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December 07, 2009

俺たちゃアパッチ野獣軍 クウェンティン・タランティーノ 『イングロリアス・バスターズ』

091207_172348時は第二次大戦たけなわのころ。米軍は悪の枢軸たるナチス・ドイツに対し、極秘裏にある特殊部隊を送り込む。クリーブランド・インディアンスの名選手だったブラッド・ピット。数々の乱闘事件で名を馳せてきた名スラッガー、イーライ・ロス。巨大なナイフで相手を切り裂くドイツからの外国人選手。そして映画監督なのに野球の監督として間違えて連れてこられた、なんとかとかいう方。
彼らはナチスにベースボールのなんたるかを知らしめるため、海を越えて遠征に赴く。

いつの時代も定期的に作られる映画に、「ナチスもの」あるいは「ナチス関連作品」があります。今年は特に多かったような。直球勝負な『ワルキューレ』から、収容所に材を取った『縞模様のパジャマの少年』、さらに『ディファイアンス』や『愛を読むひと』や『セントアンナの奇跡』や・・・・・ 現在も『カティンの森』や『誰がために』などが公開中、あるいは待機中であります。こうしたナッチ関連作品って、題材が題材だけに、どうしても重苦しくなってしまうんですよね。当たり前っていや当たり前ですが。
が、この『イングロリアス・バスターズ』には、ナッチ系映画にしては珍しい馬鹿馬鹿しさがありそうで、強い吸引力を感じたのでした。あ、一応言っておきますけど、冒頭のあらすじはネタです(つまんねーネタだ・・・)。

真面目にあらすじをちょこっと説明しますと、まず最初にナチスがフランスでユダヤ人狩りを行っている場面から始まります。ついでアメリカから派遣されたナチ狩り専用部隊「バスターズ」のエピソードがあり、さらにそのあと舞台はパリへと移り・・・と、全部で五部構成となっております。
こういう映画、探せば他にもあるんでしょうけど、わたしはあんまり見たことなかったので、この構成にまず嬉しくなってしまいました。バラバラだった要素が、やがてひとつの点に向かって収束していく・・・そういう話、好みなんですよね。

さらに普通の娯楽作品と違って、ひとつひとつの場面がけっこう長く、セリフも多め。こういう風に構成を入り組ませたり、場の空気を丁寧に描写したり、台詞回しに凝ってみたり・・・というのは、どっちかといえば小説の方がむいていると思います。が、少なくともわたしは、この映画ではそうした小説向きのやり方が、まずまず成功しているように感じました。「映画にだって、これだけできるんだぜ~」というタラちゃんの自慢げな顔が目に浮かぶようです。

ほんでこの映画に流れている「場の空気」、これがまた独特でして。本当なら緊張感が張り詰めているような場面でも、どことな~くユーモラスなムードがあったりします。ドキドキするというより、むしろ「これからどうなっていくんだろう?」というワクワク感の方を強く感じました。

一方で、キャラクターの方はそんなに入れ込める人がいなかったような  どの人もほどほどに好感が持てて、ほどほどにむかつく(笑)。ブラッド・ピット演じるバスターズの隊長なんかはあまりにも非人間的で、こちらの理解を拒むようなところさえあります。
メロドラマ好きの監督だったら、この人をもっと内省的なキャラにして、やがてもう一人の主人公であるショシャナと恋に落ちる・・・なんて風にもっていくんでしょうけど、登場早々にして「そんな展開はありえないな」と確信いたしました(笑)
そんな中比較的「こいつ、いいなー」と思ったのが、ナチスの若き英雄ツォラー兵卒。明るくさわやかで、手柄にもおごらず、何より映画好き。きれいなお姉さんと映画の話で盛り上がりたいというその気持ちは、大変よくわかりました
もう一人はユダヤ・ハンターと恐れられるランダ大佐。ワルもここまで徹底していると、いっそアッパレであります。
ただ、二人とも最後の最後で「ちょっとガッカリだな」というところがありました。人間、なかなか完璧にはいかんもんです。

091207_172410そんな『イングロリアス・バスターズ』、本国ではまあまあヒットしているようですが、こちらの方ではやや微妙な具合です。これから冬休み向けの映画が殺到してくることを考えますと、興味のある方は早めに見ておいた方がよいでしょう。

最後にタラちゃんにひとつツッコミ。バットで人を殴ってはいけません! 殴るなら棍棒で!


