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September 07, 2010

大空魔竜バイキング ディーン・デュボア クリス・サンダース 『ヒックとドラゴン』

100907_181850久々の連日更新~ 映画の未消化レビューが6本もたまってしまったので(・・・)ちょっと自分にムチを入れてます。ピシピシ! ああんもっとお!

で、今日はこの作品。日本では初登場第八位くらいだったので「こりゃすぐ終っちゃうかな」とも思ったのですが、五週目に入った今もなんとかまだがんばってます! よかった、間に合って!
それではあらすじから。

そこは架空の北欧世界。バイキングとドラゴンたちは互いの生存をかけて激しい戦いを続けていた。族長の息子ヒックもまたドラゴンを倒そうと奮闘するが、体格に恵まれない彼はいつもみんなの足手まといとなってしまう。
だがある日、ヒックは自前の珍発明で「幻のドラゴン」を捕獲することに成功。喜びいさんで獲物をしとめようとしたヒックだったが、ドラゴンの哀れな姿を見て、どうしても殺せなくなってしまう・・・

これまでもドラゴン映画はたくさんありました。『サラマンダー』『ダンジョン&ドラゴン』『エラゴン』『燃えよドラゴン』・・・ しかしこの映画ほど多種多様なドラゴンが出てくる映画は、『D-WARS』を除けばほかにないでしょう。
しかもただ出てくるだけでなく、それぞれのドラゴンに習性、得意技、倒し方といった細かい設定がついていて、ちゃんとした見せ場まで用意されています。まさにお好きな人にはたまらない世界。ヒックの乗るドラゴンの名は英語では「トゥースレス(歯なし)」、字幕では「トゥース」となっているのですが、この際「トゥース」でとーすことにします。

さて、いつしか友情が芽生えてしまうヒックとトゥース。しかし二人はそれぞれ敵対する陣営に属しています。このあたり『ロミオとジュリエット』・・・というよりも、少し前に話題になった名作絵本『あらしのよるに』を思い出さないでもありません。
ここでヒックがトゥースを殺さなかった理由が、とても納得のいくものでした。こういう話、日本アニメでもちょくちょくあるのですが、大抵理由を問われると「そんなのボクにだって・・・わからないよ!」と叫ぶパターンが多かったような
しかしヒックは静かに確信をこめてこう語ります。「あいつがボクにおびえていたから」「まるで自分を見ているようだったから」
いま世界で続いてる多くの紛争は、きっと相手を得体の知れない怪物、到底理解できない存在と考えるから、いつまで経っても終らないのでしょう。ヒックのように、「相手も同じ感情を持つ者たち」ということに気づけるなら・・・ まあそれがなかなか難しいわけですが。

こうした丁寧な語り口が評判を呼び、この『ヒックとドラゴン』は本国では五週目にしてまた第1位に返り咲くという快挙を成し遂げたそうです。日本では残念ながらそこまでのブームとはならなかったようですが(・・・)、こと映画ファンからのこの作品に対する熱い支持には目を見張るものがあります。これまでピクサー以外のCGアニメでそこまでのラブコールを聞いたことはほとんどなかったので、正直びっくらこいたのでした。

以降は結末を明かしています。未見の方はご注意ください。

ゴジラとの一大バトルのあと、ヒックには厳しい現実が待っていました。それは鉄の棒に代えられていた、自分の片足。子供にはかなりショックな場面かもしれません。
しかしその直後、その義足がトゥースに付けられた金具とカチッとはめられた場面で、その暗い気持ちもカラリと晴れました。その馬具(竜具?)がまるで、一人と一匹の強い絆を表しているようで。
少年は片足をなくしましたが、代わりに大きな翼を手に入れました。生きていく上で失うものは必ずある。しかし友のために必死でがんばる者は、もっと素晴らしい物を手に入れることができる・・・ そんな作者からのメッセージを受け取りました。

100907_181912この『ヒックとドラゴン』を見て、古のアニメ『小さなバイキング ビッケ』を思い出したという方も多いようです。実にタイムリーなことに、昨年ドイツでこの『ビッケ』実写版が公開。大ヒットとなり、先日調布で行われた「キンダーフィルムフェスティバル」でも最優秀賞を受賞したのですが、これがなんと日本では公開されないという・・・ なんとかなりませんかあ! 配給会社の方々!
そんな血の叫びをもって本項を終わりといたします

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Comments

ちょい待てぃ!『燃えよドラゴン』は違うじゃろが!(爆)
って、きっと突っ込みを待ってると思うので一応ね♪

ランキング自体は2週目で早くもベスト10圏外に消えちゃいましたよね…。見てもらえさえすれば素晴らしい作品なのは解るんだけどなぁ。流石にもうガキンチョ向け映画の怒涛の渦に巻き込まれてしまったってとこでしょうか。
「キンダーフィルムフェスティバル」地元調布開催なのに時間合わずに行けなかったのだ…。

