サイドでブロック ジョン・リー・ハンコック 『しあわせの隠れ場所』
本年度ゴールデン・ラズベリー賞を獲得した直後、アカデミー賞までゲットしてしまったサンドラ・ブロック。そのアカデミーの方の作品をご紹介いたします。『しあわせの隠れ場所』
夫と二人の子供を持つ、勝気な女性リー・アン。彼女はある雨の晩、傘もささずに歩く、一人の大柄な少年を見かける。感じるものがあったリー・アンはその少年、マイク・オアーを家に呼ぶ。行き場のない彼を世話するうちに、いつしか本当の子供のように愛し始めるリー・アン。また、マイクは学校のフットボール部で次第にその才能を開花させていく。
リー・アンはマイクを家にひきとった理由を、「キリスト教精神」と説明します。確かに聖書には「汝の隣人を愛せよ」とか「受けるより与える方が幸福である」といった言葉があります。しかし、わたしには単にそれだけではないように思えました。たぶん彼女はこの少年(青年?)の持つ暖かい人柄とか、彼がいかに愛情を欲しているかとか、そういったものを直感的に感じ取ったんじゃないかな、と。そして何より彼女自身が愛情の豊かな女性でなければ、いくら未成年とはいえ、見ず知らずの者を家に泊めたりはしないでしょう。
マイクが学校で適正を診断された時、「保護本能がずばぬけている」という結果が出ます。そう、「誰かを助けたい」あるいは「誰かを守りたい」と願うことは、一種の才能なのではないかと思います。
世の中には自分のモノを分けてでも、誰かが喜ぶところをみたい、と思う人がいます。一方でその感覚がなかなかわからない人もいる。自分のモノをわけてしまったら、それは自分にとって損にしかならないではないかと。
この辺はその人の生い立ちも大いに関係していると思われますが、やはりもって生まれた性分というものが重要なポイントのような気がします。またこの才能にも当然レベルの低い・高いがありまして、上級者になるとそれこそ自分のすべてをなげうってまで、他の誰かのために尽くそうとします。この映画は、そんな二つの大きな才能が奇跡的にめぐりあったお話と言えるでしょう。
「彼がわたしを幸せにしてくれている」と語るリー・アン。そしてマイクも一生懸命その愛情にこたえます。
前にもどこかで書きましたが、ワタクシ「他の誰かのために必死になってる姿」とか「やせ我慢して自分の感情を押し殺している姿」に弱いんですよね。この映画はそんな描写がてんこ盛りだったため、わたしの鼻水をいたく噴出させてくれました 以後、ネタバレ
「泊まる家はあるの?」と聞かれてありもしないのに「あります」と答えるマイク。マイクを怪しむ友人の言葉に憤然とするリー・アン。親しい友人から奇異の目で見られても、マイクの側へ勉強しにいくコリンズ。S.Jを心配してズタズタになった腕を気にも留めないマイク。ささいな行き違いから家を飛び出したマイクを、必死になって探すリー・アン。自分の「ママ」を侮辱されて鬼のような形相を浮かべるマイク。
そして別れの場面で、「じゃあね!」とつっけんどんに言ったあと、車の中でこっそりと泣いているリー・アン。
わたしには彼らのような才能はありません。その点から言えば限りなく凡才です。しかしそれゆえに努力して、なけなしの才能を育てなければいけないんだな、と思いました。まあいまのところやってることといったら、車道の真ん中で居座っているカエルを、脇によける程度のことですけんど。
この映画は実は見ようかどうか迷っていたのですが、ちょっとサンドラっぽい友人に「いいからゴチャゴチャ言わずに見とけ! ああ?」と半ば脅されるようにして見ました。でも、見て本当に良かったです。感謝の意味を込めて、これからはその友人のことを、こっそり心の中で「ママ」と呼ぶことにいたします
Comments
こんにちは(^^)
哀愁漂う後ろ姿かと思ったら、
にこやかな肉まんじゅうが可愛くって何か好き♪
リーアンの審美眼あっての美談。才能っていうのも分かる気がしますよ。
いろいろな勇気の結果結実した何か、という気がした成功例。
チャンスくらいは平等であってほしいですよね。
Posted by: たいむ | April 13, 2010 07:26 PM
>たいむさん
お返しありがとうございます

スポーツ漫画にありがちな「気は優しくて力持ち」タイプですね。実はわたしもかの作品は、アニメの冒頭数話をみたくらいなんですけど
チャンスといえば最後の方で語られるマイクの父親のことが印象的でした。「スポーツにとても秀でていた」「もし彼が良い教育を受けられていたなら」
それを考えると、いいひととめぐり合えるということは、本当に大きな「しやわせ」なんだなあ~と思います
Posted by: SGA屋伍一 | April 14, 2010 07:11 AM
あはは!サンドラっぽい友人がいるの?!(笑)
ママと呼ぶ、、、、笑えた〜
って笑うばかりの映画じゃないのが良かったですね。
>「彼がわたしを幸せにしてくれている」
ここは今聞いてもジーンとしちゃう。
何度も観たくなる作品。
サンドラの魅力も全開♪
Posted by: mig | April 15, 2010 11:07 AM
>migさん
おはよっす
今日も寒いっすね・・・
そう。わたしの周囲にいる女性はわたしよりも男らしい方ばっかりで・・・ なんでだろ?
