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July 28, 2010

適当掲示板98&2010年上半期に見た映画を振り返っちゃいますよーだ

みなさん、こんばんばん。当ブログに関するご意見・ご感想そのほかありましたらこちらにどうぞ書き込んでやってください。

さて、七月も終わりに近づいた今頃になってではありますが、2010年上半期に見た映画を振り返ってみます。並みいる映画ブロガーの皆さんに比べればそれほど数は見ておりませんが、このくらいでまとめておくと年末の時大変便利なのでございますよ。それでは参りましょう。

fuji1月
100120_174638『アバター』が「こいつはすごい!」ということで年末から爆発的ヒットを飛ばしていた一月。
わたしのベストも『アバター』と、知られざるデンマーク近代史を題材にした『誰がため』でありました。共に圧政に立ち向かう男の闘いを描いた二本。
ほかに印象に残ったのは遅れてかかった『空気人形』『母なる証明』など。


snow2月
100310_183746大雪と冬季五輪で沸いた二月。
ベストは『インビクタス 負けざる者たち』『コララインと魔女のボタン』。前者はラグビーW杯南アフリカ大会に材を取った作品。後者は「もう一つの世界」に迷い込んだ女の子の冒険人形アニメ。
ほかに印象に残った作品は・・・ないな。この月は雪やら風邪やらでそんなに映画を見られなかったのでした。


sun3月
100326_182452『ハートロッカー』『アバター』のアカデミー対決が話題を呼んだ3月。
ベストは『カラヴァッジョ 天才画家の光と影』『スパイアニマル Gフォース』そして『しあわせの隠れ場所』。自分の才能を信じ、突き進んだり痛い目にあったりしたヒーローを描いた三本。
ほかに印象に残った『シャーロック・ホームズ』『ハートロッカー』もそんな話でした。悪い意味で印象に残ってしまったのが『マッハ!弐!!!!』


cherryblossom4月
100412_103449『アバター』に迫る勢いで『アリス・イン・ザ・ワンダーランド』がヒットを飛ばした四月。
マイベストは『シャッター・アイランド』『第9地区』。「本当に一番怖いのは人間なんでないかな」ということを訴えた二本。
ほかに印象に残ったのは『息もできない』など。


bullettrain5月
100514_181030『アリス』が変わらぬヒットを飛ばし、鳩山政権の余命が残りあとわずかとなっていた五月。
マイベストは高田馬場は早稲田松竹まで見にいったリバイバル作品『不思議惑星キン・ザ・ザ』と、ジム・キャリーがゲイの天才詐欺師を演じた『フィリップ、君を愛してる!』
ほかに印象に残ったのは『タイタンの戦い』など。


rain6月
100619_174342ワールドカップで日本代表が意外な活躍を見せた六月。
マイベストは世間的にも大ヒットとなった『告白』と、待ちに待ってましただよーだった『アイアンマン2』
他には『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂』が良かったかなと。


というわけで各月ベストにあげた13作品。
単にわたしの好みで言いますと
①Gフォース ②コラライン ③アイアンマン2 ④第9地区 ⑤アバター ⑥フィリップ、君を愛してる!
となりますが、「人に薦められる」となると
①告白 ②幸せの隠れ場所 ③誰がため ④アバター ⑤コラライン ⑥インビクタス
というところでしょうか。残り五ヶ月もよい映画と出会えますように~

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July 24, 2010

FLY ME TO THE EARTH ダンカン・ジョーンズ 『月に囚われた男』

100724_180843首都圏より数ヶ月ばかり遅れて上映。そして既に終了。一度くらいはやってる間にサバッと決めてみたいものですね。あのデビッド・ボウイのご子息が監督デビュー。異色のSF映画『月に囚われた男』参ります。

いまからそれほど遠くない未来。人類は既に枯渇した資源を月から採取するようになっていた。月の採掘場で働いている人数はわずかにたった一人。任期の三年がようやく終わりに近づいてきたころ、作業員のサム・ベルは奇妙な事態に遭遇する。基地から調査に出た際、自分以外いるはずのない人間を発見したのだ。そしてその男は自分とまったく同じ顔をしていた・・・

果たしてこの「もう一人の自分」は何者なのか?
1.妄想 
2.生き別れの双子の兄弟
3.ドッペルゲンガー
4.超能力に目覚めてぷちっと過去にタイムスリップしちゃった

正解は・・・ ご自分の目でお確かめください。実は自分、予告編見た時に、あまりの精神的圧迫に耐えられなくなって、妄想と現実の区別がつかなくなってしまう、そんなお話なのかと思ってました。が、これが意外と論理的に説明のつくことだったりして。あ・・・ この時点でもうかなりネタバレですよね。すいません。

まず目をひいたのは広大な月面のビジュアル。なんにもないごつごつした地面の上を、どこかレトロ調の巨大なビーグルがとろとろとろとろ進んでいく。そんな風景に心安らぐものを感じたりして。
ただ、たまに見る分ならともかく、そこへ三年間置き去りにされるとなったら話は別です。それなりに話相手や通信手段もあるとはいえ、たった一人で三年もの月日を過ごさねばならないとしたら・・・ 想像するだに背筋に怖気が走ります。

以下さらにずんずんとネタバレしていきます。未見の方はお気をつけください。


一日千秋の思いで待ちわびたその日を前に、男につきつけられる残酷な現実。先日『アイアンマン2』でこれ以上内くらいイヤミな役を演じたサム・ロックウェルですが、こちらでは切々たる演技で観客の涙を誘います。
帰りたいけど故郷はあまりにも遠く・・・ そうした思いは、異国の地で生涯を終えざるをえなかった多くの旅人たちとシンクロいたします。そういえば阿倍仲麻呂も月を見上げながら故郷を思う歌を詠んでいましたっけ。サムが見上げているのは月ではなく、故郷そのものですけど。ともあれ、夜空に浮かぶ多くの光は、昔から望郷の念をかきたてる力があるようです。

