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April 27, 2010

パラノイア島奇談 マーティン・スコセッシ 『シャッター・アイランド』

100427_181440今回はネタ抜きで普通にあらすじを述べます

第二次大戦終了からほどなくしての時代。ディカプリオ演じる連邦捜査官テディは、とある女囚が失踪したとの報を受け、彼女が収監されていた孤島の刑務所へと向かう。そこは精神を病んだ犯罪者のみを扱う、特殊な監獄だった。さっそく女囚の捜索を始めるテディだが、彼は院長をはじめとする職員たちの態度に、不穏な何かを感じとる・・・

予告を見ますといかにも「この頭脳パズルが解けるかな~」というような問いかけがなされています。「スコセッシもそういう本格ミステリーみたいなの作るようになったんだな」と、ちと意外な気がしたのですが、本編見てみますと、実にスコセッシらしい作品でありました。これはゲーム的な推理ものというより、人間の悲しい性を描いた映画だと思います。

スコセッシは「狂気と孤独」を描く作家だと思っています。誰かと寄り添っていたい。誰かに自分の気持ちを知ってほしい。だけど結局人間は一人だ! 一人で生きて一人で死んでいくんじゃ!
そんなうめきが彼の作品には感じられます。わかってほしんだけど結局誰にもわかってもらえず、その結果主人公は狂気へと追い込まれていくわけです。

そしてスコセッシ作品を彩るもうひとつの重要なファクターとして、「暴力」があります。これまでの作品を見たところスコセッシは暴力を病的に描きながらも、あまり否定しているようには感じられませんでした。しかし今回のこの『シャッター・アイランド』では、原作のせいもあるでしょうけど、はっきりとした暴力への嫌悪が感じられました。これはもしかして新境地というやつでしょうか。

ただ「暴力を憂う」と言っても、イーストウッドのように高らかに「みんなで解決しよう!」と訴えるわけではありません。「暴力がいかんとは思ってるけど、人間はわかっちゃいてもやめられないのよ」 そんな明らかにあきらめきった姿勢。つくづくネガティブな方です。ついでに書くと「やばいのはわかってるんだけど、わし、やっぱ暴力好きやねん」というのがリドリー・スコット。なんも考えんと単純に「暴力最高! 超面白え!!」とはしゃいでるのがタランティーノやP.パーホーベンといったところでしょうか。

そんな重苦しいムードの映画ではありますが、島の奇妙な風景や、テディの見る幻想的なフラッシュバックなどがなかなか目を楽しませてくれます。ムダに豪華な所長の私室、断崖絶壁とその下に立つ怪しげな灯台。いかめしい特別棟と、その中に張り巡らされた通路、美しい庭でふらふらと漂い歩く囚人たち、焼け爛れたアパートに立ち尽くすテディとその妻、むごたらしくも静謐なダッハウの収容所・・・・ ざっと振り返っただけで、こんだけの印象的な場面・風景が思い出されます。そんなわけでこれからご覧になられる方たちは、推理クイズ云々よりも、こういう心象描写や、独特なヴィジュアルに注目して見てほしいです。

100427_181459「オチがすぐ読めた」とそれほど評判の芳しくない本作ですが、わが国ではドラえもんの6週連続トップを止めたという快挙を成し遂げました。日本人ってやっぱミステリーがすきなんですかねえ。そんなわけで『シャッター・アイランド』は現在全国で公開中。閉じ込められ系の映画ということで、『アリス』『第9地区』と見比べてみてもいいかも?

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Comments

こんばんは!

もうすぐGW。どこかへ行く予定はおありですか?
私はいつもこの時期
新学期疲れで寝込むので
今からそのつもりで何も予定を入れていません・・・(なんて後ろ向きな)
2・3日ぶっ通しで爆睡したいですね。

ということはさておき
この作品は面白かったですね~
謎解き,謎解きと煽ったわりには
やはり重厚かつ悲哀の溢れる人間ドラマの方が得意なスコセッシ。
久々に彼の会心作を観せてもらった気分です。
そうそう,孤島の精神病院という設定からして
私はとってもソソラレル作品でありました。
レオの演技もこれもハナマルものでしたね。

