荒野にたなびくは死神のバラッド 内藤泰弘・西村聡 『TRIGUN Badlands Rumble』
「はるか時の彼方 まだ見ぬ 遠き場所で 唄い続けられる 同じ人類のうた」
本日はファン待望のトライガン劇場版、『TRIGUN Badlands Rumble』をご紹介いたします。その前に「トライガン」のあらましについて簡単にご紹介します。
遠い未来、西部劇のような環境の植民星で、人からは「人間台風」と恐れられながらも人助けに奔走するガンマン、ヴァッシュ・ザ・スタンピードの戦いを描いた作品。
1995年に少年キャプテン誌にて連載開始。二年ほどで掲載誌が休刊という憂き目に遭うも、同じ年にヤングキングアワーズ誌にて『トライガン・マキシマム』として復活。翌年にはアニメ版『TRIGUN』も放映されます。原作は2007年に完結しますが、いまだ根強いファンは多く、この度アニメ版の設定に基づいたこの劇場版が製作されたというわけ。
人気の秘密は内藤先生のスタイリッシュでダイナミックな画風もさることながら、その根底に骨太なずっしりとしたテーマが流れているところにあるものと思われます。
今回の劇場版もそれは同じです。なんせ脚本を担当されてるのが、今日本で最も男臭いお話を書かれる小林靖子大先生。今回のテーマは、「果たして悪人を救う意義はあるのか」ということ。もしそいつを助けてしまったら、あとで大勢の人が泣きをみるかもしれない。それでもその人間を救う価値はあるのでしょうか。
ヴァッシュの答えは「先のことなど誰にもわからない。とにもかくにもまず助ける」というものです。ヴァッシュはなぜ赤いコートに身を包むのか。原作になんか理由が書いてあった気がしたのですが、忘れました(笑) ・・・それはともかくあの赤は、消防車の赤でもあるのかもしれません。消防士は救急活動の際その人が善人か悪人かなんて考えません。等しくすべての人を救うのが彼らの役割なのです。ヴァッシュのやっているのは、そういう、世の中になくてはならぬ仕事なのです。
そんなしっかりとしたテーマを語りつつ、弾けたアクションもてんこもり。特にこのマッドハウスさんの「間の取り方」というのは、世界最高峰なのではないかと。展開するギミック、放たれるキック、破壊される壁・マシン・建物、構えられる拳銃、ゴロゴロと転がっていく巨大な××。時にスピーディに、時にゆっくりと。この緩急自在の絵の動きに、いちいち快感がほとばしりました。
ただ・・・ ひとつ注文をつけさせてもらうなら、ヴァッシュにはもっと派手にいろいろ壊してほしかった(笑)。原作のあの壮大なクライマックスを知っているものとしては、今回のスケールがややダウンしたように感じられるのも確か。ま、それはまた次回への課題としておきましょう。
完全な防備が施された要塞都市や、見上げるほどの巨大ロボット群を相手に、ただ一人・・・いや二人で立ち向かう赤と黒の無敵のガンマン。そんな物語が、君は見てみたくないか? オレは見てみたい!
トライガン劇場版は現在主要都市で絶賛公開中。その後全国を回る予定であります。
「語るべきは 未来へ続く その軌跡のみ」
Comments
いまMXで再放送やっているので観てます。
なんとなくテレビ版全部観てからの方が
いいような気がして、でも終わる頃には
映画も終わっている?ということでどうしようかと迷ってました。
多分、初見でも大丈夫だとは思いますが。
やっぱ観とこうかしら。
同じマッドハウスの『いばらの王』は観るつもりです。
Posted by: かに | May 11, 2010 08:39 PM
>かにさん
おはようございます
これたぶん11話と12話の間くらいに位置するお話だと思うので、その辺くらいで見てもちょうどいいかもしれません。全話終ってからみてもまた味わい深いと思いますが、うん、たぶん上映終っちゃってるよね・・・
内藤先生はみなもと先生がよく参加されるコミティアの出身だとか。『大江戸ロケット』で一緒にお仕事されてたのもその関係でしょうか
『いばらの王』は実はよく知りません・・・ マッドハウスではこないだやってた『マイマイ新子と千年の秘宝』というのが評判よかったですよ
Posted by: SGA屋伍一 | May 12, 2010 07:15 AM
>11話と12話の間
ならば通過してますね。
予定を組んでみるかな。
>内藤泰弘
デビュー前(?)の同人誌2冊ほど持ってます。
『いばらの王』
コミックビームに連載されたSFファンタジーです。
単行本も持ってますがなかなか面白かった。
アニメ評論家の氷川竜介さんが
ノーマークでしょうがおすすめですと仰ってました。
>『マイマイ新子と千年の秘宝』
『マイマイ新子と千年の魔法』なら観ました!
