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February 09, 2010

ダンサー・イン・ザ・カンコク ポン・ジュノ 『母なる証明』

100209_185948このタイトルってやっぱり『人間の証明』から取ったのでしょうか。お母さん、ボクのアレ、どこ行ったんでしょうね。ほら、なんてったっけ。あれですよ、あれ

・・・・首都圏より三ヶ月ばかり遅れて上映、話題の韓国映画『母なる証明』ご紹介いたします。

とあるひなびた村に住む、一組の親子。息子のトジュンは知的障害者ではあったが、母親はこの息子を何よりも深く愛していた。だがある日、この村で一人の女子学生が殺されるという事件が起き、トジュンはその容疑者として警察に連行される。トジュンの無実を信じる母は、その容疑を晴らすべく奮闘するが・・・・

わが国でも高く評価されているポン・ジュノ監督。でもわたし、彼の作品にはちょっくら苦手なところがありまして。普通に面白いとは思うんですよ。ですけどこの人、こちらが固唾を呑んで見守っているようなところで、「ぽかーん」としちゃうようなギャグをかましてくれるじゃないですか。
例えば彼の名を一躍メジャーにした『殺人の追憶』。みなが真剣に犯人の手がかりをつかもうとしている中、ソン・ガンホ演じる刑事はこう叫びます。「つまり犯人は・・・アソコに毛が生えてない、ツルツルのヤツなんですよ!」

あの・・・ そこは笑うところなんですか? 笑えばいいんですか? ポンさん! ポンさああああん!!

ただ今回のこの『母なる証明』、いろんなところで絶賛されてるし、予告を見るとなんだかとってもシリアスな感じ。
そんで、「ふ・・・ こいつ色々考えて成長しやがったな・・・」なんて思っていたのですよ。ところが実際に観てみたら、これがいつもと全然変わらねえでやんの(笑)

息子のために執念を燃やす母親と言うと去年の『チェンジリング』を思い出します。しかしあちらの主演のアンジェリーナ・ジョリーがまことに絵になるというか、様になるのに対し、こちらのおかんはやることなすこと空回ることはなはだしく。おまけに息子の方も記憶がなんだかおぼつかなくて、いらんところでいらんことを思い出したりする。観ていてあまりに可哀想で、悲しくて。でも笑える(笑) うーん、これやっぱりギャグと思っていいんでしょうか? あれ? 違うのかな? もうわたし、よくわかんない!

いい加減マジメなことも書いておきましょう・・・ 以下はネタバレ臭いので未見の方はご注意ください。

この映画で強く感じたのは、「誰もが殺人者になりうる」ということ。
よく新聞や雑誌のコラムなどで、殺人犯を糾弾する記事があるじゃないですか。まあ確かに糾弾されてしかるべきなんですが。
時折ひっかかるのは書いている人が、犯人を自分とは別種の生き物のようにとらえていること。まるで「自分はたとえ何があろうとこんな罪は犯しません」とでも言うように。
しかし人生先に何があるかまったくわからないわけです。もしそれまでに経験したことがないような苦境に立たされたとき、想像を絶するような憎しみに包まれた時、それでも自分は「絶対に人を殺さない」と言い切れる人がいるでしょうか? あるいは殺意がなくとも、何かの弾みでうっかり人を死に追いやってしまう・・・そんなことは絶対にないと、誰が断言できるでしょう。
いや、わたしだってある程度の自信はありますし、本当にそうなりたくないとは思いますよ。ただこの映画を見ていると、「誰もがふとしたきっかけで、人殺しになってしまうことはある」・・・と、そんな怖い考えが思い浮かんでしまうのでした。


この映画には、非常に印象的なダンスシーンが二回あります。ひとつは冒頭で、ひとつは終了間際に。
冒頭のシーンでは、「なぜこの人はいきなり踊りだしてるんだろう」と、ややあっけにとられました。しかし最後のダンスシーンを見ていて、冒頭の方も納得がいきました。

人はなぜ踊るのか? それはきっと、苦しいこと、悲しいことを忘れたいから。衝動のおもむくままに体をくゆらせることで、辛い記憶を胸の奥に押し込めたいから。躍るアホウに見るアホウ。同じアホなら躍らにゃソンソン♪ そんな感じ え? 違う?