本当にこの映画にはジョバジョバ泣かされましたけど、全体的にさらりとしていて、いかにも暑苦しく「さあ!泣いて!」という感じじゃないのが良かったです
サンドラさんの男っぷりには本当に感服させられました。そういえばわたし彼女の出てる映画って、『スピード』1・2くらいしか見てなかった(爆)
Posted by: SGA屋伍一 | April 16, 2010 07:41 AM
ちょっ・・・
そんなでっかいオヤジを産んだ覚えはないわ!(ぷんすか)
これなかなか良かったですよね。みんなイイ人ばっかりで、あったかい気持ちになれました。
そうそう、誰かのために必死になる、っていう強がりがいいんですよねー。
たまにはいいこというなあ(滂沱)
でもこの記事の絵の適当さがなかなか珍しいんですけど・・・時間がなかったのでしょうか(細かいツッコミ)
ところで、Gフォースすごい楽しそうでしたね!記事が面白かったですよ
Posted by: とらねこ | April 22, 2010 10:04 AM
>とらねこさん
おはよっす
やだなあ、あなたのことをそんな風に呼ぶわけないじゃないですか
マ・・・ マ・・・ マイフレンド!(うまく逃げた!)
ま、「ちょっとサンドラっぽい」ということで勘弁してください・・・
最近はいかに「手を抜くか」ということに腐心しておりますよ。でも意外と後姿って書くことが難しい、ということに今回気がつきました・・・
『Gフォース』は万人に進められる映画ではないけれど、とらねこさんだったらたぶん楽しめると思います。食欲もそそるはず
Posted by: SGA屋伍一 | April 23, 2010 07:57 AM
サンドラ姉さんというかサンドラ母さん、見事なまでのはまり役でしたねぇ。オスカーも文句なしです。もちろんサンドラは最高なんですが、目立たないけどパパさんが凄く好きなんですよ。こっそり緊急連絡先をかえてて、リー・アンが「だから好き!」なんて所が凄く素敵で。^^
「タマネギをむくようにな!」って再三マイケルにもリー・アンにも言うけど、決して押し付けがましくないんですよね。パパさんあってビッグママだったと思います。
Posted by: KLY | June 01, 2010 12:01 AM
>KLYさん
おいでいただきまことにありがとうございます
気がつけばキャメロン・ディアスもサンドラも、でかい子供のいるお母さんが普通に似合うようになってしまいましたねえ(笑)
名演に舌を巻きながらも、青春時代彼女らがアイドルだったことを思うとちょっとさびしい気分も・・・・
パパさんもナイスでしたね。マイクのポジション(もう名前忘れた・・・)は確かスローする選手を地道にガードするような役割でしたっけ。主人公一家ではちょうどパパさんがそんなポジションだったのかもしれません
お話がお話だけに『私の中のあなた』ほどは日が当たりませんでしたが、おっしゃるようにこのパパあってのリー・アンさんだったと思います
Posted by: SGA屋伍一 | June 01, 2010 07:30 AM
おおっ我が愛しのキンボーヤ
私のこともママとお呼び
ほんとツボシーンが同じで(もしや万国共通?)
もうあなたを離さないわっ。
私も、、特別な才能はないけど、いくらかでも自分也の器で貢献でき、役に立てることができるのなら生まれてきた理由はあるのかなあと日々自問自答しています。どんな心が荒んだひとでも、この作品をみたら
素直に自分に問いかけられるような気持ちになるのではないでしょうか。
正面イラスト、似てねーー
Posted by: hino | September 21, 2010 12:07 PM
>hinoさん
家なきんす子~ マミー・・・ マミーと呼んでいいのね? とりあえずボク、マミーが作ってくれたあったかいお味噌汁が飲みたいな!
アホはこれくらいにして
そういえばhinoさんはもとバリバリの体育会系でございましたね。そういう点ではリー・アンの体育会系スタイルは、大いに共感を得るところであったでしょう
リー・アンさんのようにてらいなく、全ての人にわけへだてなく暖かい手をさしのべられたらいいですよね。でもなかなかむずかしいんだ、これが(ダメじゃん!)
えー、でもまあ、少しでも努力していきたいものです
最後の絵は実は他の漫画のキャラクター(笑)。『アイシールド21』ってお嬢さんたちだったら知ってるかも?
Posted by: SGA屋伍一 | September 21, 2010 09:08 PM