ワンス・アポン・ア・タイム・イン・タイランド トニー・ジャー 『マッハ!弐!!!!』
最近政情不安に揺れている微笑の国・タイより、あのトニー・ジャーの新作が満を持してやってまいりました。といっても、首都圏より二ヶ月遅れで、さらに既に上映終了という状態でありますが・・・ 『マッハ!弐!!!!』ご紹介いたします。
アユタヤ王朝の勢力が増大していた時代・・・というから、大体14世紀くらい? 邪悪な皇太子と対立した東の国の王は、妻もろともその命を奪われる。家臣の犠牲により辛くも生き延びたその一子ティンは、人買いの手に落ち、見世物としてワニと対決することになる。その場でティンは山賊の長・チューナンと運命的な出会いを果たすのだった。
『マッハ!!!!!!!!』『トム・ヤム・クン!』で名を馳せたアクション俳優、トニー・ジャー。彼はこの映画で二つのことに挑戦しています。
ひとつはアクションの幅をさらに広げること。これまではムエタイ風のアクションがほぼ専門だったトニーですが、今回は剣も振るいますし、投げ技や怪しげな酔券まで披露してくれます。なんせCGなし・スタント無しを売りにしているタイアクション。でかい刃物がぶんぶん振り回されていると、「大丈夫なんかな・・・」と思わず心配になってしまいます。
ティンが加わる山賊の一味はものすごく無国籍でして、少林寺風のおじさんがいるかと思えば、明らかに日本のサムライらしき男までいたりします。まあこのころは日本も相当ごちゃごちゃしていた時代だったので、流れ流れてタイに渡っていた人もいたかもしれません。あと首領がどことなくイスラム風なのは、かの教団の一派が暗殺組織(アサシン)を育成していたことから来ているんでしょうか。
わたしがこの映画で特に楽しみにしていたのは、ゾウをからめたアクション。観る前に、幾つかのところで「トニかくゾウがすごい」という噂を聞いてまして。怒りに燃えたゾウ軍団がどどーんと突進していくシーンなどあるのかな、と想像してました。
しかしまあ実際はゾウさんはあまり動かず。その周りでトニーさんたちがひゅんひゅん動き回っているようなアクションが多かったです。しかしまあこれはこれで見ごたえがありました。ゾウさんがよくしつけられていることにも感心しましたし。
で、もうひとつ挑戦しているのが監督業。これまではプラッチャヤ-・ピンゲーオ監督のもと演技をしていたトニーですが、今回は自ら監督をも務めております。ではその結果がどうだったかというと・・・・ 以下はラストまでネタバレしております。先を読まれる方はその点ご了承ください。
絶体絶命のピンチに陥り、敵に取り囲まれるティン。「ここからどうやって脱出するんだ!?」と手に汗握ってみていると、「戦いはむなしい」みたいなナレーションがかかって、映画は唐突に幕となります。その時の静まり返った劇場の空気は、なんとも言えないものがありました(笑)
確かに9.11以降いまだに安定を取り戻していない世界。平和を願い、戦いを憂う気持ちはよくわかります。だけどあんだけ超絶的なアクションを見せ付けられて、血がたぎる人はいても「復讐は何をも生み出さないわ!」と思う人がどれだけいるでしょう?
やっぱりこの映画、あのあとにもう一山なければ絶対におかしいんですよ。で、調べてみると現場では資金難・制作サイドとのトラブル・撮影の遅れ・さらにはトニーの失踪など、本当にいろいろあったらしいです。実際はもう三十分ばかりつけたしたかったのだろうけど、もろもろの事情で途中で無理矢理終わりにした、というのが真相ではないでしょうか。
いやー、ラスト直前までは大変いい流れで来ていたので、それだけに「惜しい」という気持ちでいっぱいです。そしてアクションと監督を両立させていたバスター・キートンやジャッキー・チェンの偉大さをあらためて思い知ったのでした。
最後のナレーションではこんなことも言っていました。「君たちが祈ってくれれば、ティンは生まれ変われるかもしれない」
あの・・・ それは興行成績次第では、また続編ができるかもしれない、ということですか?
もしやと思って『マッハ参』でぐぐってみたら、なんと既に今春タイでは第3作『Won Bak3』の公開が決まっているとのこと。ぽかーん
・・・・まあ、いいでしょう。この不始末は、さらなる超絶アクションでもって雪いでください。それが男の生きる道!
Comments
あー!マッハ弐!
結局みのがしてしまったんですよねぇ・・・
DVDが出たら観たいので、ネタバレのところは読んでませんが
無国籍な山賊一味?がおもしろそうですね(笑)
Posted by: kenko | April 06, 2010 11:00 PM
>kenkoさん
こんちはっす!
いやー、この映画、たぶん見終わったあとものすごくフラストレーションが高まると思うので、劇場で見なくて幸いだったかもしれませんよ(笑)
DVDで見るにしても、『参』の公開まで待って、連続で見たほうが心穏やかでいられると思います。『参』がまともなENDになってたら、の話ですが
Posted by: SGA屋伍一 | April 07, 2010 04:26 PM
まー俳優と監督は別だっちゅー典型的な例かもしれません。
基本的には相変わらずストーリーなんかどこ吹く風のアクション
だけ黙ってみとけやおら!って作品なんですがねー。
私は結構面白く観させてもらいましたけど、それは前作未見で
観たからで、やはり前作のが面白かったです。
個人的には『チョコレート・ファイター』の鮮烈さにも負けるかな。
Posted by: KLY | May 24, 2010 10:15 PM
>KLYさん
ご来訪ありがとうございます
さっき『アウトレイジ』の予告を見て思い出したのですが、監督・主演両方をソツなくこなしておられる方では、わが国でも北野武さんがおられました。あと『息もできない』のヤン・イクチュン氏も記憶に新しいですね
ピンゲーオ監督の作風も相当荒削りなんですけど、こちらと比べると「やっぱり監督の仕事してるよな」と思いました
まあ第一作だけで見限ってしまうのはかわいそうなので、トニー・ジャー「監督」の今後の成長に期待、というとこでしょうか
Posted by: SGA屋伍一 | May 25, 2010 12:44 AM