鼻にピアス ニールス・アルテン・オフレヴ 『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』
探そうぜ! ドラゴンタトゥー!! 首都圏より二ヶ月ばかり遅れて上映。そして既に終了(またかよっ)。スウェーデン発猟奇ミステリー映画『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』、ご紹介します。
『ミレニアム』誌の敏腕記者ミカエルは、とある企業の大物の不正を告発したため、罠にはめられて逆に自分の監獄行きが決まってしまう。服役までの間ヒマをもてあましていたミカエルに、一人の富豪がある依頼をもちかける。依頼の内容は、40年前自宅から忽然と姿を消した姪の消息をつきとめてほしいというものだった。調査を始めたがなかなか進展しないミカエルに、一人の女が現れてアドバイスを与える。彼女の名はリスベット。ゴス・スタイルに身を包み、天才的なハッカーの腕を持つ女。ミカエルは彼女に強力を頼み、二人は事件の真相へと迫っていく。
みなさんはスウェーデンっていうと何を思い浮かべます? わたしはとりあえず「寒そう」ということと、ノベール賞の授賞式開催地ってことくらいしかありません(平和賞のみスイスで行われます)。あと映画監督でいうとラッセ・ハルストレムさんがこちらのご出身ですね。ほかにもムニャムニャやムニャムニャが盛ん、なんてことも言われてますけど、まあ真偽のほどはよくわかりません。
この映画の原作は、スウェーデンでバカ売れしたというミステリー小説。「読んでないと職場での会話についていけないゾ!」ってくらい売れまくったそうです。全部で五部作の構想があったそうですが、原作者のスティーグ・ラーソン氏が途中でお亡くなりになったため、とりあえず三部までが発表されております。
「千年紀」「ドラゴン」「ミカエル」といったキーワードや、目にクマの入ったお嬢さんの顔がバーンと入ったポスターは、なにやら超自然的な内容を予想させますが、そんなことはなく、どっちかというとやや現実的な内容。怖いのは怪獣や悪魔ではなく、人間の心に巣食う闇であることを訴えたお話であります。そういやデビルマンさんもおっしゃってましたっけ。「悪魔はお前たちの心の中にいる!」って。
で、一番インパクトを放っているのはやはりヒロインのリスベット。強烈なルックスと激しい気性、謎めいた過去に類稀な推理能力と、これでもかっていうくらいキャラ立ちしまくっています。様々な才能を有している反面、時に虐げられたり、心のどこかに危うい一面を持っている。・・・こんなキャラクター、どこかで見たような・・・ そう、彼女は吉田秋生先生の名作『BANANA FISH』のアッシュ・リンクスとよく似てるんです。まあ男女の違いはありますけんど(^^; そしてアッシュには英ちゃんがいるように、リスベットにも悲しみを癒してくれる存在がおります。それがパートナーとなるミカエル(オヤジ)。他者から傷つけられることがほとんどだった彼女にとって、ミカエルは初めて「一緒にいたい」と思う相手だったのやも。理想の父親像を重ね合わせていたようにも思えます。
そんな風にリスベットの方がやたらエネルギッシュなため、普通のサスペンスものと男女の立場がまるで逆なんですよね。だいたいピンチに陥るのは男のほうで、助けに来るのは女の方。女子の方はピンチになっても自分で解決したりしてます。
恋愛部分でも男のほうが総じて受身系でした。いい雰囲気になってもオッサンのほうは「ちょっと待って。まだ心の準備が」みたいなことを言っていたり。男子の草食化の波は、北欧にまで広がっているのか!と暗澹たる思いに包まれました・・・
まあそんな二人に与えられたのが孤島における不思議な事件。それがやがてスウェ-デン全土へとひろがる猟奇犯罪へとつながっていきます。そう、この映画中の上くらいのサド描写がちょくちょくあるんですよね・・・
変態って大都市のうらぶれた一角とかに主に棲息しているのかと思ってましたが、自然の美しいスウェ-デンのような国にもけっこう存在しているようです。しかし全ての人間が変態なわけではありません(当たり前だ)。げんなりくる変態描写の一方で、人が純粋に誰かをいつくしむ姿なども描かれていて、本当に人間ってやつは幅が広いな~と思わせられました。
そんな『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』はまだまだ全国で展開中。すでに続編も待機中で、クエンティン・タランティーノがハリウッド版リメイクを熱望している、なんて噂まであります。
この原作、各上下で計六冊もあるので、ちょっとトライするのに気が引けます。そんなわけで続けて映画公開してくれると大変助かります。よろしくー
Comments
こんばんは!