Posted by: KLY | September 08, 2010 12:53 AM

>KLYさん

毎度どうも! 何をおっしゃいますか! ドラゴンと言ったら普通は李小龍ことブルース・リーですよ! 考えるな、感じるんだ!
・・・・ツッコミありがとうございます

この映画が不遇を囲ったのは、やはり今年はライバルのネームバリューが強力すぎたのと、今までドラゴン系のアニメ・ゲームなどたくさんあったので、新味を感じてもらえなかったせいではないかと
でも見てる人は、やっぱりちゃんといいところを見てるもんですね

そうそう、キンフェス(・・・)開催時は「調布のKLYさんは羨ましいなあ」と思っていたのに(笑) ここはやはり一般公開してもらうしか・・・!

Posted by: SGA屋伍一 | September 08, 2010 07:32 AM

あぁぁぁぁぁぁ。「D-WARS」!!そうでした、アレもドラゴンでした。しかもわらわらとゾンビのようにたくさんいましたねぇ。観たことを記憶から抹消したいほどの作品でしたけど。久々に思い出してしまいました。

ともあれ、今作は私の「少年のような心」を大変刺激してくれて、泣いて笑って大忙しでした。ありがちで予想通りに進む展開なんだけど、一緒に空を飛んだあの感覚が忘れられません。

SGA屋さんのネタバレにあった箇所。仰るとおり、失ったものは大きいけどもっと大きなものを手に入れた、なんでしょう。私なんてヒックの体を見てビックリして思わず声をあげてしまったんですけど、決して重くならない爽快感すらあるエンディングだったと思います。

Posted by: かおる | September 09, 2010 12:08 PM

予告編は観ましたが、なんだ『ビッケ』じゃないのか、
このパチモンめ!と思ってしまいました。
いや、正確には始めの段階で『ビッケ』か?と思ったけど
違うので、『ビッケ』公開せず何やっとんじゃワレー、
おめーなんか観てやるもんかと思ってました。

『ビッケ』を観ることができたため、
まあ、観てやってもよろしくてよ、という気になりました(爆)。

でも直前までキャラそんなに可愛くないとか、
さほど期待してなかったのですが、
まさかの大逆転でした。

ボク的には『トイ・ストーリー3』を抜きました。
やはり空を飛ぶというのはいいですね。
絵的には『アバター』を思い出したりしましたが、
こっちの方が断然よくできていると思いましたよ。

でも仰るとおりホントに四者四様でした。
実に楽しい夏でした。

ちなみにボクは観てしまった『ビッケ』ですが、
東京国際映画祭でやるとかやらないとか。
どっちでしょう。

Posted by: かに | September 09, 2010 07:49 PM

>かおるさん

あはは、D-WARSご存知でしたか! ある意味伝説的な作品ですよね! あれを思い出すと、どんなに出来のひどい映画でも許せてしまうという・・・ そしてわたしはあの超ど級のダメさ加減がけっこう好きだったりします(イカモノ食い)

少年のような心ですか・・・ うん、わたしも前からかおるさんってサバサバしたボーイッシュな方だな、と思ってます。いや、もちろん女性らしいところもたくさんおありですけど

最後のくだり、あとで思ったんですけど、もしかしたら障害のある子や、事故で体の一部を失った子たちへ向けての励ましだったのかなって。実際世界では地雷などで理不尽な災難をこうむった子たちもたくさんいますからね・・・ いやな世の中ですが、そうした子たちには本当に「もっと大きなもの」を手に入れてほしいです

Posted by: SGA屋伍一 | September 10, 2010 08:08 AM

>かにさん

・・・もしかしてまだ『ライオンキング』の件を根に持っていますか?(笑)
『ヒックとドラゴン』、もちろん『ビッケ』とははっきりと違う作品ですが、『ビッケ』(アニメ)は世界で広く放映されていたようなので、若干影響が及んでいたとしてもおかしくはないですよね。実際ヒックのお父さんなんか体型とかハルバル父さんによく似てる。ほかにも脇キャラに似たようなのがちらほら・・・

それにしてもかにさんまでこちらが夏アニメベストですか。いや、わたしもけっこう楽しんでみたのですが、そこまでファンを熱狂させるものがなんなのかはよくわからなかったりして。もう一回見ればわかるのかな?

『ビッケ』の情報もありがとうございます。東京国際映画祭でやってくれたらいいですねえ。あれはあれでチケットの争奪が大変なようですけど、あそこで高い評価を得ると一般公開の実現がぐっと高まるので

Posted by: SGA屋伍一 | September 10, 2010 08:16 AM

はて『ライオンキング』の件ってなんでしたっけ?
全く覚えてない…。

いやいや、あんまりにも『ビッケ』観たがっているもんだから、つい(爆)

この夏、一位というとちょっとなんでして。
みんなベクトルが違うので簡単には比べられないのですが、
総合的には『カラフル』かしら。
でも四位まで僅差。どれもいいね。
まあ、ボクは『ビッケ』入れて五者五様かな!

