花もケーキも踏み越えて ヴェラ・ヒティロヴァー 『ひなぎく』
先日(もう二週間前になりますが・・・)、高田馬場は早稲田松竹という名画座へ、『ひなぎく』と『不思議惑星 キン・ザ・ザ』の二本立てを見にいって参りました。
正直見たかったのは『キン・ザ・ザ』の方で、『ひなぎく』はそれまでタイトルすら知らなかったのですが、映画の紹介を見るとこちらもなかなかぶっ飛んでいて面白そう。そんなわけで期待に胸を膨らませて鑑賞に臨みました。
『ひなぎく』は1966年、チェコスロヴァキアの作品。はっきりしたストーリーらしきものはなく、イェツィンカとヤルミラの姉妹が、自分たちの欲望の赴くまま、遊んだり、食べたり、いたずらしたりを繰り返します。お姉さんのイェツィンカはちょい微妙でしたが(笑)、ヤルミラちゃんの方はそれはもうめちゃめちゃ愛らしく、彼女がはしゃぐ姿を見ているだけで、このわけわかんない映画がけっこう楽しかったりしました。
そんなキュートでポップなセンスが多くの人をひきつけ、岡崎京子、野宮真貴、カヒミ・カリィ、小泉今日子といったそうそうたる方たちが『ひなぎく』に賛辞を寄せております。
二人は時折言い争いもしますが、数秒後には何事もなかったかのように、また一緒に行動しています。そんな不可分な彼女たちの姿を見ていると、なんだか二人の人間というよりも、一人の人間が心の中でくだらない自問自答を繰り返しているようにも感じられました。
タイトルの『ひなぎく』とは、恐らく姉の方がかぶっている花冠からきているのかも。そして姉妹たちも花のような存在であります。花は美しく咲けばいいものであり、働くことや考えることはしません。また、「自分の欲望に忠実」という点では猫のようでもあります。猫はそこに好物があれば誰のものかなんて考えずに、遠慮なくがっつきます。気になるものがあれば、ちらかることなど意に介さず、思う存分暴れ回ります。「欲望」といっても、実にたわいもない、そんなレベルのもの。
しかし時のチェコスロヴァキアは社会主義の名の下、人々から享楽をとりあげ、勤勉・労働をひたすら奨励。姉妹たちもいつしか「わたしたち、マジメに働く」なんて言葉をつぶやきはじめます・・・
肝心の部分は映らないものの、けっこうお色気香るシーンもあり、てっきり男性が撮ったものだとばかり思っておりました。が、あとで調べたところ、監督さんは女性であることが判明 だいたい「ヴェラ」って女性の名前ですしね・・・
そのヴェラ・ヒティロヴァー監督、こんな風刺と浪費たっぷりの映画を撮って、国から怒られなかったのだろうか・・・と疑問に思いましたが、やっぱり怒られたみたいです。ウィキによりますと「チェコスロヴァキア当局からは発禁処分を受け、ヒティロヴァは以降沈黙を強いられることとなる」とのこと。しかし『ひなぎく』の評判は周辺諸国にも伝わり、世界各地で転々と公開され続けます(日本での初公開は1991)。そしてヒティロヴァー監督は現在なおも現役続行中。実に頼もしいことであります。
体制の圧力にも押しつぶされない、チェコのシニカルでシュールな気質が全編に満ちた作品。そんな『ひなぎく』は現在普通にDVDで観られます。レンタル版も出ている模様。実験映像と可愛い女の子が好きな方は、どうぞご覧になってみてください。
続きましては『キン・ザ・ザ』の方を語らせてもらいます。
Comments
妹のほうがかわいかったですね!
まさにネコちゃんみたい。おっさんたちにとってのプッシーキャット。(おっさんというか、じいさん寄り)
お色気は記憶にないですが、さすが、覚えてらっしゃるのですね~
スガ屋さんもお国から叱られるようなことしてくださいよ~。がつんと~。
Posted by: たかこ | June 01, 2010 08:49 AM
>たかこさん
お返しサンクスです。妹の方は若かりしころの加賀まり子に似ているような気もするのですが・・・どうでしょう
基本的におじさんたちには、ああいう若い子と火遊びしたい~みたいな願望があるのでしょうね。わたしもそろそろそんな領域に近づきつつあります
わたしは姉妹がほとんどビキニとか下着姿だったりしたところにさわやかなお色気がを感じたのですが、たかこさんにはあれくらい、お色気のうちに入らなかったかな?
そうそう、一昨日一時停止無視でキップを切られてしまいましたが・・・ こういうのは国から怒られたうちにはいらないでしょうか・・・
Posted by: SGA屋伍一 | June 01, 2010 06:41 PM