Posted by: なな | April 28, 2010 12:02 AM

ごぶさたしてます。スガーレディーさん。。。

>「オチがすぐ読めた」とそれほど評判の芳しくない本作ですが、

ブハハハハ。そうなのか!! ぜんぜん読めなかったぜ。。。びっくりして後輩にメールしちゃった自分が、はずかしーぜ。。。

ボクも今回はおもしろかったですね。このコンビにはずーっとガッカリさせられてきただけに。。。

ボクのいちばん好きなシーンは、デカプリオさんがあの妻から贈られたダサイ柄のネクタイで、所長の車を爆破するとこです。。。

スコセッシは『タクシードライバー』で終わってるというのがボクの意見で、、、いや、あんなすごいのをキャリアの早めに作っちゃうと、もうアガリじゃないですか。それでもがんばってるなぁ、、、『タクシー~』が越えられるわけもないのに、、、

あとはひたすら洗練していくという方向で『グッドフェローズ』なんかは最高によかったですけれどね。他は『最後の誘惑』とか、音楽映画とかで奇をてらうくらいしかやることはねーだろう。。。

2000年に入ってからの3作は、黒澤の『乱』とか『影武者』とか、あのへんに通ずる巨匠のつまらなさが横溢していただけに、今回はちょっと若返っていたようなバカバカしいまでのフレッシュさがあったよ。

冒頭の船で乗り込むシーンが、いまどきスクリーンプロセスで撮ってあったそうなのだが、あれは実際にあったシーンなのだろうか。デカプーが見た幻想のシーンなのだろうか。だってデカプーは島から出ていないのだから。。。

Posted by: 裏島太郎。。。 | April 28, 2010 03:45 AM

>ななさん

こんばんはです 年度のはじめは大変ですよね。お疲れ様です
わたしは例によって映画みたり、お友達に会いに出かけたりしますです。普通だ(笑)

ななさんはスコセッシには思い入れがあるようですね。実はわたしはそんなに見てる方ではなかったりするのですが
彼が描くところの孤独感とか焦燥感にはなんか他人事じゃないというか、身につまされるものがあるんですよね・・・

この映画の舞台のいかめしさは、『薔薇の名前』や『クリムゾン・リバー』の僧院を思わせるものがありました。人里はなれたところにある様式美の世界、わたしも好きです

レオさまは最近はしかめっ面の役ばっかりですが(笑)、いい役者になりましたね。『インセプション』にも期待です

Posted by: SGA屋伍一 | April 28, 2010 06:50 PM

>裏島太郎。。。さま

はじめまして・・・・ って、あんた、裏山さんでしょー!
結局見にいったのね・・・ 原作先に読んでるにも関わらず偉えよ、裏山さん

ごめん。実はわたしは最近のデカプリコと組んでる方がなじみがあったりします。特に『アビエイター』はけっこう好き。デカくんがひきこもって尿をえんえんと空き瓶にコレクトするとこなんて、「ここまでやるか」と思いましたよ。かっこいい飛行機もいっぱい出てきたしね。『ディパーテッド』はけっこう頭に来た(笑)

『タクシードライバー』は普通に面白く見たけど、なんであんなに高評価なのか、よくわからなかったりします。今度裏山さん詳しくどこがすごいのか解説してくんないかな。。。
あとデカプーがなぜ車を派手にぶっ壊したのかもよくわからない。。。 あれじゃみんなに自分の位置を報せるようなもんじゃないかな。。。

最初のシーンは幻想とも考えられるけど、寝ている間に乗せられて、実は島の近海をぐるっとひとまわりしてきただけとか。今思いつきましたよ。。。 みょ~ん

Posted by: SGA屋伍一 | April 28, 2010 06:59 PM

み~ん。。。『アビエイター』の潔癖症はかなりおもしろかったけど、長いよね。ダニエル・デイ=ルイスの2000年代がつまんないのかもしれない(ゼアウィルビーブラ、NINE)。。。

ボクもタクシードライバーの高評価はよくわかんないんですよ(キネ旬のオールタイムベストで、ベスト10入りですよ)。プライベートな思い入れならたくさん語れるのだが、、、と、誰もが個人的に思っているんじゃないのだろうか。

社会が高度に文明化していく段階で、ああいう順応できずにあぶれてしまう人々は出てくるわけで、そうした無力でちっぽけな弱者が突如、大きく世の中に復讐できてしまうテロの恐怖ですよね、それを描いているはずが、ただ偶然による結果論で最後、奇跡的な英雄譚にすり替わっているあたりが、泣けるじゃないですか。。。

デカプーは車じゃなくて、ネクタイをふっ飛ばしたかったんでしょう。。。柄が死ぬほどダサイから。。。さもなくば『ノーカントリー』のマネか(アカデミー賞ねらいで)。。。

Posted by: 浦島キャンディー | April 28, 2010 10:57 PM

>浦島キャンディーさま

はじめまして。ってあんた(略)