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Comments

SGAさんこんばんわ♪

自分は本作とワルキューレしか観てませんが、例を挙げればホント、今年はナチスモノが意外に多いんですね。ナチスドイツが台頭してた頃ってやっぱりヒトラーをはじめ、色んな人物の人生や知られざる背景などがたくさんありそうな気がしますから、今日に到るまで題材に事欠かないんじゃないでしょうかね~?

その点、本作のタランティーノ作品は歴史的事実や人物設定をかなり砕いたトンデモ映画になってましたけど、戦争映画=なんか重いって雰囲気も取っ払った作風になってたおかげで、戦争映画敬遠気味な自分もどこか面白く観れた部分がありましたね。デスプルーフみたいに悪人をちゃんと懲らしめる終わり方も好きでした♪

Posted by: メビウス | December 07, 2009 09:19 PM

あ!ブロッケンJrだ(ですよね?)
イングロ記事にこういうイラスト付けるところがSGAさんならではですね♪
帽子の下には肉ならぬ鉤十字が刻まれてたりして。

小説っぽいって分かる気がします。
伊坂幸太郎読んでるとき、たまにタランティーノっぽいなって思うことあるし。

魅力的なキャラクターばかりでしたけど、確かに入り込めるキャラクターは少ないかなぁ〜(かろうじて言えばショシャナ?)
お気に入りはやっぱりランダ大佐です
SGAさんが比較的いいなと思ったナチスの英雄君がいちばんムカついたかも
しかし平和な時代なら普通の好青年であろう彼にさえ傲慢な態度をとらせる、そういう時代だったのかなと今ちょっと思いました。
「アドルフに告ぐ」にもそういうキャラいましたね。

最後に・・・棍棒なら殴ってもいいの!?(笑)

Posted by: kenko | December 07, 2009 09:28 PM

なんかおもしろそーだな。つまんねーっていって半分みて金返してもらえばよかった。けっきょく2012とカールを取って、タラちゃんスルーしちゃった。。。

そっか大リーグのはなしだったのか、、、なら観にいけばよかったよ。。。それより『2012』は? オレ、スゲー満足しちゃったよ。。。あと冬の仮面ライダーも見てえな~。蜂女とか電波人間タックルとか、ポスターにいたけど。。。

Posted by: 裏山さん& | December 07, 2009 11:03 PM

>メビウスさま

おはようござりますー
本当に今年は、直球・変化球さまざまなナチスものがあって、「こういう切り口もあるんだ」とよく思わされました
まあかく言うわたしも『縞パジャマ』や『愛を読む人』は見てないんですが  『誰がために』は見たいな

しかし枢軸側には日本やイタリアも参戦してるんですが、この影の薄さはいったいなんなのでしょう

そうそう、この映画、先に『ワルキューレ』を見ていると一層ぶっとぶでしょうね(笑) 「すげえな、タランティーノ」と思いましたよ~
ただ真面目な人は怒り出すんじゃないでしょうか。そういう人にはむかない映画ですよね

Posted by: SGA屋伍一 | December 08, 2009 07:19 AM

>kenkoさま

おはようござりますー

ブロッケンJrわかっていただいてありがとうございます。実は未だに先代とJrの違いがよくわかりません・・・
あといま思えば「ベルリンの赤い雨」ってけっこう地味な技でしたよね

面白い構成でしたよね。ちょっと『アヒルと鴨』『ラッシュライフ』と似ているところもあったかな?

ランダ大佐があんな人なのになぜか皆さんから大好評なのが不思議(笑)
そしてツォラー君は女性陣からおおむね不評ですね・・・ この辺にわたしのもてない原因もあるような気もします

わたしはkenkoさんとは逆に、ショシャナが一番むかつきました。男の純情をもてあそんでひどいわ! まあ過去が過去だけに仕方なかったのかもしれませんが

Posted by: SGA屋伍一 | December 08, 2009 07:25 AM

>裏山さん&さん

おはようござりますー

あなたは・・・ 『カールじい』とこれにしておけって言ったのに、人の話を全然聞いてませんね!
まあ楽しめたならそれでよしです。わたしも『2012』、楽しんで見ましたよ~

野球の話だったんですよ。ただ『アパッチ野球軍』というよりは『アストロ球団』的なお話だったかな

タックル役の女の子ですが、あんなコスチュームなのに雑誌インタビューで「嬉しいです!」と答えていたのがけなげでした・・・
あと前回欠番だったゾル大佐もでるみたいです。ナチつながり

Posted by: SGA屋伍一 | December 08, 2009 07:29 AM

こんばんは!
ランダ大佐は、あの狡猾ぶりが印象的でしたからねぇ〜。
やっぱ、目にはいちゃうわけで・・・私は好きではないけど(笑)
ツォラー君は、KY(空気読めない典型)ですからねぇーーー
ショシャナに最初からソデにされてるのに・・・気づかない!
まあ、可哀想ではありましたが、女性受けはいかがでしょう・・(爆)
私は、ショシャナと恋人らしい黒人との関係が
気になったんですけど・・・・いったい、どこでいつ知り合ったのかな?

