光なし ジョセフ・コンラッド 『闇の奥』
趣味?の読書コーナー。今回は1902年に発表されたイギリス文学の傑作『闇の奥』を紹介いたします。ていうか、また『闇』ですか!
船乗りのマーロウは、出港したばかりの船の上で、仲間たちに奇妙な話を語る。まだ駆け出しだったころ、彼はアフリカの奥地で、絶大な影響力を持つクルツという男の噂を聞く。象牙の交易のため、マーロウはクルツに会いに行くことになる。道中幾つかの困難を経て、ついにマーロウはその男と対面するのだが・・・
まず、この本を読もうと思った経緯から。昨年ジャック・ロンドンにどっぷりとはまり、入手しやすいものは大体読んでしまったワタクシ。で、ほかに似たようなものはないかな・・・と、『白い牙』『野性の呼び声』を出してる光文社古典新訳文庫のラインナップを眺めていたところ、この本を見つけたのでした。
タイトルは折に触れ聞いたことがありました。大学時代、英国文学史の授業で先生が絶賛していたり、キューブリックの名作『地獄の黙示録』の原案と何かで聞いたり、はたまた最近の『キングコング』で船乗りの少年が熱心に読んでいたり。
そんなわけで、前々から興味はあったのでした。きっとロンドンばりのハードでたくましい、海の男たちの物語に違いない!と意気込んで望んだのですが。が・・・・・
これ、はっきり言って難しかった・・・・(笑)
いや、ストーリーは上に書いてあるように極めてシンプルなんですけどね。一言でいや語り手のマーロウが、ジャングルの奥地に謎の男を尋ねていく話。脇筋はほとんどなく(なんせ全部で200ページ弱)、本当にただそれだけ。
難しいのは、「果たしてこの小説が何を言いたいのか?」ということ。それを考え出すと、それこそジャングルの奥地に迷い込むような錯覚を覚えます。これに対しては今までも様々な議論がなされてきたようで、お偉い先生の中にも「なんも意味なんてねーよ」という人もいれば、「当時の植民地支配を風刺しているのだ」なんて人もいたり。極論すれば、話の意味は個々がそれぞれに何かしら見出せればそれでいいのかもしれません。
わたしとしては、ひとつの探求を描いたお話だと感じました。得体のしれない謎を知った時、人は恐怖を感じながらも、その正体を見極めてみたいと思うものです。しかしいざその謎に迫ってみると、さらに深い謎がその後に続いていたり・・・というような。わたしが言えるのはこの程度です。お偉い先生方、どうぞ笑ってやってください。
単純に当時のアフリカの様子を知るための、探検物語として楽しむこともできます。その場の空気が匂ってくるようなねちっこいタッチは、作者のコンラッドが実際に船乗りとして働いていた経験により培われたものでしょう。全体としてはフィクションであるものの、そこに書かれていることの多くは、100年前のアフリカの真実の姿なのだと思います。
現代は『Heart Of Darkness』。Heartはご存知のように心臓を表す語ですが、「中心」という意味で使われることもあるようで。そこを「奥」としたあたり、最初の訳者さんのセンスを感じます。たしかにこの人外魔境へズンズンとわけいっていく感じは、「心臓」より「中心」より「奥」という言葉が一番ぴったりくるような気がします。
読書コーナー、次は本当~~~に久々の『指輪物語』を扱う予定。中つ国もまたなかなかに険しいところでありまして。
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