100209_190010最初の方で文句も書きましたが、全体的に手に汗握らせられる、とてもひきこまれる映画でした。後味も前二作より良かったし。

というわけで、『母なる証明』はまだぼちぼちと全国を巡回中。マザコンを自認する方はぜひご覧になってください。わたしですか? いや違いますよ。な、おかあちゃん(嘉門達夫ネタ)


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Comments

伍一さん
TBコメありがとうー、観たのね!
殺人の追憶、
>ソン・ガンホ演じる刑事はこう叫びます。「つまり犯人は・・・アソコに毛が生えてない、ツルツルのヤツなんですよ!」

そんなセリフあったっけ??よく覚えてるなー★
これは伍一さん的には68点くらい??

私、この映画、12位にしたけど(確か)
上にしすぎたかなとも(笑)
観てるときはけっこう文句もあったんだけどね
あの女優の(おばさん)最初と最後の踊りがなかったらここまでの映画、評価にはならなかったと思うナ


なんと偶然にも?明日わたしも韓国映画upしまーす。

Posted by: mig | February 10, 2010 10:53 PM

ところで最後の絵は誰??

Posted by: mig | February 10, 2010 10:53 PM

ご覧になられましたね~

>「つまり犯人は・・・アソコに毛が生えてない、ツルツルのヤツなんですよ!」
いや~~,わたしも実はあのシーンとセリフはツボで・・・
そのあと,ソン・ガンホが銭湯で
いちいち客のアソコをチェックしているシーンもツボでした。
韓国の映画のシリアスと笑いのバランスというか
「え,そこで笑いかよ」というタイミングの外し方は
きっと日本人の我々は外れてるんでしょうけど
韓国人にはあのタイミングやさじ加減がちょうどいいんでしょうね。
それはこの監督の「グエムル」でも感じました。
「そこ,笑ってる場合かよ・・・」っていう不謹慎をとがめる思いね・・・
顔は似ていても韓国人と日本人の感性は
水と油くらい違うんだろうな,て思う瞬間です。
でもその違いがとても新鮮で,病みつきにもなるんですが。

Posted by: なな | February 10, 2010 11:54 PM

>migさま

おはようござります。お返しありがとうございます

>そんなセリフあったっけ??よく覚えてるなー★

ははは。よく覚えてるのは、見たのがつい最近だからです(DVDで)
わたしは今のところ72点くらいでしょうか? 見た直後って、なかなか冷静に評価できなかったりしますよね。でも相変わらず煙にまくようなところもあったけど、なかなか楽しませてもらいました

あのダンスシーンは評判よいですね。思い切ってああいうのを冒頭にやっちゃうところが、ポン・ジュノ監督の非凡なところなのかな

ちなみに最後の絵はウォンビンくんです・・・ 似てないね

Posted by: SGA屋伍一 | February 11, 2010 07:26 AM

>ななさま

おはようござります。お返しありがとうございます

ななさんもあのシーン、覚えておられましたか。あんなんでよく今まで刑事が務まったなあと。あと犯人かと思って必死に追いかけたら、単なる変態だったというのもかなり脱力しました(笑・下着まで着させて・・・・)

韓国の人はああいうところでどっとうけるのでしょうか。やっぱり笑いのセンスって国によって微妙に違いますよね
ただ『チェイサー』や『トンマッコルへようこそ』のギャグなんかは、もう少し自然に笑えたかな。わたしは

『グエムル』でぽかんとしちゃったのは娘の遺影の前でドリフのコンとみたいのやってるシーン。このやや不謹慎なところも、彼の個性のひとつですね。そういえば『母なる証明』の葬儀のシーンもそんな感じでした

