探しものはニャンですか ミリアム・トネロット 『ネコを探して』
まだ終ってないマイ・アニメ祭り(笑)。今日はその中でも一番変り種のこんな作品を。フランス発のネコ・ドキュメンタリー『ネコを探して』ご紹介します。
「わたし」が飼っていたネコのクロが、突然姿を消してしまった。「わたし」が困り果てていると、なんとクロは部屋の鏡の中にいた。クロを追って鏡の中に入っていく「わたし」。そして彼女は世界のネコたちにめぐり合う旅に出かける。
幾つかのパートに別れていて、その合間合間をアニメでつなぐという構成。昔なつかしの『まんがはじめて物語』を思い出させます。出てくるネコたちは、日本の駅長ネコ「たま」や、イギリスの鉄道員ネコ「エリカ」、さらにアメリカの患者の死を告げるネコ「オスカー」など。こうしたチョイスからもわかるように、単にネコを描いた作品というよりは、「ネコと人との関わり」を追った映画となっています。時折人間のせいで迷惑をこうむってるネコも登場し、「かわいいネコちゃんが見た~い」という目的で鑑賞すると、ちょっと痛い目を見るかも。
そもそも、最初のパートがいきなりわが国の「水俣病」を題材にしています。なぜ水俣病が出てくるかというと、そもそもこの公害病に苦しめられたのは人間よりネコが先であり、その後も企業側が偽の証拠をでっちあげるためにネコを大量に解剖したのだそうです。まあ、いきなりコレですから。
その後もなんでか日仏合作でもなかろうに、日本がよく登場します。そんでその大体が批判的な内容だったりします。そんなんばっかりじゃないよ! 普通に仲良くやってる例だってたくさんあるよ! ・・・と言いたくもなりますが、確かにペット遺棄などで保健所に連れて行かれるネコが絶えないのも事実。そうした現実を見せ付けられますと、本当に暗い気分になりますorz
さらに作品では各時代の思想家・社会が、ネコに託したイメージについても語ります。ある時は自由と自立の象徴として、ある時は資本主義の道具として。ちょっとそれはこじつけじゃないかな、とも思いましたが、まあそういう視点があっても面白いかもしれません。
ネコを主題にした文芸作品で有名なものといえば、『我輩は猫である』と『黒猫』。前者については映画の中で少々語られておりますが(ていうか、これフランスでも一般的に読まれてるんですね)、後者に関しては完全にスルー。だのに司会役を務めるのが「クロ」だというのがちょっとおかしい(笑)。もちろんこのネコ、誰かを呪ったり復讐したりするわけではありません。ただもしかすると、「人間に迷惑をかけられた代表」として、やはりポーのあれを意識しているのかも・・・ というのは考えすぎでしょうか。考えすぎですね。
また、「猫の手も借りたい」という諺が示すように猫というのは本来役に立たないものですが、この映画には人のために大いに働いてくれている猫もいろいろ登場します。まあそういう例は本当に一握りだと思いますけど、それでも「猫だってこれだけのことができる」と教えてもらいました。
そんな『ネコを探して』。メインの劇場である渋谷はイメージフォーラムでも、もう少しやっている模様。さらに全国の各劇場を転々と回っていくようです。
正直エキサイティングな映画ではないし、眠い時にいくと確実にウトウトしてしまうと思いますが、ネコを飼っている人はなるたけ見ておいたほうがいいと思います。大事なパートナーについて、じっくり考えてみるためにも。これは人間にも言えることですが、身勝手な愛情は相手にとって迷惑でしかありません。そういう風にならないように、気をつけたいニャン(キモイ
)
Comments
あら?伍一くんイメフォまで観に来たの?言ってくれたら良かったのに~。
色々考えさせられることが多いこの作品だけど、良かったら「犬とネコと人間と」って作品も観てもらいたいな。この作品の中の一部分、殺処分も含めた犬猫の置かれている環境を教えてくれるドキュメンタリーです。
Posted by: KLY | September 26, 2010 01:35 AM
>KLYさん
こんばんは! 毎度ありがとうございます!
いやあ、突然予定が空いた上にド平日だったので。ぜひ近いうちまた一献おねがいします
「犬とネコと人間と」はKLYさんとこにバナーはってありましたね。見るのが辛そうな映画だけど、見ておかなくちゃいけないんだろうな・・・ 記憶にとどめておきます
Posted by: SGA屋伍一 | September 26, 2010 07:59 PM