そんな哀れなサムを暖かく見守るのが、基地に備えられた人格型プログラム・ガーティ。序盤のあたりなどは『2001年宇宙の旅』のHAL9000を思わせるような不気味さを感じるのですが、映画がすすんでいくに従って「なんていいヤツなんだ! うおあおおおーん!!」とまた涙を振り絞ってくれます。
考えてみれば不思議な話です。金属で作られた無機質な存在が、なぜにこれほどまでに暖かく優しい気持ちを抱けるのか。もしかしたら男を見続けていた「月」の切ない思いが、いつしかガーティの内に乗り移ったのかもしれません。・・・どうしたのかしら今晩のアタシ、なんだかとてもメロウな気分kissmark

原題は単に『Moon』。この邦題になったのはデビッド・ボウイ出演のカルト映画『地球に落ちてきた男』を意識してでは、とマイミクさんがおっしゃってました。なるほど。
そんなわけでお父様のお名前でお客を呼ぼう、という目論みも感じられないではないですが、見てみて確かに親の七光りではない、確かな実力を感じました。数々の映画祭で受賞した多くの賞がそれを物語っています。

20080227174543そんな『月に囚われた男』は地方での巡業も大体終ったようで、来月11日には早くもDVDがリリースされるようです。てゆうかパパの映画とのセットとか売り出さなくても。先の『2001年』や、『エイリアン』なんかが好きな人におすすめかな・・・ この二つほどには怖くないですけど。

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July 23, 2010

映画ドラゴンへの道 ぴあフィルムフェスティバル 『くらげくん』『白昼のイカロス』

100723_084436先日東京は京橋の国立近代美術館フィルムセンターで行われている「ぴあフィルムフェスティバル」へちょこっと足を伸ばして参りました。「ショートショート・フィルムフェスティバル」に引き続き、migさんの弟さんの片岡翔監督の応援に、わずかながらでも力になれればということで。
その日観た作品は片岡監督の『くらげくん』と、もう一本阿部綾織さん・高橋那月さんの『白昼のイカロス』。順番にご紹介しましょう。


☆『くらげくん』 片岡翔 (14分)

ガキ大将のコタロウくんと、いつも女の子っぽい服を着ている「くらげくん」は大の仲良し。ある日くらげくんはお母さんの都合で少し離れた町へ引っ越すことになってしまう。コタロウくんと離れたくないくらげくんは、彼に「一緒に遠くに逃げない?」と持ちかける。

『くらげくん』予告編

この映画はまずこの「くらげくん」を見つけてきたことが大きいですね。女の子の服を着ているのにほとんど違和感がなく、とてもかわいらしい。また衣装もそれほど女の子女の子していなくて、「星から来た王子様」のように見えなくもありません。監督の片岡翔さんによりますと、三回目のオーディションでようやっとイメージに合う子を見つけられたのだとか。

わたしたちは生きていく上でさまざまな二者択一を迫られますが、くらげくんは男であることも女であることも選びません。ただ両者の間をくらげのようにたゆたっております。もしかしたら女の子になりたいのかもわかりませんが、とりあえず劇中ではそういうセリフはありませんでした。くらげくんがジャンケンが好きなのは、もしかしたら選択肢が二つだけじゃないからかも? 彼が望んでいるのは、何かになるということよりも、大好きなコタロウくんといつまでも一緒にいたい。ただそれだけなのです。

たとえばこれが「くらげくん」ではなく女の子の「くらげちゃん」だったらどうでしょう。「わたしたち将来結婚しようね!」「うん!」・・・めでたしめでたし、ということで終るでしょう。それも悪くはないかもしれませんが、それだったらわたしの心にはそんなに深くは残りません。無神経にも「うおー あぶねー 男と結婚なんてまっぴらだよー」と言い放つコタロウのアホ。でもここでくらげくんは女の子のようにワッと泣き出したりはしません。ただ寂しげにじんわりと笑います。そんなくらげくんの切ない気持ちややせ我慢がなんとも胸をうちます。

別の記事にも書いたことがありますが、子供映画の名作には列車・線路が印象的な仕方で使われていることが多いです。『小さな恋のメロディ』『ミツバチのささやき』『スタンド・バイ・ミー』『動くな、死ね、甦れ!』・・・ この映画でも道のすぐわきをオモチャのような小さな線路が続いていたり、西日のさした電車で寄り添って眠る二人の少年たちの姿が忘れがたい印象を残します。

上映終了後舞台あいさつがありました。「将来なんになりたいの?」という質問に、はにかみながら「特にありません」と答える二人の姿は、「立派な俳優さんになりたいです!」とか言うよりよっぽど劇中のイメージにあっていて思わずにやけてしまいました。


☆『白昼のイカロス』 阿部綾織・高橋那月 (83分)

田舎から友人を頼って上京して来た少女、春織。夜の雀荘で働くうちに、彼女は脚の悪い青年アランや、老カメラマン・マグチ、その愛人のアサコらと知り合う。それなりに順調に行き始めた都会での生活だったが、時折訪れる怒りや悲しみに若い魂は激しく揺れ動く。

『白昼のイカロス』予告編

くらげの次はイカ・・・ というわけではなく。若い女性監督二人による共同作品。これが監督二作目となるそうです。主演の春織は阿部さんが演じ、主人公の友人の役で高橋さんも出演しております。

