笑う。殆ど笑いっぱなしだけど、スクリーンからは笑いとともに愛が伝わってくる。
良い映画ってこういう作品を言うんじゃないかと思うなぁ。

Posted by: KLY | October 30, 2010 10:01 PM

>KLYさん

こんばんは。毎度ありがとうございます
かわいい、微笑ましいというのもあるんですけど、この映画けっこうブラック(ノワール?)なところもあって、そこが痛快でした
予告編からはその辺が全く伝わってこないんですよね。なんだか行儀のいい、教育によろしい映画のような印象を受けました。でもまあ見る気になったのは、予告に出てたアニャン君のゴキブリコスに強烈にひかれたからでありますが(笑)

今年も単館系の映画ちょこちょこ見ましたが、その中ではいまんとここれと『フィリップ、君を愛してる』がマイベストです

Posted by: SGA屋伍一 | October 31, 2010 08:20 PM

ぷちぷちにこら、ぷちにこら〜
・・・ごめん、クレクレタコラがどんなフレーズだか知らないのだけれど、歌ってみました。
君って、twitterでもよく歌ってますね。ネット上では歌上手いですよ!(いよっ!)
>前から度々言ってますけど、わたしは「大人の鑑賞に堪えうる子供映画」というのが好きでして
あっかえるさんの真似してるー!じゃあ私も大人の鑑賞に堪えうる子供映画が好きです(前々から言ってますけど)
というか、SGAさんは子どもを主人公にした映画でも、割と私と同じ映画を気に入ることがありますね。ちぇっセンス似てるのかなあ!
そう言えば君は、『ルイスと未来泥棒』の時に、「これを見たのは私が勧めたせい・・」と私のせいにしていたことがありましたね!ひどいわひどいわ!
えっ、アニャン君が気に入ったんですか?私はSGAさんはクロテールに共感を示すと思ったのに(無理スンナ)!
正直自分はアニャン君はあんまり好きじゃなかったです。ニコラの計画の仲間に入っていたら別の感想だったと思うけど。

Posted by: とらねこ | December 27, 2010 03:21 PM

>とらねこさん

ども。お返しありがとー
クレクレタコラの歌はこれです
http://www.youtube.com/watch?v=jxS2Bh4jfXU
あ、やべえ・・・ 記憶と節が違う・・・

>あっかえるさんの真似してるー!

わたしだって前々から言ってますよ! たぶんかえるさんがわたしの真似をしているのです。きっとこんなところ読んでないだろうから好き勝手言ってしまえ!

そうですねえ、最近はついつい何でもとらねこさんのせいにして考えております。こんなに寒いのも、わたしがもてないのも、来年の花粉症が十倍なのもみんなとらねこさんのせいです。どうしてくれるんですか!

ま、それは一応冗談として
アニャン君に共感を覚える人はあまりいないでしょうね。にもかかわらずわたしが気に入ってしまったのは、自分が昔クラスでこんなポジションだったから(笑) 昔はそれなりに勉強ができたのですよ。信じてください
クロテール君もよかったですね。やつは将来すごい大物になるか、普通のボンクラになるかのどっちかだと思います

Posted by: SGA屋伍一 | December 28, 2010 07:51 AM

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