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September 10, 2010

氷の世界 ドミニク・アベル フィオナ・ゴードン 『アイスバーグ!』

100910_184343_2あらー こちらモタモタしてたらメインの劇場では今日までだったんですねー ベルギーの道化師カップルが作ったサイレント風喜劇第一作『アイスバーグ!』、いまさらながらご紹介いたします。

フィオナはファーストフード店に勤める平凡な主婦。ある時彼女は、ちょっとした失敗がもとで店の冷凍庫に閉じ込められてしまう。なんとか命を拾ったフィオナだったが、その日からなぜか彼女は異常なまでに冷たい場所や、氷山に執着するようになる。やがてとうとう家を飛び出して北の海へと乗り出していくのだが・・・

ごく普通の主婦が急に何かに目覚めて家を飛び出すというストーリーは、イプセンの『人形の家』を想起させないでもないです。ただそれが女性の自立とか自我といったものではなく、「氷山」というのがなんともシュールなお話。
普通寒さで死にそうになったらトラウマか恐怖症にでもなりそうなものですが、どんどん冷気にとり付かれていくフィオナ。冷凍庫に閉じ込められたことが、機械的な日常に乾ききった彼女の心に、「生きなくては!」という情熱を呼び起こしたということでしょうか? うーん。こうやって理詰めで考えると、なんか面白くありませんね(笑)

わたしがこの映画をわざわざ遠くまで見に行こうと思った動機は、そうした突飛なお話もさることながら、とある紹介記事に「(バスター・)キートンの継承者」のように紹介されていたから。キートンを敬愛するものとしては、これはチェックしておかねばならないでしょう。ベルギーの人が作るお笑い映画ってどんなものだろう?という興味もありました。
で、見たところキートンのような生死に関わるようなアクロバットこそないものの、極端にセリフを減らして、なるたけ無表情でお話をすすめていくあたりは、確かに「グレート・ストーン・フェイス」の作風を思わせるものがあります。
もっとも、氷山に行くアテが出来た以降のフィオナには、徐々に表情に彩が出てきはじめます。アイスを両手に駆け出したり、子供のような絵を描いて「船長さ~ん」とつぶやく彼女は、まるで少女のようにキュート。この人もたぶんそれなりにいい年だと思うのですがね。

同じ家に住んでいるはずなのに、どうしてか妻のことをちゃんと見ていない夫のジュリアン。そんな夫婦のすれちがいを描いているせいか、全体的に「距離感」をモチーフにしたギャグが多かったように思います。すぐ後ろにいるのに全然気がつかなかったり、あるいはいないことに気づかずにえんえんとしゃべりつづけたり。あとちょっとで届くところなのに、ヒモのせいで届かなかったり。この辺は日本の伝統芸である「志村、うしろうしろ!」にも通じるものが・・・ いや、ないかな。また、すごい手間暇の末に伝言が届いたかと思いきや、「会いたくない」の一言でバッサリ断ち切られてしまったり(笑)

フィオナがひかれていくのが言葉の話せない船長さんであることや、あえてセリフを少なめにしてるあたりなども、「本当に大切なのは言葉ではなくて、相手をちゃんと見ること」を教えてくれているような気がします。

真っ白な中にポツンと赤が浮かんでいるような配色や、お笑い映画なのに妙に美しい海上の景色なども印象に残りました。

100910_184405そんな『アイスバーグ!』はやはりアベル&ゴードンの第二作『ルンバ!』とワンセットで、これから全国の主要都市をポチポチと回っていく予定。
『ルンバ!』の方は明日気力が持てば、続けて感想を書きますです・・・・

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Comments

ここだけの話なんだけど、アイスバーグって凍ったハンバーグのことなの。マックの来年夏用新メニューらしいよcoldsweats02

さて冗談はさて置き楽しいねぇ。こういうの好きです。
彼らが道化師であることを前面に押し立てた作品ですね。
そうそう「志村、うしろうしろ!」、まさにそんな感じです。
今にも場面転換の音楽がながれそうですもん。(笑)

Posted by: KLY | September 11, 2010 at 10:09 PM

>KLYさん

休み明けのお仕事お疲れ様でした! マイナー記事にコメントありがとうございます

「アイスバーグ」はともかく、「アイスバーガー」ってのはそれなりにあるみたいですね。ハンバーガーじゃなくて、スイーツみたいですけど

やっぱりKLYさんもドリフ色を感じましたか! 「ちょっとだけよ~ん」どころか全部見せちゃってるシーンもありましたが
こういうシュールなお笑い、わたしもけっこう好きです

Posted by: SGA屋伍一 | September 13, 2010 at 08:48 PM

『アイスバーグ!』だの『ルンバ!』だの観てるんだ~。いいねいいね。
こういう作風ってなかなか少ないよね。 もっと出てきてほしいなあ。

ところでごいちくんはTIFF来るの?

Posted by: rose_chocolat | September 25, 2010 at 10:16 AM

>rose_chocolatさん

こんばんは。こういう突飛で変わってる映画に目がないのですよ。時々痛い目にあったりもしますが(笑)、この二本はなかなか良かったです

TIFFはどれをどうチェックしたらいいかさっぱりわからず。いま東京方面の上映でひかれてるのは『エル・トポ』のデジタル・リマスター版

そういえば焼き鳥の件がそのままになっててすいません。明日来月の予定がハッキリするので、晩にでもメールします。ていうか、今日行かれたようですね・・・ あのお店・・・

Posted by: SGA屋伍一 | September 25, 2010 at 08:43 PM

『エル・トポ』はあらすじ読んだけどたぶんこれは自分は合わない(笑)
よってパス。

TIFFは、自分が行ける日に上映している映画で、興味があったらチケット買ってみては?
一般発売初日なら取れるかもよ。
私はこの週は休んで(笑)通いまする。 今作戦練り中。。

あのお店は支店いっぱいあるんで、いつでも行けますよ。 またみんなで予定合わせましょー

Posted by: rose_chocolat | September 25, 2010 at 09:55 PM

>rose_chocolatさん

ううむ。『エル・トポ』はちょっとエグ風味なところがお気に召さなかったかな?

TIFF、ラインナップ見ました。おお! こないだキンダーフェスで見られなかったビッケがやる! んんん、これ見たいなー 一日くらい行ってみようかなー 他にも『黒く濁る川』とか『そのカエル最凶につき』とか面白そうですね

というわけで後ほどメール送ります。お忙しいのにいろいろありがとうございます~happy01

Posted by: SGA屋伍一 | September 26, 2010 at 07:56 PM

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