FLY ME TO THE EARTH ダンカン・ジョーンズ 『月に囚われた男』
首都圏より数ヶ月ばかり遅れて上映。そして既に終了。一度くらいはやってる間にサバッと決めてみたいものですね。あのデビッド・ボウイのご子息が監督デビュー。異色のSF映画『月に囚われた男』参ります。
いまからそれほど遠くない未来。人類は既に枯渇した資源を月から採取するようになっていた。月の採掘場で働いている人数はわずかにたった一人。任期の三年がようやく終わりに近づいてきたころ、作業員のサム・ベルは奇妙な事態に遭遇する。基地から調査に出た際、自分以外いるはずのない人間を発見したのだ。そしてその男は自分とまったく同じ顔をしていた・・・
果たしてこの「もう一人の自分」は何者なのか?
1.妄想
2.生き別れの双子の兄弟
3.ドッペルゲンガー
4.超能力に目覚めてぷちっと過去にタイムスリップしちゃった
正解は・・・ ご自分の目でお確かめください。実は自分、予告編見た時に、あまりの精神的圧迫に耐えられなくなって、妄想と現実の区別がつかなくなってしまう、そんなお話なのかと思ってました。が、これが意外と論理的に説明のつくことだったりして。あ・・・ この時点でもうかなりネタバレですよね。すいません。
まず目をひいたのは広大な月面のビジュアル。なんにもないごつごつした地面の上を、どこかレトロ調の巨大なビーグルがとろとろとろとろ進んでいく。そんな風景に心安らぐものを感じたりして。
ただ、たまに見る分ならともかく、そこへ三年間置き去りにされるとなったら話は別です。それなりに話相手や通信手段もあるとはいえ、たった一人で三年もの月日を過ごさねばならないとしたら・・・ 想像するだに背筋に怖気が走ります。
以下さらにずんずんとネタバレしていきます。未見の方はお気をつけください。
一日千秋の思いで待ちわびたその日を前に、男につきつけられる残酷な現実。先日『アイアンマン2』でこれ以上内くらいイヤミな役を演じたサム・ロックウェルですが、こちらでは切々たる演技で観客の涙を誘います。
帰りたいけど故郷はあまりにも遠く・・・ そうした思いは、異国の地で生涯を終えざるをえなかった多くの旅人たちとシンクロいたします。そういえば阿倍仲麻呂も月を見上げながら故郷を思う歌を詠んでいましたっけ。サムが見上げているのは月ではなく、故郷そのものですけど。ともあれ、夜空に浮かぶ多くの光は、昔から望郷の念をかきたてる力があるようです。
そんな哀れなサムを暖かく見守るのが、基地に備えられた人格型プログラム・ガーティ。序盤のあたりなどは『2001年宇宙の旅』のHAL9000を思わせるような不気味さを感じるのですが、映画がすすんでいくに従って「なんていいヤツなんだ! うおあおおおーん!!」とまた涙を振り絞ってくれます。
考えてみれば不思議な話です。金属で作られた無機質な存在が、なぜにこれほどまでに暖かく優しい気持ちを抱けるのか。もしかしたら男を見続けていた「月」の切ない思いが、いつしかガーティの内に乗り移ったのかもしれません。・・・どうしたのかしら今晩のアタシ、なんだかとてもメロウな気分
原題は単に『Moon』。この邦題になったのはデビッド・ボウイ出演のカルト映画『地球に落ちてきた男』を意識してでは、とマイミクさんがおっしゃってました。なるほど。
そんなわけでお父様のお名前でお客を呼ぼう、という目論みも感じられないではないですが、見てみて確かに親の七光りではない、確かな実力を感じました。数々の映画祭で受賞した多くの賞がそれを物語っています。
そんな『月に囚われた男』は地方での巡業も大体終ったようで、来月11日には早くもDVDがリリースされるようです。てゆうかパパの映画とのセットとか売り出さなくても。先の『2001年』や、『エイリアン』なんかが好きな人におすすめかな・・・ この二つほどには怖くないですけど。
Comments
こんばんは。
この作品て変にリアリティを感じたんですよ。宇宙服、どでかい採石車、月面車みたいな車…、みんな今現実に使ってるものみたいだし。設定的にはもちろん近未来なんだろうけど、あながち荒唐無稽とも言い切れない雰囲気が漂ってました。
Posted by: KLY | July 24, 2010 11:18 PM
>KLYさん
こんばんは。炎天下の草野球お疲れ様でした
そうですね。変に超科学みたいな機械が出てこなかったあたりリアリティがありました。あの辺のビーグルはサンダーバードなんかを彷彿とさせて萌えましたよ。でかいタイヤはいいですね
ただ一つ非現実的だと思ったのは、あんな過酷な職場に労働人員が一人というところ。労働基準法はどうなってるんだ!と。まあ見ているうちにその理由にも納得がいったんですが
Posted by: SGA屋伍一 | July 26, 2010 10:44 AM
こんばんはー、
エイリアンは大好きなんだけど、、、、
ストーリーとしてはちょっとありがちな感じしちゃった。
低予算でなかなか頑張ってたと思うし、サムロックだからこそ良かったんじゃないかなと。
ただ、監督が評価されるのはお父さんの名前がやっぱり少なからず影響してると思っちゃったのでした〜
え?パパのDVDと抱き合わせで売るの?