Posted by: SGA屋伍一 | February 11, 2010 07:34 AM

ふたたび、、、、

あ、失礼しましたごめんね
ウォンビンだよねいつものボケですワ

いやだってよくぜんぜん関係ナイ人の絵もでてきたりするから(笑)

Posted by: mig | February 11, 2010 12:19 PM

>migさま

あやまらないで! あたしの腕が未熟なのがいけないの!
ははは・・・ 言われてみればこれまでどれほどわかりづらいネタをふってきたことか

2010年の目標は「もっと似せる」「もっとわかりやすく」で行きたいと思います

Posted by: SGA屋伍一 | February 11, 2010 11:15 PM

こんにちは!
今週はブログ活動怠りぎみで、コメントいただいてたのに
レスがとっても遅くなってしまいました。。。ゴメンナサイ!

ついに「母なる」ご覧になったんですね!
「殺人の追憶」は私も昨年DVDで観たばかりなので
「アソコツルツル」覚えてますよ〜
ズッコケますよね。あんまり笑えないし
韓国では爆笑なんでしょうか。
今回のではおかんがお酒飲み過ぎてトイレで吐いてるシーンで
ちょっと笑ってしまいました。

>誰もが殺人者になりうる

そうなんですよね・・・そのことがひしひしと感じられて
恐ろしかったです。
だってこの映画の殺人者の気持ちが痛いほど伝わってくるんだもの。
犯罪とは程遠いところで暮らしていても、日常のすぐ隣りに
「殺人者になりうる」きっかけはあって、
それにハマってしまったらもう落ちていくしかない感じが
むちゃくちゃ怖いと思いました。

おかんのダンスもすばらしかったです!

Posted by: kenko | February 12, 2010 02:17 PM

>kenkoさま

こんばんは! ご来訪ありがとうございます
いやいや、みなさんそれぞれに事情がおありですから、そういうことは気にしないでください。わたしもよく遅れるし

「アソコツルツル」は見ている時はあっけにとられましたが、あの時の周囲の冷たいリアクションを思い出すと、今では割りと笑える気もします

>今回のではおかんがお酒飲み過ぎてトイレで吐いてるシーン

あの直前でしたっけ。弁護士の先生がマイクで援助者を紹介するあたりもヘンでしたよねー。あと「これ、どう見ても口紅ですけど」も笑うべきかこけるべきか迷いました・・・

>そのことがひしひしと感じられて
恐ろしかったです。

平和な家庭を営まれているkenkoさんでもそう感じられますか。「誰かを殺したい」という衝動に駆られても、すんでのところで踏みとどまれる人もいるでしょうけど、自分がそうできるかどうかは実際にその場に立たされてみないとわからないわけで
 
こういう映画や『古畑任三郎』などを見て、そうなりやすい状況を前もって知っておくと、いい勉強になりそうです

Posted by: SGA屋伍一 | February 13, 2010 09:25 PM

まだまだ作務日が続いてますね。

今年初めに伍一さんが私の「2012年 こんな映画見ました~
」の記事でオススメ下さった「トンマッコルへようこそ」を見ました。
良かったです。おすすめありがとうございました。

TB送ろうとしましたが、記事が見つかりませんでした。<(_ _)>
こちらの映画のTBを送らせて頂きますね。

韓国映画、なかなかいいものもありますが、手当たり次第見てみるという事ではないので、オススメ頂いた作品から見てみたいと思います。

トジュンの絵、感じが出ていますヨ~。

Posted by: 小米花 | February 11, 2013 05:45 PM

アレ、「寒い」が作務になってる・・・。
スミマセン。。。

Posted by: 小米花 | February 11, 2013 05:46 PM

>小米花さん

こんばんは! わたしなんぞのアドバイスを参考にしてくださってありがとうございます。トンマッコルは日韓関係がギスギスしてる今だからこそもっと多くの人に観て欲しい作品ですね
このトジュン君のあとに「アジョシ」で野獣のような男を演じるウォンビン氏は大した役者でございます

Posted by: SGA屋伍一 | February 12, 2013 11:07 PM

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