田舎から出てきた若い女の子と雀荘というモチーフは、西原理恵子の『まあじゃんほうろうき』(漫画)などを連想させますが、こちらはあんなに過激で騒がしい話ではありません。くらげくんほどではありませんが、ヒロインの春織もまた、どこか中性的なキャラクター。一応女性のなりはしていますが色気というものが皆無で、時々ケモノのようにキレたりもします。普段ほわほわ~っとしているだけに逆上しているシーンはなかなかにインパクトがありました。

この作品に出てくる人たちはみな生命力が弱いために、日の下に出ることをいやがります。まるで日光にさらされたら溶けてしまうのでは、と思えるほどに。真夜中や明け方の街を連れ立って歩く春織たちの姿は、遠くに映る町の明かりとあいまって、一種幻想的な雰囲気をかもし出しております。
特にマグチ氏が青みがわずかにさしてきた空の下、春織を「撮ってやるよ」というシーン。あまり美人とはいえない(失礼)春織が、この時ばかりは見事に一枚の美しい絵になっている。このあたりに映像の持つ力を感じました。

鈍ければ何も感じずにたんたんと日常を送れるのに、繊細であるがゆえに周囲の悲しみや無神経さに深く傷ついてしまう。そういや学生のころ、こんな風に生きるのに不器用な友人たちが身近にいたな・・・なんてことを懐かしく思い出したりました。

こちらも上映後監督さんたちの挨拶がありました。阿部さん・高橋さんは劇中のイメージとはうってかわって鉢巻姿でボケ・ツッコミを繰り返していて、なんだかほっといたしました(笑)


恐らくあと五年もすればくらげくんはくらげくんを演じられなくなるだろうし、阿部さん高橋さんもこういうむき出しのタッチで作品を撮るのは難しくなるでしょう。そんな貴重な時間を永遠にフィルムの中に閉じ込てめておくことができるから、映画は素晴らしいです。


100723_084518『くらげくん』は既に那須国際映画祭で短編賞を、東京国際レズビアン&ゲイ映画祭で観客賞を受賞しております。やはり『白昼のイカロス』と並んで7月27日の13時15分からフィルムセンターで上映されますので、ご興味おありの方は足を運ばれてください。

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July 20, 2010

ミイラ鳥が未来に リュック・ベッソン 『アデル/ファラオと復活の秘薬』

100720_181123サマーシーズン到来! ということで劇場では次々と大作・話題作がかかってますが、今日はその直前に「いまのうちに儲けとかな!」とばかりに公開されたこの映画ご紹介しましょう。フランスきってのオタク監督、リュック・ベッソンの最新作『アデル ファラオと復活の秘薬』です。
第一次大戦前のまだのどかな時代。フランスはパリで、謎の怪鳥が人を襲うという事件が起きる。警察は怪鳥を追うが、その神出鬼没ぶりに翻弄される。一方そのころ女性探検家アデル・ブランセックはエジプトの王墓を調査していた。古代の秘術なら、動かなくなってしまった妹を治せるのでは、という希望を抱いて・・・

原作はフランスで長い間愛されているBD(バンド・デ・シネ。フランスではアーティスティックなコミックのことをこう呼びます)。全部で9作品が発表されているそうです。

宣伝の仕方からなんかして、インディ・ジョーンズかトゥーム・レイダーのような冒険アクションを予想するのですが、その期待は早々に裏切られます。これ、どう考えてもお笑い映画です。
しかもそのお笑いセンスがどうにもまったりしてるというか、人を食ってるというか。これがいわゆる「エスプリ」ってヤツなんですかねえ。まあそんな調子なんでスリルとサスペンスを期待していくと、大いに予想を裏切られるでしょう。

ただ個人的にはツボな要素が幾つかあり、なかなか楽しませてもらいました。まず一つが翼竜プテロダクティルス。劇中では実にとんでもな理由でこの古生物が甦るのですが、モンスター映画は数あれど、翼竜がこんなにもフィーチャーされてる作品はそうないでしょう。強いてあげるならそれこそ東宝の名作『ラドン』くらいでしょうけど、あれは翼竜というかもう怪獣の領域ですからねえ。夜のパリ上空をオギャーンとかっ飛んでいくプテラノドン・・・ じゃなくてプテロダクティルス。こいつはお好きな人にはたまらない映像です。

もう一個ツボだったのは古代エジプト文明のあれやこれや。この辺をモチーフとした作品には『ハムナプトラ』や『ナイトミュージアム』なんかがありましたが、ミイラの質感とか木棺の作りとか、この映画が一番リアルにきめ細かく再現していたと思います。本当にフランス人のエジプト好きって、どんだけ~?と言いたくなるくらい。
おフランスの方ってどうもプライド高そうでとっつきにくいイメージがあるのですが、このエジプト好きなところと、昆虫好きなところには親近感を抱いておりますよ。

さらに20世紀初頭のパリの町並みや、時事風俗なんかもいちいち目をひきます。ああ、当時もうエッフェル塔はできていたのか、とかフランスの処刑法ってやっぱりこれなんか、とか。フレンチカンカンやセーヌ川やピラミッド広場(笑)も登場します。

ヒロインのアデル嬢を演じるはもとキャスターのルイ-ズ・ブルゴワンさん。お天気担当だったせいか、ころころ気分の変わるアデル嬢を生き生きと演じておられました。
対して男性キャラはそろいもそろってアデルに振り回される道化役ばかり。その中でも特に目だっているのが『潜水服は蝶の夢を見る』で名演技を披露したマチュー・アマルリック氏。スタッフロールを確認しないと誰をやっていたのかわからないほどの変身ぶりで、ファンの人は少々ショックを受けるかもしれません(笑)

んでこれPG12指定なんですけど、いったいどうしてこの扱いになったのかわかりません。んんん~ そういえばお色気シーンと残酷シーンがそれぞれ一個ずつくらい・・・あったかな? どうせだったらその二つを削って普通にお子さまも見られるようにした方がよかったんじゃないでしょうかねえ。

080818_133227そんな『アデル ファラオと復活の秘薬』、本国では公開初週末に50万人を動員したとやらで、続編も普通にできるのではないでしょうか。
繰り返しますけどエジプトとエスプリが好きな人におすすめです。ていうか、これが本当にエスプリでいいの?

