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October 19, 2009

忍びが通るけもの道 白土三平・崔洋一 『カムイ外伝』

091019_121552ひとり ひとり カムイ
闇のなかを抜けていく

白土三平の名作コミックを、崔洋一、宮藤官九郎、松山ケンイチという豪華布陣で映画化。『カムイ外伝』を紹介いたします。

被差別階級に生まれたために力を欲した少年カムイは、忍者の集団へと身を投じる。だがカムイはある事情から忍びの一団を「抜け」ざるをえなくなり、以後追っ手たちとの熾烈な戦いを強いられることになる。
そんな逃亡の途中で、カムイは半兵衛という変わった男と出会う。その地にあって絶大な権力を持つ領主の馬の足を、平然と切りとって逃走する半兵衛。興味本位でこの男を助けたことから、カムイは彼と行動を共にすることになる・・・・

なじみのない方は「なぜいきなり『外伝』を?」と思われるかもしれません。わたしの知る限り、いきなり外伝が映像化されたコミックは、ほかに『修羅の刻』と『セクシーコマンドー外伝 すごいよ! マサルさん!』くらいのもんです。
実は「本伝」の方はカムイのほかにたくさんの登場人物が出てくる壮大な群像劇であり、差別や支配との戦いを描いた重厚な内容の作品なので、やや娯楽色に乏しいところがあるのです。おまけに途中からカムイが全然出てこなくなっちゃったりします(笑)
それに比べると「外伝」の(特に初期の)方は、わりかし忍者バトルに焦点が置かれたエンタメ寄りの作品なので、映画にするならこっちの方が向いてると判断されたのでしょう。

激しい差別を受け、それゆえに地獄を見ることになったカムイですが、たどりついた半兵衛の村では暖かく迎えられます。もしかして落人か何かが集まってできたがゆえに、そういう意識が乏しいところなのかもしれませんが、ここで思い出すのはいつぞやの朝日夕刊のコラム。
崔氏の父は在日朝鮮人で、それゆえに厳しい差別を受けたこともあったようですが、映画制作現場に出入りしていた彼は息子にこんなことを語っていたそうです。
「この世界は、国境をなくさせる」
つまり、撮影所では誰が何人だろうと気にせずに、みんな力を合わせて映画を作っていると。素晴らしいことですね。
この映画における漁村は、そうした差別なきものづくりの社会を表しているような気がします。ではその平和な村を襲う悪鬼のごとき者たちは誰を表しているのか? これについても「あれかなー」と思うところはあるのですが、先のこと以上に思いつきレベルなので、書くのはやめておきましょう


実はわたしこのエピソードの後半、だいーぶ前に読んだことがありまして、それなりに思い入れの深い話だったりするのですよ。そんで豪華スタッフがてがけるともなれば、否が応でも期待が高まるというもの。
しかし実際に見てみますと、「え!? なんでここでそうなるの!?」「あの・・・ あなた結局何がやりたかったの!?」という展開がけっこうあり。でも原作も、そういえばそんな感じの話でした(笑)
十ウン年前はほとんど気にならなかったんだがな~
さすがは漫画好きの宮藤官九郎、オリジナルに忠実であります。今回は彼のいつもの持ち味がほとんど感じられない映画でしたが、それが良かったのかどうか? う-む。


ここからはラストまでバレてるんでお気をつけください・・・・


いい面で原作らしさが出ていたところというと、カムイの孤独性に関してはよく表れていました。カムイを狙うもの、受け入れようとするもの、彼に関わる者たちには、すべて死が訪れます。まさにカムイが通ったあとにはペンペン草も生えない。決してそれを望んでいるわけではないのに、いつも死を招き寄せてしまうカムイ。
浜辺で一人たたずみ、(早くここを去らねば・・・)と思うカムイに、つい涙を誘われたのでした。

果たして彼がいつか笑顔で、人並みの暮らしができるようになる時は来るのか? 
ちなみに『カムイ伝』は2000年に中断したまま、いまなお未完です。

091019_121609最後は原作の詩情溢れるモノローグでもって締めるといたしましょう。


夜明けが来ると 夜は泣きながら去っていく

俺も去っていこう 遠くへ 遠くへ

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Comments

おはよーございます(o^∀^o)