確かに『アビエイター』はちょっと長かったっすね。でも人の半生をコンパクトにまとめるのはむずかしいと思うでやんすよ。『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』もまあまあ面白かったけど、この映画も長かったよね・・・ そもそもタイトルが長いっす む~ん。。。

『タクシードライバー』は発表当時は斬新だったんだろうけど、あとからいろいろフォロー作品が出来ちゃったんで、今見ると新鮮さが感じられないのかもしれない。とも思ったりして。。。
でもきっといつの時代にもどこの国にもああいう孤独感や狂気を抱えてる人がいるんでしょうね。。。 だから世代や国境を越えて幅広い共感を得ているんでしょうなあ。に~ん。。。なんかわたしもまた見たくなってきましたよ。。。

>(アカデミー賞ねらいで)。。。

そいつは盲点だった(笑) もう! スコセッ氏ったよくばりなんだから!

Posted by: SGA屋伍一 | April 29, 2010 07:49 AM

おはよ、東京は晴れですわ

>なんも考えんと単純に「暴力最高! 超面白え!!」とはしゃいでるのがタランティーノやP.パーホーベンといったところでしょうか。

ロドリゲスも入れてあげて(笑)
シャッターアイランドに関しては皆が口を揃えて宣伝が大袈裟!っていってるよね。
最近の宣伝方法はどうかと実際思うわ〜。

今日のエビちゃんの握手会行けずほんとにザンネン!
でもしっかりエビカレー食べたわ♪

Posted by: mig | April 29, 2010 10:43 AM

>migさん

こんちはっす。お返しありがとさんです 午後になってこちらもいい天気になってきました。でももう車を洗う気力がうせた・・・

ロドリゲスもそうですね! ただなぜだろう。彼は暴力も好きだけど、なんとなくそれ以上にオモチャいじりとか怪人が好きなような気がします。だからわたしの中ではポール・W・S・アンダーソンにかなり近い位置づけ

最近感心した予告・宣伝ってなにがあったかなあ・・・ 「見せすぎないでー」というのはいっぱいあるけど・・・ あ、そちらでも書いたけど『第9地区』でモザイクかけてたのはナイスアイデアだと思いました(笑)

migさんもマメに料理作ってるよね~ わたしはカレーを作るときはポークと決めてます

Posted by: SGA屋伍一 | April 29, 2010 04:14 PM

今日から世の中ゴールデンウィーク?
しかしいつもと全く変わらずノープランな私です。
昼間っからSGAさんちにお邪魔してるし。

なんとなく思いつきで読んだ原作ですが、読んだ直後はそれほどでもなかったのに
なぜかいつまでも心に残っています。
いつもならどんどん内容忘れてくのに

最初、例の的外れな予告を観たときは
まさか監督がスコセッシとは思わなかったんだけど
観てみてスコセッシで正解と思いました。
と言っても私もたいして観てるわけでもないですが・・・
やっぱりいちばん好きなのは結局「タクシードライバー」かな。。。

オジサンぽくなってきているディカプリオにも好感もってるので
「インセプション」にも期待してます!

Posted by: kenko | April 29, 2010 05:24 PM

>kenkoさん

おはよーさんです。おや? てっきり旦那さんとどこかにご旅行に行かれてるものとばかり。それとも週末からでしょうか

わたしが前に読んだレヘイン作品はそんなにあとをひく感じではなかったのですが、こちらの原作はかなり尾をひきそうですね・・・
シリーズ作品と単発作品の違いでしょうか

『タクシードライバー』はやっぱり支持者が多いですね。わたしが強烈に覚えてるのは若デニーロのモヒカン頭かなあ。あと幾らなんでも最初のデートでポルノ映画館はまずいよな~とか(笑)

『インセプション』はなんだか『マトリックス』を思い出させるヴィジュアルですね。たぶんそちらでもデカプリオはずっとしかめっ面でしょうね・・・

Posted by: SGA屋伍一 | April 30, 2010 07:32 AM

SGAさんこんばんわ♪TB&コメント有難うございました♪

>推理クイズ云々よりも、こういう心象描写や、独特なヴィジュアルに注目して見てほしいです。

確かに本編でのテディの従軍時代のシーンや燃え盛るアパートで妻がボロボロに崩れていく場面などは、終始どんよりしてる島の雰囲気とはまた違った独特の映像が多く、今思うと結構印象的ですよねぇ。
・・でも公開前から『いくつ謎が解ける?』なんて意味深に煽るもんですから、その独特なヴィジュアルにも『含み』があるんじゃないかと必要以上に勘繰ってたので、正直自分はそういった映像に注目してる余裕が無かったかもしれませんね~?(冒頭でテディがなんでオエオエ~と気持ち悪くなってんのか?なんて無駄なとこまで疑問に感じてたくらいですからっ^^;)

