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August 03, 2010

武士のラスト15分 平山秀幸 『必死剣 鳥刺し』

100802_183701『たそがれ清兵衛』以後コンスタントに作られている藤沢周平原作映画。今回は『愛を乞うひと』などで名高い平山秀幸氏がメガホンを取った、『必死剣 鳥刺し』をご紹介いたします。

江戸時代のとある藩にて。藩主は愛妾の言うがままに暴政を敷き、民衆の不満は募る一方となっていた。そんなある日のこと、中級武士兼見三左エ門は突如城内にて、その愛妾・蓮子を刺殺する。打ち首もやむなしと思われた三左エ門だったが、彼に下されたのは一年の閉門という驚くほどに軽い処置であった。「なぜ殿はわたしに死を賜れぬのか」 三左エ門は深く悩む・・・・

まず序盤の流れですが、とてもよくできたミステリーとなっております。
一つは「なぜ三左エ門は殺されなかったのか?」という謎。藩主は自らも省みぬ忠義の振る舞いに心を動かされたのか? それともほかに何か理由があるのか?

もう一つは「なぜ三左エ門は突然そんな凶行に走ったのか?」という謎。普通に考えるなら、藩政を乱す不届き者に我慢がならず・・・ というところなんでしょうけど、三左エ門はそんなに蓮子に対して憤ってるそぶりは見せないので、あまりそうも思えません。実はこっちの謎は結局はっきりとは語られなかったのですが(笑)、三さまの身に起きた不幸を思い返してみると、もしかすると忠義というより自殺願望のようなものだったのでは・・・ と思います。

そして題名になっている「必死剣 鳥刺し」の謎。三左エ門が会得しているという究極の剣技の名前。「いまだ誰も見たことがなく」「使い手自身、それを振るう時には半ば死んでおりましょう」というその技は、いったいどんなものなのか・・・

昨年から時代劇の本数もそれなりにありますけど、どうも評判を聞くとあまりかんばしくないようですね。原因はどうも時代劇に、半ば現代的な感覚を取り入れちゃってるからだと思います。まあわたしは『GOEMON』は好きですけど。
で、まあそこへ行くとこの作品、なかなかストレートでよいんじゃないかと思いました。「新感覚」はあえて取り入れず、シンプルに日本情緒と殺陣のみを追及しております。
わたしが特に感じ入ったのは武家屋敷の機能美とでも申しましょうか。この映画同様シンプルで機能的で、無駄なものがない。そんないい意味で日常的というか「無味乾燥」な背景が、突如として凶行と惨劇の場となる。それが映像に独特の緊張感をはらませています。

以下は深刻にネタバレしていきます。ご注意ください。





わたくしこの映画に山田洋次監督の「がんす三部作」にあるような和み系の空気を期待していたんですが、きつめの作品も撮っておられる平山監督のカラー・・・というかチョイスゆえか、かなり矛盾というか皮肉の利いた仕上がりになっていました。
死を願っていた三左エ門が死を許されず、ようやく生きる目的を得られたかと思ったら、その矢先に・・・という流れは、予想もしていなかったので愕然としてしまいました。実は藤沢作品は一作も読んだことはないのですが映像化されている作品の中でここまで無常感漂うものはなかったのではないでしょうか。

せめてもの救いは自分の人生を弄ばれた三左エ門が、必死剣により見事「武士の一分」を見せつけるところですが、それでも武士であるがゆえに、どうしようもないバカ殿は殺すことができない。それどころかそいつを守るために心身ともに優秀な人物を倒さねばならない・・・・ この辺にも強いニヒリズムを感じました。

100802_183729それはともかく、なぜか舞台挨拶では「早くおわんねーかな、と思った」を連発していたトヨエツ氏、なかなかの熱演でありました。かつてはトレンディードラマで一世を風靡した彼でありますが、歳を経てかなりチョンマゲが似合う風貌になってきました。
気がつけばこの映画も夏の大作におされて上映は今週いっぱいのところが多い模様。ご興味おありの方はお早めに。

