キャロラインは洋子 ヘンリー・セリック 『コララインとボタンの魔女』
人形や粘土を少しずつ動かしてコマ撮りするストップモーションアニメ。本当に、恐ろしく気の遠くなるような作業です・・・ 現在粘土を使う「クレイアニメ」の第一人者がアードマン・スタジオの代表ニック・パークなら、人形アニメの第一人者は恐らく『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』のヘンリー・セリックでしょう。そのセリック久々の新作がついに日本でも公開となりました。『コララインと魔女のボタン』です。
アメリカのとある田舎に引っ越してきた少女コララライン。だが屋敷はなんだか陰気な上に、両親は仕事にばかりかまけていて、彼女は苛立ちをつのらせる。そんなある日、コララインは家の中に不思議な小さな扉を見つける。扉の向こうへ出てみると、なんとそこには別人のように愉快で優しいパパとママがいた。家もお庭も素敵なものに変わっていて、大喜びのコラライン。だがひとつ気になるのは、そこにいる人々の目がなぜか「ボタン」であるということだった・・・
暗い空の下の不気味な屋敷や、閉塞的なムード、うろつきまわる黒猫はなんだかポーの作品世界を連想させます。さらにアメリカというよりは、ヨーロッパの民話を思い出させるようなところもあり。
一方でセリックらしいハチャメチャ、かつシュールな要素もたくさんあります。その最たるものが、この「目がボタン」というアイデア。
皆さんは目がボタンの人を見たことはありますか? わたしは今回初めて見ましたが、かなり怖いです。それにしてもなんで目がボタンでなければならないんだろう? ややこしい理屈を少々考えたのですが、忘れることにします。このわけわかんねーところがこのアニメの魅力であると思うので。
ただ、『スペル』でもボタンがやけに強調されていましたよね。ボタンと魔女には何か深い関わりでもあるんですかね~
それはともかく、このアニメ、わたしにはツボなところが数多くありました。まず舞台となるヘンテコハウス。秘密の扉のほかにも屋根裏があったり地下室があったり、探検欲をかきたてられます。メカ好き・ムシ好き・ネコ好きの心をくすぐる要素も多数。特にあまりアメリカ映画では「いいもん」に描かれないネコが、ここではすごいいい役もらっていて、嬉しくなってしまいました。怖いお話とは裏腹の優しげなメイン楽曲も良かったです。
物語の構成もなかなか凝っていました。「起承転結」」という言葉がありますが、この映画は「起承転転転転・・・」という感じ。「これで解決!」と思いきや、そうは問屋が下ろさず・・・という展開が何度も繰り返されます。ヒロインのコララインって、最初はあんまし可愛いとは思えなかったんですが、あきらめずにがんばる姿を見ているうちに、いつしか彼女を応援している自分がいました
さて、セリック監督といえば、やはり有名なのは『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』。先日とあるインタビューで、彼は『ナイトメア~』についてこんなことを語っていました。「当時は客なんか一人も来なくたっていいと思いながら作っていた」 ・・・・普通そういうオナ・・・いや、「オレだけが楽しければそれでいいんじゃ!」的な映画というのは、独りよがりな駄作になるものです。しかしそんな姿勢で作ったにも関わらず、あんだけたくさんのファンを生み出したというのはある意味すごい(笑) わたしは第二作の『ジャイアント・ピーチ』の方が好きだったりしますけどね。
この『コラライン』も、作り手が本当に楽しんで作ってるのがよくわかる作品です。
そのセリック監督、ウェス・アンダーソン氏の新作『Fantastic Mr. Fox』にも参加する予定だったそうですが、事情でかなわなかったとのこと。こちらは『チャーリーとチョコレート工場』『ジャイアント・ピーチ』のロアルド・ダール原作で、キツネのお父さんが主人公の話。スティーブン・キングは昨年のベストの中で、「どっちかといえば大人向けのアニメ」と語ってましたが・・・・ はてさてどんな作品なのやら。とにかく見てみないことには! 早いトコ、日本公開決めてくださいな~
Comments
これ、、アメリカではかなり前に公開されていたのに、、なかなか日本にはこないでジリジリとしていたんですよ~
これ 本当に怖いですよね!
私のすぐ近くで見ていたお子様、、泣いてましたよ、、ラストの方、、。
でも、こういうファンタジーが好きな私には溜まらなくツボな映画でした!
黒猫がまた 可愛くないんですがいい味だしているんですよね!
またコララインが魔女から逃げるために猫を●●するシーンも好きでした~!
