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February 28, 2010

ウィー・アー・ザ・ワールドチャンピオン クリント・イーストウッド 『インビクタス 負けざる者たち』

100228_184014番長グループの抗争により、校内暴力が激化の一途をたどる南阿弗利加高校。その学校へ、一人の熱血教師が赴任してくる。彼は「お前たちを愛している! 愛しているから殴るんだ!」と、わけのわからぬ理屈でラグビー部を創設。だがいつしか生徒たちも彼に感化され、一同は共に花園を目指すことに・・・ これは一人の教師による七年間の戦いの記録・・・ではなく。近年の目覚しい活躍により、いまや「世界のオヤジ」となってしまった感さえあるクリント・イーストウッド最新作。『インビクタス 負けざる者たち』紹介いたします。

90年代の南アフリカ。黒人にも平等な権利が与えられ、それまで優位に立っていた白人たちは、彼らの報復に怯えていた。だが30年獄にあり、新たに大統領となったマンデラは、白人たちにも協力を呼びかける。彼はほとんど白人で構成されたラグビー代表チーム「スプリングボクス」をそのまま残し、来るワールドカップで優勝を果たすよう願う。新たな国を築こうとするマンデラと、低迷から脱しようとするボクスのキャプテン、フランソワ。それぞれの戦いを続ける二人の魂は、次第に強く共鳴しあう。

この映画を見ていてわたしが思い出したのは、2007年の作品『ラストキング・オブ・スコットランド』でした。こちらは少々フィクションが入っているものの、やはりアフリカの実在の大統領を主題とした映画です。黒人の大統領が白人の青年と友情を交わす・・・といったストーリーも、どことなく似ています。
しかし、アミン大統領がウガンダで成したことは恐るべき虐殺行為でした。この辺からわたしたちが学べるのは、権力というものはバケモノだということです。それまでは立派だった人間が、権力を手にした途端醜く変わるといった例は決して珍しいものではありません。だからこそ、マンデラ氏がその力を報復に用いなかったことは驚嘆に値します。

あるインタビューでイーストウッド氏はこう述べていました。「人生の中で最も大事な30年間を奪われた男がどうしてそんな寛容な気持ちになれたのか? そのミステリーを解きたいと思った」

で、このミステリーの答えというのは、やはり表題となっている詩の一節にあるのではないかと思いました。それはマンデラ氏が獄中でどんぞこにあった時、彼に再び立ち上がる力を与えてくれた言葉です。
 「私はいつも私の運命の主人なのであり 私はいつも私の運命の指揮官なのだ」

自分を気の遠くなるほどブタ箱にぶち込めていたのも白人ならば、彼に希望を失わせなかったのも、また白人の詠んだ詩だったわけです。この辺から、マンデラ氏は自分の真の敵が特定の人種ではなく、人々の心の中にある「憎悪」であることに気づいたのでしょう。人の真の強さとは、まず自分を制すること。そして恐怖や憎悪といった負の感情に飲み込まれないこと。そんなことをこの映画から学ばされました。

ただこの映画、個人的には昨年の
『チェンジリング』『グラントリノ』ほどには、胸に迫るものはなかったような。近年のイーストウッド作品では、人間の負の面も強烈に描かれています。だからこそ、その中にあってもたくましさや尊厳を失わない主人公たちに、強く心打たれるわけで。
しかし今回のこの『インビクタス』では、その「負の面」の描かれかたが、けっこうあっさり風味だった分、前の二作ほどのインパクトもなかったような。そんなこと言いながら、ラストで大統領とフランソワがガッキと握手するシーンでは、滝のように号泣しておりましたが(笑)

しかしラグビーってのはすごいですね・・・・ 15対15で相撲を取っているようなものです。サッカーだったら(10分限定で)それなりにプレイできる自信はありますが、ラグビーは無理です。死にます。

100228_184055さて、ご高齢なのに全然休まない御大の次の作品は、フランスを舞台にした超常現象の話となるそうです。なぜここで超常現象? いや、きっと御大にはふかーい考えがおりなのでしょう。
主演にはまたしてもマット・デイモン。「硫黄島二部作」「親心二部作」に引き続き、後に「マット二部作」と呼ばれるようになるのかは、まだわかりません。