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Comments

トヨエツだけでなく吉川モニカ晃司も随分と渋くなりましたよねぇ。それこそちょんまげがよー似合う…。
岸部さんのあの点と線で出来た目が大好きなのです。現代劇だろうが時代劇だろうが嫌らしいというか、意地悪な役やらせたら日本一です。それも権力を持った。
必死剣とは一体どのような秘密が隠されているのか。うちのブログのコメントで色んな方が見解を述べてくださいまして、面白かったです。^^

Posted by: KLY | August 04, 2010 12:36 AM

>KLYさん

おはようございます。まいどありがとうございます♪
吉川晃司はわたしも布袋寅泰と組んで「チャチャ」とか「チェチェ」とか言ってるころから知ってますけど、だいぶオトコトしての重みが出てきましたね。昨年暮れの『仮面ライダーMOVIE大戦』でもいい味出してたのですがさすがにご存知ないでしょうか

岸部さんの怪しさは確かに際立っていますね。もうその辺にたたずんでいるだけでなんか怪しい(笑) でもそれなりにクセのある善人なんかも普通にこなしてしまうところもすごいと思います

Posted by: SGA屋伍一 | August 04, 2010 07:23 AM

ゴム沙汰してます。。。なに見てんだよ!! インセプション、早く見ろよ!!

あとシャマランのエアベンダーって誰か見た人いるの?

じゃ、これから『熱海の捜査官』の第2話を見ますので、このへんで。。。

Posted by: 裏山&鳥刺し | August 06, 2010 10:37 PM

>裏山&鳥刺しさん

コチラの方にもおいでくださりありがとうございます。
インセプションはみましたよ。。。 ただわたしは書くのがグズなんでまだ記事にしてないだけ。。。
あれ以来本当のわたしはハリウッドのイケメンセレブで、この平々凡々たる生活は裏山さんの植え付けによるものだという気がしてなりません。。。 みゅ~ん。。。

エアベンダー。。。 とりあえずご自分でご覧になったら? わたしは見ないかも。。。。

『熱海の捜査官』の熱海は本物じゃない架空の熱海ですよ。アタマニアの裏山さんならお気づきでしょうが。。。 みょー~ん。。。

Posted by: SGA屋伍一 | August 07, 2010 07:28 AM

はじめまして、今更過去のエントリにコメントごめんなさい。
映画のレビューたくさん読ませていただきましたが、非常に的を射たわかりやすいコメントですばらしいです。トイストーリー3、インセプション、エクスペンダブルズなどなどいちいち全部にコメントしたいのですが鬱陶しいと思うのでここに。

十三人の刺客の「機能美」という言葉にそうそうそうなんだよ、と手を打ちました。前半部分の無駄のない展開、舞台を通しての緊張の高まり、非常に素晴らしかった!
ところで文中池脇千鶴とトヨエツ氏のラブシーンについては触れていらっしゃらないようですが、私はあの描写もすごい良いなと思いました!もしよろしければSGA屋伍一様の感想も聞きたいところです。

Posted by: tomiichigo | December 11, 2010 02:32 PM

>tomiichigoさん

はじめまして。駄文の数々ていねいに読んでくださって、まことにありがとうございます。けっこう適当に書いてますんで、どうかtomiichigoさんも冗談半分に読んでいただければ幸いです

この映画の「機能美」ですが、山田監督の作品に比べて城勤めのシーンがかなり多かったので、特にそう感じました。山田作品はどっちかというと家にいるシーンの方が多かったですからね。それも「美」というにはちょっと薄汚れた感じのお家(笑)

ラブについては最も語るのが不得手なところでして(経験が少ないものですから・・・)
池脇千鶴がいまだ少女のように見えてしまう私としては、ちょっと痛々しいな、と感じてしまいました。すんませんこんなことくらいしかかけなくて・・・

よろしければtomiichigoさんがどのあたりに感銘を受けられたのか、教えていただければ幸いです

Posted by: SGA屋伍一 | December 11, 2010 09:23 PM

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Tracked on August 03, 2010 11:46 PM

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Tracked on August 04, 2010 11:52 PM

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