Posted by: ルナ | December 08, 2009 11:37 PM

>ルナさま

おはやうございます。ご来訪ありがとうございます

そうか・・・ ツォラーくんは空気が読めてないのがいけなかったのか! 
でもあの年であんな経験して、あんだけみんなからちやほやされたら、多少まわりが見えなくなっても無理はないのでは(あくまで同情派・笑)

たぶん黒人さんはだいぶ前にショシャナの祖父母にひろわれて、そのあとショシャナが転がり込んできて、一緒に働いているうちに仲良くなったのでは

タラさんの最初のシナリオには、ショシャナが映画館をゆずりうけるくだりもあったそうですが、結局はぶいたそうです

Posted by: SGA屋伍一 | December 09, 2009 07:11 AM

こんにちは~♪
タラちゃん、、、CMに出没していますね。ホントお茶目な方で好感度は大でございます。

コチラの映画、日本ではイマイチなのかな?返金を求めた方はどのくらいいるんだろう?

結構観る人を選んじゃう映画かなぁ~と思いましたが、ランダ大佐なんか面白いキャラでお気に入りでした。
独特の場の空気の醸し出し方は流石でしたね。・・・・・修業が足りないせいか時々眠気に襲われましたが(汗)

ところで、そろそろ年末ですね。
年末に“本のまとめ記事”をアップする予定ですが、そこでまたまたお名前を載せさせて頂こうと企んでおります。ヨロシク~♪

Posted by: 由香 | December 10, 2009 08:26 AM

伍一さん
コメTBありがとー

やっとタラ映画見ましたね

>本国ではまあまあヒットしているようですが、こちらの方ではやや微妙な具合

何をおっしゃるの(笑)
本国では大ヒットだよー。
わたしが最初にNYで観たとき公開からだいぶ経ってたうえ平日なのに夜の回ほぼ満席!
日本では4位だったからそこそこだったのかな。
日本映画が最近強いもんね、、、、

キャラは入れ込める人はいなかったのね、、、
わたしはどれもこれも好きだけど、笑 なかでも
ブラピに従えイタリア語話すふたり、イーライロスのユダヤの熊とその相棒が
あとはやっぱりランダ大佐かな。
話し出すと止まらないのでこのへんで帰ります

Posted by: mig | December 10, 2009 12:30 PM

>由香さま

おはようございます。お返しありがとうございます
タラちゃんのCMはまだ見てないんですよね。でもそのお茶目っぷりは『スキヤキウェスタン・ジャンゴ』でたっぷり見させていただきました

ランダ大佐がお気に入りという方多いですね・・・ 特に女子に(嫉妬)
まあこのランダさんもそうですけど、ナチスの方々も一方的な悪者ではなく、それなりに個性豊かに愛情をもって描かれていましたね。もしかすると「バスターズ」よりも人間的だったかも

>そこでまたまたお名前を載せさせて頂こうと企んでおります

恐縮&光栄です
また来年も本の話でもりあがりましょー

レヘインの感想はもうちょっと待ってください~

Posted by: SGA屋伍一 | December 11, 2009 07:34 AM

>migさま

おはようございます。お返しありがとうございます

>本国では大ヒットだよー。

ご、ごめんなさい・・・ 二週目にはもう二位だったものでそんなものかと思ってました
きっと1位を奪った「ファイナル・ディステネーション」がもっとすごいということなんだろうなー アメリカ国民ってこういうの好きですよね(笑)

やっぱりタランティーノって「映画好きにうける」っていう印象がありますね。それほど映画に思い入れのない人たちは、やっぱり邦画や「2012」に行ってしまうのかもしれません

バスターズは実は三人くらいしか見分けがついてなくて migさんみたいに三回見れば全員のメンバーがはっきりわかるようになるのかな(笑)
イーライ・ロスはすごいインパクトでしたが。このまま個性派俳優としてもやっていけそうですね

Posted by: SGA屋伍一 | December 11, 2009 07:53 AM

伍一さん、
スペルは結局どうしたかな??