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Comments

こんにちは~♪

個人的なことですが、昨日から1週間、トイプードルの赤ちゃんを友人から預かることになって、、、きゃ~~~可愛い~~きゃ~~~またオシッコもらした~~~、、、と、ウハウハに過しております。現在家には犬4匹!!!動物園のようだ(汗)

で、、、映画ですが、
>前の二作ほどのインパクトもなかったような。そんなこと言いながら、ラストで大統領とフランソワがガッキと握手するシーンでは、滝のように号泣しておりましたが
全く同感ですぅ~
いい映画だったんだけど、そんなに胸に迫るものはなく、、、
なのに試合結果に号泣致しました。いや~~~スポーツで民衆の気持ちが一つになる瞬間って素晴らしいですね!

Posted by: 由香 | March 02, 2010 03:51 PM

>由香さん

こんばんは! だいぶ暖かくなってきましたね~
ワンちゃん四匹・・・ ネコ派のわたしとしてはそれほど魅力を感じませんが(笑)、さぞかし大変そう・・・ でも楽しそうですね♪

とてもいい映画だったのですが、イーストウッド作品にはもっとガツン!と来るものを期待してしまうんですよね。御大ももうお年なのでそういうのは疲れるのかもしれないですけど

スポーツも変に熱狂的になるのは困りものですが、こういう形で使われるのは素晴らしいですよね。『タイタンズを忘れない』という映画があるんですが、これもなかなかに「よい例」でありました

Posted by: SGA屋伍一 | March 02, 2010 07:48 PM

こんばんは(^_^)
いまさらながら、ネルソン・マンデラはホントに
素晴らしい人だったんだなぁ〜と思いました!
たしかに、ラクビーって15対15で相撲を
取っているようなものですよね〜。
日本が歴史的な大敗をしたみたいなセリフがありましたが
あれでは勝てないだろうなぁ〜。

実は、私もイーストウッド作品にしては、感動のインパクトが
弱かったのですが、実話なのであまり大げさにできないとの
ご意見をいただき、それもそうか!と思ったのでした。

Posted by: ルナ | March 02, 2010 11:49 PM

伍一さん☆こんばんはー

グラントリノ、チェンジリングと比べちゃだめだよね
今回はイーストウッド脚本じゃなかったせいか
わたしもいまひとつ、これまでのような惹き付けるところがなかったの、
スポーツ映画だし。

あ、とかいいながら伍一さんは号泣かぁ。。。

『ラストキング・オブ・スコットランド』を思い出しはしなかったけど
あちらのほうが楽しめた★

普通に良かった感じ、万人ウケする映画ですよね★

Posted by: mig | March 03, 2010 01:11 AM

>ルナさん

こんばんは。ご来訪ありがとうございます
マンデラ氏はキング牧師やガンジーの精神を立派にうけついでおられますよね。反対も多い中、あれだけ確固とした立場を貫けるというのは、やはりすごいことであります

サッカーもそうですけど、日本人ってあまりフットボールに向いてないと思うのですよ(笑)
あと前に体育の授業でラグビーをやらされたことがありましたが、前にボールをパスできないというのは、すごくやりづらかったです

>「実話なのであまりおおげさにできない」

なるほど。『チェンジリング』も実話でしたけど、あれは現代には直接関わってこない話でしたしね

Posted by: SGA屋伍一 | March 03, 2010 08:12 PM

>migさん

こんばんは。お返しありがとうございます

migさんとこで知ったんだけど、この脚本、『シャーロック・ホームズ』と同じ人だそうで・・・ 全然二つの作品が結びつかない・・・
まあラグビーは英国が発祥だから、イギリスつながりと考えられなくもないけど(強引だ

やっぱりなんのかんの言いながら、野郎どもが必死にぶつかりあってる姿を見ていると、自然に涙腺に来てしまうんですねえ。ルールもろくにわかってないのに(笑)

