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June 01, 2010

遠い星から来たクー ゲオルギー・ダネリヤ 『不思議惑星 キン・ザ・ザ』

100530_211952前項でも書きましたが、かれこれ15日ほど前高田馬場は早稲田松竹へ『ひなぎく』と『不思議惑星 キン・ザ・ザ』の二本立てを見にいってきました。今日は『キン・ザ・ザ』の方を紹介いたします。

ロシアがまだギリギリソ連だったある日。建築技師のマシコフは、街角で宇宙人と名乗る奇妙な男と出会う。マシコフが面白半分に彼の持つ装置のボタンを押すと、そこはあっという間に知らない世界。男の姿はなく、マシコフと居合わせた音大生ゲテバンは、広大な砂漠の真ん真ん中に放り出されてしまう。
途方にくれた彼らの前に、釣鐘のような形の飛行物体が飛んでくる。中から現れたのは薄汚れた格好のオヤジとじいさん。彼らにとってマッチが非常に高価なものであることを知ったマシコフは、それを利用してなんとか我が家に帰ろうとするのだが。

いろんな方が言ってると思いますが・・・・ 変な映画です(笑)
まず宇宙SFなのに宇宙のシーンが全くありません。映るのはほとんどだだっぴろい砂漠ばかり。そこに住む人々の習慣がまたみょうちくりん。特におかしいのが「クー」。彼らの言語の単語は大体両手で数えるほどしかなく、99%は「クー」といえば通じてしまいます。んなムチャな・・・
ほかにも中東あたりの文化レベルとどっこいどっこいのくせに、時々とんでもない科学技術を披露したり。そんなところでなぜかマッチが宝石なみに貴重なものとされたり・・・
この奇妙奇天烈でシュールな世界観、なんとなく藤子F不二夫の漫画を彷彿とさせます。

そんな漫画みたいな世界に放り出されたのが、いちいち真面目くさったおじさんというのがまたおかしい。冒頭でテレポートするシーンで、ちょい動揺しながらも「・・・近所の砂漠だろ」なんて言ったりします。普通もっと取り乱すだろ。そんな彼でも次から次へと襲い来るカルチャーショックにはさすがに耐え切れなくなり、次第に憔悴しはじめます。主演の俳優さんはどちらかというとこういうバカSFより社会派ドラマなんかが似合いそうな方で、その困惑した表情はまるで「なんでオレ、こんな映画に出ちゃったんだろ・・・・」とでも言っているかのようでしたw
このおじさんにからむいのが、根はいいヤツなんだけどボヤキが多く手癖の悪いゲテバン。そして関西の悪徳商人を地で行くような宇宙人のコンビ。この二人、隠し砦の三悪人も舌をまくほどの強欲さであります。そしてどっか抜けている(笑)
そんな四人がメインなものですから、お話はなかなか先に進まず、進んだと思ったらまた逆戻りしたりして。「果たしてこの話、ちゃんと終るんだろうか?」と不安になること請け合い。しかしそうしたまったり展開を乗り越えたあとには、銀河を超えた感動があなたを待っていることでしょう。本当です。信じてください。

この映画が公開されたのは1986年。ハレー彗星が飛来してきた年ですね。それよりもっと古い時代の作品のように思えてならないのですが。そんなレトロな映画でありながら、『キン・ザ・ザ』は公開されるや1520万人もの観客を動員。いまなお「クー」はロシアで伝説的な一発ギャグとして通用するとか。
この映画、資本主義を揶揄するようなセリフが多数あるのですが、だからといって決して共産主義を礼賛しているわけではなく。むしろおちょくってるようなところすらあるような。
そんな映画が大ヒットしてしまうのですから、ほどなくしてソ連が崩壊してしまったのも、なんか納得してしまいます。この辺共産主義思想に勢いがあったころの『ひなぎく』が、当局からこっぴどく怒られたのと実に対照的であります。

100514_181030そんな『不思議惑星 キン・ザ・ザ』。ウィキによりますとロシアでは「2008年にアニメ版を公開予定」とあるのですが、まったく噂を聞かないのはなぜなんだろう(笑)。さらに検索してみると、どうやら公開が順調に遅れていることがわかりました。ようつべにもニュース番組で流れた動画がちらほら挙がってます。
果たして無事完成するのか? したとして日本で公開されるのか? 作品の内容にふさわしく極めて五里霧中ではありますが、気長に待つことといたします。く~~~ぅ

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Comments

いやあ、いい映画を紹介していただきありがとうございました。
いまだにあの情景は心に残っています。(あとクーと)

藤子F不二雄的とありますが、
藤子作品はもっと論理的できれいな感じ、
あのシュールさと薄汚さは
紛れもなく諸星大二郎と思うので
今度、お見せしたいと存じます。

それにしても銀河を超えた感動なんて、
ありましたっけ?(爆)

追伸 『トライガン』もトライしてきました。
面白かったです。

Posted by: かに | June 03, 2010 at 01:21 PM

>近所の砂漠だろ

鳥取くらいならわたしも驚きませんが、動揺をひた隠そうとしてるあたり、相当動揺してたりして!

砂漠は好きです。足元を絡めとって砂がざらつく酷なシロモノだけど、現実離れしていて虚しさがあって、ドラマを繰り広げるのにピッタリと思って。

ここで繰り広げられた物語はそりゃもうのんきでしたね♪

Posted by: takako | June 03, 2010 at 07:19 PM

>かにさん

その節はこちらこそお世話になりました~
いやー、この世界観、以前貸してもらった「モジャ公」とよく似てる、と思ったのですが、確かに藤子Fの世界はもう少しこざっぱりしてますかね
諸星大二郎の宇宙SFは『失楽園』に収録されていたものを読んだことがありますが、もうあんまり覚えてない(笑) 星野宣之の『2001夜物語』はよく覚えてるんですけど

『トライガン』、楽しまれたようでなによりです。来週原作もっていきますのでお楽しみに

Posted by: SGA屋伍一 | June 03, 2010 at 10:09 PM

>takakoさん

お返しサンクスです。今日はローマ字で登場ですね

なるほど・・・あのクールな態度は動揺を悟られまいとする強がりだったのですね。そんなハードボイルドな姿勢に見習いたいものです

砂漠は見てる分にはいいんですけどね。実際に行くとなると大変だろうな、と。なんか「迷い込んだら帰れない」そんな死のイメージがつきまといます

もっともこの映画はあまりにのんきすぎて、そんな緊迫感など微塵もなかったですけどね(笑) まーま、まーま、どうしよう~なんて歌ってるし

Posted by: SGA屋伍一 | June 03, 2010 at 10:14 PM

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