ミイラ鳥が未来に リュック・ベッソン 『アデル/ファラオと復活の秘薬』
サマーシーズン到来! ということで劇場では次々と大作・話題作がかかってますが、今日はその直前に「いまのうちに儲けとかな!」とばかりに公開されたこの映画ご紹介しましょう。フランスきってのオタク監督、リュック・ベッソンの最新作『アデル ファラオと復活の秘薬』です。
第一次大戦前のまだのどかな時代。フランスはパリで、謎の怪鳥が人を襲うという事件が起きる。警察は怪鳥を追うが、その神出鬼没ぶりに翻弄される。一方そのころ女性探検家アデル・ブランセックはエジプトの王墓を調査していた。古代の秘術なら、動かなくなってしまった妹を治せるのでは、という希望を抱いて・・・
原作はフランスで長い間愛されているBD(バンド・デ・シネ。フランスではアーティスティックなコミックのことをこう呼びます)。全部で9作品が発表されているそうです。
宣伝の仕方からなんかして、インディ・ジョーンズかトゥーム・レイダーのような冒険アクションを予想するのですが、その期待は早々に裏切られます。これ、どう考えてもお笑い映画です。
しかもそのお笑いセンスがどうにもまったりしてるというか、人を食ってるというか。これがいわゆる「エスプリ」ってヤツなんですかねえ。まあそんな調子なんでスリルとサスペンスを期待していくと、大いに予想を裏切られるでしょう。
ただ個人的にはツボな要素が幾つかあり、なかなか楽しませてもらいました。まず一つが翼竜プテロダクティルス。劇中では実にとんでもな理由でこの古生物が甦るのですが、モンスター映画は数あれど、翼竜がこんなにもフィーチャーされてる作品はそうないでしょう。強いてあげるならそれこそ東宝の名作『ラドン』くらいでしょうけど、あれは翼竜というかもう怪獣の領域ですからねえ。夜のパリ上空をオギャーンとかっ飛んでいくプテラノドン・・・ じゃなくてプテロダクティルス。こいつはお好きな人にはたまらない映像です。
もう一個ツボだったのは古代エジプト文明のあれやこれや。この辺をモチーフとした作品には『ハムナプトラ』や『ナイトミュージアム』なんかがありましたが、ミイラの質感とか木棺の作りとか、この映画が一番リアルにきめ細かく再現していたと思います。本当にフランス人のエジプト好きって、どんだけ~?と言いたくなるくらい。
おフランスの方ってどうもプライド高そうでとっつきにくいイメージがあるのですが、このエジプト好きなところと、昆虫好きなところには親近感を抱いておりますよ。
さらに20世紀初頭のパリの町並みや、時事風俗なんかもいちいち目をひきます。ああ、当時もうエッフェル塔はできていたのか、とかフランスの処刑法ってやっぱりこれなんか、とか。フレンチカンカンやセーヌ川やピラミッド広場(笑)も登場します。
ヒロインのアデル嬢を演じるはもとキャスターのルイ-ズ・ブルゴワンさん。お天気担当だったせいか、ころころ気分の変わるアデル嬢を生き生きと演じておられました。
対して男性キャラはそろいもそろってアデルに振り回される道化役ばかり。その中でも特に目だっているのが『潜水服は蝶の夢を見る』で名演技を披露したマチュー・アマルリック氏。スタッフロールを確認しないと誰をやっていたのかわからないほどの変身ぶりで、ファンの人は少々ショックを受けるかもしれません(笑)
んでこれPG12指定なんですけど、いったいどうしてこの扱いになったのかわかりません。んんん~ そういえばお色気シーンと残酷シーンがそれぞれ一個ずつくらい・・・あったかな? どうせだったらその二つを削って普通にお子さまも見られるようにした方がよかったんじゃないでしょうかねえ。
そんな『アデル ファラオと復活の秘薬』、本国では公開初週末に50万人を動員したとやらで、続編も普通にできるのではないでしょうか。
繰り返しますけどエジプトとエスプリが好きな人におすすめです。ていうか、これが本当にエスプリでいいの?
Comments
駄目です。ルイーズ様のお色気シーンを削ったら私の評価はもっと下がります。
冗談はさて置き、きっとベッソン監督のことですから、世間的な評価などどこ吹く風で続編を作るとにらんでます。いや~、オーナーは強いね!やりたいこと好きなようにやるにはTOPにたたないかんと。(笑)
Posted by: KLY | July 20, 2010 11:49 PM
>KLYさん
こんばんは。毎度ありがとうございます。こないだも色々とありがとうございました
おっと・・・ お色気シーンは必須ですか? もう! KLYさんのエッチ! でもまあルイーズさん、キャスター出身になのによくやりましたね
『アバター』も『インセプション』も監督が中坊のころにノートに書きまとめていたものが原案になってるとか。いいなあ、出世すると少年時代の妄想を実現できて
Posted by: SGA屋伍一 | July 21, 2010 09:24 PM
こんばんは!(^_^)
監督やめるとかなんとか言いながら、結構やりたい放題なリュック・ベッソンですよね〜。
ミイラや翼竜は笑えますが、作品的にはかなりひどいかも・・・。
私的には、それなりには楽しめましたが、一般受けはしないでしょうねぇー。
原作のコミックって、いったいどんな内容なんでしょう・・・(笑)
Posted by: ルナ | July 23, 2010 12:50 AM
>ルナさん
こんばんは。毎度ありがとうございます
いやー、ほら、職場にもいませんか? やめるやめる言って、いつまでもいる人(笑) まあベッソンさんは映画界においてなかなか面白い存在なので、いつまでも現役でいてほしいですね
この映画、酷評もよく聞きますけど、わたしはこの独特なテンポけっこう楽しみましたよ
原作本、こういう時に出してくれればいいんですけどねえ。いまのとこ小説版しか翻訳は出ていないみたいです
Posted by: SGA屋伍一 | July 23, 2010 07:39 PM
こんばんは
そうです,お笑い映画でしたねぇ
あのお色気シーンがあっても
子供むけで大丈夫だったんじゃないかなぁ
べつにベッドシーンでもないし・・・・。
アデルが翼竜に乗るところとか
ミイラ集団のシーンとか
子供が大喜びしそうな場面がいっぱいだったから
大人だけで観るのはもったいないですよね
あ,あのギロチンシーンはちょっとヤバいかな,お子様には。
バカバカしくって小粋で,芸術センスもあって爽快で
いろんな意味で楽しめた作品でした。
あまり期待していなかったので拾い物でしたわ。
Posted by: なな | July 27, 2010 07:22 PM
>ななさん
こんばんは。お返しありがとうございます
>あのお色気シーンがあっても
子供むけで大丈夫だったんじゃないかなぁ
いけませんわ! ななさん! 先生がそんなことをおっしゃってわ!
んー でもわたしらが子供のころはレイティングとかなかったから、ピンク映画以外は大体見られましたよね。わたしゃ人一倍おっかながりだったりからホラーとかまず見ませんでしたけど
そうそう、翼竜にまたがって飛んでくシーンは根が子供の(笑)わたしとしては大層ワクワクしました。だのに直後にあんなことになってしまって


作るごとに期待されなくなっていく監督っていますよね。シャ○ランとかエメ○ッヒとか。ベッソン氏もそんな存在だと思うのですけど、個人的には今回は楽しませてもらいました
Posted by: SGA屋伍一 | July 28, 2010 07:42 PM