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March 14, 2010

ド根性なしガエル カルロス・キュアロン 『ルドandクルシ』

100314_190014さー、いよいよワールドカップも近づいてきましたね。そこで今日はこんな風変わりなサッカー映画を。三人の名監督がプロデューサーに名を連ねている『ルドandクルシ』、ご紹介します。

そこはメキシコのバナナ園。後に「ルド」「クルシ」と呼ばれるべトとタトの兄弟は、時にはケンカもしながらも、一緒に野良仕事に精を出していました。そんなある日、彼らの草サッカーの模様を見て、一人のスカウトマンが声をかけます。「君らには才能がある」と。いろいろあってプロ選手になってしまう兄弟(強引だなあ)。ただ実はべトはサッカーよりもギャンブルに目がなく、タトは歌手になりたいという野望を持っていたのでした。

宣伝の方は「ガエル・ガルシア・ベルナルとディエゴ・ルナのスター競演!」ということで売り出しているようですが、わたくし彼らは「『バベル』にちょこっと出てたなあ」というくらいの印象しかなく。単に仲の微妙な兄弟のコメディって面白そう!という動機で見にいきました。はっきり言ってしまうとちょうど『ダージリン急行』のようなノリを期待して。
あとサッカーがモチーフだったので、手に汗握るプレイのシーンなど拝めるかな、と。

しかしこの二番目の期待は早々にあきらめねばなりませんでした。だって肝心のシュートシーンでガエルさんが画面に映ってないんだもん。
ま、こういう時はサッカーと同じで素早い気持ちの切り替えが必要です。スポ根ものとして見るのはやめよう! うっかりちゃっかりした人間ドラマとして楽しもう! そう自分に言い聞かせて(笑) その甲斐あってか、ルドとクルシの右往左往ぶりをかなり楽しむことができました。

いやー、しかしこのカルロス・キュアロンという方は非常に意地悪な人なんじゃないかなー 兄弟たちがうまくいったな、と思うと、すぐその前に落とし穴を用意するんですよね。ほんで落とし穴の大きさがだんだんスケールアップしていき・・・という展開。まあ穴に落っこちるのは兄弟たちにも責任があるわけですが。

彼らをそんなお笑い地獄に追い込んでいくスカウトマンの男が、とりわけ印象深かったですね。うまい言葉で誘っておいて、実は自分の利益しか考えていないあたり、まるでファウストをだまくらかすメフィストフェレスのよう。なんでもサッカーに例えた警句がまたお洒落です。ほとんど忘れてしまったのが悔しいところですが

わたしはこれを夢の裏面を描いた映画だと思いました。バブル華やかなりしころ、メディアはさかんに「夢」の素晴らしさを説きましたが、夢がかなっても本当に幸せな時というのは、案外あっと言う間だったりして。また夢をかなえたために高い代償を払わねばならなかったり。

兄弟の衝突と和解のドラマとしても見ることができます。なかなかそりの合わない二人が、経験と苦労を重ねることで、ようやく真の兄弟になれる・・・・ そんな話でもあるかと。

そんな人生の甘酸っぱいテーマが、『ダージリン』よりはややのんびりとしたムードで語られていきます。その総決算とも言えるのが、クライマックスにおける兄弟対決。喜べるはずなのに喜べない。やっちゃいけないのにやっちゃった。そんなよくある人生のひとコマに、笑いが止まりませんでした

100314_190103今回監督デビューを果たしたカルロス・キュアロン氏は『トゥモロー・ワールド』などで知られるアルフォンソ・キュアロン氏の弟さんだそうで。彼らもきっとよく兄弟ゲンカとかしたんでしょうねえ。自分の知り合いには「兄貴には腕力でかなわないからストーブをぶん投げた」という方もおられましたが・・・ ま、やっぱ「兄弟は仲良く」ということで。

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Comments

伍一さん
こんばんは。

これはよく出来たコメディだったと思うヨ〜
ガエル贔屓じゃなくて★
もちろん、こんなおバカでしょうもない兄弟が可愛くも
思えるんだけど、なかなかに面白くて満足♪

『ダージリン急行』もゆるゆるでキャストも良かったけど
あちらよりこっちが好きだなぁ。
DVDも買っちゃう♪

Posted by: mig | March 16, 2010 11:26 PM

>migさん

おはよっす。お返しありがとうございます

わたしはやっぱり『ダージリン』の方が好きかな~ でもこちらはこちらで面白かったですよ
明らかに笑いを取ろうとする、そういうギャグってほとんどなかったと思うんだけど、なぜかそこはかとなく笑えるというか

ところであの二人、反省してると思います? わたしは「実はまだ懲りてないんじゃ・・・」という疑いを捨てきれません(笑)

あと関係ないけど、こないだ『ズーランダー』観ててベンとオーウェンの仲良しっぷりに和みました~

Posted by: SGA屋伍一 | March 17, 2010 07:01 AM

そっか、手に汗握るプレイを期待してたら、早々にガッカリしちゃうでしょうね。
私そもそも、ここまでサッカーをモチーフにした映画だと思ってなくて。
プロデューサー三名様の名前と、ガエルくん♡ってだけで観に行っちゃったから。
昨日は愛すべきバカ兄弟のことを思い出しながら、南アフリカ対メキシコ戦を観てました

ストーブぶん投げたって・・・すごいお友達ですね
ストーブ!?

Posted by: kenko | June 12, 2010 12:12 PM

>kenkoさん

こんちは。お返しサンクスです
まああのアホっぽいポスターやトレイラーを見た時点で「手に汗握る・・・」なんて映画じゃないことに気がつかねばいかんですよね
『少林サッカー』や『クール・ランニング』のように、バカとハラハラドキドキを両立させた名作も、ごくわずかながらありますが

岡田ジャパンもいよいよ正念場ですね。ぜひこの映画を見てモチベーションを高めていってほしいです

>ストーブ

ストーブです。たぶん石油のやつ。火はついてなかったと・・・思う

実際、腕力でかなわなそうな相手や刃物をもった相手には、離れたところからなんでもボンボン投げるのが一番有効だそうです

Posted by: SGA屋伍一 | June 13, 2010 06:00 PM

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