スコセッシ作品としては自分も『アビエイター』よりちょっと下。そしてデニス・ルヘインの映画化作品の中では以前観た『ゴーン・ベイビー・ゴーン』よりも下で、全体的にやっぱり低めの評価ですね。
それもこれも全部過剰な宣伝が悪いんだ~!!と憤りたくなるとこもありますが、その宣伝に乗せられて観て騙された自分が後からあーだこーだ言っても説得力ゼロンなので、結果『つまらなくはないんだけど・・・・』みたいな濁った表現しか出来ない自分ですたっ

Posted by: メビウス | May 02, 2010 01:34 AM

>メビウスさん

おはようございます。お返しありがとうございます
実は例のドイツ兵がバタバタ撃たれるシーンは、「おー、(カメラが)レールの上を走ってるなー」なんて思っていたわたし・・・ なんてひどいヤツだ・・・

やはりこの映画、例の思わせぶりな宣伝のせいでかなり身構えて観てしまった方が多いようですね
そんなわけで第一週は「肩透かし」的な意見が多かったのですが、面白いことに二週・三週と経つにつれ「これだってけっこういいんじゃない?」という意見が増えてきたような気がします
こういうことってあんましないような気がします

冒頭のオエオエのシーンもなんかそれなりの意味がありそうな。彼なりに状況に違和感を感じていて、それがああいう形になって表れていた、とか

レヘイン作品は『ミスティック・リバー』も有名ですよね。しかしなんたることかこの作品を未だに見ていないわたし。見ねば

Posted by: SGA屋伍一 | May 03, 2010 07:39 AM

お邪魔します~♪

この映画って、宣伝が良くなかったですよね~
謎解いたるで~!って勢いで鑑賞された方は肩透かしかもしれません。
それよりも哀しい人間ドラマが凄く上手く描かれているなぁ~と思いました。
実は原作はイマイチだった私ですが(汗)、映画の方が面白く感じたんです。センスも良かったし。ラストも余韻があって良かった。

レオ君もねぇ~テディ役にピッタリだったなぁ~
本当は昔の華奢で可愛いレオ君が好きなんだけど(照)、これからも地味に応援しようっと♪

Posted by: 由香 | May 06, 2010 11:44 PM

>由香さん

こちらにもサンクスです
やっぱりそう思いますよね。不可能犯罪。曰くありげな孤島。そしてもったいぶった前説。当然デカプリオが金田一少年ばりに「謎はすべて解けた・・・」と解決してくれるものだとばかり(笑)

そうそう、わたし由香さんの原作レビュー読んでたんですよね。「イマイチだった」という評価だけ覚えてました(すいません・・・)
大概小説の映画化というのは原作に及ばないものですが、「映画のほうが良かった」と言わしめるとは、さすがスコセッシと言うべきでしょうか

レオ君・・・ そう、最近はあまり「様」とは呼ばれなくなりましたね。一時期「オレ様」みたいな発言が多かったこともありましたが、最近はだいぶ落ち着いてきて成長したな~と

Posted by: SGA屋伍一 | May 10, 2010 06:51 PM

こんばんわ! TB&コメントありがとうございました!


なるほど! スコセッシは「暴力がいかんとは思ってるけど、人間はわかっちゃいてもやめられないのよ」 と思っているんですね(笑)

この映画の画が好きでした。
ヒッチコックっぽい"特撮"って感じの作りが、クラシカルな雰囲気をかもし出していました。
この時代のファッションとか好きなので、このクラシカルな感じは好きです。

Posted by: maru♪ | May 13, 2010 01:36 AM

>maru♪さん

おはようございます。お返しありがとうございます

>なるほど! スコセッシは「暴力がいかんとは思ってるけど、人間はわかっちゃいてもやめられないのよ」 と思っているんですね(笑)

た・・・たぶん・・・(おーい)
すいません。わたし適当な思いつきを書いてよく「全然ちゃうよ」とか言われたりするので・・・
この映画に関してはたぶん間違ってないと思うのですが。原作者のレヘイン氏も不条理な暴力をテーマにした作品をずっと書いておられるようですね

わたしも映画を見ていて一昔前の町並み・様式が出てくると、内容にかかわりなくうれしくなってしまいますね
最近では『ウルフマン』『シャーロック・ホームズ』『地下鉄のザジ』などで楽しませてもらいました

Posted by: SGA屋伍一 | May 13, 2010 07:33 AM

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