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January 18, 2010

コンドリは走っていく 松下俊文 『パチャママの贈りもの』

100118_1815592009年の宿題もようやっとこれで終わりか 松下俊文氏が6年の歳月をかけて撮影したドキュメンタリー・フィクション『パチャママの贈り物』紹介いたします。これもいわゆる単館系映画なのでしょうけど、なんでか特別扱いのように小田原で都心と同時にやっていたので、儲けとばかりに見にいってきました。

南米ボリビアに広がるウユニ塩湖。そこに生きる少年コンドリは、父と一緒に毎日塩を切り出す仕事に精を出していた。ある年、コンドリの祖父は体が弱り、長旅に耐えられない体になってしまう。そこでコンドリは初めてボリビア各地に塩を配る「キャラバン」に赴くことなる・・・・

冒頭に述べた「ドキュフィクション」。いったいどっちやねん、と言いたくなりますが、これは実際に塩のキャラバンと行動を共にし、その場その場で状況にあったお話を作っていったとのことです。

まず広大なウユニ塩湖の景色に目を奪われます。「湖」とありますが、水はありません。真っ白い塩が敷き詰められた平野が、どこまでも広がっているのです。『世界最速のインディアン』のクライマックスに出てきた、あんな感じの土地です。そしてその上に広がる空が、これまた輪をかけて広い。無限の広がりというヤツです。三方を山に囲まれている土地にいると、こうした景色がまるで異世界のもののように感じられます。

ポンチョを羽織ってリャマにまたがるその姿は、まるで『母をたずねて三千里』か『アンデス少年ペペロの冒険』。そういえば、2009年は年の初めにもボリビアが舞台の映画を二本見たのでした。『007 慰めの報酬』『チェ 39歳 別れの手紙』。そこから導き出されるイメージは「圧政的な支配者たち」「虐げられる民衆」といったもの。しかしこの『パチャママから贈りもの』は、ボリビアが決してそれだけではなく、とても健やかな一面も持っていることを教えてくれます。

ホテルの建設を手伝えと言われながら、あえてそれを蹴って、金にならない(基本物々交換なので)塩の配達を続けるコンドリの父。それはきっと、その仕事がどれほどボリビアの人々にとって必要なものなのか、身にしみてわかっているからなのでしょう。そういう本当にやりがいのある仕事ができるということは、まことに羨ましいことであります。
そしてその父と共に旅をするコンドリ君。昨年も子供たちの出る映画をたくさん観ました。なかには痛々しいものもありましたが、この作品に出てくるコンドリ君に関してはとても落ち着いて見ることが出来ました。
それはコンドリ君とお父さんはそれほどベタベタするわけではありませんが、その絆がとても強いものであることがわかるからです。父と一緒に働き、その背中から多くを学ぶ。今の日本ではそうそう見られなくなった光景です。一昔前であれば、ごく当たり前だったことなのでしょうけど。

少し前に『インカ・マヤ・アステカ展』に行ったことのある者としては、その辺の自然・風俗がいろいろ出てくることも楽しめました。まずなんといってもミイラ崇拝。そしてコンドリ君の夢に出てくる得体の知れないお化け。民族色豊かな音楽と、空を悠々と舞うコンドル。
自動車ではなく、リャマという動物を使って旅するところも面白いです。

わたしが特に印象に残ったのは、コンドリ君が旅の途中で野宿する場面。まあどってことないシーンなんですけど、誇張ではなく、本当に南米の草原に寝っころがっているような錯覚を覚えたので。映画でそんな感覚を味わうのは、実に久しぶりのことでした。また何度も何度も美しい夕焼けのシーンがあって、夕焼けフェチである自分には大変眼福でありました。

Inca_img04さてこの『パチャママの贈りもの』、小田原では速攻で終ってしまいました。東京はユーロスペースでも、今週22日までとなっています。ただその後ゆっくりゆっくり日本全国を回っていくようです。まるで塩のキャラバンのように(笑)
気の向いた方はぜひボリビアの乾いた暖かい風を体感してください。

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Comments

こんばんは♪
これ、小田原でもやっていた、というのがちょっぴり驚きでしたよね。
私、てっきり小田原は普通のシネコンなのかと思っていたのですが。
もしかして、松下監督の知り合いだったり・・・しませんかね?

