島の郵便配達 ウェイ・ダーション 『海角七号 君想う、国境の南』
台北でミュージシャンの夢に敗れ、故郷で郵便配達夫として働く青年阿嘉(アガ)。ある日彼は郵便物の中に、今の時代に届いた終戦直後の手紙を見つける。なぜだかひかれるものを感じた彼は、ついその手紙を読んでしまう。それはなくなく台湾を離れることになった、ある青年の恋文だった。折りしも街では野外ライブが行われることになり、阿嘉は成り行きでそれに参加することに。マネージャーの友子や、集められたメンバーと接していくうちに、阿嘉は少しずつすこやかな魂を取り戻していく・・・
台湾映画初鑑賞であります。なぜ見ようと思ったのかというと、さるオフ会のお題だったからというまことに不純なものでして。
でもまあポスターやタイトルから、「きっと『海角七号』という戦艦がドゴーーーン!!とぶっ放すような、そういう内容だな!」と想像し、それなりに期待してたんですが・・・・予告編を見てたら、アレ?みたいな
ちなみに「海角七号(かいかくななごう)」とは住所の番号のことでした。あははははは。
ただこの映画にはもういっぺん意表をつかれまして。予告ではいかにもコテコテの恋愛映画という感じだったのですが、全体的には町おこしムービーというか、「バンドやろうぜ!」的な作品でした。なんせ主人公とヒロインが出会うまでにかなり時間がかかります。出会ってからも、まともな会話を交わすまでにさらに時間がかかります。
その間、さびれゆく田舎町の漫然とした情景がただただ流れていきます
しかし中盤すぎくらいにようやく二人が急接近すると、ほかのメンバーもなんだか精彩を増してきて、何の意味があるのかよくわからなかった例の手紙もお話に有機的に絡みだします。そしてクライマックスのライブにむけて俄然もりあがっていくという、なんだかとても不思議なテンポの映画でした(笑)
このバンドのメンバーがなかなか個性豊かでして、わたしが特にうけたのは齢七十とおぼしき茂(モー)じいさん。最初はベースを担当していたのですが、途中でどうにも無理ということが判明。すると「わしゃどんな形でもいいからステージに立ちたいんじゃ!」と見事なねばりを見せます。そして茂さんに用意された新たなポジションとは・・・・ つづきは劇場でごらんください。
もう一人印象に残ったのがギター担当のお巡りさん勞馬(ローマー)。最初はほとんど八つ当たりで阿嘉にケンカをふっかけてくるという、これ以上ないくらいイヤ~なキャラです。ところが少年漫画のセオリーのように、いっぺん殴りあうだけ殴りあうと、その後はいい兄貴分として、頼りになる存在に変わっていきます。彼には『人間交差点』みたいな辛い過去があり、それがなかなか泣かせたりもします。
さらにこのバンドには子供やお笑い担当もいて、まるでなんだか一昔前のヒーローチームのよう。これでドラム担当が巨漢だったら完璧だったのですが。
年齢も仕事もバラバラで、当然のようにうまくかみあわないメンバーたち。それが急にうちとけてきたのは、とある結婚式で酒を酌み交わしたあたりからでした。ここから教訓を学べます。なんだかチームがギクシャクしてる時には、とにかく一緒に飲んじゃえばいいんです! 大喧嘩に発展して、取り返しのつかなくなる可能性もありますけどね
というわけで、結果的にはなかなか楽しく見ることができた『海角七号 君想う、国境の南』。これも一応ミニシアター系映画なのでしょうけど、あんましアート系の作品が好きな方にはむかないかも。このいい意味でベタなテイストは、むしろ『男はつらいよ』や『ALWAYS』なんかが好きな人におすすめです。
現在主にシネスイッチ銀座で公開中。その後全国各地で上映予定。台湾では歴代1位の大ヒットということなので、彼の地に興味のある方はどうぞご覧なすって。
Comments