Posted by: コブタです~ | March 11, 2010 08:58 PM
伍一さん
こんにちわ~
ボタンの目って意外とハマってる(というか変じゃないんだよね 笑)
よく考えたな~
この世界観は嫌いじゃないんだけど、どうもバートンの
コープスブライドもナイトメアも、アニメーションにははまり切れない私。
でも
Fantastic Mr. Foxはなんか楽しみ☆
公開あるのか微妙だよねーほんと。
Posted by: mig | March 12, 2010 05:13 PM
>コブタさん
こんばんは! ご来訪ありがとうございます
そうそう、コブタさん公開が決まる前からプッシュされてましたよね。無事公開されて(しかも全国規模で)大変めでたい
わたしが見たときはレイトショーだったので、大人しかいませんでした(笑) 最近子供が泣いてた映画というと、『クリスマスキャロル』かなあ
黒猫さん、よかったですよね。吹替えでは劇団ひとりが声をあててたんですが、これがまたかっこよくて! 投げられても根に持たないところがまたかっこいいっす(笑)
Posted by: SGA屋伍一 | March 12, 2010 08:25 PM
>migさん
こんばんは! そしておかえりなさいです
目がボタンというのは原作のアメコミ作家ニール・ゲイマンのアイデアでしょうね。『スターダスト』を思い出してもらえたらわかると思うんですが、ちょっと変な人なんですよ
ナイトメアもあんまりはまれなかったんだ。そういえばどこかで、バートン直筆のジャック・スケリントンを見たっけなあ。あれはどこだったろう(笑)
Fantastic Mr. Fox、なんとかなりませんかねー コララインや『9』も決定したんだから、こっちも・・・と期待してるんですが
Posted by: SGA屋伍一 | March 12, 2010 08:29 PM
おはようございます
花粉症で、鼻水が洪水のように出まくっている由香です
この状態で今週はミレニアム~を観に行こうかと・・・
コララインがイマイチ可愛く見えなかったですね~(汗)
だけど、全体的な世界観がスゴク好きでした。舞台セットや色合いや小物がイチイチ可愛かったわ~
>作り手が本当に楽しんで作ってるのがよくわかる作品です
そうなんですよね。「凝ってるなぁ~」と思うたびに、作り手の愛情をビンビン感じました。それが自己満足で終わらずに観る者を楽しませてくれるってスゴイですね!
Posted by: 由香 | March 15, 2010 08:29 AM
>由香さん
こんばんは! お返しありがとうございます
やはり花粉と格闘中でございましたか・・・ お互辛いですけど、耐えるほかありませんね
わたしは『ミレニアム』は来月三島で見るかも。今月ほかにも見たいものがいっぱいあるので
小道具?でいうと、コララインがいざという時にかぶる学生帽のような帽子がかわいく、かつ個性的で気にってました。由香さんはコララインがあまりかわいく見えなかったようだけど
あと『ラブリーボーン』でも出てきましたが、こちらでもスノードームが小道具として使われたりしてましたね。最近はやってるんでしょうか。スノードーム
自分の趣味ばかりに突っ走るのもどうかとは思いますが(笑)、客のことばかり考えて作られた映画というのも、きっとあんまり面白くないと思うんですよね。よい作品というのは、そのバランスがよく保たれたものだと思います
ただこういう趣味全開の映画でもたまに熱烈な支持を受けることもありますから、世の中ってやつはよくわからんもんです
Posted by: SGA屋伍一 | March 15, 2010 08:55 PM
上映終了してけっこう経ちますが、ようやく書きました!
今日まとめていっぱい書いたので、明日以降「シャーロックホームズ」などにもおじゃまします。
目がボタンって思いつきそうでなかなか思いつかないアイデアですよね〜
ストップモーションアニメという気の遠くなるような手法で
こんなドリーミーな物語を作り上げるヘンリー・セリックさんを
尊敬します。
あ、でも『ジャイアントピーチ』は観てないんだった・・・
天使と悪魔のワンコもかわいかったけど、ネコ好きとしてはネコさんが活躍するお話はそれだけでポイント高いです。
コララインのスノードームがあったらほしいな。
Posted by: kenko | March 24, 2010 07:10 PM
>kenkoさん
おはようございます! あら、これもう終っちゃったんですか・・・ けっこう上映期間短かったな・・・
目がボタンというアイデア、すごいですよね。これはやっぱり人形アニメだからできるアートなのだと思います。これを実写でやるのは、どうにも無理がありますからね。あるいは瞳の部分だけボタンに書き換えちゃえばいいのか?
『ジャイアント・ピーチ』って『ナイトメア~』に比べると、あまり語られることのない作品だなあ(笑) ぜひこちらも見てセリック氏の人形アニメをコンプリートされてください。あと実写と人形が組み合わさった『モンキー・ボーン』というのがあるそうですけど、そちらはわたしも未見です
あと猫も本当によかったっす。どこにでもいる野良猫でもあり、ただ一人(一匹)あちらとこちらを自由に往復できる存在でもある。そんなところが実にかっこいい。そういえば『屋根裏のポムネンカ』にも似た描写があったけど、あっちの猫さんはやっぱり悪者でした(笑)
Posted by: SGA屋伍一 | March 26, 2010 07:34 AM