狼少年犬 ジャック・ロンドン 『白い牙』
まだ続いてるマイブーム。今回はジャック・ロンドンの作品で一番有名と思われる『白い牙』をご紹介します。
舞台はいまから百年くらい前のアラスカはクロンダイク支流。雪原の中、犬ぞりで貴人の遺骸を運ぶ二人の男は、道中飢えた狼の群れに付けねらわれます。日が経つにつれ、一匹、また一匹と減っていく犬たち。弾薬も燃料も残り少なくなっていきます。果たして彼らは無事人の住む地へ帰れるのか・・・
えー、これが第一章のあらすじなんですが、この部分、続く二章以降とほとんど関わりがありません。この章だけすっとばして読んでも、話は普通にわかります。でも文章の迫力に「なみなみならぬ・・・」ものがありますので、やっぱり普通に最初から読むことをおすすめします。
で、本筋。勢いに任せてどんどん内容バレしていきますので、いずれ自分で読もうという方はご遠慮ください。
第一章にちょこっと出てきた狼犬キチーは、ある年別の狼と交わって後に、「ホワイト・ファング」と呼ばれる仔狼を産みます。原野で母親と暮らしているうちはよかったものの、原住民に拾われて以降、ホワイト・ファングはその血筋のせいか、集落の犬たちや悪ガキどもからいじめにあいます。
ついには母親とも引き離されたホワイト・ファング(以後シロたん)は、ぐれるとこまでぐれてしまいます。力さえ、あればいいんだ。お金さえ、あればいいんだ。ひねくれて星を睨んだ・・・・ 失礼しました。ともかくシロたんは逆境から身につけた悪知恵を駆使して、犬どもに復讐の牙をむきます。
まあそういう境遇だから無理もない気もしますが、この辺シロたんの性格があまりにもねじくれまがっていて、ちょっとげんなりします。その一方で、やがてシロたんが情け無用のプロレスラー?となり、並みいる強敵どもをバッタバッタとなぎたおすくだりは、野郎としては燃えるものがありました。
しかし幾ら戦いに勝利しても、シロたんの心にはむなしい風が吹きすさぶばかり。いつか彼を心から愛し、暖かい腕で抱きしめてくれる者は現れるのか・・・・ 以下次号。
以上のようなストーリーから、先に紹介した『荒野の呼び声』(もしくは『野性の呼び声』)を思い出される方もおられるやもしれません。
確かにこの二作品、似ているところはいろいろあります。ただ同工異曲というよりは、「対」になるような作品と言えるのでは。またいい加減ネタバレになりますけど、バックとシロたんの歩んだ人生・・・いや犬生を比較すると、そんな風に感じられます。
犬のお話というよりは、一匹の男の冒険物語、成長物語として読んでほしい作品。また、とことんひねくれてしまった少年を、一人の教師が辛抱強く愛と根気で更生させる話・・・とも言えるかも。
『白い牙』は、現在光文社古典新訳文庫のものがもっとも入手しやすい模様。ただ・・・文庫なのに914円とはちょっと高くないですか? 光文社さん!(ホントーにいつもこればっかりだな)
次の読書コーナーはまたしてもジャック・ロンドン。新訳短編集の『火を熾す』を扱う予定。それでもってマイブームに一区切り付けたいと思います。
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