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July 16, 2010

授業の復讐忘れずに 湊かなえ 『告白』(原作)

100716_181024久方ぶりの読書記事・・・ 予想以上の大ヒットで「社会現象」とまで言われてる映画『告白』。本日はその原作を紹介します。

あらすじは映画と一緒(当たり前か)なんですが、一応手短に書いておきますか。春休みを目前に控えたある中学校。終業式後のHRで教師、森口は生徒たちを前にこれが彼女の最後の授業であることを語る。これまでの人生、職を辞す理由、少し前に起きた愛娘の死・・・ そして彼女の次の一言が、その場にいる生徒たち全てを震撼させる。「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」

まず読んでおどろいたのは、最初の一章だけで見事にきれいにまとまっているということ。つまり映画でいうと最初のHRの部分ですね。日常のごくありふれた光景が次第に狂気を帯びていき、そして最後に胸をえぐるような一言が放たれる。本当にサスペンス短編のお手本のような構成。
それでウィキペディアで調べてみましたら、やはりこの作品、最初の第一章のみが一つの作品として発表されたようです。作者の湊先生は「最初は続きを書こうとは思っていなかった」とか。

そこを敏腕の編集さんが「もっとこういう風に膨らませられるんじゃないか」と言ったかどうかは知りませんが、さらに五つの章が足されることになりました。それぞれ生徒やその母親などの、独白や手紙、日記からなっていて、つまりどの章もタイトルにあるように、誰かの「告白」であります。全て一人称か二人称で書かれていて、まるでリレーのように事件の経過と真相がつづられていきます。最初の章なんかは森口先生が生徒たちにほぼ一方的に語りかけるだけなので、生徒たちの反応は最小限しかわかりません。この辺特に映画と小説、それぞれの表現の違いを感じることができます。また、どの章にも最後にはドキッとするような結末が用意されていて、先に映画を見て流れを知っているにも関わらず、いちいちショックを受けたりしましたwobbly

映画の記事にも書きましたが、人は自分の気になる人に、こういう人であってほしい、こういう風に思っていてほしい、と願うものです。
原作においてはその点はさらに顕著です。美月は森口の中に「倫理感が残っていてほしい」と願い、直樹の母は息子に「本当は優しい子である」と信じ、直樹は修哉が「自分のことを認めてくれている」と信じ、修哉は母親が「いつか自分を暖かく迎えてくれるはずだ」と期待します。そしてそういった期待のずれが連鎖反応を起こして大きな悲劇を産み、さらにまた別の悲劇へとつながっていく・・・ 本当にイヤな話でありますが、その緻密に組み上げられたストーリーには舌を巻かされます。


以下、結末を割ってます。ご注意ください。

映画にはまだなにがしかのユーモアや、あるかなしかの温かみが感じられましたが、小説には一片の逃げ場すらありません。とことん登場人物をを絶望の淵に追い込みます。
映画の記事で「森口は実際には爆弾をしかけてはいないのではないか」と書きましたが、小説の森口先生はまずまちがいなくふっとばしてますね。

文庫版の巻末には中島監督のインタビューが付されているのですが、それを読むと中島氏はやっぱりそれなりに子供に親しみを抱いていると思います。「なんだかんだ言って、彼らは人が嘘をつくものだとは思いたくないんですよ。みんな優しいんですよね」
しかし恐らく湊先生は子供があまり好きではないんでないかな、と。大抵の子供たちって純真である反面、どこか小ずるい部分も持っているもの。中島監督はそういう部分も受け入れられるのだろうけど、湊先生の方はどうにもそこが許せない。そんな風に自己欺瞞や偽善、表面上しか物事を見ない人への怨念のようなものを本書からは感じました。あー 怖いshock

ちなみに湊先生、もっとも影響を受けた作品に島田荘司氏の『暗闇坂の人食いの木』をあげているとか。・・・なんか意外な気がしました。あちらは心理的にはそんなに深くつっこんだ話ではないので。読後感なんかむしろさわやかだったりします。たぶん影響を受けたというのは、複数の文体を駆使して、謎の見せ方を工夫したり、お話にリズムを持たせたり、そういうテクニックのあたりではないでしょうか。

100716_181047そういやいわゆる「新本格」には、こういう文体に技巧を凝らした作品がいっぱいあったなあ。そういうのもっと読みたいという方は、綾辻行人氏や折原一氏などの著作をおすすめします。
夏は行楽もいいですけど、読書にも励みましょう。それではみなさん、良い夏休みを(松たか子風に)

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July 14, 2010

オマケの9太郎 シェーン・アッカー 『9 ~9番目の奇妙な人形』

100714_181712あ、また世界滅亡後の話だw ティム・バートン&ティムール・ベクマンベトフの二大オタク監督が、俊英のCGアニメをプロデュース。『9 ~9番目の奇妙な人形』紹介いたします。