こちら観る気満々だったのに、評判のよろしくなさについ怖気づいてしまいました
クドカン脚本でもあるのに〜
「なくもんか」は間違いなく観るつもりです

Posted by: kenko | October 20, 2009 10:01 AM

こんにちは~♪
物凄く酷評してしまいましたが、、、TBさせて頂きました。
なんじゃーこりゃーカムイを舐めとんのか~と思われましたら、、、ゴメンナサイ。

SGA屋伍一さんは原作をご存じなんですね~
私は全く知らないせいか、この映画が何が何だか分かりませんでした
場面場面が飛び飛びで、カムイの気持ちとかがサッパリだったなぁ~
CGにも引いちゃって・・・特にジョーズにドン引きでした・・・手品にも目が白黒しちゃったし。
期待していたんだけどなぁ~ガックリ

Posted by: 由香 | October 20, 2009 05:48 PM

>kenkoさま

こんばんは

>評判のよろしくなさについ怖気づいてしまいました

ダメじゃないか! 人の意見に左右されちゃ!

・・・と言いつつ、わたしも決しておすすめはしません(笑)。いまむしろ見て欲しいのは『私の中のあなた』

鑑賞中はずっとクドカンのこと忘れてまして、エンドロールが出てきたところでようやっと「ああ! そういえばクドカン脚本だった!」ことを思い出したのでした

Posted by: SGA屋伍一 | October 20, 2009 08:36 PM

>由香さま 

おばんです。ようこそお出でませ。この映画はコロタンで見たんですよ

そうですねー わたしがすんなりストーリーに入り込めたのは、先に原作を読んでいたからかもしれませんね
たしかにあまりいい出来ではありませんでしたけど、わたしはなんとか楽しめましたよ(笑)
昔なじんだ「変位抜刀かすみ切り」を、どういう形にせよ実写映像見せてくれたことだけでも「見てよかったな」と思いました

ただその直後に『私の中のあなた』を見てしまったもので、本作品の記憶はかなり薄らいでしまいました(笑)

Posted by: SGA屋伍一 | October 20, 2009 08:45 PM

こんばんは!
「本伝」はまたちがう内容なんですね。

>「あの・・・ あなた結局何がやりたかったの!?」という展開がけっこうあり。でも原作も、そういえばそんな感じの話でした(笑)

あはは、そうなんだ。
カムイ自体はよかったのですが、青い空、青い海は原作もそうなんですか?
自分の思い描いたものと違ってましたね。
続編あるだろうか・・

Posted by: アイマック | October 27, 2009 11:19 PM

こんばんは!
昔、放送されていたアニメとか差別用語てんこ盛りで、
たぶん放送できないらしいですが、カムイの生い立ちのシーンに
ちらっと人間扱いされない非人の話が出て来たりして、
原作は、かなり奥深い感じを受けました。
まあ、映画になった「カムイ外伝」の部分は、かなりエンタメ性の強い部分
みたいなので、ワイヤーやCGのひどさに目がいってしまいますが・・・(笑)
その辺かなり酷評も多いみたいですが・・・・。
まあ、所詮漫画ですし、裏切り者一人にあれだけ忍者使っていたら、
何人いても足りないじゃん!・・・ってなるんで・・・・。
娯楽ものとして楽しめれば良いのではないかと思いました。

Posted by: ルナ | October 27, 2009 11:33 PM

>アイマックさま

ども。お返しありがとうございます

本伝も一応根底に流れているメッセージは同じだと思うんですがね。上にも書いたようにいろんな人たちが入れ替わりたち変わり出ては消え出ては消え・・・という、まあややこしい話なんですわ(笑)

>青い空、青い海は原作もそうなんですか?

いや、ほら。漫画は基本的に白黒だから・・・ ってそうじゃないですね

このエピソードでは確かにこういう舞台でした。ただほかのエピソードはほとんどが野山中心なので、そういう意味では『カムイ』の中では例外的な話だったかもしれません

Posted by: SGA屋伍一 | October 28, 2009 07:07 AM

>ルナさま

お返しサンクスです
そうですねー わたしも最初読んだ時、滅多に使われない言葉が堂々と用いられていることに衝撃を覚えました
海外でもかなり売れたと聞いております。ただわたしは途中からよくわかんなくなっちゃんですけどね(^^; 今また読んだら新たな発見があるかな?

CGの方はまあヘンテコリンで面白いな、と思って見てましたが、つっこみたいところは他にも山ほどありましたね(笑)
それでもなんかこの映画のことが嫌いになれなかったりします。こういう孤独なヒーローの話は好みなもので

Posted by: SGA屋伍一 | October 28, 2009 07:26 AM

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