ウユニ塩湖、どこまでも続く真っ白な塩の湖が、本当にまぶしくて、
胸がいっぱいになって、幸せな感覚が押し寄せてきました。
確かに、お金にはならない物々交換ではありましたが、
行く先々で、どこの人たちも皆、彼らの来訪を喜び、お酒を飲んだりするのも、とっても楽しそうでした。
リャマの群れが本当に可愛かったですよね♪
色とりどりの飾りを耳にくっつけちゃって。初恋も胸キュンでしたね〜♪
あ、SGAさんの初恋話もあるんでしたっけ?

Posted by: とらねこ | January 28, 2010 12:39 AM

>とらねこさま

おはようござります。速攻でお返しありがとうございます
ええ、そのシネコン(コ○ナワールドという)は、あんまし単館系の作品かけてくれないところなんですよ。もしかして松下監督って小田原の出身?とも思ったのですが、彼は兵庫県の人らしいし・・・ 謎です

この映画見るまで知らなかったけど、ウユニ塩湖って、世界的に有名な観光地だそうで 雨が降って塩の上に氷が張ると、星空を反射して地面がキラキラ光るんだとか。それも見たかったなあ

お金第一の世の中に、いまだに物々交換が成り立っている社会があるって、なんか嬉しいですよね。ただコンドリ君は結局妹にお土産は買えたのかな?とそれが気になりました

リャマの耳飾もそうでしたが、ウユニの少年たちがみんな帽子をかぶっていたりとか、コンドリ君のガールフレンドの変わったいでたちなどもかわいかったです

はつこい・・・ そんな昔のことはわすれました・・・ いちおうそれなりにあったような気がします・・・

Posted by: SGA屋伍一 | January 28, 2010 07:30 AM

SGA屋伍一さん、こんばんは。
トラックバック&コメントありがとうございました。(*^-^*

>何度も何度も美しい夕焼けのシーンがあって、夕焼けフェチである自分には大変眼福でありました。

SGA屋伍一さんは夕焼けフェチだったんだ。^^
『牛の鈴音』でもそうだったけど、
夕暮れの風景は自然の神秘で絵になりますよね。

Posted by: BC | February 10, 2010 08:52 PM

>BCさま

おはようございます。お返しコメントありがとうございます

>SGA屋伍一さんは夕焼けフェチだったんだ。^^

そうなんですよー 最近見た中でほかに良かった夕焼けのシーンというと、『ミツバチのささやき』で少女たちが火の上をピョンピョン飛んでいくシーンが思い浮かびます
あんまりよく言われない『CASSHERN』が好きなのも、たくさん夕焼けのシーンがあるからなんです

Posted by: SGA屋伍一 | February 11, 2010 07:19 AM

「パチャママの贈りもの」観てくれてありがとう。それも小田原なんかで…。私は彼と小学校の同級生で、彼と私は学芸会で劇を一緒にやりました。(主役です…笑) 出身は兵庫県加古川市ですが、私たちが通っていたのは隣町の高砂市です。まあ、純真なやつでして、ウユニ塩原を舞台に「まだあんな世界や生活がこの地球上にあるんや」という映画を撮ったのは納得、かな。映像、美しいですよね。ありがと。

Posted by: 増田和郎 | September 15, 2010 06:14 PM

>増田和郎さん

こんにちは
おお、監督の同級生の方でしたか。お礼を言われるほどのことでは。素晴らしい映画を見られてよかったです。なんで小田原でやっていたのかは、未だに謎です
もう見てから半年以上経つわけですが、ウユニ潮湖をはじめ、ボリビアの美しい風景は未だにしっかりと記憶に残っております

松下監督の新作が公開されたら、またぜひ見にいきたいですね

Posted by: SGA屋伍一 | September 16, 2010 07:51 AM

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