たぶん近未来なんだろうけどどこかレトロチックな世界。とある家のテーブルで目を覚ました一体の人形。彼の背中には大きく「9」の字が刻まれていた。生き物の気配がまったくしない中、さまよい出た「9」は自分とよく似た姿の「2」と出会う。友情を深め合う間もなく、二人は奇怪な鉄の怪物に襲われる。

最近は「人類滅亡」をうたった話も珍しくないですが、そう言いながらも、大抵はちょびっとくらいは生き残りがいたりするもんです。ところがこの『9』では回想以外、本当にひとっこ一人出てきません。恐らくマジで死に絶えてしまったのでしょう。よくぞそこまでふっきったものです。
その代わり地表を歩いているのは、1から9まで番号をふられた奇妙なお人形さんと、同類を生産する奇怪なマシーン。なんか感情移入の難しそうな世界かと思いきや、そうでもありません。

ここには確かに冒険があり、友情があり、生死があって喜び・悲しみがある。たとえ人間不在でも、そういうものがそろっていれば十分に血湧き肉踊る一大活劇となりうるのです。個人的には小さな主人公たちや、ほとんど人間が関わってこないという設定などから、名作アニメ『ガンバの冒険』を思い出していたりしました。

思い出したと言えばもうひとつ。「9」の声をイライジャ・ウッドがあてているのですが、そのことから9人というのは『指輪物語』の「旅の仲間」の数と一緒であることに気づきました。実は監督のシェーン・アッカー氏は、『ロード・オブ・ザ・リング』のCGパートを担当していた方だそうで。もしかしたら監督は『LOTR』のSFアニメ版としてこの映画を作ったのかもしれません。
『LOTR』ではエルフたちの時代が終り、人間たちの時代が盛りを迎えますが、この映画では人間たちの時代が終り、「次なる者たち」が冒険を繰り広げます。
「指輪」に相当するものも一応出てきます。機械の悪魔とも言える存在に、強大な力を与える謎の装置。お話はこの装置を軸に進行していきます。

海外アニメもすっかりフルCGが主流になってしまいましたが、この作品が他のCGアニメと違うのは、やはり世界観やキャラデザインがダークなこと。背景は最初から最後まで日の光がささないままだし、お人形さんたちには傷跡のような縫い目があったり、脳みそや内臓がはみ出ているように見える箇所も。悪者のモンスターにいたっては言わずもがなです。
ただ人形たちに関して言えば、大きなメガネのようなまん丸の目で不気味さが中和されている気もします。この映画、上映時間は決して79分と長くはないのですが、活かしきれなかったキャラもあるとはいえ、この九人?の個性をきっちり描ききった点は見事でした。

この「人形に魂を吹き込む」というアイデアは、本来動かないものを動かすアニメーターだからこそ出てきた着想かも。人間らしい感情を持つ人形たちと、無感情に動き回るマシーンたちの対比は、作り手の「効率(儲け)だけ考えて機械的に作品を作るのではなく、ちゃんと魂・感情をこめなきゃダメだ」というメッセージのような気もしました。

少々ネタバレになりますが、この映画の結末について何人かの評者は「あまりにもあっけなく、肩透かし」と述べました。確かに普通のエンターテイメントに比べると、いささか不安や謎が残る結末ではあります。しかしこてこてに明るいエンドよりかは、作品にかなりマッチした閉め方だと感じました。同じように感じている方も多いのか、割とアート系の映画を好む人たちからの支持が高いような気がします。

100714_181740そんな『9 ~9番目の奇妙な人形』はまだ全国を細々と巡回中。チェコアニメやティム・バートンの世界がお好きな人におすすめです。
今夏はすでに「人形アニメ」の決定版である『トイ・ストーリー3』も公開されていますね。夏休みは小さな連中の大冒険に手に汗握りましょう。

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July 12, 2010

2010FIFAワールドカップ南アフリカ大会を振り返る

100412_103449いやー、まさかこのブログでスポーツのことを扱う日が来ようとは・・・ 最初で最後かもしれませんw
本日で盛況のうちに終了したFIFAワールドカップ南ア大会。上っ面の知識しかないわたしですが、この一ヶ月間楽しませていただきました。そんでインパクトの強かった順に印象に残った事柄を振り返ってみたいと思います。

soccer10位:フランスのドメネク監督大ひんしゅく
今大会誰もが予想し得なかった強豪フランス・イタリアのリーグ敗退。しかしフランスは大会以前から不協和音が鳴り響いていたようで、本番に来てそれに歯止めがかからなくなったというとこでしょうか。特にドメネク監督は采配について「星占いで決めた」などと迷言を連発。全世界からひんしゅくをかいました。しかし後のパウルくんのことなども考えると、占いというのも馬鹿にならないものなのかも

soccer9位:キーパー同士の超対決
トーナメント一回戦のアメリカVSガーナ戦において、延長に入ってから米ゴールキーパーのハワードが空いてゴールまで上がってきてシュートを狙うというプレイがありました。・・・アメリカさんはずいぶん思い切ったことするもんですねえ。と思ったらこれ、ドイツはブンデスリーガにおいてはちょくちょく見られる光景だとか

soccer8位:ウルグアイの「神の手」ディフェンス
準々決勝のウルグアイVSガーナ戦で、これまた延長時ウルグアイのFWスアレス選手がシュートをハンドで防ぐという珍プレーがありました。スアレスはこれで一発退場。肝心の場面だけに文字通り「つい手が出て」しまったのかと思いましたが、どうやらこれ、確信犯くさい? ともあれこれでウルグアイはベスト4に進出。