スウェーデンのミステリーって、なんかピンとこなかったんですけど、
思ったより面白かったです。
『BANANA FISH』のアッシュ・リンクスは、ちょっと飛躍しすぎって
気もしますが(笑)、リスベットのキャラはインパクトありありでしたよね〜。
ミカエルとのコンビもなかなかいい相棒!でした。
たしかに、ある意味男女逆転してるトコもありますよね。
やはりそういう時代なんですかね〜。
こちらはまあ単館でしょうが。続編は大丈夫そうですねー。
Posted by: ルナ | April 21, 2010 01:06 AM
>ルナさん
ご来訪ありがとうございます!
自分はスウェーデンのミステリー、というかスウェ-デン自体がイマイチピンとこなかったりします。これがノルウェーやフィンランドだったら、もう少しいろいろ思い出せるものがあるのだけど
アッシュはちょっと飛躍しすぎでしたか
いやー、よくあるんですよ。「似てる似てる」というと「全然違うよ」とつっこまれることが・・・
アカデミー賞におけるキャサリン・ビグロー監督やサンドラ・ブロックにも思いましたが、本当に女性が強い時代になったなあと(笑) もうじき『バイオハザード4』も公開です
>続編は大丈夫そうですね
本国だけで十分もとはとったでしょうからね。問題は地元の劇場でかけてくれるか、ってことです・・・
Posted by: SGA屋伍一 | April 21, 2010 07:30 AM
こんばんは~♪
私は原作を読みたいなぁ~と思っているの。
多分好みの小説だと思うんだぁ~
最近忙しさにかまけて読書から遠ざかっているのですが、古本屋で見つけたらとっとと読みたいで~す♪(あくまでも古本屋で買おうとしている・笑)
映画は結構面白かったですよね。
サド描写には私もゲンナリするところがありましたが、、、こういう本格ミステリチックな映画もたまにはいいです。
続編も面白そうですよね!“火と戯れる女”ってタイトルもいいし♪
Posted by: 由香 | April 22, 2010 10:52 PM
>由香さん
おはよっす
原作にもチャレンジしようとはさすがに読書家の由香さんですね! わたしは真相がわかってしまったし、またすぐ第二部もやるようなのでいいかと(笑)
先日『シャッター・アイランド』も見ましたが、こちらの方はさらに「原作はいいや」と思ってしまいました。いや、映画は楽しめたんですがね
本格ミステリチックといえば、この映画横溝正史っぽいところもありましたね。こう、旧家のドロドロとした因縁みたいなものが特に
+サイコミステリーっぽくもありました
三部は「眠れる女と狂卓の騎士」だそうです。「ドラゴン・タトゥーの女」「火と戯れる女」「眠れる女」・・・ 彼女にするなら三部の人か・・・
Posted by: SGA屋伍一 | April 23, 2010 08:06 AM
こちらにも。
やっとDVDになったので観ましたが
原作に忠実ですね,特にリスベットの雰囲気なんぞは。
ミカエルはもっとイケメンかと想像していたので
ちょっとがっかり・・・・
スウェーデンは児童ポルノとかレイプとかが多い国で
未遂も含めて性犯罪の被害にあった女性が他国より多いとか。
だからこんなテーマのミステリが生まれるのかしら。
タラちゃんがリメイクしたがるというのもわかります。
タラちゃんが味付けすれば,
またがらっと雰囲気が違ったものになるのでしょうね。
Posted by: なな | June 07, 2010 02:30 AM
>ななさん
こちらにもコメントありがとうございます。ななさんも原作お読みになったんですね。この作品は「まずヒロインありき」なお話だと思うので、映画スタッフもキャスティングには相当気をつかったんではないでしょうか
わたしがちょっと気になったのはミカエルとリスベットがやけに年が離れていること。うーん、スウェ-デンではこういうカップルもちょくちょくあるんでしょうか
スウェ-デンというとわたしはそんなに悪い話は聞いたことがなかったのですが、そういう社会問題もあったのですね。当たり前のことですけど、どの国にもいいところと悪いところがあるというか
タラちゃんがリメイクしたらどうなるかなあ。きっとマシンガン撃ちまくりだったり、リスベットが日本刀振り回したりとか、そんなにぎやかな映画になりそう・・・
Posted by: SGA屋伍一 | June 07, 2010 12:36 PM