続編ですか?もしかして熱海限定?(爆)
Posted by: かに | May 13, 2010 12:05 AM
>かにさん
ども。
>>11話と12話の間
ならば通過してますね
ということはそろそろお話がだいぶシリアスになってきたころですね・・・ 映画はそれ以前のお気楽なムードです
>デビュー前(?)の同人誌2冊ほど持ってます
おお。それはけっこうプレミアがつくんじゃないかな。いまや海外にも広くファンをもたれておられるそうだですから
『いばらの王』はノーマークでしたが(笑)興味が沸いてきましたよ
>続編ですか?もしかして熱海限定?(爆)
そうです! 熱海に住んでてよかった!
・・・いえ、すいません、間違えました・・・
さすがおさえてましたか。わたしは見てないのですが(爆)
マッドさんにしては珍しい題材ですよね
Posted by: SGA屋伍一 | May 13, 2010 07:27 AM
見たいんですが、我が県では公開予定がありません。(泣)
アニメは見てませんが、原作は読んだことあります。
ハチャメチャとハッタリと決め、がとても上手い漫画ですよね。
この度、原作漫画が新装版として新しくでるようで。
追っかけとしては、何度目だトライガン……って感じではありますが。
まぁ、買っちゃうんだろうな、と。
新作漫画の「血界戦線」が載ったSQ19がもうじき発売ですね。
こちらの人気も上々ですが、自分は一番最初の読みきりが好きだったかな。
Posted by: 大吉 | May 14, 2010 02:05 AM
>大吉さん
こんばんは。
わたしは『トライガン』はアニメから入った口です。終了後何年かしてふと原作が読みたくなり、それからまたはまってしまいました。確か『マキシマム』が6巻くらいまで出ていたころ
アクションやギャグもさることながら、わたしがこの漫画で一番好きなのは叙情的というかやや感傷的なモノローグだったりします
新装版、わたしも見かけました。たぶんオマケ漫画はまた新しいのが掲載されているんだろうな・・・
『血界戦線』は恥ずかしながら最近その存在を知りました
既に単行本一巻が発売されてるようなので、近々購入しようと思ってます
Posted by: SGA屋伍一 | May 15, 2010 08:50 PM
SGAさんこんばんわ♪ついでにこちらにもお邪魔しますw
もともと自分はマンガの方ではなくアニメ版のビデオをレンタル店で借り、そこから逆にマンガの方へどっぷりとハマッていったタイプなんですが、劇場版のトライガンはそのアニメ版に沿ったストーリーで展開されてるというのがなんか嬉しいですね♪
・・しかし順次公開ではあるものの、地元の映画館にヒューマノイドタイフーンが再上陸する可能性は限り無く低いような気もするんですよね~?公開されたにしてもDVD発売チョイギリ公開と言うのが多くなってきたので、個人的にはちょいと歯痒い思いをしてる所でもあります。
あ、ちなみに黒猫は出てきましたか?
Posted by: メビウス | May 19, 2010 11:04 PM
>メビウスさん
こんばんは。アニメ→漫画だったらわたしと同じ流れですかね。アニメは「ヴァッシュが誰か」ということが4話くらいまで確定しなくて、その辺が面白かったです
青森はミニシアター作品、こちらよりはたくさんかかってると思うんだけど、マイナーアニメに関しては、はてどうだろう? まあわたしも近場ではかからんだろうと思って東京までわざわざ見にいきましたよ(笑)
黒猫はもちろん大活躍でしたよー アリスのチェシャ猫くらいには(笑)
Posted by: SGA屋伍一 | May 20, 2010 10:11 PM