みんなちがってみんないい
いろいろ情報ありがとうございました!

Posted by: かに | September 10, 2010 11:16 PM

>かにさん

いや、わたしとのやり取りではなくて
『ライオンキング』が『ジャングル大帝』の類似点を指摘された時、監督が「なんのこと?」とか言ってたじゃないですか。あれに関してはさぞご立腹だったろうなと(笑)

おっしゃるとおりですね。優れてる・劣っててるというのではなく、どれにより思い入れが多いかという問題
そしていろいろあることがいいことなんだと思います。今夏の場合はアニメばかりが充実しすぎて普通の映画がぱっとしなかったというか。『インセプション』が気を吐いてたくらいでしょうか
だから『ビッケ』をやればよかったのにい! いいい!!

ともかく、お役に立てたようでなによりです


Posted by: SGA屋伍一 | September 11, 2010 07:23 AM

伍一くん、ビッケがかわゆいのでこちらにも☆
この作品は、いいよいいよ♪と聞いていたけど、パスしてきた映画なんだけど、なんか伍一くんのレビュー読んだら、見たくなってきたなぁ。

「燃えよドラゴン」は違うじゃじゃろがーっ!ピシピシっ!
と、私もムチをふるって突っ込ませていただきます(爆)

ビッケ実写はともかく、バイキングといえば、ノルウェーですからね。やっぱり見ようかな。

Posted by: ノルウェーまだ~む | September 13, 2010 03:25 AM

>ノルウェーまだ~むさん

♪ビッケ ビッケ ビッケは海の子バイキング! キンスこんばんは(笑)
ええ、この映画、なんとなくまだ~むさん向きだと思います。さすがにイギリスではもう終ってしまったかな?

そして何度でも言いますが、ドラゴンと言ったら李小竜をおいてほかにありません! この映画でもかなり活躍してましたよ!(信じないように!)

『ビッケ』実写版はここに予告ありますよ。本当に昔のアニメそのまんま。恐ろしい再現度です
http://www.youtube.com/watch?v=WwAfPM9cG4Q&feature=related

Posted by: SGA屋伍一 | September 13, 2010 09:11 PM

こんばんは!
『ビッケ』実写版、面白そうですねぇ〜。
公開してくれるといいのですが・・・・(~_~;)

で、この作品ですが
>まさにお好きな人にはたまらない世界・・・でして
私的にはかなりツボでした。
ヒックとトゥースがすぐに仲良くなってしまわないで
徐々に心をかよわせるトコや、ちゃんと飛行訓練するトコとか
結構面白かったです。
原作とはかなり違うようですが続編も楽しみです。

Posted by: ルナ | September 16, 2010 11:51 PM

>ルナさん

こんにちは。お返しありがとうございます
ええ、本当に何とかならないものでしょうかね、『ビッケ』
この『ヒックとドラゴン』が大ヒットしたら、その余波をかってできないものかな・・・なんて考えてたのですが

ヒックとトゥースの関係も良かったですね。わたしが特に面白いと思ったのは、ヒックがちゃんとマニュアルか何かをこしらえて、トゥースを「操縦」するところ。あの辺はよく言われてますけど、本当に初期宮崎アニメの飛行シーンのようでした

Posted by: SGA屋伍一 | September 18, 2010 12:35 PM

TB&コメントありがとうございました♪
動きや表情の激しいPIXERとかのアニメが苦手&ファンタジーは食傷気味だったので、
全くノーマークだったのですが、Twitterでの絶賛のつぶやきに影響されて見てよかった!
これは絶対映画館の大画面で見るべきですよね!
3Dの重いめがねも全く気にならないくらい、夢中で見てました(笑)
せっかくいい映画なのに、あんまり知られていなくてもったいない!

ビッケ似てる!

Posted by: maru♪ | October 02, 2010 04:15 AM

>maru♪さん

こちらにもコメント・TBありがとうございます
わたしはピクサーかドリームワークスかと言われたら、断然ピクサー派なのですが(笑)、『ヒックとドラゴン』を見て「ほう・・・ ドリワーもだいぶ力をつけてきたではないの」と思いましたよ(偉そう)

わたしも夏の時期はアニメばっかり見てたので、これは余裕がなかったらスルーしよっかな、とも思っていました。でもフォロワーのあの方があまりにも熱く激賞されるので(笑)、「これは見なければイカン!」と。ただ、実は鑑賞は2Dの方だったので、やっぱしこれは3Dで見るべきだったな~と後悔しております

あんまし話題にならなかったのは残念ですが、これからも折に触れ語り継がれていく作品になるのではないでしょうか

ビッケは簡単でいいな(笑) 今度TIFFで実写版がかかるので、なんとかしてチケット取りたいな~と計画中です

Posted by: SGA屋伍一 | October 02, 2010 08:33 PM

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