「ぴあ」の満足度もかなり高かったようだけど、この映画日本では四位より上には行ってないみたいです。先月は『アバター』と『オーシャンズ』が強すぎた・・・

Posted by: SGA屋伍一 | March 03, 2010 08:19 PM

SGAさんこんばんわ♪TB&コメント有難うございました♪

あ~・・なるほどっ、黒人大統領と青年の交流という点だと、確かに『ラスキン』のウィテカーとマカヴォイの構図が思い出されますね。でもあっちはドギツイ内容でしたから、観た後めちゃくちゃ凹んだんですよねぇ・・。その点こっちの大統領の物語は不屈の信念でもって国家復興にのぞむチャレンジスピリットに素直に感動できましたね~。ラグビーの試合シーンこそ時折淡白な部分はありましたけども、最後の決勝戦などは固唾を呑んで見守る南アの国民の一体感を垣間見る事が出来て、試合よりもそっちの方に感動してしまったかもしれませんw

でもイーストウッドの次回作が超常現象モノ?それはまた凄い路線変更のような気もしますね
絶対単純な娯楽作にはならないでしょうね~?

Posted by: メビウス | March 04, 2010 12:29 AM

>メビウスさん

おはようございます。お返しありがとうございます

>キンスコ

「アフリカの大統領」を描いた映画というと、真っ先にあれが思い浮かんでくるんですよね。ええ、わたしもへこみました・・・ そしてこれまで見た中で、最も「痛い」映画のひとつであります
比較対象があまりにもあれですが、権力に食われなかったマンデラ大統領はすごいなあと

ラグビーのルールとかよくわからないんですが、それでも演出のせいか、拳を握って盛り上がってしまいましたね ただ尺の都合で仕方ないんでしょうけど、「あ」というまに決勝戦になってしまった、という感もありました・・・・

次回作のタイトルは確か『ヒアアフター』。どうなるものやら、さっぱり予想がつきません。しかしイーストウッドなら、きっと何かやってくれるでしょう!


Posted by: SGA屋伍一 | March 04, 2010 07:17 AM

こんばんは!

そういえば『キングオブスコットランド』(略してキンスコ?)も
アフリカの黒人大統領のお話でしたね。

確かに『チェンジリング』や『グラントリノ』ほど強烈な感動ではなかったし、
涙もウルウル程度だったんですけど、
終盤へ向けてじわじわと胸に迫ってくるものがありました。

ラグビーって相撲みたい!って私も思ったことある(笑)
特にスクラム組むとき。ぶつがり稽古みたいじゃないですか?
たまには前にボールを投げたくならないのかしら。

へぇー 次回作は超常現象ものかぁ。
イーストウッド映画のファンですが、毎回次回作の噂を聞くたび
意外なチョイスだなーと思います。
しかし間違いなくまたいい映画になるんでしょうね。

Posted by: kenko | March 04, 2010 10:08 PM

>kenkoさん

こんばんは! お返しありがとうございます

キンスコの時はなんかアフリカ関連の映画がちょっとしたブームですよね。忘れた頃に御大がかましてくれました
幾分感情の描写とか抑え目でしたけど、この映画にはそれくらいでちょうど良かったのかもしれません

あの力士みたいな連中に囲まれて、マット・デイモンはよくがんばってました。ラグビーじゃないけど、確か曙関はもともとアメフトをやっていたんじゃなかったかな
あんなのが正面から向かってきたら、いくら勇気があっても死んじゃうよね・・・

次回作も楽しみですね。あんなお年でもなおも新たな挑戦を続ける御大は本当にすごい方です。ただちょっと働きすぎなような気も。も少し体を労わって欲しい・・・

Posted by: SGA屋伍一 | March 05, 2010 08:31 PM

伍一くん、

キンスコットランド!!(正統派で)

