魁! ハードボイル道 『仮面ライダーW』を語る②
絶妙のコンビで、数々の敵を退けてきた章太郎とフィリップ。だがある時敵の罠にかかった二人は、絶体絶命のピンチに陥る。そんな彼らを救ったのは一年ぶりに姿を現した最凶のメモリ「ファング」だった。新たな力を得て、より一層激しい戦いへと身を投じていく「ダブル」。そんな折、風都に「照井竜」という男がやってくる・・・
第二のライダーを向かえ、そろそろ折り返し地点を迎えようとしている『仮面ライダーW』。今回は「ハードボイルド」という視点からいらんことを語らせてもらいます。
「ハードボイルド」の始まりは一応1929年、ダシール・ハメット原作による『血の収穫』からとなっております。登場人物の内面には一切触れず、ただ起きたことだけを簡潔に伝えていく手法が、硬くゆでた卵のようにシンプルでストレートということで、いつしかそう呼ばれるようになったのでした。
それゆえハメット作品の主人公(サム・スペード、コンチネンタル・オプなど)の内面は容易には図れず、冷血動物のような印象を受ける人も数多くいます。
ただご存知のようにハードボイルドが大衆に広く人気を得るようになったのは、そのあと登場したレイモンド・チャンドラーの功績によるところが大きいです。チャンドラーの創造した探偵フィリップ・マーロウは「オプ」やスペードに比べれば、おおよそ人間的で親しみやすい人物。有名なセリフ「タフなだけでは生きている意味がない」が示すとおりです。
で、『W』でいうと、このマーロウのような立場にあたるのが章太郎(タフ以外の部分が多すぎるような気もしますが)。ハメット系の探偵にあたるのが、照井竜なんではないかと。まあ照井氏は登場早々にして、かなり章太郎に感化されてしまった感はありますが あとさらに後に登場した「悪党は皆殺し」的な探偵、マイク・ハマー(BY ミッキー・スピレーン)も入っているかもしれません。
このハメット的なキャラとチャンドラー的なキャラの立ち位置の違いとか、主張をめぐるぶつかり合いなんかをこれから期待したいものです。
さて、スタッフについても少々。一回目の記事で「サブライターは「荒川稔久氏」と書いちゃいましたが、この人その後全然登板しませんね 代わりに目立ってきているのが主にウルトラ系で活躍されていた長谷川圭一氏。氏の重厚でハードな脚本には『ネクサス』のあたりから特に注目してたので、『W』参戦は実に嬉しいことであります。それまでにはあまり見られなかった軽妙なギャグなんかには、「こういうのも書けるんだ」という驚きもあり。
ただ最近の展開でちょっと納得いかなかったのが、ナスカ・ドーパントこと園崎霧彦氏の性急な退場に関して。まだまだ活かしようのあるキャラだったと思うんですがね~ 死なすにしても、体に異常が出てきたりとか、章太郎と和解したりとか、その辺の描写をもっと前もってじっくりとやっていただきたかった。あの二話でそれらすべてをパタパタっとやられてしまったので、「とにかく急だった」という印象が強いんですよね。もしかするとなんか中の人の事情でもあったんかな~と、いらんことを勘ぐってしまったりして。
・・・と文句も書いちゃいましたが、謎の女「シュラウド(屍衣という意味だったかな?)」やかなりの強敵らしい「ダブリューのメモリの持ち主」も登場し、「いっそう盛り上がってきたな~」と感じる今日この頃。
一年ものにとって三クール目というのは、一番中だるみしやすいあたりですので、その点どうぞ気をつけていただきたいものです。
『仮面ライダーW』は現在日曜朝八時にて放映中。
Comments
>ナスカの中の人
どうなんでしょうね?
なんか、別のドラマの仕事が入ったとか入らなかったとか。
シュラウドにWのメモリの持ち主など、“平成ライダー”らしいドラマを盛り上げてくれそうな人物たちが登場しましたが、自分は今ひとつ心配です。
と、いうのも、
ダブルの話は“依頼が来て、それを捜査する”という受動的な様が、なんか活気を感じないのですよね。
今までの平成ライダーも中だるみしたり、終盤広げた風呂敷を畳みきれなかったりなどありましたが、それでも自分たちから動いている感じがしていたんですよ。
翔太郎たちは犯罪と戦ってるけど、悪の組織とは戦っているのか?
照井が登場したことで、その点をクローズアップしてくれるといいんですけど…。
仮面ライダーなんだし…。
(しかし、仮面ライダー“ダブル”と“W”のメモリ。口で言うにはややこしいですね。狙ってるのは分かるけど)
Posted by: 大吉 | February 18, 2010 11:39 PM
>大吉さん
ご来訪ありがとうございます。一日遅れですいません
ナスカさんの新ドラマの話はわたしも聞きました。もしそうだったとしても、もっと自然な形で退場できなかったもんでしょうかね~
なるほど。「探偵」というスタイルは確かに受身っぽくはありますね
ただああいう仕事なんで、情報はいろいろ集めやすいんではなかろうかと。闇雲に動き回るよりかは、効率的に戦えるんではないかと。「仮面ライダーが効率とか気にしてちゃいかん」という意見もおありでしょうが
わたしが不思議なのは敵組織があんだけの財力をもちながら、どうしていまだにフィリップの居場所をつきとめられないのか、という点です(笑) 章太郎なんか顔バレまでしてるのに・・・
あとライバル・宿敵はてっきり「トリプル」だと予想してましたが、どうやらハズレのようです・・・
Posted by: SGA屋伍一 | February 20, 2010 07:23 AM
SGAさんこんばんわ♪こちらにもコメントをばっ
ホント、霧彦氏の途中退場の早さには自分も『えっ?もう?!』って感じで面食らっちゃいましたねぇ~。ナスカメモリもなんかイイ感じにパワーアップしてましたし、個人的にも555の木場みたいに終盤まで絡んでくる人なんじゃないかなと思ってただけに残念無念・・。出来ればもうちょっとあの恐妻の尻に敷かれる姿などを見たかったんですけどねぇ~
でも中だるみの多い3クール目との事ですが、新ライダーのアクセルほか謎人物のシュラウドや謎メモリの『W』といった新要素も増えて、自分は逆にどんどん面白く見れちゃってる気がします^^;
おやっさんの回想シーンとか出れば尚嬉しいんですけどね~?(MOVIE大戦以降、一度も出てきていないような・・・?)
Posted by: メビウス | February 21, 2010 09:19 PM
>メビウスさん
こちらにもありがとうございます!
ナスカ・ドーパントは造形的にもかなりイケてて、自分としては気に入ってたんですけどねえ~
まあ仮にそのまま番組に残っていても、あとはひたすらへたれつづけるだけだったかもしれませんが。「Wのメモリの持ち主」の引き立て役みたいになって 実際恐妻はもう新しい男に夢中みたいだし・・・
番組としてはこれからパワーアップの時期ですね。既に児童誌ではネタバレが投下されてるようで
そういえば「おやっさん」もう忘れ去られてる感がありますね・・・ 章太郎のトラウマが解決したということで、もう出番も終了ということでしょうか? 「なんでスカルのメモリを持ってたのか」という謎は明らかにしてほしいっす。はい
Posted by: SGA屋伍一 | February 22, 2010 07:57 AM