soccer7位:イングランド幻のゴール
トーナメント一回戦のドイツVSイングランド戦において、イングランドはランパードの放ったシュートはゴールのサイドバーに当たり、一度ゴールラインを割ったあと、再びゴール外に戻るという不可解な動きを見せました。得点となるはずが審判はノーゴールと判断。こののち気落ちしたのかイングランドは1-4で敗退。激怒したフーリガンが審判の宿泊するホテルを取り囲むという事態にまで発展しました。誤審を責める声もありましょうが、わたしとしてはあんな微妙なシュートを打ったランパードのテクニックに感心いたしました。

soccer6位:パラグアイ狂騒
今大会で日本を下し、初の八強入りを決めたパラグアイ。そんな中特に注目を集めたのがかの国のモデル、ラレッサ・リケルメさん。リケルメさんは、4強入りすれば、首都アスンシオンの広場でヌードになることを公約し、優勝した際にはアスンシオン通りをパラグアイ国旗のボディ・ペインティングをして走ることも約束。パラグアイは残念ながらベスト4とはならず、世界中のサッカーファンが泣いた(ただし男性のみ)ということですが、リケルメさんは「楽しませてくれたお礼に」と結局ヌードを披露。さすが国名がバイアグラに似てるだけのことはあります。

soccer5位:岡ちゃん爆笑会見
「全敗では」という大方の予想を覆し、見事トーナメント出場を果たした日本代表。目標のベスト4には二つ届きませんでしたが、重責から解放されたせいか、帰国後の記者会見で岡田監督はそれまでとはうって変わったはっちゃけぶりで、今野・森本選手に宴会芸を強制。選手も懸命にそれにこたえ、大変和やかな雰囲気での会見となりました。日本代表のみなさん、最後まで楽しませていただいてどうもありがとうございました。

soccer4位:マラドーナ監督大暴れ
今大会をもっともにぎわせてくれた人間は、選手ではなく、アルゼンチン監督の元伝説的プレーヤー、ディエゴ・マラドーナその人だったように思えます。リーグ戦で快進撃を続けると、自分たちを叩いてきたマスコミを罵倒。一方で何かにつけて愛弟子メッシとの熱い抱擁を見せ付けるなど、とにかく目立つことこの上ありませんでした。・・・実はわたくし今大会の優勝チームはこのアルゼンチンでは、と予想していました。が、逆境に弱いのか、準々決勝において一度劣勢に立たされるとそのあとはバタバタと総崩れにwobbly コラ! 「あるぜチン」というが君たちに本当にそれはあるのか!? そのマラはドンナ・・・ 大変失礼いたしました。次行きます

soccer3位:魔の公式球
先ほども述べた日本代表の快進撃。これは本田選手が特異とする「無回転シュート」がなければ恐らくなしえなかったでしょう。この無回転シュートは極端に表面の凹凸が少ない公式球「ジャブラニ」ゆえに起きる現象で、どんな動きを見せるかわからない、まさにキーパーにとっては「魔球」のような存在。いわばサッカー版のナックルボールのようなものでしょうか。ちなみに大会以前にこの公式球を使って練習したのはオランダ、ドイツ、日本の3チームのみだったとのこと。それぞれにそれなりに結果が出たでしょうか。

soccer2位:タコさんの大予言
マラドーナ監督の敗退により確実に盛り下がると思われたワールドカップですが、意外なところから大スターが現れました。その意外なところとは、ドイツの水族館。二つの箱のどちらかのエサをとることで、勝敗を占うパウルくん。自国ドイツの敗戦まで予言してしまった時にはきな臭いムードに包まれましたが、結果としてタコにふさわしく八戦連続で予想を的中させるという神がかりぶり。決勝においてはスペインよりもオランダよりも注目を集めていたと言っても過言ではありません。2010南ア大会はタコ伝説とともに末永く語り継がれることでしょう。

soccer1位:北朝鮮の栄光と挫折
わたしが今大会もっとも印象的だった出来事がこれ。FIFAランキング105位の北朝鮮はG組のリーグ戦において世界1位のブラジルと対戦しましたが、なんと敗れはしたもののスコア1-2の大健闘。しかし喜びもつかの間。つづくポルトガル戦においては0-7の大敗。この時点でリーグ敗退が決定し、金正勲監督は炭鉱送りの可能性すらあると言う・・・ 本当に栄光というものがいかにはかないものであるかを教えてくれた一こま。ぜひクリント・イーストウッド監督に映画化してほしいと思います。

20060821184439ちなみにわたしの熱き戦いに関してはこちら
日本VSカメルーン戦直後
日本VSオランダ戦直前
日本VSデンマーク戦直前
日本VSパラグアイ戦直前
日本VSパラグアイ戦直後・準々決勝予想
準決勝予想
決勝予想
気の向いた方はごらんください。


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July 10, 2010

ご本といえば理由隠さん アルバート・ヒューズ&アレン・ヒューズ 『ザ・ウォーカー』

100707_183347西暦200X年、人類は核の炎に包まれた。だが人類は、まだ滅んではいなかった・・・ って、この書き出しも何回使ったことでしょう。ええと、これはまだ少しやってますね! 『マトリックス』などで知られるジョエル・シルバーのプロデュース最新作、『ザ・ウォーカー』紹介します。文明が崩壊した世界を舞台に、三十年間一冊の本を持ち歩いて旅する男の物語。彼の目的は? そしてその本の正体とは?