それは違うかと(笑)
Posted by: mig | July 28, 2010 08:58 PM
>migさん
おはよっす。お返しありがとう
そっか・・・ エイリアンが出てくればもっと良かったのか!(違)
こういうストーリーの映画ってほかに何があったかな。『惑星ソラリス』とか? いや、『ソラリス』って話に聞くだけで見たことないんだけど
ちなみにDVDセットのパッケージでは、下半分にパパの悩ましげな入浴シーンが印刷してあります・・・
Posted by: SGA屋伍一 | July 29, 2010 07:23 AM
こんばんは
私もこれはお話が思ったよりふつう・・・と思ってしまったけど、
月面の風景やレトロSF風味なビジュアル、
サム・ロックウェルのキャラとスマイリーなコンピュータとかが
よかったなーと思います。
ガーディは声がケビン・スペイシーなだけに、
最後までいいやつや悪いやつか分かんなかったんだけど
ほんとにいいやつでしたね。
ところで全然記事とカンケイなくSGAさんも特に興味ないと思うのですが
今日から放送のドラマ『熱海の捜査官』に期待しまくっています。
『時効警察』の三木聡監督でオダジョー主演なの。
熱海といえばSGAさん・・・ということで、ご近所でロケとかしてなかったですか?
Posted by: kenko | July 30, 2010 08:34 PM
>kenkoさん
おはようございます。返事が大変遅くなってしまって申し訳ありません!
この映画、意外と日本のブロガーさんからは「そこそこ」くらいの評価ですねえ。わたしなんかは上の記事からは伝わりにくいかもしれませんが、けっこう気に入ってしまったのですが
ガーくんは実はスタッフロールを見て初めて「スペイシーだったのか!」と気づきました(笑) 外人の声を聞き分けられる人ってすごいなあ。宇宙(スペース)の話だからスペイシーを起用したんですかね?
『熱海の捜査官』は市民ですから当然チェックしてましたよ。第一回も既に見ました。が、実際に熱海の風景が映ってるのはごく一部で、ほとんどは別の場所で撮られた「架空の」熱海でしたね~
でも市民ですので引き続き見てみようと思ってます
Posted by: SGA屋伍一 | August 02, 2010 08:18 AM
熱海の風景はごく一部なのかぁ。。。
ずいぶん異世界な熱海に仕上がってましたが、実際あんな異世界ではないですよね?(笑)
ちょっとツインピークスっぽいと思いました。
まだ一話だけなので、これからどうなるか分かりませんが
いつものメンバーが揃ってて時効ファンとしては楽しかったです。
Posted by: kenko | August 02, 2010 07:00 PM
>kenkoさん
海岸の大きな建物が並んでる風景などは使われてましたが、実際はあんなにいろいろ立派なところではないです(笑)
あんなハイソな学園もありません・・・
実際の熱海を知りたければアニメ『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ栄光のヤキニクロード』もしくは『真マジンガー 衝撃!Z編』をご覧ください。けっこうロケハンしっかりやっています
三木聡作品は初めて見たのでまだよくわかんないんですけど、そのうち慣れていくのかな? ガメラの藤谷文子さんも、けっこういい年になりましたね~
Posted by: SGA屋伍一 | August 03, 2010 09:29 PM