おお戦場は緑 ポ-ル・グリーングラス 『グリーン・ゾーン』
♪グリーン・ゾーン 青空には 小鳥が歌い
これ、まだやってたよな? 監督ポール・グリーングラス×主演マット・デイモンの『ボーン』コンビが送る軍事謀略アクション『グリーン・ゾーン』ご紹介します。
戦争がほぼ収束したイラク。アメリカは戦争の発端となった大量破壊兵器を発見すべく、捜索隊を組織し、その任に当たらせる。だが情報をもとに幾ら探しても、破壊兵器は見つからない。隊長のミラーは情報の出所に疑問を抱き、独自にその謎に迫ろうとする。
中東を舞台にした軍事モノといえば、まっさきに思いだすのは先日アカデミー作品賞を受賞した『ハート・ロッカー』。ちょうどこの映画は『ハート・ロッカー』の前日談のようなものかもしれません。つまり、「イラクの現在の混乱はいかにしてもたらされたのか」。それをわかりやすく説明したものとなっております。原作はラジャフ・チャンドラセカラン氏の『インペリアル・ライフ・イン・ザ・エメラルド・シティ』。ノンフィクションだそうなので、一応この映画も「事実に基づいた作品」ということになるのでしょう。
先に『ハート・ロッカー』があったせいで、どうもいろいろと比べたくなってしまいます。主人公の性格なんかは『ハート・ロッカー』より単純ですね。迷いもなくブレもなく、自分の決めた道をひたすらまっすぐに進むタイプ。彼の敵はもっぱら自分の内面にではなく、外側に存在しています。
ただ『ハート・ロッカー』がほとんど主人公一人に焦点をあてていたのに対し、こちらでは実に様々な人々の思惑が描かれます。アメリカ主導の統治を望むもの。イラクはイラク人が治めるべきだと主張する者。アメリカとイラクそれぞれに両方の意見の者がいて、さらにそれらも穏健派と過激派に分かれていて・・・ 当たり前のことですけど、十人いれば十人の意見がある。そんなことをあらためて思わせられます。
また、腐敗した利己的な権力者でさえ、平和のためには旗頭になってもらわねばならない・・・ そんな現実のほろ苦さも描かれていました。
監督ポール・グリーングラス氏には9.11の同時多発テロを描いた『ユナイテッド93』という作品があります。これとて米国の正義をたからかに謳った映画ではないようですが、見るものとしては、やはりアメリカ人側に感情移入してしまうのはいたし方なきことでしょう。
そこでまあ、今度は公平に?アメリカの悪い面も描くことにしたのではないでしょうか。『ボーン』もそんなお話ですけど、あれはやっぱりフィクションですから。そういうニュートラルな視点は大いに歓迎したいところであります。
というわけでエンターテイメント風の予告・ポスターに期待していくと、ちょっと肩透かしを食うかもしれません。十分お勉強にはなる映画ではありますが~
そのグリーングラス監督、予定されていた『ボーン』第4作は降板してしまったそうで・・・ ひどいわ! 信じてたのに! ちなみにマット・デイモンは「彼がいないならやらない。もし戻ってくればやる」とコメント。なぜだ!? 君たちはできてるのか!?
この二人にはぜひジェイソン・ボーンのその後を描いてほしかったので、わたしとしては監督の心変わりを心から望む次第です。はい。
Comments
こんにちは~♪
ボーンの4作目は未定ってことですか?あら残念。
この映画、せっかく観に行ったのに、なんとなくノレずにおりました。
予告の段階からどういう映画か分かっていたんだから、文句たれるのは反則だよな―と自分でも反省しております。
ユナイテッド93は未見です。今後も観ないと思うなぁ・・・
だけど、、、そうか、ユナイテッド93とコチラをセットで考えれば、この映画を何故撮ったのか腑に落ちてきました。
『父親たちの星条旗』と『硫黄島からの手紙』を撮ったイーストウッドの感覚に近いってことでしょうか。(違うか・汗)
Posted by: 由香 | June 15, 2010 03:29 PM
>由香さん
こんばんばん。お返しありがとうござります
ボーン4作目については、以前制作のダグ・リーマン氏が「マット抜きでも作る」とやる気ムンムンに語っていたので、たぶんそのうち作られるんじゃないかとは思います。いつになるかはわかりませんが・・・
『ユナイテッド93』は実はわたしも見てないんですよね。なのに見てきたように語ってしまうこの図々しさ(笑) もう長いことブログ休んでるスワロさんが、たしかこの映画をオールタイムベスト1に推してたっけなあ
>『父親たちの星条旗』と『硫黄島からの手紙』を撮ったイーストウッドの感覚に近いってことでしょうか
そうそう! わたしが言いたいのはズバリそういうことです! まあわたしの単なる思い込みかもしれませんけどね(こらー)
Posted by: SGA屋伍一 | June 15, 2010 09:18 PM