主演に演技派デンゼル・ワシントン。アナーキーな世界ゆえに旅には無法者の危険がつきまとうわけですが、そんな時は自慢の大型ナイフでもってシャキシャキ悪者を裁きます。といって「正義の味方」というには程遠く、自分と無関係な人が襲われてる場合には、「あっしには関わりのねえことで」と、文字通り「見てみぬフリ」を貫く彼。序盤はそんな風に「ケンシロウが人助けをしない『北斗の拳』」のように進んでいくのですが、これが中盤あたりから段々と宗教色が濃くなってまいります。そんな感じな話なんでキレのいいアクションだけを期待していくと、後半なんかかなりフラストレーションがたまるかもわかりません。


んんん~ こっから先はどうしても「あの本」について触れないと話が進んでいかないな・・・ というわけで、未見の方でカンのいい方はここから先はご注意ください。

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「莫大な力を秘め、世界を変えることができる」この本、ご存知のように実在する書物です。お話では大々的にバッシングが行われたためほとんどが焼かれた、と言われていましたが、この本は実際に世界で何度も迫害を受けてきました。その教えが危険だと判断されたことにより、あるいは権力者が民衆が知恵をつけることを恐れたがゆえに、集められて火にくべらたということです。
一方でこの本の内容をひろめるために、命をかけた人も多くいます。本の一部を書いた人もそうですし、権力者に逆らって翻訳しようとした多くの人々が、残酷な仕方で処刑されました。

ある人たちはこの本のおかげで生きる目的を知ったといいます。先に何があるかわからぬこの世界において、それは確かに人々の支えになってきたわけで。
一方でこの本は多くの戦争をひきおこすきっかけとなったとも言われています。とにかく人類史を通じて、この本ほど人々に大きな影響を与えてきた本はないでしょう。

とくに欧米の人たちは多少の差はあれ、その影響をずっしりと受けています。あちらの映画や小説を読むと本当にそのことがよくわかります。完全にわからずとも一回通して読んでみると、映画に対する理解もまた深まるのではないでしょうかね。わたしも一応読んだことあります。ええ、わからない部分の方がずっと多かったですけど。

原題は『The Book of Eli』。イーライ=エリというのは、「主よ」という意味じゃなかったかな。キリストが亡くなる前に言った言葉が、たしか「エリ、エリ、レマ、サバクタニ」 ・・・・はい、この辺でもう大概にネタバレですね。すいません。

ちなみにデンゼル氏は、「『実は彼の持っていた本は、世界で最後のプレイメイトだった』とかそういうオチでもいいと思った」なんてさるインタビューで語っておられました。バチあたりでございますわよ! デンゼルさん!

あとこの映画、ちょうどiPadが発売されたころに公開されたのが実にタイムリーだなあと。紙の本というのは場所を取るのでいっそ全部電子化しちまえ、という意見もあるそうなんですが、電子化しちゃうとロードする機械や配信元がおしゃかになっちゃったりすると全く読めなくなってすまうわけですよね。そういうわけでやっぱり最終的に頼りになるのは神の本、いや紙の本なんではないでしょうか。

100707_183421活字離れが叫ばれている今、書物に親しむのは非常に大切なことだと思います。中高生のみなさん、この暑い時期に読書感想文も大変だとは思いますが、がんばっていろんな本にトライしてください。


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July 06, 2010

バンディッツ・オブ・アラビアン マイク・ニューウェル 『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂』

100706_184806ああ。もたもたしてるうちに公開大体終っちまってるcoldsweats01 大味なアドベンチャーを作らせたら天下一!(あわわ)なジェリー・ブラッカイマーのプロデュース最新作。『プリンス・オブ・ペルシャ』ご紹介します。

かつて中東において大いなる権勢を誇ったペルシャ帝国。貧民街で育った少年ダスタンは、その勇気により国王から王家の一員として迎えられる。それから数年が過ぎ、立派な戦士として成長したダスタンは、隣国との紛争の際、奇妙な道具を手に入れる。それはなんでも願いがかなうという伝説のランプだった・・・

最後の一文だけウソンコです。

わたくしがこの映画を見た理由というのは、実は「ほかに見るものが見当たらなかったから」というものでした(爆)。中東を舞台にした時代劇というのはそうそうあるものではなく、その点に関しては興味をひかれたものの、それ以外はどうも目新しい要素がなさそうで。はっきり言ってしまうと『パイレーツ・オブ・カリビアン』の中東版という感じ。怪獣も出てこなさそうだし。
だいたいわたしは王子というものが好きではありません。生まれた時から苦労を知らず、親の権威の上にあぐらをかき、おまけに女子からはもて放題。そんなヤツに感情移入などできるわけがないだろがああ!! うがうあああ!!

ところがどすこい実際に見てみたら、これがなかなか面白い。
まず「王子問題」ですが、冒頭でダスタンが「拾われた貧乏人の子」というのがわかった時点でクリアされました。すまなかった、ダスタン。君はぼくらの仲間だ。
あとわたしこういう「血のつながらない親子」の交流みたいのに弱いんですよ~ 例をあげると『スパルタカス』とか『グラディエイター』とかね。

あと最初に抱いた不安のひとつに、「ジェイク・ギレンホールに果たしてヒーロー役が務まるんやろか・・・」というのもありまして。わたくしこの人ってどうも「変なあんちゃん」というイメージで(BBMファンの皆さん、すいません)。なんせこの人を知ったのが『ジャーヘッド』と『ゾディアック』だったもんですから。
それがその変な・・・いや、やさぐれた・・・いや、エキセントリックなところが、単なる正義漢とは一風異なる面白いヒーロー像を作り出していたように思います。かといってジャック・スパロウほど世慣れてもなく、まだ青臭いところも多少残されていて。まるでジャックとウィル・ターナーを足して割ったようなキャラにしあがっておりました(どうしてもそこに戻ってきてしまうなwobbly