なんか伍一くんとは同じところで感じ入っているようで嬉しくなり、こういう繋がりに感謝しちゃいました。

この映画、やけに肉と肉のぶつかりあい音満載でしたね。もしくは漏れ声というのでしょうか。野獣。

今日はブックオフで、伍一くんおすすめの占星術と緋色をゲットしてきたよ。あと、「許すということ」もゲット。

許しと愛かぁ

一緒にマンデラに続こうね

Posted by: hino | July 25, 2010 12:03 AM

>hinoさん

キンスクール☆ウォーズです

聡明かつ見識の深いhino先生にそのように申していただけると恐縮でございます・・・

肉と肉のぶつかりあいかあ。そういえば「むしゅっ」とか「ぶはっ」とかいう効果音が多かったような
サッカーは女子もありますけど、ラグビーは女子ってあまり聞きませんよね。それだけに「野獣」にふさわしいスポーツなのかもしれない・・・と書こうと思ったら、普通にあるみたい女子ラグビー 最近はたくましい女の子が増えましたね

おすすめの本買ってくれて嬉しいです そう、『緋色の囁き』はこの時期にぴったりかもしれない 『占星術』はちょっとウンチクがくどいところもあるけれど、がんばってトライしてみてください

Posted by: SGA屋伍一 | July 26, 2010 10:55 AM

こんちは! 先週の日曜日に見ましたよ。
あのモガ彦(←モーガン・フリーマン)がデラ夫(ネルソン・マンデラ)を演じたよ

いきなり 前フリで モガ彦が27年ぶりに釈放で大統領になって
、同じ黒人に 「ただちに武器を捨てなさ~い」と刀狩宣言(あんた、豊臣秀吉かい)

 んで、モガ彦の理念が”白人と黒人の調和”ということで 黒人の警護係りの希望を聞いて 増員しようとしたら 白人の警護係りを呼んでんじゃん!

 さらに デモ太郎(←マット・デイモン)率いるラグビーチームがボロ負けをいいことに ユニフォームとチーム名を変える黒人集会で モガ彦が ジャジャジャジャ~ンと 特撮アクション・ヒーローのごとく すばやく登場して

「名前は変えちゃあダメ、 白人たちの宝は取り上げちゃならん、国づくりの手持ちのレンガは黒だけでなく白に染まってても積み上げよう」とか なんとか

それだけじゃあのうて 白人にもデモ太郎を通じて
「黒人の子供たちにラグビーを教えてやってくれないか」とか
「黒人の歌である”アフリカに祝福を”を試合会場で歌ってほしい」とか モガ彦は依頼(無茶させすぎじゃ!)

 チームの選手たちは ただでさえ監督に勝て、勝てとプレッシャーかけられとんのに教えるゆとりなんかねえよ・・・

 歌だって 読み方わかんねえしぃ~・・・
 
デモ太郎は「大統領の理念は賛同するに値する。口パクではなく 国歌としてキチっと歌おう」

 貧民層の子供たちも 案外 サバけとる。「審判の見てないトコなら相手選手をブン殴れる」・・・(←ムカつくヤツならそのとおり!)

 選手たちも黒人の子たちと 打ち解けてるじゃん(そこが 肝心)

 なんだかんだで 歩みよれば 白人と黒人も調和できるってコトを証明されたワイ

 ボクちゃん 心の中で ポール・マッカートニー&スティービー・ワンダーの「エボニー&アイボリー」が流れたよ(→白人と黒人の調和のシンボル曲じゃな!)
https://www.youtube.com/watch?v=TZtiJN6yiik

Posted by: zebra | July 18, 2015 10:44 AM

>zebraさん

おひさしぶりです~ そしてこの作品のこともひさしぶりに思い出しましたw
zebraさんの感想読んでたらぽちぽちとストーリーを思い出してきましたね… そうそう、そんな細かい摩擦というか「マンデラさんそりゃないよ」という冷たい視線もいっぱいありましたね。zebraさんの文章のようにそんなにポップではなかったと思いましたが(^_^; とにもかくにも和解をなしとげたマンデラ大統領はお偉い方です

これももう5年前の映画かあ。このあとサッカーのW杯南ア大会で南アフリカが惨敗したり、マンデラさんも亡くなられたりとかいろいろありましたね… 月日の流れるのははやいものです…

Posted by: SGA屋伍一 | July 20, 2015 09:26 PM

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