年内観れる映画も限られてきましたねー★

Posted by: mig | December 12, 2009 09:49 AM

>migさま

おばんです スペルは最初かなりびびってましたが、最後の方はもうゲラゲラ笑いながら見てました
グズなんで書くのが遅いですけど、記事上げたらまたいかがいますね
『カールじいさん』ももう見てきました。今年はあと『戦場でワルツを』と、横浜でやるヴェターリ・カネフスキー特集に行けたら、と思ってます。余裕があったら『アバター』も

Posted by: SGA屋伍一 | December 12, 2009 08:46 PM

>ブラッド・ピット演じるバスターズの隊長なんかはあまりにも非人間的で、こちらの理解を拒むようなところさえあります。

 
 シナリオライター「イングロリアス・バスターズのブラピ様のパート
のシナリオができましてございます」


ブラピのエージェント♀「どれ、ダメよ!!」


ライター「な、なぜでしょうか?ブラピ様はこれでもか!と
活躍をされておりますが?」


エージェント♀「ダメよ!ダメダメよ!!
 いい?ウチのブラピちゃんはね、マゾなの!
しかもドMなのよ!!」


ライター「マゾでドMなんですか?」


エージェント♀「そうよ!だからブラピちゃんはいつも映画でヒドイ目に
会っているのよ!!
 そうじゃないと感じないの!
ドMだから!!
 だからブラピちゃんがヒドイ目に会うように
書いてちょうだい。
 そうね、感情移入ができないくらいヒドイ外道な悪党に書いて。
そうすればブラピちゃん、最後にとんでもないくらいヒドイ目に
会うから喜ぶわね♪」


 ライター「そうですね・・・
あ!計画実行寸前にブラピ様がナチスに捕まってヒドイ目に・・・
なストーリーはどうでしょうか?」


エージェント♀「いいわ♪いいわ♪最高よ♪」


ライター「あなた、サドでしょう?しかもドSでしょうか?」


ブラピ「ボクのライバルはメル・ギブソンと北野武さんです。
 2人ともボク以上のマゾなので実は高い目標でもあります」

Posted by: 犬塚志乃 | February 03, 2010 12:26 AM

こんばんは!

わたしはタラちゃんものは
「キル・ビル」は好きでしたが
「スキヤキ・ウェスタン・ジャンゴ」がダメでした。

この「イングロ」はものすごく気にいりました。
DVDで続けて2度も観ましたよ~
そう,あの洒落てて凝ってて,けっこう長い会話のやりとりが
とってもお気に入りです。
どんな場面にも流れる不思議なユーモア感覚は
きっとランダ大佐の持ち味かも。ブラック・ユーモアの香りがしました。
主演のブラピより,欧州の俳優さんたちの方が
かなり光ってましたね。

Posted by: なな | May 18, 2010 09:00 PM

>ななさん

おはようございます。じつはわたしはタランティーノ作品は本作が初鑑賞でした。それまでの作品はどうも題材的にあまり興味をひかれなかったもので。でもこれを見て、他の作品も見たくなってきましたよ
「セリフ長回し」の部分は第四パートのくだらない(笑)カードゲームのあたりが特に気に入ってます。冒頭のひょうひょうとしたランダ大佐初登場のシーンも印象深いですね
あんなに嫌味な役なのに、みなさんランダ大佐に概ね好意的ってところがすごいですね。クリストフ・ヴァルツさんの人徳でしょうか。アカデミー助演男優賞までもってっちゃったしなー

Posted by: SGA屋伍一 | May 19, 2010 07:20 AM

伍一くん、バスタースキンスコ☆
一番共感したのが若き英雄ドイツ兵だったとは!ビックリです。
いやはやそこかぁー

それにしておランダ大佐のお見事さは、登場するたびにドキドキしちゃったくらい。
緊迫感はハンパなかったです。

Posted by: ノルウェーまだ~む | December 30, 2010 01:27 AM

>ノルウェーまだ~むさん

イングロリアスコ~ お返しありがとうございます
つくづく総スカンですね、我らが英雄くんは(笑) こういうウザ男くんにシンパシー抱いちゃうからわたしはもてないのでしょうか・・・ 自分の虐殺シーン観てたそがれちゃうあたり、悪いヤツじゃないと思うんですけど
悪いヤツはランダ大尉ですね。彼がこんなにみんなから人気なのも謎です。まあ空気読めてないお人よしより、空気を支配する悪い人のほうがもてるということかな

Posted by: SGA屋伍一 | December 30, 2010 02:51 PM

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