さらにツボだった点としては、最近そんなに珍しくもないけど、屋根の上をぴょんぴょん飛び回るアクションなど。チャンバラは意外と少なめで、どっちかといえば投げナイフやらロープを使ったアクロバティックなものが多かったです。そう、アラビアン・ナイトのはずなのに、なんかいちいち忍者風なんですよね。『NARUTO』に影響を受けたのかどうかは知りませんが、その辺とてもなじみやすかったし、興がのりました。

この映画の重要なアイテムとして出てくる、「時間の砂」が入った短剣も面白い。この剣、柄のボタンを押すと数十秒ほど時間を巻き戻すことができます。しかし数十秒ではできることは限られてるし、砂を消費するので巻き戻せる回数も無限ではありません。その辺どうやって上手に使うか?というところにも興味をそそられました。

そんな『プリンス・オブ・ペルシャ』、予告編からはイマイチその面白さが伝わらなかったせいか、日本でも本国でも売り上げはそれほど伸びなかったようで・・・ そもそももう終っちゃってるし。わたしだって余裕がなかったら見なかっただろうし。やっぱり先にディズニーランドで、派手なアトラクションを作っておくべきでしたね。

100706_184833とりあえず近所の名画座でかかったならば、ご覧になってみることをおすすめします。やっぱりこういうのはDVDよりスクリーンで見たほうが楽しいと思うので。
スタッフの皆さん、なんのお力にもなれず申し訳ありましぇーんcrying


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July 03, 2010

戦闘兵器はカブト虫の夢を見るか 塚本晋也 『鉄男 THE BULLET MAN』

100630_182738日本映画界において常にエッジの鋭い意欲作を送り出している塚本晋也監督。その出世作となった『鉄男』が、監督自らの手でイングリッシュ・バージョンとしてセルフリメイク。『鉄男 THE BULLET MAN』、紹介いたします。

愛する妻と息子に囲まれ、幸福な日々を送っていたアンソニー。だが彼は夜毎自分が鋼鉄と化していく夢に悩まされていた。そんなある日突然現れた謎の男たちの手により、アンソニーの息子はその命を絶たれる。
自分を揺さぶる感情を懸命に抑えるアンソニーだったが、男たちのさらなる襲撃にあった時、彼の悪夢は現実のものと化した。

まずお話ですが、まあいかにもどこかで聞いたような話です。『狼よ、さらば』『マッドマックス』『パニッシャー』etc。最近では『マックス・ペイン』なんてのもありました。まあ監督はストーリーは映像を引き立たせるために、最低限必要なものがあればいいと思ったのでしょうね。そんなわけでこの映画のキモはやはりグニグニかつゴツゴツとした独特のビジュアルにあります。
あと文字通り重金属というか重低音のサウンドが、ものすごい音量でかかっていました。わたしがいままで見た映画の中では、最も大音量の作品でした。

んでこの映画、中二男子(特にオタク系)にありがちな欲望・衝動・願望をこれでもかと再現した映画だと思いました。
中二のころというのは、心身に生じる変化をもてあまして、さまざまな妄想をつのらせることがあります。
まず何かをぶっこわしたい・暴れたいという気持ち。平たくいえばエネルギーの発散ですね。これが健康的な方向にいくと、スポーツに情熱を注いだりできるわけですが。あとこの衝動は、割りと大人でも抱えていることが多いような気がします。

ここからはややアブノーマルな領域に突入します。二番目は膨張したいという気持ち。これはイソップ童話に出てくるカエルと似たような心情かも。少しでも自分を大きく見せたい、強くみせたい、という気持ちが高じて、巨大な怪物になりたい気持ちを抱く子もいます。コミック『ハルク』『ARMS』『AKIRA』なんかもこの妄想を表現した作品ではないでしょうか。
膨張を続けていけばいつかは派手に破裂するものですが、そんな酸鼻な最後にさえ、奇妙なあこがれを感じたりして。

三つ目は「変身したい」という気持ち。これはもしかしたら日本人に特に固有のものかもしれません。アメリカのヒーローというのは、大抵変身といってもコスチュームやマスクをつけるだけで、中味自体は普段と変わっていません。
しかし日本のヒーロー・怪物の場合は中味からまるごと別の物質に変化してしまう、というものが多い。いわゆるひとつのメタモルフォーゼです。「変身」というか「変質」といったほうがいいかも。
実は自然界にもそういう変身を遂げるものがいます。それは昆虫。彼らは幼虫から成虫にいたる段階で、内臓その他の器官が一度ドロドロに溶けて、まったく別の器官に作り変えられるんだそうです。日本のサブカルチャーにそういうのが多いのは、わが国の男子たちが幼い頃から昆虫に普通に興味を抱いているからかもしれません。
中二のころというのは、自意識過剰な反面、極端な自己嫌悪に陥ったりもします。いい加減自分に嫌気がさして、まったく別物に生まれ変わりたいと願うわけです。

最後は「固くなりたい」という気持ち。・・・なんか下ネタくさいですけど、そういう意味ではなく、硬質化したいというか、頑丈な無機物になりたいというか、そんな感情。多感なころというのは、様々なことで深く傷ついたりするものです。しかし鉄のような体になれば、どんなことにも傷つかないし、動じることもありません。心無い悪意をぶつけられても、何も感じることはありません。それでそんな体になりたい、と思う少年もいるわけです。

100630_182719大人になるにつれそういうとんがった衝動は、いつしか薄らいでいくというか、磨耗していくものです。しかし何かの拍子で・・・例えばストレスが昂じたりすると、そんな気持ちが甦ることもあり。そういう時は、こういう映画でも見て発散できればいいんですけどね。

そんな『鉄男 THE BULLET MAN』は本会場シネマライズでは既に上映を終了coldsweats01 ご興味を抱かれた方は、お近くの町にでも来た時にどうぞどらんください。

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