死刑台の平均台 福本伸行 ・佐藤東弥 『カイジ 人生逆転ゲーム』
日々をダラダラと生きる青年カイジ。彼は友人の保証人となっていたために、悪徳金融業者にはめられて、大企業が主催するギャンブルパーティーに参加することになる。だがそれは大企業天愛グループの社長、兵藤が若者たちを餌食にすべく用意した、周到な罠であった・・・
原作は福本伸行氏の漫画。その評判に前から興味はあったのですが、気がつけば膨大な量になっていて、手を出しそびれておりました。で、今回映画化という話を聞き、様子見がてら鑑賞してきたのでした。
で、見てみて意外だったのが、カイジってけっこうダメ人間だったということ(笑) わたしはてっきり天才ギャンブラーが並みいる猛者たちをバッタバッタとなぎ倒す話なのかと思ってましたが、このカイジくん、すぐくじけるし、簡単に騙されるし、あっさり負けちゃう。低所得労働者ということもあって、自分にかなり近い境遇の人間です。まあ借金はないですけど。
冒頭のギャンブルパーティーではそんな情けないヤツラがいっぱい集められていて、「ああ、オレみたいのがいっぱいいる」と思ってしまいました
そんなわけで、どっぷりカイジ君に感情移入して見ることができました。だからとても楽しめた反面、心にグサグサ突き刺さるセリフも多数あり
この映画の面白さは、恐らく原作漫画に追うところが大きいかと思います。ありえないゲーム、考え抜かれた頭脳戦・心理戦、ここぞというところでベラベラしゃべるキャラクターたち。そういえば、『ジョジョの奇妙な冒険』も、こんなスタイルじゃなかったでしたっけ。
最近はわたしもあんまりモノローグやセリフが多かったりすると、「そこまでしゃべらんでも」と思ったりするのですが、この映画に限ってはその饒舌なスタイルがかえって心地よかったです。
自分をはめた企業の重役たちを前に藤原竜也君が啖呵を切る場面などは、「いいぞ! もっとしゃべれカイジ!」とまで思いました(笑)
さて、この映画はとても漫画的ではあります(そりゃ漫画原作なんだし)。でも同時に世界の現状をリアルに描いているようにも思えました。
富は一部の者たちにのみ集中し、富める者はなおも貧しい者たちを搾取する。上下の格差はいつしか果てしなくひろがっていき、貧しい者たちはついには命さえ奪われてしまいます。
日本はここまではひどくはないですが、アジアやアフリカ、南米では珍しくない構図です。
そんなどうあがいても底辺から這い上がれない貧者が、富めるものたちに勝てるとしたなら。それは知略と度胸をおいてほかにありません。
ただカイジ君の場合は、こうなってしまったのが環境のせいというよりか、自分のだらしなさに負うところが大きい。それが情けないいっちゃ情けないんですけどね
そんなカイジを熱演するのが藤原竜也くん。『デスノート』ではクールな夜神月を好演しておりましたが、いま情けない若者をやらせたらナンバー1ではないかと思います。誘惑に負けてビールを飲み干すその姿には、思わず涙がにじむほど
しかしクライマックスでは主人公の本領発揮とばかりに、強敵を前に頼もしいところを見せてくれます。
これで負けたら今度こそ完璧に終わりだという場面で、不敵な笑みを浮かべ「オレはたしかに生きている」と言い放つカイジ=藤原。野郎のわたしですら、うっかり惚れそうになりました。
そうした漫画のカタルシスも味わわせてくれる一方で、現実の厳しさも教えてくれるまとめ方も、バランスがとれていると思いました。
先も述べましたが、この映画を見ると、すぐにもビールが飲みたくなります。それほどに、ビールのうまさがよく描けている。この一杯のうまささえあれば、人間けっこう幸せなんじゃないでしょうかねえ?
あ、そんなところで満足してるからダメなのか。
Comments
ども、見てないくせにコメントしちゃいます。
何かのインタビューで読みましたが、ビールを飲むシーン、実際1ヶ月ほど断酒をして挑んだそうですね。たいしたもんだ、藤原君。
彼って何でいつも悩みまくる役ばかりなんだろうって思ってしまいます。
BRの主人公、小早川秀秋、沖田総司、あとドラマ版かまいたちの夜の主人公役なんてのもあったなぁ。ま、それだけの演技力があるからこなせるのでしょうね。
そういえば、松山ケンイチも出てるんですよね。久々のL&ライトはいかがでしたか?
Posted by: Z | November 07, 2009 09:35 AM
>Zさん
先ほどはお電話どうも。医療の現場から貴重な意見聞かせてくれてどうもありがとう(笑)
>実際1ヶ月ほど断酒をして挑んだそうですね
だからあんなにうまそうだったのか!(笑) いやー、それ本当すごいわ
わたしにはたぶん無理・・・
それを聞くとあのシーン、もう一回見てみたい気がするなあ
一応彼は蜷川幸雄氏の秘蔵っ子だったんではなかったかな
ちなみに今回は夜神月より沖田総司の方に近かったです。君の方がよく見てるね
>久々のL&ライトはいかがでしたか?
