15分くらい六本勝負 チェコアニメ傑作選① トルンカ・ポヤル編
先日新宿のケイズ・シネマというところでチェコアニメの特集上映が行われていました。その内のAプログラムとDプログラムを観ることができたので、シャッフルして二回に分けて紹介させていただきます。
芸術的なアニメ作品が多く作られているチェコ。しかしチェコのアニメは、日本やアメリカのものとは多少異なっています。
こちらでは絵を動かすアニメがほとんどですが、チェコのそれは人形をコマ撮りで動かすものが主流となっております。
これはチェコがもともと人形劇が盛んだったという背景から来ているようです。そういえば漫画家のみなもと太郎先生は、日本の漫画・アニメの源流には「紙芝居」がある、ということを主張されていたっけな。
今回は巨匠と言われているイジー・トルンカと、ブジェチスラフ・ポヤルの作品を紹介します。偉そうに書いてますけど、二人とも今回初めて名前を知った方です
まずトルンカの『手』。ささやかなお家で一人陶芸にはげんでいる男。しかしその部屋に突然巨大な手が現れて、自分のモニュメントを作るよう男にしつこくせまります。
もうひとつは『電子頭脳おばあちゃん』。田舎に住んでいる老婆と孫娘。ある日娘の父親から「すべて終わり」という意味深な電報が届きます。すると老婆は孫を謎の科学基地に連れて行き、カプセル型の乗り物に乗せて空へと送り出すのですが・・・・ 全編に渡って無機質な機械音が響き渡り、観るものの不安をかきたてます。
この二本からは「強制されることの嫌悪」を強く感じました。あと晩年の作品だからかもしれませんが、全体的に暗いムードが漂っております。その辺は好みが別れるところかと思いますが、この独特のセンスは一見の価値がありかと。
ところでこれら、わざわざ遠くまで見に行ったのに、普通にゆうちゅうぶで観られるとはどういうことなのでしょう・・・
まあ他のもいろいろ観られたからいいのさ・・・・
もう一方のポヤルさん。ざっと資料を見たところ、かなり多作な方の模様。この特集上映にはどのプログラムにも、シュテェパーネクという方と組んだ『ぼくらと遊ぼう!』というシリーズが含まれています。
かわいいタイトルとキャラクターにだまされそうになりますが、このシリーズ、実はけっこう毒の入った内容。
基本的に大きな熊さんが狡知の限りをつくして、小さな熊さんをだましぬく、というお話なので。
単独で作られた『ライオンと歌』も、砂漠のオアシスにたどり着いた芸人が、人食いライオンに襲われて・・・というこれまたシビアなお話。
ただポヤル氏の作品は先にも申したようにキャラがかわいく、背景もあけっぴろげなので、不思議と暗い印象はありませんでした。あとトルンカ作品よりも童話調というか、子供が楽しめるアニメに仕上がっております。
そんなポヤル作品であまり「意地悪さ」が感じられなかったのが、カナダとの合作『ナイトエンジェル』。
ある晩、孤独な青年は、家の窓から妖精の様な娘を見つけます。思わず外に飛び出た途端、車に吹っ飛ばされる青年。青年は一命をとりとめますが、視力を失います。
真っ暗闇の中、恐怖におののく青年の前に、あの晩彼が見た娘が現れます。
盲人の感覚をどうやって描くか? 「闇夜のカラス」のようなお題ですが、わたしの知る限りではアメコミ映画『デアデビル』がそれに挑戦しておりました。
この『ナイトエンジェル』は、またそれとは違ったアプローチで、盲人の世界を描いています。暗闇の中で青年だけが描かれていて、彼が触れた途端に、ドアやテーブルが浮かびあがるといった手法。リリカルなお話とともに、この斬新な描写にもいたく感心いたしました。
二回目の記事では、やはり巨匠と言われるシュヴァンクマイエルと、その他の作家の作品について取り上げます。
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