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December 09, 2009

カナダの彼方に ポール・ジェンキンス 『ウルヴァリン:オリジン』

091208_181205ここんとこず~っとお寒い状況にあったアメコミ翻訳ですが、なぜか最近ちょっとした活況を呈しております。ヴィレッジ・ブックスから『トップ10』、みすず書房から『フロム・ヘル』、そして小学館プロダクションから『ダークナイト』(これ、再販だけど。ちなみに同タイトルの映画と内容は異なります)、『ウルヴァリン・パーフェクトガイド』、そして『ウルヴァリン:オリジン』。
まあ片手で足りる数ではありますが、ここ数年ずっと年に一作程度だったことを考えますと、この時期にこんだけ集中しているのは嬉しい驚きであります(問題は財布の中身がついていかないこと・・・)

とりあえず今日は小プロさん、久々のマーヴル作品となった『ウルヴァリン:オリジン』を紹介いたしましょう。
その前に少しウルヴァリン=ローガンというキャラの解説をば。

ウルヴァリンがコミックに初めて姿を現したのは、1974年11月に刊行された『インクレディブル・ハルク』181号。その約半年後、『X-MEN』の新メンバーに加わった彼は、以後徐々に人気を伸ばしていき、ついにはスパイダーマンとならんでマーヴルの中でも1,2を争うほどのトップスターへと成長していきます。

彼の人気の秘密のひとつは、「過去が謎めいている」ことでした。ほかのメンバーのほとんどには、それぞれ出自や家族に関してきちんとした設定があるにも関わらず、ウルヴァリンに限ってはただ「不明」。これはスタッフが考えるのが面倒くさかったのでは・・・とわたしは睨んでいますが、彼の人気が上昇するにつれ、その過去にも後付け的な設定がどんどん加えられていきます。
改造手術・記憶操作をされているらしいこと、第二次大戦にも参加していたということ、さらにはどうやら100歳以上のじいさまらしいこと。
こうした後付け設定や、断片的な過去のエピソードが増えるにつれ、様々な矛盾が生じるのはごく当たり前のこと。そうした時、決まってマーヴルは「実はあれは植えつけられた偽の記憶でした」とごまかすのでした。

やがてウルヴァリンの過去はどこまでが真実でどこまでが偽なのかさっぱりわからない、複雑怪奇な様相を呈していきます(そこがこのキャラの魅力の一面だった、ということも否定できないのですが)

そこで「ここらへんで、いい加減きっちり決めようや!」と踏み切ったのが2002年マーヴルの総編集長であった、ジョー・カザーダ。かくして鉄の爪を持つ野獣戦士の真実の過去が、ついに明らかにされることになったのでした。

舞台は開拓時代のカナダ。とあるお屋敷に身寄りをなくした一人の少女がもらわれてくるところから、お話は始まります。その少女、ローズは屋敷の主人の息子ジェイムズや、使用人の息子ドッグと友情を築きますが、身分の壁はやがて彼らに悲劇をもたらすのでした。

なにこの名作劇場みたいな設定(笑)。『秘密の花園』か『嵐ヶ丘』をほうふつとさせます。
このストーリーからもわかるように、この『ウルヴァリン:オリジン』、通常のアメコミとはかなり異なるカラーの作品です。スーパーヒーローが出てくるわけでもなく、奇抜な格好をした悪者が出てくるわけでもない。アンディ・キューバートの格調高いアートとあいまって、文学的な香りさえ漂っているように感じられます。

ただこれ、これ以上はネタバレにならんように説明するのがむずかしいな・・・ ええと、まあやがてローズと後のウルヴァリンは、ある事情でお屋敷を出ることになり、二人であてどのない旅に出ることになります。そして少年ウルヴァリンは厳しい環境の中で、自分の内に眠っていた「野性」と直面することになるわけですが・・・

少年ウルヴァリンが慕うローズが、後のジーン・グレイとよく似てるところが心憎いというか、何かを暗示しているというか。『X-MEN』 においてウルヴァリンは数々の悲恋を経験することになるわけですが、その第一歩がここで描かれます(笑)

やはり目を魅かれるのはそのアート。原色をなるべく抑え、全体的に緑や青系統、はたまたセピア調でまとめられた背景は、見るものを100年前のカナダにそのまま連れていってくれるかのようです。狼や森林といった自然の描写がまたいちいち美しい。こうしたアートを眺めていると、やはり全編オールカラーという形式は力強いなあと、しみじみ思うのでした。

091208_181237先日公開された映画『ウルヴァリン:X-MENゼロ』は、明らかにこのコミックを下敷きにしておりますね。冒頭5分だけですが・・・・

と、いうわけで30年に渡って謎だったウルヴァリンの「オリジン」が明かされる本作、アメコミファンならまちがいなく「買い」でしょう。
とはいえコロコロ設定が変わるアメリカン・コミックス。この真相も「実は偽の記憶でした」とか言い出す可能性も、また捨て切れません・・・

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Comments

ポール・ジェイキンスってなんでもウルヴァリンの終わり物語
『WOLVERINE:THEEND』も脚本原作したそうですよ

Posted by: notyou | December 20, 2009 at 01:21 AM

>notyouさま

こんばんは! 以前コメントくださった方ですよね?
『THE END』については『ウルヴァリン・パーフェクトガイド』にて存在を知りましたが、これもポール・ジェンキンスの仕事だったんですね
バットマンにおけるフランク・ミラーみたいな仕事がやりたかったんでしょうか

Posted by: SGA屋伍一 | December 20, 2009 at 07:07 PM

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