いやー、それが今回けっこう仲がよくって、見ている時はあのコンビだということが全然思い浮かばなかった(笑) 松ケン君は「友情出演」だったんだけど、脚本家(『DMC』と同じ人)つながりかと思ってた・・・
Posted by: SGA屋伍一 | November 07, 2009 07:15 PM
伍一さんおはよー
来るの遅くなっちゃった
カイジ、気になってたの〜。
ホイチョイのラジオの仕事のときに
ご本人にお会いしてカイジのお話聞いたのよ〜。
マンガ書いてる事務所に忘れ物届けにいったりして
読もうとおもいつつ数年、、、、
未だに読んでないからせめて映画観たいなと。
>いま情けない若者をやらせたらナンバー1
藤原くん、そうなんだ〜
みなさんの評価もいいみたいだし観たいなぁ。
ところで伍一さんは「スペル」観て欲しいなー。
Posted by: mig | November 08, 2009 12:17 PM
こんにちは~♪
SGA屋伍一さんはメチャメチャお気に召したようですね~
なんでも藤原君はビールを美味しそうに飲むために暫く禁酒して、あのビールを飲むシーンに挑んだらしいですね。ふぁから尚更美味しくビールを飲むように見えたのでしょうね。
私としては、藤原君の大袈裟な演技が時々鼻についちゃうのですが、役者魂はある方だなぁ~と思います。
香川さんは凄かったですね~
あの方が怒鳴ると、つい「すみません!」と言いたくなる(笑)ハマり役でしたね!
Posted by: 由香 | November 08, 2009 02:42 PM
>migさま
こんばんは~
おお! migさんは福本さんにお会いしたことがあるのですか!
わたしはあんまし知らないんですけど、漫画家としては割りと遅咲きの方みたいですね
映画は原作の13巻分一気にやってしまってるようです。13巻が映画一本のお金で味わえる! これはお得です(笑)
>>いま情けない若者をやらせたらナンバー1
これはファンの人が読んだら怒るかもなあ
まっ わたしなりのホメ言葉ということで・・・
『スペル』はなんかあらすじ読むと笑える話で来になるんですけどね
魔女が銀行にローン組みにくるってどういう話かと(笑)
でもやっぱり怖いのでDVDでもいいでしょうか?
『キル・ビル』は近日中に見ようかと思ってます~
Posted by: SGA屋伍一 | November 08, 2009 11:00 PM
>由香さま
こんばんは
お返しありがとうございます!
実はこの映画、ほかに見たいものがなくて仕方なく(笑)見たんですよ。そしたら意外に楽しめたので、なんかトクした気分でした♪
藤原くんは禁酒だけじゃなくて減量もしたそうです。こんな文芸作品とは程遠い映画にそこまでやってくれるとは、ただただ感心です
まあ由香さんはどうも肌にあわないみたいですが
でもビールのシーンはやっぱりいろんな意味ですごいと思いませんか!(笑)
続編ができるなら、香川さんにはぜひカムバックして、カイジとタッグを組んでほしいなあ。原作はそういう展開にはなってないみたいですが
で、原作の方でもまだ佐藤慶はまだ倒されてないみたいです。恐らくこのジイ様を倒して堂々「完」となるのではないでしょうか
Posted by: SGA屋伍一 | November 08, 2009 11:11 PM
おはようございます
最近あんまり映画を観に行けてなくて今更カイジなんですけど。
>心にグサグサ突き刺さるセリフも多数
同じくです!
原作は10年前に一度読んだきりですが、
10年後の今、改めて心に突き刺さりまくるセリフ多数。
特に香川さんのセリフが
「おまえ達は何も積み重ねてこなかった!」とか・・・
ビールのシーン、ものすごく良かったですけど
断酒までしてたんですね!藤原くんの役者魂アッパレだ
カイジとハシゴして『私の中のあなた』も観たんですが
それはまた後日〜
Posted by: kenko | November 14, 2009 10:19 AM
>kenkoさま
こんばんは(笑)
あー、これもう十年も続いてるんですねー
十年前、わたしはどうだったかな・・・
あ! 今とあんまし変わってないや!(爆)
kenkoさんはいーんじゃないですか? ちゃんとダンナさんの生きる支えとなっておられるのだから
そこいくとわたしなんかこの年になって、いまだに「誰かを幸せにできる」という自信がまったくありません。えっへん(威張るな)
ビールのシーン、こないだ別のある記事でも読んだんですけど、一発OKだったそうです。やっぱり二杯目からはあの表情は出せないかも。あまりにうまそうだったので、スタッフから笑われたそうです
『わたあな』(なんだそりゃ)も見てくれたんですね! 感想お待ちしてまーす
Posted by: SGA屋伍一 | November 14, 2009 09:26 PM