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March 26, 2010

光を慕いて アンジェロ・ロンゴーニ 『カラヴァッジョ 天才画家の光と影』

100326_182452_2今を去ること400年前、イタリアはローマにカラヴァッジョという名の画家がおりました。その才能は当時の多くの人々の目をひきつけ、一時期は枢機卿自ら彼を援助したほどでした。しかし持ち前の激しい気性の故に、カラヴァッジョは度々周囲と衝突します。やがてその気性が、彼を窮地へと追いやっていくのですが・・・ これはそんな天才画家の鮮烈な生涯を描いた映画。ちなみに彼のフルネームはミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ(長)。最初に「ミケランジェロ」とあるので、「ああ、あのダビデ像を作ったダ・ヴィンチのライバルか!」と思いましたが、別人です。あと通り名の「カラヴァッジョ」は彼の名前というより、出身地の名前だそうです。「ダ・ヴィンチ」が「ヴィンチ村の」という意味であるのと一緒ですね。

さてこの映画、画家としての、そして人間としてのカラヴァッジョについて多くのことを教えてくれました。まず画家としての彼は、暗い中に差し込む光の描写にこだわったようです。そして映画では彼が生涯を通じて絶えず「死」を意識していたことも語られていました。
幼い頃ペストの大流行を経験した彼にとって、死はいつも身近なものでした。そんな彼にとって救いとなったのは、愛した女性たちであり、芸術であったに違いありません。そうしたものに触れることで、彼は初めて自分の「生」を実感できたのでしょう。それらはまさしく彼にとって、闇の中の光であったのだと思います。一方で彼は刑場に足を運んだり、ヤクザなやつらと剣を交えることによって、死の淵を覗き込んだりもします。
また、当時モデルを使うことは低レベルな書き方とされていたようですが、カラヴァッジョは徹底してモデルを使い、リアルな絵を描くことにこだわりました。「君のこの肌の輝きや透明感を表現できていない」と嘆くシーンがありましたが、彼が目指していたものは限りなく写真に近いものだったのかもしれません。

そしてさらに興味深いのが、彼の人間性。芸術家には激しい気性の人は珍しくありませんが、常に剣を持ち歩いていて、時にはそいつを抜いてチャンバラまでやっていた、なんて画家はちょっと聞いたことがありません。
ただ彼が怒る理由はそれなりに筋が通っていて、それは自分の大切なものを侮辱されたり、愛する人を傷つけられたりした時でした。そんな風にどこまでも一本気で、ブレーキのついていない超特急のような性分ゆえか、彼は非常に多くの人から愛されます。不祥事を起こしては助けてもらい、不祥事を起こしては助けてもらい・・・と常にこの繰り返し。すごい才能と大きな欠点を持った人間というのは、かように「ほうっておけない」という気持ちをかきたてるものなのかもしれませんね。

カラヴァッジョとからむことになる女性たちが、またそれぞれに強い印象を残します。彼を母のように見守り続けたコロンナ侯爵夫人。田舎から出てきて高級娼婦にまで上り詰めるフィリデや、傷ついたカラヴァッジョを優しく慰める街の娘レナ。
そして父殺しの嫌疑をかけられ、断頭台の露と消えるベアトリーチェ。カラヴァッジョは彼女とたった一度しか会っていないのに、それでも彼女を侮辱する言葉を聞いて、烈火のごとく憤ります。ほんまに気の短い・・・と思う反面、たったそれだけの縁の女のために、そこまで怒ることのできる彼が、なんだかいとおしくも思えました(ホモじゃないですけど)。

100326_182517伝記映画ゆえにきれいに起承転結、といかないのが厳しいところではありましたが、それでもとても見ごたえのある映画でございました。
そんな『カラヴァッジョ 天才画家の光と影』は、レビューがもたくさしてるうちに、都市部では上映期間残りわずかとなってしまいました  『レンブラントの夜警』『宮廷画家ゴヤは見た』なんかが好きな方は、是非に。

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Comments

どもです。

結構ミニシアター系観てるんですね! 何となくアニメ系かなーと
思ってたんですけどー。
こんなに地味な作品もちゃんとフォローしてるなんて♪
とてもいいことです~。
ではまた!

Posted by: rose_chocolat | May 09, 2010 08:16 AM

>rose_chocolatさん

ども! お返事遅れてすいません
なにか誤解があったようですが・・・ わたしは芸術をこよなく愛する男ですよ? アニメ? まあ好きといえば好きですが・・・

世間の扱いは確かに地味ですが、内容・映像はなかなかはじけていて見ごたえがありましたよ。 わたしもあとでお邪魔しますね!

Posted by: SGA屋伍一 | May 10, 2010 07:36 PM

何か、TBいっぱいつけてるんだけど、
最初の3つしか入らないみたい(泣
スパムと思われてるかもなあ。。

Posted by: rose_chocolat | May 10, 2010 09:49 PM

>rose_chocolatさん

すいませんー スパムの方に流れてたのでサルベージしておきました
KLYさんもおっしゃってましたが、ココログはスパムの判定が本当に適当なんですよ。明日ゆっくり読ませていただきます

Posted by: SGA屋伍一 | May 10, 2010 10:42 PM

こんばんは^^
観てる人が少ないんですよねぇ、この作品。
私はこの手の伝記モノ、コスチュームモノ大好きなんで欠かせませ
ん。この映画もカラヴァッジョの描く絵の如く光と陰の使い方がとて
も上手い作品だと感じました。

Posted by: KLY | May 14, 2010 12:04 AM

>KLYさん

こんばんは。返事が遅れてすいません
これ、確か東京でも一館しかかかってないんじゃなかったかなあ。その劇場では連日盛況だったようですけど、それではどうしても見る人が限られますよね。

わたしもこのくらいの時代のお話好きです。宮殿ものよりも、市井を主な舞台にした作品に惹かれますね。

>この映画もカラヴァッジョの描く絵の如く光と陰の使い方がとて
も上手い作品だと感じました

天窓からヒロインに光が降り注いで、陰影がくっきり浮かび上がるシーンが特に印象的でした

Posted by: SGA屋伍一 | May 15, 2010 08:28 PM

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